特集 2012年3月21日

はんぺんフライ侮りがたし

この三角形、極めが強い。
この三角形、極めが強い。
これまでかき揚げとかメンチカツとか天かすとか、揚げ物界の中でもあまり注目されない無名戦士たちをちょこちょこ記事にしてきた。その後も充実の揚げ物ライフを過ごしてきたのだけど…さらに表舞台になかなか上がる事がないヤツの存在に気づいた。その名は「はんぺんフライ」!
1972年佐賀県生まれのオトナ向け仕事多数のフリーライター。世間の埋もれた在野武将的スゴ玉の話を聞くのが大好き。何事もほどほどに浅く広く、がモットー。

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フライとしての格は残念な位置かもしれない

相撲の横綱大関小結、落語の真打二つ目前座のような「格」というのが揚げ物界にもある…ような気がする。やはりトンカツやエビフライあたりがメインイベンターであることは非の打ち所がないだろう。そんな序列を考えてみると、いわゆる「○○丼」「○○フライ定食」という名前で勝負出来ない揚げ物は格下感がどこかある。アジフライは中堅だが、イカフライは若干下。オニオンフライは論外だ。(ファンの人すまん!美味しいけどオニオンフライ丼とかヤでしょ?)

そう考えると「はんぺんフライ」の位置はどこだ。「はんぺんフライ丼」「はんぺんフライ定食」なんて見たことがない。基本居酒屋メニューだもんなあ。正直、今回あらためて売ってる店探すの大変だったもの。一部の漁港を除いては看板メニューにしてる店なんかない。
1.マルサン(上板橋)
とりあえず自分ちから比較的近場にあるいろんな揚げ物を取り扱ってる肉屋さんに来てみた。上板橋のマルサンだ。「当店のハムカツがタモリ倶楽部に出ました!」という張り紙が何カ所かあるのを見ても、並の揚げ物屋でないのが分かるだろう。
オレンジ色がテンションを揚げる。いや上げる。
オレンジ色がテンションを揚げる。いや上げる。
でも今日は和牛はおいといて。
でも今日は和牛はおいといて。
充実のフライコーナー。
充実のフライコーナー。
横綱・えびフライに追いつめられるように…。
横綱・えびフライに追いつめられるように…。
オレンジの光が差すフライコーナー。その二列になって並んでる様子は、どこかサウナに座ってるにこやかなおっさんたちのようだ。その列の隅にありましたよ、はんぺんフライ!ここのはチーズはんぺんですが。

チーズ入ってようとなかろうとこの三角形!これこそがはんぺんフライの証。まさにゴールデン・トライアングル!海の麻薬!どうせならしょうゆやソースかけて食べたい所ですが、ここはもう外で食べちゃう。
このゆるやかなエッジこそがはんぺんフライ。
このゆるやかなエッジこそがはんぺんフライ。
しょうゆもつけずに駅前でぱくり。
しょうゆもつけずに駅前でぱくり。
中からチーズがとろ~りとろり。
中からチーズがとろ~りとろり。
最初の一口をかみ切ってみると、はんぺんの柔らかさと濃厚なチーズのツープラトンに心うたれるなあ。チーズとはんぺんの境目があまりなく、「はんぺんとチーズ」というより「はんぺんぽいチーズ」を食べてるよう。それだけに上品なんだよね。

しょうゆやソースをつけたら、調味料がにじんだはんぺん部分の味もはっきりわかるはずだけども。だがこれはこれで良し!
牛さんも豚さんも笑顔。鶏はちょっと真顔。
牛さんも豚さんも笑顔。鶏はちょっと真顔。
2.ふくろ(池袋)
さて単品をつまむのもいいけれど、やはりサケメシの場での実力を計ってみたい。メニューにあるときいてやってきたのが池袋の「ふくろ」。朝7時から営業と、池袋の早朝派ドランカーにとって頼りになる店だ。
池袋西口公園前。IWGPてのもずいぶん昔ですね。
池袋西口公園前。IWGPてのもずいぶん昔ですね。
あった、はんぺんフライ!
あった、はんぺんフライ!
いかにも居酒屋な盛りつけ加減。
いかにも居酒屋な盛りつけ加減。
しょうゆでもソースでもよし。
しょうゆでもソースでもよし。
かぶりついてみると…あ、これもチーズはんぺんだ。しかしさっきのに比べるとはんぺんとソースの連合軍とチーズがバトってる感じがとてもいい!やっぱはんぺん単体だとフライの油やチーズに負けちゃうんだよなあ。

