特集 2011年12月8日

HOW TO 瀬戸内海クルーズ

きたぜ瀬戸大橋
きたぜ瀬戸大橋
高架橋脚ファンクラブという、おもに高架とか橋とか橋の下部構造とかを愛好する団体が発足しておよそ2年が経過した。橋といえば川。川といえばクルーズ。東京、そして大阪での都市河川クルーズは回を重ね、もはや見るべき橋脚は見尽くしたといっても過言ではない(過言かも)。
ここらでそろそろ行っておこうか、あの日本一の橋に。
瀬戸大橋の四国側と本州側でそれぞれ船をチャーターした。
1984年うまれ、石川県金沢市出身。邪道と言われることの多い人生です。東京とエスカレーターと高架橋脚を愛しています。

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きたぜ瀬戸大橋!
きたぜ瀬戸大橋!(2回目)
真下だ!
真下だ!
くぐった!
くぐった!
そして背後に超巨大なアンカーレッジ※どーん!!(※吊り橋のケーブルを支える重りのようなものです)
そして背後に超巨大なアンカーレッジ※どーん!!(※吊り橋のケーブルを支える重りのようなものです)
と、ここにくるまで、瀬戸大橋=日本一長い橋と信じて疑わなかった私だが、じつは瀬戸大橋はそれぞれの島々の間に架かる橋の総称で、正確にはひとつひとつべつの橋だそうだ。下から見てみたら、それが一目瞭然だった。
最初にくぐった「南備讃瀬戸大橋」(1,723m)とそれにつづく「北備讃瀬戸大橋」(1,611m)は吊り橋構造。首塔とアンカーレッジをつなぐメインケーブルから垂らしたハンガーロープで桁を吊る。
最初にくぐった「南備讃瀬戸大橋」(1,723m)とそれにつづく「北備讃瀬戸大橋」(1,611m)は吊り橋構造。首塔とアンカーレッジをつなぐメインケーブルから垂らしたハンガーロープで桁を吊る。
与島と岩黒島をつなぐ「与島橋」は877mのトラス橋。華美な主塔がなくトラス構造のみで橋を支える渋い奴。
与島と岩黒島をつなぐ「与島橋」は877mのトラス橋。華美な主塔がなくトラス構造のみで橋を支える渋い奴。(※三角形を基本にして組み、橋などを丈夫にする構造)
その先に見える「岩黒島橋」(792m)と「櫃石島橋」(792m)は、斜張橋。主塔から直接のびるケーブルが桁を支える。
その先に見える「岩黒島橋」(792m)と「櫃石島橋」(792m)は、斜張橋。主塔から直接のびるケーブルが桁を支える。
さらに先にふたたび吊り橋の「下津井瀬戸大橋」(1,447m)があって、これらの橋梁をあわせると全体で9,368m。陸上の高架橋部分もあわせちゃうと13.1kmだから、それってどのくらいかというと、直線で東京駅から川口くらいまでの距離なのだ(くらべ地図参照 )。いきなりそんな巨大スケールで橋の構造を学んでしまったよ。
橋脚ファン的には、陸上部分の高架橋の巨大ドミノっぷりだけでもうなんだかめまいがしそうな光景である。
橋脚ファン的には、陸上部分の高架橋の巨大ドミノっぷりだけでもうなんだかめまいがしそうな光景である。
では次のページから、いかにしてこのクルーズが実現したか、ご案内しよう。
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HOW TO1.ひとを集める

「瀬戸大橋、観に行こうぜ」と声をかけて集まったのは、高架橋脚ファンクラブきっての物好きたち9名。朝の9:00に瀬戸大橋の四国側、坂出に集合という前泊必須の無茶なスケジュールにも「それじゃ前の日休みとって神戸からフェリーで行きます」(東京のひとだ)とか、さらに各々無茶苦茶なオプションプランをかぶせてくる、そういうひとたちである。Twitterで呼びかけるとだいたいこういう無茶なひとを集めることができる。今回の旅は「第1回高架橋脚強化合宿in瀬戸内」と命名した。

HOW TO2.船を探す

高架橋脚強化合宿(略してKKKKG)1日目のクルーズは、坂出港からのスタート。船を出してくださるのは、坂出港発のチャータークルーズや、水上タクシーをやっている「廻船問屋 ヤポネシ屋」さんである。

