自立したのび太を目指して
1969年の連載開始以来、現在もテレビアニメが放送されているマンガ『ドラえもん』。私も子供の頃、夢中になってよく読んだ。
弟の幼稚園スモッグに母が刺繍したドラえもん
実家のタンスの奥から出てきた、弟の幼稚園スモッグ。母がドラえもんを刺繍したのを、小学生だった自分もうらやましく思った記憶がある。
どの話にも魅力的な道具が出てくる夢のようなマンガであるわけだが、よくよく思えばドラえもんがいなくても自分で実現できる題名もある。
どの話にも魅力的な道具が出てくる夢のようなマンガであるわけだが、よくよく思えばドラえもんがいなくても自分で実現できる題名もある。
14巻「ぐうたらの日」
ドラえもんにはいろいろなコミックス版があるが、ここでは最もオーソドックスと思われる「てんとう虫コミックス」版の巻数で調べて実践してみよう。まずは「ぐうたらの日」。
日常のひとこま
休みの日にはよくあること。目覚めたベッドに入ったまま、パソコンをいじってる。これで午後まで過ごしたりする場合もある。どうだのび太、これが大人の自由だ。
なお、今回はその話の内容に沿うわけではなく、あくまで題名そのものを実現することとしたい。このように何もしないでも叶っているものもあるわけだ。
なお、今回はその話の内容に沿うわけではなく、あくまで題名そのものを実現することとしたい。このように何もしないでも叶っているものもあるわけだ。
28巻「思いだせ!
あの日の感動」
あの日の感動」
これも脳内だけで実現できるタイプの題名だ。「あの日」は自分で設定することにして、どの日にしようか。
久しぶりに開いたなー
結婚式の日を思い出すことにして開いたのは当日のアルバム。確かにあの日は、まともに感動したはずだ。
当日の思い出で今でも妻から言われるのは、僕が料理を食べているとソースをはねさせてしまって、新婦のウェディングドレスに飛ばしたことだ。ただこれは、どうも感動ではない。
当日の思い出で今でも妻から言われるのは、僕が料理を食べているとソースをはねさせてしまって、新婦のウェディングドレスに飛ばしたことだ。ただこれは、どうも感動ではない。
ひょわー
当日のスナップより
写真を見ると思い出されるのは、あの日のアワアワした自分。どの写真を見ても目つきがおかしい。
上のスナップで上段左に写っている友人は、ご祝儀を受付で渡しそびれたらしく、披露宴の最中に直接私のところに持ってきたので驚いた。
どうしてもこうして笑い系の思い出に逃げてしまう。ちゃんとした感動もあったはずだが、それと向き合うのは意外に照れくさい。
上のスナップで上段左に写っている友人は、ご祝儀を受付で渡しそびれたらしく、披露宴の最中に直接私のところに持ってきたので驚いた。
どうしてもこうして笑い系の思い出に逃げてしまう。ちゃんとした感動もあったはずだが、それと向き合うのは意外に照れくさい。
23巻「ぼくより
ダメなやつがきた」
ダメなやつがきた」
ドラえもんの題名の中には、もうそれだけでちょっとした詩のようになっているものもある。このタイトルも、語感のよさが言ってることのせつなさを加速させているとタイプのものだと思う。
あ、誰か来たぞ
「こんにちは、ダメなやつです」
この題名のせつなさは、「この題名をのび太が言っている」という含みにある。ダメなやつと自覚しているのび太、そしてそいつに「ぼくよりダメなやつ」と言われている誰か。なんて悲しい題名なんだろう。
謎の着こなし
いろいろ間違ってる
どうなってるのかわからない服をよく見ると、上着が上下逆かつ裏返し。玄関先で撮ったので後光が差しているようにも見えて、逆にバカっぽさを増幅させているようにも思える。
ボタンの掛け違え
靴下がちぐはぐ、靴も左右逆
鏡に映った自分を見て、どうしようもない様子に思わず苦笑いがこぼれる。なんだこの感じは。
ただこれは、「ぼくよりダメなやつがきた」と言うよりも「ぼくがダメなやつになる」という方が正確だろう。言葉の響きが印象的だったので取り上げたが、実は自力ではできない題名だ。他にできるものを探ってみよう。
