首都高を簡単に説明。
首都高速自動車道、略して「首都高」は、皇居を中心に、環状および放射状に走る。
放射線と、2つの環状線からできている。(図はきわめて簡略化しております)
環状線内にあるPAをすべて一度に巡ります。
この首都高に点在するPA(パーキングエリア)を、高速から降りずに一巡するのが今回の目的だ。
一筆書きと言っても、何度か同じ道を通ったり、環状線の外のPAは巡れなかったりするけど、勘弁してほしい。
芝浦PA。レインボーブリッジのたもと。
加平PA。一番愛用しているPA。
実用道路である首都高の間隙をぬって作られた、無機質のオアシス、うらぶれた空間。
逆説的だが、都会の中にいて唯一、都会の喧噪を忘れられる場所だ
ジャンクションの分岐まで精密に事前調査。
地図を見て計画をねりねり(やや古)
ところで首都高と言えば、分岐と合流がめまぐるしく続く恐怖の難関道路としても有名だ。
僕も正直、よく分からんところがいっぱいあるので、地図を見ながら経路を厳密に計画し旅に出た。
1.はじめの一歩 八潮PA
2.サンシャイン60目指して 南池袋PA
3.オシャレ☆オシャレ 代々木PA
4.めちゃくちゃ細長っ! 平和島下りPA
5.ヘアピンカーブの先に 大師PA
6.神の曲線美 大黒PA
7.イッツオンリートイレ 大井PA
8.夜景MAX 辰巳第一PA
9.悪魔の迷宮 箱崎PA
10.レインボーブリッジのたもと 芝浦PA
11.首都高最小のPA 駒形PA
12.フィナーレの地 加平PA
料金所のあと、すばやく左にそれる!
1.はじめの一歩 八潮PA
立ち寄り難易度★★★★☆
第一のパーキングはここ、八潮PA。
八潮料金所の真隣にあるので、立ち寄るには料金所の前から決心して、全力で車線変更しておく必要があり、意外と難易度の高いパーキングである。
すり鉢の底に向かうように降りていく。
ここの城壁的な商品陳列は伝統。
ここの特徴は、セブンイレブンがあることだ。
なぜかいつ行っても城壁のように商品が陳列されている。
以前はタバコが正面に城壁をなしていたが、今はドリンクが城壁をなしている。
メニューが全品840円、というわけではなく、ただのダジャレ。
やしおラーメン500円
しょう油ラーメン、味噌ラーメンに並んで、「やしおラーメン」というメニューがあったので、「なるほど、これもうまいダジャレ!」と思い、注文してみたら……
えっ……
出てきたのは、見事なしょうゆラーメンだった。
なぜだ。
冬の中央環状線は、極めて美しい道路です。
2.サンシャイン60目指して 南池袋PA
立ち寄り難易度★★☆☆☆
団地の明かりが煌めく中央環状線を一気に駆け抜け、サンシャイン60の威容が見えてきたら、次のPAは近い。南池袋PAだ。
「ウナギの寝床」みたいな駐車場に、自販機&トイレ。首都高PAの基本パターンと言えるだろう。
ここには小さい屋内休憩所もあるので、自販機でコーヒーを買って休む
ささやかな屋内スペースでコーヒー。これが首都高PAでの理想のたたずまい。
ここのPAに怖い思い出がある。
以前、おしっこ漏れそうになってここに寄ったら、「●龍会」と書かれたバスが停まっており、トイレにはそれ系の兄さんたちがぞろぞろと「権力順」に行列をなしていて、おしっこどころではなくなった。
あれ以来、人間、怖いものに直面すると、漏れそうになるのではなく、完全に出なくなるということを知った。
次に目指すは代々木PAである。
ここからUターンはできないので、一度都心環状線に出てから、大きく回って入る。
ビルの見た目が、かなりいい感じ。
番外・かっこいい!大橋ジャンクション
ぐるぐる度★★★★★
都心環状線を抜け、渋谷を過ぎると、こんな看板が見えてくる。
何?このぐるぐる??
道路が急カーブを描き、鋭く地中に切り込んでいく。
地中に向けてまさにぎゅんぎゅんと旋回し、切り進んでいく。
この超すごいジャンクションに関しては、工事中から完成まで、当サイトの大山顕さんが日本一詳しい追跡記事をたっぷり書いているので、ぜひぜひ読んでおくべきだ。
そして僕らは、トンネルを抜け、代々木PAへ向かう。
西新宿JCT。まっすぐさがかっこいい。
痛恨のミス! 一筆書きの夢、絶える。
トンネルを出たあと、新宿のギラギラ光る街並みに突っこむはずなのに、なぜか光が背後に遠ざかっていく。
どう見ても新宿じゃない夜景。車が西へ向かっている!?