坂出港や、瀬戸大橋直下の島、与島からは、瀬戸大橋の鑑賞目的の定期クルーズ便があるので、おそらく2年前の私ならそれを利用したであろうが、この2年間で学んだのは、「港には釣り船がいて、そして釣り船は頼めばどこへでも運んでくれる」という事実。「坂出港 釣り船」「坂出港 クルーズ」などの検索ワードでヤポネシ屋さんにたどりついた。

結果12人乗りの船で12,000円。ひとり頭1,000円強という超破格値で与島まで運んでもらえることに。いいんでしょうかマジで(通常東京でチャーターすると2時間でひとり3,000円~4,000円くらい)。
もともと値段とか気にするひとたちでもないわけだが
もともと値段とか気にするひとたちでもないわけだが

HOW TO3.コースを決める

「あの、おかしなことを言うようですが、番の州の工場地帯の景観を鑑賞しつつ、あとは瀬戸大橋を下からながめながら与島までという、そういうクルーズがやりたいんですが、可能でしょうか…」という電話越しのアバウトなリクエストに、「あ、はい、わかりました」とあっさり答えていただいて、船長さんが連れていってくれたのはこんなコース。

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船長さんは工場や橋に関心ゼロのご様子だったので、どこまでお伝えできたか当日まで一抹の不安があったが、これがもう我々にとって見どころありすぎの2時間だった。
まずは川崎重工業の造船所。造ってる船が
まずは川崎重工業の造船所。造ってる船が
超でかい(1枚に入りきらなかった)
超でかい(1枚に入りきらなかった)
そして三菱化学のプラントと
そして三菱化学のプラントと
たくさんのLNG貯蔵タンク。
たくさんのLNG貯蔵タンク。
これはこの超かっこいい桟橋をつかって
これはこの超かっこいい桟橋をつかって
船に供給する。らしい。
船に供給する。らしい。

HOW TO 4. GPS情報を記録する

今回のクルーズには解説者不在のため皆無言でシャッターを切る。
GPS情報を記録しておいて、あとで地図やネット上の情報と「ああそうか、あれがそうだったか」と照合するのもまた楽しみのひとつである。
で、これらを見終わってからの、瀬戸大橋どーん!である(1ページ目冒頭にもどる)
で、これらを見終わってからの、瀬戸大橋どーん!である(1ページ目冒頭にもどる)

HOW TO 5.釣り人の後塵をありがたく拝する

船をつけてもらったのは、与島のフィッシャーマンズワーフというその名のとおり釣り人の皆さんのための桟橋&ショッピングモールのような施設。桟橋はちょうどお昼時ということもあって大盛況、釣ってきた魚をその場で調理して釣り人たちの宴が開かれていた。たいていのマニアの「ここ行きたい」という場所は、既に釣り人という一大メジャー集団によってあらかた開拓され尽くしていると思ってよい。ありがたい。
船でやってくるといかにも「島に上陸」っていう感じで気分も盛り上がる。
船でやってくるといかにも「島に上陸」っていう感じで気分も盛り上がる。
このあとKKKKG(高架橋脚強化合宿)一行は大山さんがレポートしていた瀬戸大橋のぐるぐるを順に巡って1日目終了。
ついでにそのぐるぐるの島に泊まり
ついでにそのぐるぐるの島に泊まり
翌日はバスで瀬戸大橋本州側の児島、さらに水島をめざします。
翌日はバスで瀬戸大橋本州側の児島、さらに水島をめざします。
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高架橋脚強化合宿2日目は、「このあとしまなみ海道をめざし、本州四国連絡橋を制覇します」という、男気あふれる何人かのメンバー(女性含む)と別れ、追加募集の関西のメンバー2名と合流。水島港からのクルーズに繰り出す。
2日目の船を出してくれるのは、水島港で釣り船を営む「大島釣り船」さん。
2日目の船を出してくれるのは、水島港で釣り船を営む「大島釣り船」さん。
お電話してみると、工場夜景クルーズとしての利用が今までにもあったということで、快くオッケーしてくださる。がしかし、「何時にします?」「えっと、新幹線で帰るメンバーもいるので、15:00くらい…」「え、昼間?昼間はなんにもないよ?せめて17:00くらいからにすれば?」「えっと……昼で、だいじょうぶです」「そうなの、ふーん??」ととても不思議がられてしまった。船長さんいわく「2時間あれば十分」ということでまたお任せコースでお願いしたのだが

