特集 2011年12月23日

食べ放題の極意

人は食べ放題を通じて多くのことを学び取る。
人は食べ放題を通じて多くのことを学び取る。
食べ放題の店に行くと、つい興奮して本来の自分を見失い、満足の行く食べ方ができなくなってしまう。そんな経験はないだろうか?

私は何度もある。心が浮ついてひとつひとつの料理をちゃんと味わえなかったり、 本当に食べたいものに辿り着いた時には既に満腹になってたり、ふと気がつくとテーブルの上にカレーと焼き魚とパンが並んでいたり…。

しかしそんな失敗を何度も繰り返すうちに、“食べ放題でうまくやるための暗黙のルール”みたいなものができてきた。

聞いてみると意外と皆、心の中に食べ放題のルールを持っている。それはどれも参考になるものばかりで、まさに“食べ放題の極意”というべきものだった。
長崎より九州のローカルネタを中心にリポートしてます。1971年生まれ。茨城県つくば市出身。2001年より長崎在住。ベルマークを捨てると罵声を浴びせられるという大変厳しい家庭環境で暮らしています。

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食べ放題と私

私にとって人生最初の食べ放題は、シェーキーズのピザ食べ放題だった。もうかれこれ25年以上前の話だが、当時私の周りでは「食べ放題=(イコール)シェーキーズ」というくらい定着していた。

そしてシェーキーズに行くと毎回必ず、

「せっかく食べ放題なんだからとにかくたくさん食え!」

と皆死にもの狂いで食べ、最後は腹が痛くなりもだえ苦しんでいた。

中には、

「最低12枚は食べないと損するぞ!」

という理論を打ち出す者もいて、今考えると何を根拠にそう言ったのかサッパリわからないが、私もその影響を受け、どんなに満腹でも12枚食べるまでは頑張って食べ続けた。食べ放題とは苦しみを伴うものだった。

やがて最初の教訓を得た。
食べ放題だからといってムキになって食べる必要はない。
もっとも、この教訓を得たのはそれからだいぶ経ってからのことだったが。
思い出のシェーキーズ
思い出のシェーキーズ

近年における大失敗

現在私が住んでいるここ長崎では、地元産の食材を使った自然食バイキングが流行っており、どんどん新しい店ができている。

そこで最近記憶に残ってる失敗といえば、おにぎりを6個皿に取ってしまったこと。しかも店に入るやいなや、いきなりだ。

かなりの空腹状態だったため、腹にがっつり溜まるものを欲していたのだ。しかし結局、それだけでほぼお腹いっぱいになってしまい、私は1000円以上払っておにぎりを食べに来たことになった。

そして教訓を得た。
空腹だからといって、初手に腹にたまるものを取ってはならない。
地元の食材を使った自然食バイキングが流行っている。
地元の食材を使った自然食バイキングが流行っている。
そういえば私の姉が、かつてこんなことを言っていた。
食べ放題では最初に全種類をちょっとずつ食べてみて、その中からおいしかったものをリピートする。
たしかに、ビジュアル的にうまそうだと思って大量に取ったものがイマイチだったことは意外とあるので、 これは実用的と言えるだろう。

いや、それより、姉もやっぱり食べ放題のコツとか考えてるんだなぁ。みんな考えてるんだ、とこの時思った。

というわけで、人それぞれが持っている
「食べ放題ではこうすべき」
「こうしてはいけない」
といった掟(ルール)をいろいろな人に聞いてみた。

その1:うちの子供たち

まずは身近なところで、うちの子供たちに聞いた。

小学2年の娘:
できるだけお腹を空かしておいて、たくさん食べる。
うむ。
小学生らしい、自分の気持ちにまっすぐな答えだ。が、それはこれから食べ放題道で最初に学ぶ「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」という論語の一節を思い知ることになるだろう。

これに対して4歳の弟はというと、

4歳の男:
肉をたくさん食う。
ぬぬ。これはある意味、食べ放題における極意のひとつかもしれない。(ほとんどの場合、肉が最も高い食材だから)

おそらく本人は、肉食恐竜が好きでそう言ったものと思われるが。
実際のところ、食べ放題の店では子供は麺類をよく食べている。
実際のところ、食べ放題の店では子供は麺類をよく食べている。