ただこれは、「ぼくよりダメなやつがきた」と言うよりも「ぼくがダメなやつになる」という方が正確だろう。言葉の響きが印象的だったので取り上げたが、実は自力ではできない題名だ。他にできるものを探ってみよう。
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すでに実現していた未来
題名の響きだけでもすでに魅力的なものがあるドラえもん。例えばこれは、もうタイトルだけで十分おかしい。
41巻「時限バカ弾」
「時限爆弾」をもじったタイトル。字面だけでやばいにおいがプンプンしてくる。
原作での内容は、この「時限バカ弾」を仕掛けられた人は、時間が来てそれが爆発すると意志とは関係なくバカなことをしてしまうというもの。ただ、バカ弾を仕掛けられなくても、世の中には勝手にやってる人もいる。
原作での内容は、この「時限バカ弾」を仕掛けられた人は、時間が来てそれが爆発すると意志とは関係なくバカなことをしてしまうというもの。ただ、バカ弾を仕掛けられなくても、世の中には勝手にやってる人もいる。
じげーん…
バカだーん!
ちょっとおどけた写真に「時限バカ弾」とキャプションをつければ、なんだか楽しくなるような気がする。それはやはり、この題名が魅力的だからだろう。
よく考えれば当サイトは、仕掛けられるまでもなく勝手に時限バカ弾を炸裂させているようなところだとも思う。
よく考えれば当サイトは、仕掛けられるまでもなく勝手に時限バカ弾を炸裂させているようなところだとも思う。
カッチ、カッチ、カッチ、カッチ……
ドカーン!(こちらの記事より)
のび太よ、21世紀にはこういう仕事もあるのだ。未来はなかなかいいところだろう。
時限バカだーん!(こちらの記事より)
8巻「わらってくらそう」
これも精神面で頑張りさえすれば、なんとかなるタイプの題名だが、考えてみればすでに当サイトで実現させていた。「笑顔たやさず1日過ごす」という記事だ。
「時限バカ弾」も爆発してそう
これはやばい
とにかく一日中どんなことがあっても笑顔で居続けるという試み。「できることはできるけど、メンタルきついよ」ということがわかった次第だ。
33巻「ポスターに
なったのび太」
なったのび太」
こちらものび太的な発想を、パソコン使って個人レベルで実現できる世の中になっている。ライターの榎並さんが書いた「選挙ポスターだけ作りたい」という記事だ。
ぐいぐい迫る自分ポスター
貫禄あるなあ
ポスターが選挙用というところに、妙なリアリティがある。しっかりと選挙事務所ムードまで出しているのが大人の仕事だ。色がドラえもん風なのは、偶然の一致にしては面白い。
という風に、ドラえもんの題名は知らず知らずのうちに実現していた。この感じでもう一つ、題名を現実化してみよう。
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大人の協力でドラえもんの話を現実化
2巻「出さない手紙の
返事をもらう方法」
返事をもらう方法」
こちらはミステリーの題名にもなりそうなタイトル。原作では「返事先どりポスト」というひみつ道具が登場するが、これは道具なしでも実現できる。
「あ、ちょっとお願いがありまして…」
ドヤ顔まぶしい古賀さん(こちらの記事より)
電話の相手は編集部の古賀さん。「これこれこういうわけで、僕が出してない手紙の返事を出して欲しいんです」とお願いする。
私がどんな手紙を出したかという設定も古賀さんにおまかせすることにした。了解をいただいたので、あとはメールが届くのを待つだけだ。
私がどんな手紙を出したかという設定も古賀さんにおまかせすることにした。了解をいただいたので、あとはメールが届くのを待つだけだ。
イメージを補強するアイテム
この子からもらったことにしよう
現実の相手から架空の設定でメールをもらうに当たって、イマジネーションをできるだけリアルに広げたい。今回は、手元の素材集のモデルとなっている女の子からメールをもらったつもりになろう。