高井戸とか、永福とか、新宿の西側の地名が看板に書かれている。
どうやら逆方向に来てしまったっぽい。
より大きな地図で 永福 を表示
なぜ??? ちゃんと看板を見落とさずにここまで来たのに……。
そのまま行くと、僕は中央自動車道に乗り、長野へスキーに行くことになってしまう。これはまずい。
あきらめて首都高から降り、落ち着いて地図を見返した。
より大きな地図で 西新宿JCT を表示
青が実際に来た道。赤が行こうとしていたイメージ。
どうやら、僕が行きたかった右方向へは、そもそも行ける道が無かったようなのである。
不覚!
綿密に計画を立てたつもりだったが、ここは当然行けると思い、検討していなかった……。
どうしよう……。
だがここであきらめても何にもならない。一筆描きが二筆描きになってしまうけど、しょうがない。
一般道でUターンして、もう一度高速に乗った。
3.オシャレ☆オシャレ 代々木PA
立ち寄り難易度★☆☆☆☆
代々木PAは首都高PAの中でも、もっとも美麗なPAだ。
駐車場も広いし、2階にはドトールコーヒーとレストランが入っている。
レストラン、きれいすぎ。
窓からの景色、やばすぎ。
首都高PAなのにこんなにきれいだと、逆に落ち着かない。
民宿に泊まったのに、案内された部屋が間接照明と薄型テレビだったみたいな状態だ。
次のPAへと足早に向かおう。
4.めちゃくちゃ細長っ! 平和島下りPA
立ち寄り難易度★★★☆☆
道は一気にオシャレ地帯から、荒々しい湾岸方面に向かう。
いわゆる東京の工業地域、「京浜工業地帯」のど真ん中へと突っ込んでいく。
平和島下りPAはそんな極めて生活臭の薄い工業地区のど真ん中にある。
400mのタイムが測れるんじゃないかというぐらい、極端に細長いPAだ。
自販機コーナーも細長い。
売っているおむすびは丸い。
ここでおにぎりとか食べるの、最高です。
未来都市のような無機質感が特徴とも言える首都高PAの中でも、ここはきわめてソリッド感が高い。
大変お気に入りなのだが、あまりなごんでいると夜が明けてしまうので、手早く次のPAに向かうことにする。
5.ヘアピンカーブの先に 大師PA
立ち寄り難易度★★★★☆
大師PAも、事前に覚悟を決めておかないと入り損なうPAだ。
首都高神奈川線の料金所の真横を、鋭くUターンしないと入れない。
意味も無く写りこみます。イエイ。
料金所を通る車が次々と間近で見られて、乗りシュト(乗りテツの首都高版)としては、たまらなく萌える。減速するトラック。上下するETCバー。そして静寂。
しかし、あまり長々うっとりして読者を置いてけぼりにするのも良くないので、やはりさっさと次のPAに向かう。
次は、日本中の誰もが知っている、PA界のスーパースター、大黒PAです。
6.神の曲線美 大黒PA
立ち寄り難易度★☆☆☆☆
神の被造物としか思えないほど複雑に絡み合ったジャンクションを降りて行った先に、大黒PAはある。
何重にも弧を描いて絡み合う道路。
大黒ジャンクションの構造は、人はもはや神になったのではないかと思わせてくれる。
週末になると関東全域から改造車が集まることで有名になった時期もあったが、今はその傾向もだいぶ落ち着き、平和にジャンクションを鑑賞することができる。
昼には昼の、夜には夜の良さがあり、何時間いても飽きることの無い素晴らしいPAだ。
ここで踵を返し、また東京方面に戻る。
煙突からの、かっこいい煙。
7.イッツオンリートイレ 大井PA
立ち寄り難易度★★★☆☆
ここのPAには、屋内休憩所が無い。
あるのはトイレだけだ。
首都高ではまあまあ見られる構造である。
そしてこのトイレオンリーのPAに、ワビサビを感じ始めたら、いよいよ首都高PA好きも末期に達していると言える。
画面左にバイクの若者の集団がいて、いよいよ深夜の湾岸らしい。
そしてこの先、ちょっとややこしい技を使いながら、湾岸のPAを制覇していくことになる。
8.夜景MAX 辰巳第一PA
立ち寄り難易度★★★☆☆
大井から湾岸線を駆け抜け、辰巳第一PAに向かう。ここはいわゆる湾岸線という道路で、走り屋の表舞台的な場所だ。
実際この日も、ものすごい勢いで数台のポルシェか何だか良く分からない車が僕を抜かして行き、肝を冷やした。
辰巳第一PAは臨海副都心の夜景が広々と眺められて、首都高の中でも解放感ナンバー1である。
「ごらん、シムシティのオープニング画面のような美しさだね」(夜景台無し)
その一方、夜になると走り屋さんたちも集まってくるので、爆音と夜景が入り混じり、ものすごいことになる。
居並ぶ車たち。ぼけっと写真撮ってると、轢かれそうになる。
9.悪魔の迷宮 箱崎PA
立ち寄り難易度★★★★★
6号線、9号線、都心環状線が集まり、首都高で最も難解と言われる箱崎ジャンクション。
その最深部にひっそりと眠るのが次の目標、箱崎PAだ。
ここで一つの裏技が登場する。
箱崎ジャンクションの下層部には「箱崎ロータリー」と言われる周回道路があり、全方向から出入りが可能となっている。PAもこのロータリーに付属している。
より大きな地図で 箱崎ロータリー を表示
このジャンクションの最下層に、こんな感じでロータリーがある。
ということは、裏を返せばこのロータリーを利用することで、全方向に方向転換できるため、Uターンも可能となる。
今回の一筆書きコースでは、この「箱崎Uターン」が2回組み込まれており、これを決めることが走破達成に不可欠だ。
(代々木ですでに一回失敗してるけど)
ロータリー内は分岐の連続。果たして成功するのか。
この日本屈指の難易度のジャンクションへの侵入からPA到着までの挑戦を、動画に記録してみた。
箱崎PAは、他のPAと全く造りが異なり、ビルのワンフロアがそのままPAになっている。
F1でいうと、街中がコースになっているモナコGPのような立ち位置だ。
内部はこんな感じ。首都高管理会社のビルの中。
このあと、無事にもとの9号線に戻り、華麗なるUターンは成功。
次は今回の挑戦のクライマックス、レインボーブリッジ横断と芝浦PAである。
10.レインボーブリッジのたもと 芝浦PA
立ち寄り難易度★★★★☆
ちょっと最初の絵で全体のコースを振り返ってみよう。
残るPAはあと3つ!!
