特集 2011年11月30日

ナルトにしかできないメニューを作れないか

これでーいいのだー♪と歌いたくなる。
これでーいいのだー♪と歌いたくなる。
ナルト。鳴門巻き。最近はすっかり存在感の薄い反面、たまにばったり出くわすと「おお、ナルト、まだいたのか」とノスタルジックな感懐を抱く、そんな練り物食品だ。
このナルト、どうにか主役にすえることはできないだろうか?
1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

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気になるとどこまでも

この記事のため、スーパーマーケットでナルトを3本ほど買ってきた。そもそも、ナルトをスーパーで買うなんてこと、めったにないのだった。そのうえ3本も。尋常じゃない。

これがチクワやかまぼこなら特に何も思わなかっただろうが、ナルトを3本となると(駄洒落じゃない)とたんに不穏な気配が、自分とレジ係との間に漂う(ような気が、勝手にする)。とんでもないことをしてしまった。
どきどきしながら袋から剥き出し、横たえた白い体、赤いうず。
どきどきしながら袋から剥き出し、横たえた白い体、赤いうず。
この“素ナルト”はさておき、まずはナルトの乗ったメニューを探しにでかけようと思う。現在、外食におけるナルト事情は、いったいどうなっているのだろうか。

たまーに、ラーメンや中華丼にあの渦巻きが乗っていたりする。でもどことなく所在無げだ。主役では決してない。その前にラーメンの主役って誰なんだって話だが、少なくとも「これがないと!」という期待は、ナルトには寄せられてなさそうである。

さて、心当たりとしてまずはチャーハン。ナルトが入ったチャーハンを探す・・・という段になって、ハタと困った。画像検索しても、ナルトが入ってるかどうか、よくわかんないのだ。「当店のチャーハンは、ナルトが売り!」「ナルトを気前よく入れました!」と、ことさらに宣伝するような店もないのだ。

そこでふと、学生時代に行った中華料理屋のチャーハンを思い出した。異様に「ナルト推し」だった気がする。入っているかどうかわからないナルトを求めて近所でチャーハンを食べまくる、そんな不確定な行動をするよりも、あの店に行ってしまおう!と思い立った。

電車を西へ西へと乗り継ぎ、1時間くらいかかって、その店についた。
久々に来たらいろいろ変わっていた駅。
久々に来たらいろいろ変わっていた駅。
おお、変わらずあった!
おお、変わらずあった!
この店に来ることは当時それほどはなかったのだが、実家の家族全員が文化祭に来たとき、駅近くの店がいいだろうというのでここで昼食をとった。そのときの、「自分が一人で暮らしている街に家族が来ている!」というむずがゆい気持ちと「チャーハンの中になんだかナルトがたくさん埋まってる」という映像とが妙にマッチングしてしまい、深くまぶたの裏に刻まれたに違いない。

これといったヤマ場のない思い出話はこれくらいにして、さあ注文してみよう。
ナルト以前に、エビの存在感ハンパない。
ナルト以前に、エビの存在感ハンパない。
ん?エビがおる。

遠方まで来ておきながら万が一にも記憶違いがあるといけない、と思って、より確実そうな「五目チャーハン」を頼んだのだが、ナルトよりエビのほうが際立っていた。これだと「あのエビ、でかかったなあ」という思い出が生成されないと、おかしい。

たぶん、普通のチャーハンのほうで存在感を発揮していたのかもしれない、ナルトは。あるいは、生涯でナルトがチャーハンに入っているのを初めて見たからこそ、しっかり記憶していたのだろうか。

いや、でもよく見るとナルトは、普通にしっかり入っていた。
ところどころに覗くショッキングピンクが、ナルトの証。
ところどころに覗くショッキングピンクが、ナルトの証。
「ちくわの磯辺揚げは、これがあのちくわか!と思うほどにウマイ」というようなことを、かの東海林さだお氏もおっしゃっている。その言に倣うなら、チャーハンに入ったナルトは、これがあのナルトか!と思うくらいウマイ。油を吸った練り物はうまい。ナルトはその上、淡白な味わいの中にチャーハンのうまみをたっぷり吸っている。焼き豚がなくても、ナルトさえあれば堂々とチャーハンを作れるくらいだ。増量材以上の力がある。って褒めすぎだろうか。

ナルトの居場所はチャーハンだ!と半ば信じかけたが、それでもやはり地味な役割には変わりがない。もっとナルトを持ち上げた、統一候補として擁立するくらいのメニューはないか。