そして、翌日届いたメール。雰囲気を出すために、かわいい便箋で届いた風にして読んでみたい。
そして、翌日届いたメール。雰囲気を出すために、かわいい便箋で届いた風にして読んでみたい。
文字を女の子の手書き風フォントにして、背景をそれっぽくするだけで、自分で加工しているにも関わらずなんだかニヤニヤしてくるから男というのはバカだ。
「おーのさん!」
写真を挿入してニヤニヤを加速させたい。さて、どういう設定なのだろうか。
ラーメン?スープが濃すぎた?…まだ設定が読み切れないが、かわいい文字でピンクの便箋に綴られていることと、内容とのギャップにインパクトがある展開だ。
どうやら古賀さんと私とはバイト仲間らしいということがわかってきた。私がスープの濃さについて、古賀さんにアドバイスをしたらしい。あのときのスープについてずっと考えてたなんて、まじめな子なんだな…と、嘘っぱちであることを忘れて引き込まれる。
「バイト先に小野さんって人がいてね…」
この部分からすると、バイト先はラーメン屋ではなく、スーパーの一角によくあるフードコートのようなところらしい。古賀さんには知らせていないので全くの偶然だが、私にはそういうところでのバイト経験があるので、妙にリアリティが出てきた。
俺、ナイスプレー!
バイト先で古賀っちにちょっとシリアスなアドバイスをしたので、それをフォローするメールを私から送ったのに対しての返信、という設定らしいことがだんだん見えてきた。
バイト先で古賀っちにちょっとシリアスなアドバイスをしたので、それをフォローするメールを私から送ったのに対しての返信、という設定らしいことがだんだん見えてきた。
「あのときのスープ、危なかったな…」
意外なことに、私は古賀っちの後輩らしい。やきそばもたこ焼きも完璧、さらにはお好み焼まで見えてきたというマルチな活躍ぶり。かなりできる奴みたいだ。
架空の自分のできる奴っぷりに浸っていたが、ここでは現実の思い出に呼び起こされた。実際にフードコートでバイトをしていたとき、ソフトクリームを作ってお客さんに渡そうとした瞬間、アイス部分だけがボトッと下に落ちたことがあったのだ。
アイスの乗せ方が下手だったことが原因。もちろん作り直して渡したのだが、「できる後輩」という架空の設定が崩れそうになる。現実に負けるな、がんばれ空想。
アイスの乗せ方が下手だったことが原因。もちろん作り直して渡したのだが、「できる後輩」という架空の設定が崩れそうになる。現実に負けるな、がんばれ空想。
おっ、これは良くない。ここは「そんなこと、もうしちゃダメだよ!」と、このあと厳しく返信をする布石のように思えた。
そしてカップルに妬くということで、彼氏がいないということを暗に匂わせているようにも読める。虚構とわかっているのに、どんどんディティールが広がっていく。
そしてカップルに妬くということで、彼氏がいないということを暗に匂わせているようにも読める。虚構とわかっているのに、どんどんディティールが広がっていく。
「明日のシフト、小野さん一緒だったな」
嘘の俺、かっこいいなあ。よし、明日は炒めたやきそばにモヤシを入れるタイミングを一緒に確認しよう。
「小野さん…」
しかし、そんな都合のいい想像はいつまでも続くわけではない。全ての夢はいつか必ず覚める時が来るのだ。
急にビジネスライクになって現実に引き戻されるメールの末尾。「ご査収ください」なんて、落差がすごい。
それでも十分いい夢見させてもらったよ。どうだい、のび太。大人はいいだろ。ドラえもんがいなくたって、こんなに甘酸っぱい気持ちになれるんだぞ。フィクションだけどな。
それでも十分いい夢見させてもらったよ。どうだい、のび太。大人はいいだろ。ドラえもんがいなくたって、こんなに甘酸っぱい気持ちになれるんだぞ。フィクションだけどな。
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手軽に味わえるタイムマシン気分
続いてのドラえもんのタイトルはこれだ。
9巻「弟をつくろう」
