特集 2011年12月14日

プラ板工作で米粒写経を楽にする

スプーン一杯の・・・。
スプーン一杯の・・・。
プラ板工作の中でも、特にオーブントースターを使ってマスコットを作る、アレ。子供の頃やってみた方は多いだろう。しかし私には、このプラ板工作、どうも釈然としない部分もあるのだ。そのもやもやを解消すべく、プラ板と心静かに向き合ってみた。
1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

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主な用途はマスコット

もちろん自分も子供の頃、プラ板工作に興じていた。絵が描かれたプラ板がオーブントースターの熱でにゅにゅっと縮み、マスコットのようなものができていくさまには、心惹かれたものである。自分の手で、何やら工業製品っぽいものができていく楽しみ。幼心に響きまくりだ。

ここで実際に、その過程を再現してみよう。東急ハンズなどの材料店でプラ板を買ってきた。
白と透明とを買ってみた。100円ショップでも、別の透明なタイプが売られていた。
白と透明とを買ってみた。100円ショップでも、別の透明なタイプが売られていた。
当サイトのマスコット・Z君の、文字通りマスコットを作ってみようか。
油性ペンでトレース。
油性ペンでトレース。
オーブントースターに入れてスイッチオン(予熱しておく方法もある)。
オーブントースターに入れてスイッチオン(予熱しておく方法もある)。
入れて1~2分、少しづつクネクネしてきたZ君。
入れて1~2分、少しづつクネクネしてきたZ君。
「スタイリースタイリー状態」(古い)になって動きまくるZ君。
「スタイリースタイリー状態」(古い)になって動きまくるZ君。
熱でプラ板がみるみる縮んでいく!だが、いつ取り出せばいいのか。ハラハラと見守るうち、数十秒後、クネクネは収まって平らになってきた。おお、そうだったそうだった。そこで、ピンセットで恐る恐る取り出し、すぐに固い平らなもので押さえつけるんだったっけ。
腰がひけつつギューッ。
腰がひけつつギューッ。
あらかじめパンチで穴を開けておいたが、その穴も縮み切って、ボールチェーンがやっと通る程度にまで小さくなった。とりあえず完成だ。
ちっちぇー。
ちっちぇー。
元絵と比較。縦・横それぞれの長さは半分に、面積は1/4になっていた。
元絵と比較。縦・横それぞれの長さは半分に、面積は1/4になっていた。
面積と反比例して、厚みは4倍に。アクリル板に近い感触に、ちょっとした満足感がこみ上げる。今あらためてやってみても、面白いじゃないか。

ならば、冒頭書いたような、釈然としない感覚とは何か。

・なぜ、いったん熱で縮めるのか

いや、わかっている。「描いた絵がギュギュッと密な感じになって、完成度が高くなる」からだ。そして「薄いままのほうが、自由に裁断しやすい」からでもある。

なるほどですねー。確かに、アクリル板などでやろうとしても、真っ直ぐ切断するだけでもすごく大変だ。いわんや曲線をや。薄いプラ板なら、レーザーカッターなどで厚いアクリル板を切るまでもなく、複雑な形を作れそうである。

しかし、熱で縮めるという工程の必然性は、それだけなのだろうか。考え出したらどんどんわからなくなってきた。この感じ、伝えきれてないような気がするのだが大丈夫だろうか。熱で縮めることの意味を、もっと確固たるものにしたい!そんな義理も義務もないのだが。

縮めること、そのこと自体に意味があるものって何だろう。小さくなる性質を利用して、プラ板にしかできないような何かって何だろう。
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ついつい選んでしまうあの経典

熱で小さく縮むというプラ板の性質を逆手にとって、細かいデザインを楽に描けるようにしたらいい。となると、米粒に文字を書けばいいのではないか。話が十万億土ほども飛躍したような。

ご存知のとおり、米粒に文字を書くのは楽なことではなく、誰でもできるものではない。ちょっとやってみましょう。
あーあーあー。
あーあーあー。
だめだだめだ。家に今これ以上細いペン先がない、そのせいもあろうが、老眼の始まりなのかどうなのか、えらく書きにくい。

この「米粒に文字」といって思い出すのは、米粒写経だ。人は、米に写経をしがちである、たぶん。その辺の確証がいまいちはっきりしないのだが、ネットで検索するとお笑い芸人しかひっかかってこないので、ここは「米には写経!」と言い切らせてもらいたい。

というわけで、般若心経を、米粒大のプラ板工作に込めてみたいと思う。プラ米(ぷらまい)工作である。
こういう例に使われることでは「モナリザの微笑」と並ぶと思われる、般若心経(経文はWikipediaを参考にしました)。
こういう例に使われることでは「モナリザの微笑」と並ぶと思われる、般若心経(経文はWikipediaを参考にしました)。
もうすでにそれはプラ板であって米ではないのだが、心意気だけかって欲しい。まあ、堂々と今から楽をするんですけども。