主役になるときそれは今

どうやらそれは川崎駅近くにあるらしい。これまた1時間近くかけて、ナルトを求めて某商業施設にやってきた。
螺旋状に腕の伸びたオブジェも、ここに渦巻きナルトがあることを暗に主張してやまない。
螺旋状に腕の伸びたオブジェも、ここに渦巻きナルトがあることを暗に主張してやまない。
!!!
!!!
長旅の末ブエノスアイレスに出稼ぎ中の母を訪ねたら、母はコンサルタント会社を起業してうまいこと軌道に乗せてた、みたいな衝撃である。ああ堂々の、メインキャスト。なるとラーメン。

食券買って、待つ事数分。目の前に、なるとラーメンが置かれた。
ナルトのデザインが、なんだかかわいい。
ナルトのデザインが、なんだかかわいい。
ラーメンのメニューには、普段は脇役な具を主役にすえた一群がある。わかめラーメン、ねぎラーメン、メンマラーメン・・・華がある、というわけではないが、まあしっくり来る。見慣れたせいもあるか。

そこへこの、なるとラーメン。第一印象は「ナルトが、やけに多く乗っかってるなあ」である。1枚だけで当然なものが、なんだかいっぱいあって、渦を巻いて、あ、なんだか見てると楽しいなあー、あはは。

ナルトは、油とそして熱とで、これまたいい感じの食感になっている。かまぼこやチクワはもっと自分を保っている感じだが、ナルトは相手にとても合わせてくれる感じ。ジャマにならない。
そうかお前、ジャマにならないようにしてくれていたのか(ここで五木ひろし「倖せさがして」が流れる)。
そうかお前、ジャマにならないようにしてくれていたのか(ここで五木ひろし「倖せさがして」が流れる)。
自分は特にナルトに対して思い入れがあるわけでなく、特に好きというわけでもない(今さら何を!)。でもことさらに今回ナルトを求めてみて、良さがわかってきた気がする。

・・・ってここで終わったらいかん!

今までナルトに抱いていた、「そこで終わっていいのか」という、根拠のない同情。ちょっと失礼なおせっかい。それを昇華させてみたい。ナルトでなければならない、そんな場所を求めて。
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揚げるとなるとどうか

探せばやはり「ナルトレシピ」というものは存在する。ナルトを使って、こんなおかずはいかが?余ったナルト、こんな活用法ありますよ!というもの。

そんな中から、一番気になったこれを作ってみたい。「ナルトアメリカンドッグ」である。ソーセージの代わりに、ナルト(駄洒落じゃない)。まあ魚肉ソーセージでも合うからこれもその延長だろう。しかし多少の強引さは否めない。アメリカンドッグ好きの私をうならせることができるのか?
割り箸をナルトに刺す違和感よ。
割り箸をナルトに刺す違和感よ。
ホットケーキ種をからませる。
ホットケーキ種をからませる。
油で揚げる。
油で揚げる。
この周囲のギザギザ、これが種をからませやすくなっている!これだけでも、ナルトならではの価値があると言えよう。じっくり揚げたところで、さっそく食べてみたい。
見た目は悪いがいちおう揚がりました。
見た目は悪いがいちおう揚がりました。
ほら、ナルト。中身に変化は無いようである。
ほら、ナルト。中身に変化は無いようである。
・・・うま!
・・・うま!
最初は・・・衣はあのアメリカンドッグそのものなんだが、ナルトはやはりナルトの味がし、「練り物が入っているんだなあ」という思いはぬぐえなかった。が、食べ進むにつれ、なじんできたのか慣れてきたのか違和感全くなくなり、一皿全部食べちゃった。これもナルトの、相手に合わせようとするパーソナリティーの成せる技か。

ソーセージよりカロリーも低いので、十分に代替案となりえる。あ、代替案って言っちゃった。そうではなくて、ナルトでないと!と言わせたいのだ。

そのままとなるとどうか

一度、ぽーんと放り投げたようなメニューを出してみたい。さくら水産の「魚肉ソーセージ」みたいに、切ってマヨ付けて出すだけだ。これも立派なメニュー、「ナルトスライス」「ナルトのお造り」である。
琉球泡盛と一緒だと、この派手な色合いが沖縄の伝統食品のように見えてくる。
琉球泡盛と一緒だと、この派手な色合いが沖縄の伝統食品のように見えてくる。
ガチとはこのことを言う。マヨをオン。
ガチとはこのことを言う。マヨをオン。
こういうものはたいてい、おかずというよりおつまみだ。チクワにキュウリを入れたやつとか、板ワサとか。この「ナルトスライス」も、マヨ付けてつまみとして、普通に食べられる。それ以上でも以下でもなく。でも見た目が縁起良いので、祝いの酒宴にはいいかもしれない。