その2:大食い四天王・その1

今度は大人の男性に聞いてみた。私の周辺で大食い四天王の一人と呼ばれているK・Kさん。九州各地の大盛店を渡り歩いてはすべて食べ尽くしている剛の者だ。
初めての店でははしゃぎすぎて飛ばさないように心がける。行き慣れた店では鉄板メニューを中心に。
「自分は嫌いな食べ物(酢の物や漬物、珍味等)以外は全種類試したい。だから、まず1皿目は自分の食べたいと思うものを少しずつ取る。見て美味しそうなものは大体直感でわかるが、初めての店でははしゃぎすぎて飛ばさないように心がける。行き慣れた店は、鉄板のメニュー中心に目新しいものへ移る。」

ここで言う「鉄板メニュー」とは、焼き肉やお好み焼きのことではなく、手堅く間違いなく美味しいメニューという意味だろう。

行き慣れた店を作るのは大きな意味があると私も思う。いたずらにテンションが上がることがないし、どういうメニューがあってどれが美味しいかわかるので、食べ放題で成功するための最も確かな道だと思う。
初めての店ではテンションが上がりすぎて我を忘れがち。
初めての店ではテンションが上がりすぎて我を忘れがち。
序盤の炭水化物は一口程度。意外とそれで欲求は落ち着く。
「最初からカレーやピラフ、うどん等の重いものは食べない。米、麺の炭水化物は胃にたまるので。どうしても食べたい時は、一口程度。意外とそれで欲求は落ち着く。」

大食いの人でも、やはり腹にたまるものはおさえながら入っていくようだ。どうしても食べたい時は一口だけ食べるというあたりに、欲望を抑えることへの重要性が感じられる。
キレイに盛って楽しくバランスよく食べる。
「食べ放題だからといって、皿に無節操に盛るのは美しくない。カフェのワンプレートディッシュを色々おかわりする形で、キレイに盛って楽しく食べる。バランスよく食べることは絶対守っている。」
時間制限はあまり関係ない。
「90分あればデザートや食後の珈琲まで十分いける。」
状況に応じてギアを切り替える。
「食事をする時は、味わって食べる通常モードとたくさん食べる加速モードがある。気持ちのスイッチのようなもの。いつも最初は通常モードだけど、食べ始めて『おいしい!』と感じたり『これは量が多いな』と思ったらスイッチを切り替える。」

この機能は私のような一般人にはついてないようだ。
!
また、好きな店の基準、食べ放題の意義などについてもコメント頂いた。

「食べ放題が好きでたまらないというより、何が食べたいか決まらない時や単純に今日はたくさん食べたいと思うときに行く。そして、少食の人と食べに出かけても、相手のペースに気にしなくていいのがいい。ワリカンの食事会の時はそういうことに気を使うので…。

お気に入りの食べ放題は、船番所佐賀のゆめタウン。ポイントは全体の料理のバランス(揚・煮・焼・蒸・生・デザート・飲み物)が取れているのと、新しくて温かい料理を気がけているのと、清潔感があるから。」

船番所は私も一度行ったことがあるが、寿司に刺身、茶碗蒸しにケーキまであって、ものすごくテンション上がった。
長崎は西海市にある船番所にて、高まるテンションの中で私が取った初手の一皿。(これに点数付ける競技がそのうちできそう)
長崎は西海市にある船番所にて、高まるテンションの中で私が取った初手の一皿。(これに点数付ける競技がそのうちできそう)

その3:大食い四天王・その2

大食いの人にもう一人、やはり私の周辺で大食い四天王の一人と呼ばれている、ひむろさんという女性のかたに聞いた。

女性で大食いとはこれいかに?と思うかもしれないので説得力抜群の写真をば。
仲間うちで「四天王」と呼ばれてます。
仲間うちで「四天王」と呼ばれてます。
上の写真は、かつて私が6800円の巨大パフェを食べたハワイというお店で、さらに巨大なパフェを食べに行った時の一枚。10人がかりくらいで食べていたが、あまりの巨大さに終盤持て余していたところを、途中から来た彼女がブルドーザーのごとき勢いで飲み干した。
食べる前のパフェ。完全に山。
食べる前のパフェ。完全に山。
という、めちゃめちゃ食う人にとっての食べ放題の極意はいかなるものか?と思い聞いてみた。
全種類制覇の方向で動く
「できるだけ全種類制覇の方向で動きます。なので、少しずつ・種類を沢山…のはずなのに、気がついたら美味しかったものをリピートしてます。あと炭水化物大好きなので、お米ものは絶対に外しません。デザートも全種類行きます。って、ただの体験談ですね。但し、取ってきた物は絶対残しません。」

