もっとガーリー風味になるかと期待していたが。
そろばんを製作する過程をテレビで垣間見た。寸分の狂いもなく珠を削り、部品を組み上げていく。美しかった。
自分もそろばん、作ってみたい。うちに大量にあるビーズで、できそうじゃないか?というわけでやってみたのだが・・・。
珠っぽいなって思ってました
小学校の頃はそろばん塾に通っていたのだが、マイそろばんはもうどこにあるかわからない。そこで小さい廉価版のを買ってきた。そろばんの構造を見るためである。意外と、実際に見てみないとわからない部分って多いもんだ。
千円しなかった。しかし9桁だ。
うーん。そろばんは準2級までは昇級したはずなのだが、もうすっかりやり方を忘れた。足し算のやり方もおぼつかない。例えば「7+8」を計算してみるに、いったん頭の中で15と答えを出してから珠をはじいてしまったが、それじゃ意味ないじゃないか。
そろばんの機能にフォーカスするとボロが出るので、これ以上は止めにして、ビーズをかき集めてみた。
使ってないビーズ。趣味に熱しやすく冷めやすいせいで、こういうことになる。
そろばんの珠みたいな、クリスタルビーズ!
ほら。ビーズの種類に、そろばんの珠っぽいのがたまにあるだろう。あれを使って、一度そろばんを作ってみたかった。今日が、その日だ。
問題は製作工程が闇の中なのと、串(芯かな?)のサイズ、合うのがあるかどうか。手探りで進む。
割と固い造花用ワイヤーがあったのでこれを使おう。
もっと大きな問題は、枠を何で作るかだ。木枠をきっちり作るのは大変だ。じゃあ割り箸にしてみよう。それはそれで、太さが一定でないので削ったりして大変だけども。
割り箸を加工しているうち、妙な気分になってきた。私は何をやってるんだ。
ミニノコで切ったり・・・
カンナ代わりの彫刻刀で削ったり・・・
ピンバイスで串のささる位置に穴を開けたり。
生きておれば誰しも「オレはいったい何をやってるんだ」とハタと思い返すときがあるだろう。本来の希望でない職種に就いたり、好きな子に冷たくしてしまったり。
私は今そろばんを作っていることは確かなのだが、家で寝食も忘れ、おおいったい何やってるのだ。
そう、寝食を忘れるくらい、手間がすごくかかってしまったのだ。もし工作カルタがあるとしたら、「み」はこうだ。「見るのと作るの大違い」。
はりの部分(五だまと一だまの間の仕切り)は、アイスの棒がちょうどいい。やったね!
串を刺すのは、はりが先か枠が先か悩む。
結局こういうリハビリみたいな感じに。
十数本の串に一度に板を嵌め込むのが、地味にとてもとても大変でした。
半日つぶして、割り箸レインボークリスタルビーズミニそろばんができた。
割とそれっぽい。割り箸だけに。
狙いでは他に「そろばんをデコるんじゃなくて、そろばんの珠自体がビーズだったらさぞやギャルっぽくなるんべぇよ」というもくろみがあったことはあったのだが、そのかっちりしたフォルム、整然と並んだ珠のせいか、まったくキャピッてる様子がない。
かといって、ちゃんと仕事をしてくれるかとなると、実に怪しい。
なぜかというと数がとてもわかりにくいからだ。それ以前に操作性も悪い。
操作性のことはまあいい。とにかくビーズでそろばんを作れた気がするので、他にもどんどん作ってみよう。
ちいせー!って言ってみたかっただけ
一番小さい、3mm径のビーズで作ったら、ドールの使うそろばんみたいになるかしら。ずいぶん辛気臭いドールだけど。
今度は、もっと加工しやすくスチレンボードで枠を作る。
ちっちぇー。
小さくて測るのが面倒なので、作りながら長さを決めていった。
手元でやってる作業があまりにわかりづらいので、キーッ!となる。
この辺、前頁と同じような作業が続くので、そろばんにまつわる話でもしよう。
***
くだんのそろばん塾で、できた課題を先生に見せるため順番の列に並んでいたら、ドタドタドターッという音とともに天井板が降ってきて私の頭を直撃した。が、続いて天井裏からそこんちの飼い猫が落ちてきて、どっかへ逃げてったので、みんな猫のほうばかり話題にし、私の頭のことはまったく話題にならなかった。
こうして前回のように立ててみたが、小さすぎて入れるのが大変なので…
団子屋方式に変更。挿しては立て挿しては立ての繰り返し。
はみ出た串を切り取る。髭剃りのCMのようだ。自分が3枚刃になった気分で。
私の頭にも当たったの!天井板が!と主張するほどまだ社会性がなかったので、そのまま涙を飲んだ。
***
さて、枠を黒く塗って仕上げたら、それっぽい感じになった気がする。
かっちりしてるように見えるが、はりなどフニャフニャである。
「願いましてはー」でジャーッと横にひくと、たぶん丸ごと崩壊する。
そして見にくいこと。
スチレンボードはでかい塊のときはまだ張りがあるけど、このサイズだとやわやわである。当たり前ですな。
まだまだ行くぞー。今度は、そろばん珠とは全く違うビーズで作ってみよう。
やんごとなきそろばん
住まいの断熱材などに使われるスタイロフォーム、これのほうが丈夫で扱いやすく、枠には適しているかと思い、採用してみた。
スチロール用カッターでさくさく枠を切り出す。
枠はパールカラーで塗る。
パールのそろばん。人魚が使っていそうな気がしてしょうがない。
だが数は、もう何がなんだか。まぶしっ!
パール好きにはたまらないそろばんだろうが、いかんせん操作性が悪い。使い勝手を捨ててでも、上品なオシャレを楽しみたい、というご婦人にはいいかもしれない。あるいはミ○モトが経理で使ってるんだよこれ、という伝説を勝手に作ってもいい。しかし微妙な作りだ。
こうなったら行くところまでいこうじゃないか。混沌を経て、透明な悟りの境地へ。
透明アクリル板から枠を切り出す。
アクリルの加工は手ごわい。電動ドリルでひたすら穴あけ。
汚れだらけの作業台で、穢れ無き透明のそろばんを組む。
あてずっぽうのそろばん作りにはだいぶ慣れてはきたが、それでも5時間くらいかかって(どこにそんなにかかったのか)ようやく仕上がった、透明クリスタルそろばんだ。
そろばんのオバケ、幽霊か。おわかりいただけただろうか。
うわー予想通りだが、全然数がわからない。勘定にあまりこだわらない、鷹揚な方向けのそろばんであろう。
変なもの作ったつもりだったが、そんなでもなかった。
やっぱり、そろばんの構造やあの珠の形には意味があるのだ、と改めて実感した。そしてこの様式美。パールだろうがクリスタルだろうが、この様式を踏襲すればそれはもうそろばんに落ち着いてしまう。そろばんの手のひらの上で踊らされたような気分だ。