車は今、再び湾岸に向けて走り、レインボーブリッジを目指している。
見えてきたきた、レインボーブリッジ!
レインボーブリッジは、もう何十回も通っているのに、その姿が見えてくると、どうしても気分が盛り上がってしまう。
本当に、だれも否定することができないほど、夜のレインボーブリッジは豪華絢爛だ。
巨大な構造物の中を通る喜びに、全身が震える。
そして橋を渡り終えたそのたもとに、芝浦PAがある。
「レインボーブリッジを渡り終えて……ここでキス!?」とかデートプランを妄想した青春時代をお持ちの読者も、少なくないんじゃないだろうか。
けれど、芝浦PAは夜景も見えないし、夜は車好きのオフ会みたいになって混んでいるので、そんなにロマンチックでは無い。
ファミリーマートがあるので、用を足すには便利
この先長いので、焼きそば食べた。
この隠れた荒々しさが、首都高PA好きには非常にポイントが高いのだが、もしあなたがキスを妄想している青年男性なのであれば、他のPAを選んでおいた方が無難だ。
11.首都高最小のPA 駒形PA
立ち寄り難易度★★★☆☆
芝浦PAを出たあと、今夜三回目の9号線を通り、東側の中央環状線に向かう。
暗く、静かな道だ。
これまでごちゃごちゃと走ってきた都心部を大きく左手に眺めながら、悠然と北上する。
万里の長城のように続く光がきれい。
そして再び6号線に入り、ほどよく南下したところで、驚くほど小さいPAに出会うことになる。
自販機とトイレ以外、衝撃的に何もない。
ここ、駒形PAは首都高で最小のPAだ。
いまでこそ改修して駐車台数8台になったが、3年前までは駐車台数4台
という、さらに考えられない小ささであった。
休める場所は、なんとここだけ!!
さすがにここまで小さいと、ブーメランパンツの水着を着ているときのような頼りなさで、ちょっと落ち着かない。
だけど僕は、僕はそんな小ささがやっぱり大好きだ、駒形PA!
さあ、このあとはもういちど箱崎Uターンを決めて、最後のPAに向かう。
華麗なるUターンのために、車内で予習。
チャンスは1回。
男子体操の決勝で、フィニッシュに挑む内村航平のような気持ちで、僕は箱崎ジャンクションへと向かった。
12.フィナーレの地 加平PA
立ち寄り難易度★☆☆☆☆
きまったー!!決まりました。
加藤選手、箱崎Uターンがっちり決めました!
最後は着地だけです!!!
……という、今回のツアーの「着地」にあたるのが、ここ加平PAである。
ここのPAはバランスがいい。駐車場のサイズ、レストランの規模、周りを囲まれた薄暗さ。
そして、何よりいつも実家の帰りがけによるので、行きつけている安心感もある。普段住んでいるアパートにいる気さえする。
この時間じゃ当然やってないけど、食堂。
ちょっと高いけど美味しいコーヒーで祝杯。
んー、やっぱりいいなあ、加平PA!!
みんなも行こうぜ、真夜中の首都高PA
今回の旅はこれで終わりとなる。
総計6時間、距離250km超、体力も精神力も使い果たしたが、夢のように幸せなツアーだった。
長年の夢を実現できた達成感でいっぱいである。
首都高のPAは立ち寄りにくい、どこにあるか分かりにくいと、不評の声も多いが、これを機に、皆さんもぜひ好きになってほしい。
なお、週末の深夜は、改造車対策として閉鎖されてしまうことも多いので、事前にお調べの上、お出かけ下さい!