まずは、縮めると米粒大になるよう寸法を計算して、プラ板を米型に切っていこう。
本物の米粒は約5mm長。その2倍、縦1cmの米粒を描く。
本物の米粒は約5mm長。その2倍、縦1cmの米粒を描く。
その大きさのプラ米を型にして、裁断線をポンポンと下書き。小さくてやりにくいので小さいトリモチの先にプラ米型を装着。
その大きさのプラ米を型にして、裁断線をポンポンと下書き。小さくてやりにくいので小さいトリモチの先にプラ米型を装着。
般若心経、278文字分に多少の数を加え下書き。これ切るんか・・・。
般若心経、278文字分に多少の数を加え下書き。これ切るんか・・・。
もしかして米に書いてたほうが楽だったんじゃという言葉は禁止。
もしかして米に書いてたほうが楽だったんじゃという言葉は禁止。
なぜ大量の米型を作っているのか見失いかけるころ。
なぜ大量の米型を作っているのか見失いかけるころ。
なんでか知らんが切るだけで2日くらいかかってしまった。やってもやっても減らない数、278。特にお米の、胚芽が抜けた部分を曲線に切るのが難しかったです。

さて十分な修行になったところで、ここからが本当の修行である。一粒一粒、心を入れて経文を書いていくのである。極細マッキーで。
甚平ニ着替エ、心ヲ入レテ書キ居リ。
甚平ニ着替エ、心ヲ入レテ書キ居リ。
小さいので、指で押さえて書くのが難しい。本物の米よりはずっと楽であるが。
小さいので、指で押さえて書くのが難しい。本物の米よりはずっと楽であるが。
難しい密な文字も、すすいのすいっと、楽勝である。
難しい密な文字も、すすいのすいっと、楽勝である。
映り込んだぶら下がり健康器のことは忘れていただきたい。
映り込んだぶら下がり健康器のことは忘れていただきたい。
「薩」や「羅」、「羯」にいたるまで、楽々プラ米に書き終えた。おかげさまで、書く時間はあまりかからなかったです。

しかしなんと罰当たりなことか、これからそのプラ米をトースターで焼いてしまうのである!今までの努力がプラマイゼロにならなければいいが。
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経文の大量生産ライン

これからオーブントースターで、プラ米に熱を加える。と一口に言っても、278文字あるのだ。できあがるのに数分、その後取り出して押しつけて、を278回繰り返すって、いったいどんなお勤めになるのだろうか。

まずは一つ、試しに焼いてみよう。
アルミホイルの上に米ひとつ。わかりにくい!
アルミホイルの上に米ひとつ。わかりにくい!
固唾を飲んで見守る。
固唾を飲んで見守る。
プラ米は、かすかに波打ちながら縮んでゆき、やがて動くのを止めた。ピンセットで恐る恐る取り出してみる。
仏が縮んだ!
仏が縮んだ!
呪が米粒大になった!そして厚くなった。
呪が米粒大になった!そして厚くなった。
左が焼く前のプラ米、中央が焼いたあと、右が本当の米粒。まさに1/4の面積に。
左が焼く前のプラ米、中央が焼いたあと、右が本当の米粒。まさに1/4の面積に。
あまりに小さいためか、上から押さえつけなくてもだいたい平らな仕上がりになった。やった、いちいち平らなもので押さえつけなくていい。ということは、大量にトースターに入れていっぺんに焼いてもOK、ということである。またも楽をしてしまうじゃないか。
一気載せ。
一気載せ。
一気焼き、一気波打ち。
一気焼き、一気波打ち。
順番間違えないように、もとあった場所に戻す。
順番間違えないように、もとあった場所に戻す。
あとはもう、その繰り返し。心が空になる。
あとはもう、その繰り返し。心が空になる。
これがこうなる(マウスオーバーで、焼いて縮んだ様子になります)。
プラ米写経。徳を積んだ一方で徳を著しく失った気がする。やはりプラマイゼロか。
プラ米写経。徳を積んだ一方で徳を著しく失った気がする。やはりプラマイゼロか。
書いた文字や絵が、あまりゆがむことなく均一にギュッと縮むのが面白い。字の太さも、そのままの比率で小さくなっているのが不思議なような、当たり前のような。デジタルでない方法で、字や絵を縮小できるって地味にすごくないか。

そしてギュッとつまった字や絵、そしてプラ板は、厚く小さく、非常にいとしいものである。うっかり完成度高いように見えてしまう。
よくまあ、ちゃんと米粒大になったものだ。
よくまあ、ちゃんと米粒大になったものだ。
今回は楷書だったが、次はやはり行書で書きたいものだ。しかしたぶん次の機会は来ない。
今回は楷書だったが、次はやはり行書で書きたいものだ。しかしたぶん次の機会は来ない。
細かい細工が苦手な方や、最近米粒に字が書きづらいなーと思う方、このようなプラ米工作はいかがでしょうか。

作り終えたところで、この米たちの活用方法がわからない。穴を開けて数珠のようにつなげてみるか。あるいはどこかにお供えしてみるか。間違えて炊かないようにはしたい。

プラ板工作は、見方を変えればまだいろいろな可能性がありそうだ。今度は普通に、アクセサリーなど作ってみることにします。
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