と、ここまで食ってきてわかったぞ。はんぺんフライがメインイベンタークラスに立てないのは「ごはんと合わない」からだ。丼や定食にはならないよなあ。あくまでおつまみ。それが彼の立ち位置だ。アルコールなら何でも立ち向かえそうだけど。酒のポリスマン的揚げ物!
そんなはんぺん考はおいといて平日紳士たちは談笑。
そんなはんぺん考はおいといて平日紳士たちは談笑。
ただ、はんぺんフライを当たり前のように皆知ってるもののように書いてるけども大丈夫だろうか?というのも、はんぺん自体が全国区かというとなかなか微妙だからだ。自分も実は子供のころそんな食べた記憶がない。

wikipediaを見ても「元々は関東周辺のみで食されていた地域色の強い食品であったが、戦後になって東京の紀文食品が紀文のはんぺんとして全国的に販売するようになって以降は、この白いはんぺんがはんぺんとして定着した」とある。

九州生まれの自分としては、練り物といえば天ぷらだもんなあ。さつま揚げ系というか、丸天とかの天ぷらですね。しかしそれももう今はコンビニのおでんのはんぺんのおかげで全国化してるかもしれませんが。
九州の物産展とかに行くと
九州の物産展とかに行くと
売ってあるこれこれ。
売ってあるこれこれ。
そういえばちょうど今ごろなぜか九州の物産展があちこち行われていて、上写真は新宿高島屋の「大九州展」。ここからさほど離れてない新宿京王百貨店でも「大九州展」をやっていた。どっちか名前変えればいいのに…。
新宿の東西で大九州バトルが。
新宿の東西で大九州バトルが。
そこで気になる、というかなつかしいものを見かけた。おー、ある意味で自分にとってはんぺんフライのルーツ!のような気がするアレ!
番外編 魚ロッケ
(ふじ川蒲鉾本店)
佐賀県唐津のふじ川蒲鉾本店にあった
佐賀県唐津のふじ川蒲鉾本店にあった
このフライっぽいもの。その名も…
このフライっぽいもの。その名も…
魚ロッケ!佐賀・大分あたりでポピュラーだそう。
魚ロッケ!佐賀・大分あたりでポピュラーだそう。
ちょっと醤油をびちゃっとかけるくらいがうまい。
ちょっと醤油をびちゃっとかけるくらいがうまい。
この魚ロッケ、ふじ川蒲鉾本店の登録商標なので商品名はいろいろあるらしいのですが、佐賀県出身の自分には比較的なじみのあるネーミング。魚のすり身に野菜などを混ぜ揚げたというはんぺんフライとはちょっと違うものだけど、自分の中のルーツとしてこれがあるのだよな。
3.かぶら屋(池袋)
もういっちょ居酒屋ではんぺんフライを。池袋中心のチェーン店「かぶら屋」で頼んだら…丸い!はんぺん界のコペルニクス展開か、地球もはんぺんも丸かった!
こう見るとコロッケにしか見えませんね。
こう見るとコロッケにしか見えませんね。
割ると、黒というか灰色のはんぺん!
割ると、黒というか灰色のはんぺん!
こちらは静岡を中心に食べられている「黒はんぺん」。はんぺんに比べると「魚の練り物」感がしっかりしてます。さっきのさつま揚げ・丸天系の練り物に近いですね。

ちなみにかぶら屋はフライと焼き・おでんと3タイプの黒はんぺんが食べれます。マクロスのバルキリーばりのフォームチェンジ。
充実のラインナップ。
充実のラインナップ。
池袋にいっぱいあります。
池袋にいっぱいあります。
しかし今回たまたま調べて出てきたのがそうだったのだけど、池袋界隈が多いなあ。埼玉の味なのか。そんなはずはない…はず。地方出身者が喜ぶ味の可能性はあるけども。

「ご飯に合わない」、そして「魚ロッケとか黒はんぺんとか全国的にまだ分裂気味」という理由がぼんやり見えたところで今後メジャーへのクラスアップの可能性が失われてきたような気がするはんぺんフライ。まず練り物界の天下統一を狙うべきなのか?いやチーズの替わりになんか別のものを入れれば…。まだまだ可能性があるはんぺんフライを今後も応援します!

家でふたたびチーズはんぺんフライ。
家でふたたびチーズはんぺんフライ。

揚げ物審議会を結成したい。そして総見を。

はんぺんフライよりマイナーな揚げ物って何だろうなあ。オニオンフライの「付け合わせ」的ポジションも残念なところではあるけども。フライではないけど「鳥天」は知名度は低くてもいつ何時アップセットがあってもおかしくない存在(と、思っている)。いずれ相撲の番付表みたいな揚げ物ランキングを作ってみたいものです。
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