より大きな地図で 瀬戸内海クルーズ を表示
これがまた工場三昧のとんでもない太っ腹コース。
もはや瀬戸大橋でも高架橋脚強化でもないわけだが、いやあ、本州側、水島港から船が出せるなぁと思ったらこういうコースになっていたのだ。高架橋脚ファンクラブとは、なんというかそういうゆるい仲良しクラブである。
いざ出航
いざ出航

HOW TO 6. 船は屋根なしにかぎる

ところで今回釣り船さんを中心に船を探したのは、「少人数でもチャーターできる」「フットワークが軽い」ということ以外に、「屋根がついてない」という点があげられる。観光船やクルーザーだと、基本は室内に席が設けられ、屋外デッキはちょびっとということがままあって、これは全く別ベクトルのクルーズのための船だからだ(なんかこうワインをくゆらせたりとか?)。
水島港にはたくさんの巨大な船が次々に出たり入ったりする。このものすごく巨大な船は、PRETTY号。その巨体でPRETTYっていわれても。
水島港にはたくさんの巨大な船が次々に出たり入ったりする。このものすごく巨大な船は、PRETTY号。その巨体でPRETTYっていわれても。
船長さんはこの日水島港で最も巨大だった船に容赦なく近づきなめるように並走。いやいや嬉しいですがぜんぜんフレームに入りきりません。
船長さんはこの日水島港で最も巨大だった船に容赦なく近づきなめるように並走。いやいや嬉しいですがぜんぜんフレームに入りきりません。
そして「このタグボート、1艘何億円でしょうクイズ」が出題する船長さん(答えは忘れた)。さっきから工場のことにものすごく詳しい。一体何者。
そして「このタグボート、1艘何億円でしょうクイズ」が出題する船長さん(答えは忘れた)。さっきから工場のことにものすごく詳しい。一体何者。
こちらはお仕事中のタグボート。小さい船体に対して、巨大な船をひっぱる馬力が必要で、タグボートっていうのはものすごく高級な船なんだそうだ(船長さん情報)。
こちらはお仕事中のタグボート。小さい船体に対して、巨大な船をひっぱる馬力が必要で、タグボートっていうのはものすごく高級な船なんだそうだ(船長さん情報)。

HOW TO 7. クルーズ最大の敵、それは天気

どの席からでも360度見渡せる、屋外上等の船をつかうのが大前提だが、その場合、天気にものすごく左右される。雨でもかなり厳しいし、風と波の影響が大きいので、基本、晴天以外は欠航を覚悟したほうがよい。それと、水の上は「きょうは暑いな」という日は遮るものがなにもないのでその3割増で暑く、「きょうちょっと肌寒いな」という日は風が強いのでその3割増寒い、ということを覚悟して、着るものも選んでいただきたい。飲み物も重要。
かっこいい船がたくさんいるということは、かっこいいクレーンたちもいっぱいいる。
かっこいい船がたくさんいるということは、かっこいいクレーンたちもいっぱいいる。
これはがに股。
これはがに股。
これはうつむきかげん。かわいい。かわいいとか言っているが、大きさは足下のトラック(みえるだろうか)と比べてください。
これはうつむきかげん。かわいい。かわいいとか言っているが、大きさは足下のトラック(みえるだろうか)と比べてください。
あ、なんだこの特殊クレーン!かっこいい!
あ、なんだこの特殊クレーン!かっこいい!
つぼ押しとかによさそうなごりごりした形態。こんなのに押されたら即死。
つぼ押しとかによさそうなごりごりした形態。こんなのに押されたら即死。
このクルーズのあと、船で工場地帯をクルーズしてそのままクレーンに持ち上げられてぐるんぐるんに振り回されて狂喜するみたいな夢を見た。
今日いちばんでかいで賞を受賞したのは、玉島国際コンテナターミナルの紅白キリンさんである。というか水島港クルーズのつもりだったのが気づいたら玉島まできてくれた船長さんである(びっくりした)。
今日いちばんでかいで賞を受賞したのは、玉島国際コンテナターミナルの紅白キリンさんである。というか水島港クルーズのつもりだったのが気づいたら玉島まできてくれた船長さんである(びっくりした)。
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HOW TO 8. 陣取るなら、時計回りなら左舷、反時計回りなら右舷に