私の姉も「一通り味見してみる」と言っていたが、こちらは「制覇」という言葉から、やや別の意味が感じ取れる。

食べ放題には私も何度も行ってるが、すべての種類を食べようと思ったことは無かったのである意味新鮮だ。

その4:小野法師丸さん

最後に、当サイトのライター陣の中でも特に食べ放題好きな小野法師丸さんに聞いてみた。
野菜をたくさん食べてそうなオーラを放つ小野法師丸さん
野菜をたくさん食べてそうなオーラを放つ小野法師丸さん
小野さんは「一日三食ソーセージ食べ放題」、「葛藤!オシャレ食べ放題」、「あんまり聞いたことない食べ放題めぐり」など、食べ放題の記事をいくつも書いている。

そんな小野さんにメールを送ってみたところ、
こんばんは。バイキング小野です。
という返事が来て驚いた。いつからそういう名前になったんだろうか?

さらにその次のメールでは
こんばんは。バイキングです。
と、もはや小野とすら名乗らなくなっていてさらに驚かされた。

以下、小野さん(バイキングさん)からのメールより。
まず、全貌を知る
いきなり壮大なスケールの物語みたいなお言葉。これには以下のような説明が添えられていた。

「焦って何の考えもなしに取るのではなく、まず食べ放題にどんなものがあるか、全体像を落ち着いて把握してから食べるようにしています。適当に食べるより、流れを考えながら食べるほうが頭も使えて楽しいと思います。」

なるほど。。
鋭いまなざしで店内を見渡してから、ゆっくりと皿を手に取る小野さんの姿が浮かんでくるようだ。
ビュッフェ台が視野に入るようにして座る
「料理の補充や新メニューの登場など、ビュッフェ台は刻々と変化します。背を向けて座るとすぐ対応できないので、台が見える位置や向きに座るようにしています。」

ゴルゴ13にも同じようなことが書いてあった!
おいしそうに盛り付ける
「皿に余裕を持って、おいしそうに見えるようにして盛り付けるようにしています。おいしそうに見えると、実際においしく感じると思います。」
(ちゃんとした店では)皿はどんどん換える
「一度使った皿は二度使わないというのが本式のバイキングのルールだそうです(衛生面での意味もあるようです)。店によってルールは違うと思いますが、ある程度以上の格の店では使った皿はテーブルに置いておき、新しい皿を使う方がよさそうです。実際、そういう店では店員の方から皿をどんどん下げて行く場合が多いと思います。」
食べ放題というフリーダムそのものを楽しむ
「バイキングは、小さな自由の国だと思います。たくさん食べようとか元を取ろうとか考えて食べ過ぎると、結局あとから後悔するので、いつからかそういうことはあまり考えなくなりました。」
小野さんに連れてってもらったタコスの食べ放題。
小野さんに連れてってもらったタコスの食べ放題。
さ、さすがは自らをバイキングと名乗るだけあり、むちゃくちゃ参考になる極意のオンパレード!

まるでバイキングの国からやって来た伝道師のような、ワンランク上の極意だ。

宝クジなどでいきなり大金を手にした人が人生を踏み誤るという話がある。通常、限りがあるもの(=お金、食べ物)の制限がなくなった時。そういう時こそ、自らを律し、行き過ぎない範囲で状況を楽しむルール作りが大切だ。ということが、食べ放題を通じてよくわかる。

年末ジャンボくじを買った人は、当たる前によく食べ放題に行ってシミュレーションした方がいいだろう。

最後に私もひとつ極意、というか心に思っていることを書いておきたい。それはズバリ、

味噌汁を飲んだ方がいい

たくさんの食べ物が並んでいると、どうしても肉系や揚げ物系といった派手なものに目を奪われ、ややもするとスルーしがちだが、意外と味噌汁がうまい店が多い。ということに気づいた。そのことに気づいてから、私は欠かさず味噌汁を飲むようにしている。
濃い味噌汁が大好き。(でも家では薄味)
濃い味噌汁が大好き。(でも家では薄味)
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