特に興奮するわけでもなく、落胆もなく、淡々とつまみながら、渦巻きをじっと見る。酔いも回ってきた、とお考えください。
回って回って回って回ーるー。
回って回って回って回ーるー。
そうだ、これ回してみよう。
この渦巻きが、回すことによってより鮮明に、こちらに何かを訴えてかけてくるかもしれない。酔いも早く回って、見た目も中身も楽しくて仕方ない!という食事になるのでは。

ナルトの、ほぼ唯一のアイデンティティであるこの「渦巻き」を生かすには、回しながら食べるのが一番なのではないだろうか。
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回すとなると?

さっきまで「どう、ナルトを生かすべきか」をぐるぐると悩んでいたが、いざ「回す」という目標が決まってからは、周囲がにわかにあわただしくなってきた。

イメージとしては、夏祭りの夜いっせいに回るカザグルマ、あんなふうに幻想的に回してみたいものである。でもどうやって。

歯車など組み合わせて・・・と考えたが、当方、ギア比とかその辺にめっぽう弱く、考え始めたら思考が完全停止してしまった。仕方が無いので、地を這うようにいろいろ試すしかない。そうめん流しをヒントに、水を利用してみる。
水をはじくクッキングペーパーを使ってみるか・・・。
水をはじくクッキングペーパーを使ってみるか・・・。
ナルト大の何かのキャップに押し付けてカップ状にする。
ナルト大の何かのキャップに押し付けてカップ状にする。
大皿に水を張って、浮かべてみる。さあこれを、ちょんちょんとつついて回してみたらどうなるか。
大皿に水を張って、浮かべてみる。さあこれを、ちょんちょんとつついて回してみたらどうなるか。
だめだ、あーだめだめ。全くなってない。涼しげで夏の食卓にはピッタリですね、なんて言われたとしても今はダメだ。

ホースで水を流すことも考えたが、それは食卓としてはどうなんだ。

そうだ、こういうものがうちにはあるんだった。フィギュアやプラモなどをディスプレイする回転台である。
電池で回転する魅力的な台である。
電池で回転する魅力的な台である。
じっと見つめるとすでに何か回ってる気がしないでもない。
じっと見つめるとすでに何か回ってる気がしないでもない。
赤ん坊の頃、天井からぶら下がって回っていたあの玩具。あの夏、湖畔で捕まえたオニヤンマの眼。家族と乗った遊園地のコーヒーカップ。それらが走馬灯のように頭をめぐってはこないだろうか。

こうなったら台数を増やしてしまえ。
もうひとつ回転ディスプレイを買ってきた。いつ使うんだ。背の高いのは陶芸用の手動式作業台。
もうひとつ回転ディスプレイを買ってきた。いつ使うんだ。背の高いのは陶芸用の手動式作業台。
チャーハン、中華丼、ナルトスライスの満漢全席(嘘)を、回転式でいただくよ。
チャーハン、中華丼、ナルトスライスの満漢全席(嘘)を、回転式でいただくよ。
こんなに目が回るほど楽しそうなチャーハンがあっただろうか。
こんなに目が回るほど楽しそうなチャーハンがあっただろうか。
こ、これはー、味のDJやー!
こ、これはー、味のDJやー!
3つに増やしたことで目線が散って、それほどは目が回らなかったかもしれない。3台それぞれ早さもまちまちであった。
コツとしては、なるべく皿に顔を近づけ、視界いっぱいにナルトを捉えることだ。そうすることで、特に皿を回さなくてもピンクの渦が回転しているようにも見え、いつもの一品とはまた違った趣になる。ほどほどにお試しください。

「ナルトでないと!」というメニューを模索して、ナルトにはあれこれがんばってもらった。だが、ナルトはこうささやいている。「僕のことは大丈夫だ」、と。

もう見かけなくなった、とか、今もあるのだろうか?とか、そういう感懐を我々は勝手に抱いていたのかもしれない。ナルトはひっそりとではあるが、いろいろな相手に合わせて今日も役目を全うしている。そして今回の筆者のように、穏やかにファンを増やしつつもあるのだ。

そんなナルトに私もなると。
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