360度見渡せる船内だと、「あああっちも!うおおこっちも!」とあちこちカメラを向けすぎてあっというまにメモリもバッテリも使い果たすという事態になりかねないが、そこは黙って時計回りのコースならより目標に近い左舷側、反時計回りなら右舷側に陣取り、目の前の構造物に集中しよう。反対側は帰りに撮ればいいのである。そして小さな船は前を少しあげて進むので、最前列は揺れや水しぶきどんとこいな猛者専用である。
そうはいっても先頭は
そうはいっても先頭は
異常に楽しいのですが(幹事自ら遠慮なく陣取った)
異常に楽しいのですが(幹事自ら遠慮なく陣取った)
ところで、ふつう小さな釣り船だと、巨大な船の「引き波」をやりすごしたり、特に風のある沖合では時間がかかったりするのだが、今回の船長さんは容赦なく「引き波に乗って」「追い風をここぞとばかりに」航行をつづけるというハイパーテクを駆使。はりきって右舷最前列に陣取った私は、両手を離してカメラ構えたりしようものならわりとまじめに死ぬかと思った(救命胴衣着用でしっかりつかまっているのが船内での正しい姿勢)。かと思えばここぞというポイントでは船をとめて詳細に解説してくれるし、本当に何者なんだ船長さん。

HOW TO 9. 広角か望遠か

ちょっといいカメラを持って行くひとは、広角と望遠のレンズを持って行くよりは広角用、望遠用、カメラを2台持って行くのがよいだろう。あるいはコンパクトデジカメのほうが手軽だったりもするし、さらに言うとカメラのことは忘れて望遠鏡を持っていき心のメモリーに保存する手もある。
広角だけ持って行くとこんな写真ばっかりになるし
広角だけ持って行くとこんな写真ばっかりになるし
望遠は基本的に半分以上がこういう意味深な写真になります(ゆれるので)
望遠は基本的に半分以上がこういう意味深な写真になります(ゆれるので)
個人的には
個人的には
でかいものは
でかいものは
なるべく望遠で寄れるだけ寄って撮った方が、でかさがわかる気がします
なるべく望遠で寄れるだけ寄って撮った方が、でかさがわかる気がします

HOW TO 10. 昼か夜か

工場クルーズといえば船長さんも不思議がっていたとおりすっかり夜景観賞クルーズの定番(とはいわないまでも1ジャンル)として定着している節があるが、夜景の場合、写真がまったく撮れないという難点がある(ゆれるので)。それに隅々のディテールまで楽しむならば、昼の方が断然オススメなのだが、画期的な解決策としては、昼便と夜便の2クルーズまわすという手があるな。うん、今度はそうしよう。
そうこうしているうちに日も暮れて
そうこうしているうちに日も暮れて
フレアスタックにも火が灯り(昼でも燃えてます)
フレアスタックにも火が灯り(昼でも燃えてます)
夕餉の支度のけむりがのぼり(同上)
夕餉の支度のけむりがのぼり(同上)
鉄塔たちも山に帰る(昼もここにいます)
鉄塔たちも山に帰る(昼もここにいます)
工場に囲まれながらも他に船がなく静寂に包まれたこの場所で、「俺はここでうまれたんだけど、子どもんときはこの川で水遊びしてたんだよね…」と船長さんの思い出話がはじまった。さっきまでみんなであんなにも工場に浮かれてすみません。しかし「いまは親戚もみんな港の仕事してる。俺も、港の仕事ならなんでもやってるよ」と、べつに格別感傷にひたっている様子でもないようだ。そして船長さん、やはり釣り船だけの船長さんではなかった。「でも今度は釣りでぜひきてね」ということである。

瀬戸内海クルーズ、まだまだ開拓の余地あり

結局、瀬戸大橋の話を1ページ目でしかしていないが、瀬戸内海、いいところである。ある時代の日本を支えてきたものたちの結晶がここにある気がする。そして瀬戸内海視点で地図をみてみると、うん、まだまだ行くべき港がやまほどあるようだ。次の計画を練りたい。

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広いよね、瀬戸内海。
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