これは自分の力ではどうにもできない題名。向かったのは両親のいる実家だ。
「えーと、お願いがあるんだけど…」
「…やっぱなんでもないわ!」
いやいやいやいや、これはあり得ない。そもそも私には2歳年下の弟がいるのだ。これは今から実現するまでもなく、すでに現実化していることだからよしとしよう。
2巻「ぼくの生まれた日」
これは、ママに叱られて激しく自己否定したのび太が、ドラえもんに促されてタイムマシンに乗って自分の生まれた日を見に行くという話だ。
現実世界にはタイムマシンがないので、実際に見に行くことはできない。しかし、話を聞いてその日を想像することはできる。
そういうわけで、母に「僕が生まれた日って、どんなだった?」と聞いてみた。数秒うなって返って答えは、「…よく覚えてないなあ」。
現実世界にはタイムマシンがないので、実際に見に行くことはできない。しかし、話を聞いてその日を想像することはできる。
そういうわけで、母に「僕が生まれた日って、どんなだった?」と聞いてみた。数秒うなって返って答えは、「…よく覚えてないなあ」。
呼び覚ませ記憶
そういうもんか!とずっこけたが、アルバムを引っ張り出してめくってみたら、だんだん記憶がよみがえってきたようだ。「そうそう、予定日過ぎても生まれてこなかったのよ、あんた」と母。
予定通りに行動するのが苦手なモラトリアム人間ということだろうか。それなら今の自分にもつながってくる。
予定通りに行動するのが苦手なモラトリアム人間ということだろうか。それなら今の自分にもつながってくる。
徐々に再生されるあの日
あははは…
「生まれてきたらきたで、なんだかぐったりしてたらしいのよ。だから特別室みたいなところに連れて行かれちゃって、その日は会えなかったんだわ」と話が続く。
やる気のない生まれ方をしてきたということだろうか。まあ現実にはそれなりに心配な状況だったようで、特別室では鼻やら口やらにチューブを突っ込まれていたらしい。その姿が母親にはショッキングだろうということで、病院側が姿を見させないようにしたようだ。
やる気のない生まれ方をしてきたということだろうか。まあ現実にはそれなりに心配な状況だったようで、特別室では鼻やら口やらにチューブを突っ込まれていたらしい。その姿が母親にはショッキングだろうということで、病院側が姿を見させないようにしたようだ。
そういうわけで、誕生数日後の写真
今は元気だけどな(こちらの記事より)
病院スタッフの間で「父親には見せておいていいだろう」的な打ち合わせをしたらしく、父は誕生当日の私を見たらしい。
「そうか、お母さんは見てなかったのか。確かにいっぱいチューブつながってたわ!」と父。
「そうか、お母さんは見てなかったのか。確かにいっぱいチューブつながってたわ!」と父。
「グターッとしてたわ、お前!」
だけど今は元気!(こちらの記事より)
それでも不思議と心配はしなかったという父。ちゃんと処置をされていたので、こいつは大丈夫と思ったらしい。
そしてその見通しは正しかったようだ。生まれたこのかた大きな病気などをすることもなく、現在もモリモリと私は生きている。
そしてその見通しは正しかったようだ。生まれたこのかた大きな病気などをすることもなく、現在もモリモリと私は生きている。
「2歳の頃、階段から転げ落ちたときは死んだかと思ったけどなー」
タイムマシンはなくても、十分それに乗ったような気分なれた。親でなくても誰かと思い出話に花を咲かせるとき、人は誰でも誰かと目には見えないタイムマシンを共有しているのかもしれない。
何か不満なのか、俺
ドラえもんの題名を自力で再現しようとした今回の試み。ひみつ道具がなくても、実現できることは意外とある。
他にもたくさんありそうな実現可能性のある題名。個人的には4巻の「してない貯金を使う法」や「スケスケ望遠鏡」あたりもなんとかならないかと思う。
他にもたくさんありそうな実現可能性のある題名。個人的には4巻の「してない貯金を使う法」や「スケスケ望遠鏡」あたりもなんとかならないかと思う。