特集 2011年11月16日

“封ろう”をもっと自由に

「お疲れ」の意ではなく自分(乙幡)のサインだ。
「お疲れ」の意ではなく自分(乙幡)のサインだ。
この写真のようなものを「封ろう(封蝋)」という。ご存知、封筒に押して封をするための蝋です。どうにもヨーロピアンなイメージの封ろう、やはりスタンプ部分の絵柄もヨーロピアーンなものが多い。
だがどうでしょう、ここは日本です。既成のイメージをとっぱらって、自由に考えてみたらどうなるか。
1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

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封ろう、再び

というわけで、封ろうを買ってきた。東急ハンズで揃えたのだが、売り場にはグルーガン型のシーリングワックスなるものも売っていて、知らないうちに進化していた。
持ち手、印面、蝋、この3つともそれぞれ1500円近くした。おおぅ。
持ち手、印面、蝋、この3つともそれぞれ1500円近くした。おおぅ。
知らないうちに?じゃ知ってるときはあったのかというと、筆者がまだ高校生のとき、オリーブ少女のなり損ないだった頃、使う用もないのに雑貨屋で封ろうセットを買ったことがあるのだ。地方の高校生の物欲はよくわからない。やはりこういう、持ち手付きの重厚なヨーロピアーンなたたずまいのものだ。印面も、格調高き英字の筆記体。

案の定、ほとんど使う機会もなく、たぶんいまだに実家に残っているはずだ。

では押してみましょう。
デイリーポータルZの「Z」を選んだのだが、筆記体なので釈然としません。
デイリーポータルZの「Z」を選んだのだが、筆記体なので釈然としません。
ろうそくのような芯がないタイプの蝋なので、スプーンを熱してその上で溶かしてみる。じんわりと溶けていく。
ろうそくのような芯がないタイプの蝋なので、スプーンを熱してその上で溶かしてみる。じんわりと溶けていく。
溶けたら、あわてずゆっくりと封に落としていく。広く流れていかないように注意する。
溶けたら、あわてずゆっくりと封に落としていく。広く流れていかないように注意する。
スタンプを押し付けて、しばらく置いてゆっくりはがすと…
スタンプを押し付けて、しばらく置いてゆっくりはがすと…
おう、いろいろと微妙な失敗。焦げ、偏り、字の向きの、失敗三冠王。
おう、いろいろと微妙な失敗。焦げ、偏り、字の向きの、失敗三冠王。
置いた蝋が片流れしたり、泡立ったり、押すとき外にはみだした蝋が均一の広がりにならなかったり、外すとき割れたりと地味な苦労があったのだった。この熱せられた蝋の匂いも懐かしい。雑誌の影響で雑貨屋めぐりに上京したのはいいが、欲しいものがわかんなくて適当なチョイスしてばかりだった頃を思い出す。

封ろう関係では、他にシールや、こんなものも出ていた。
今やもうおなじみとなった、楽しいマスキングテープ。
今やもうおなじみとなった、楽しいマスキングテープ。
これはもう、切って貼るだけ。なるほどー。
これはもう、切って貼るだけ。なるほどー。
これなら手軽に封ろう風の封をすることができる。そしてこちらの柄も、鍵やクローバー、ハートやト音記号など、格調の高いものとなっております。

そうか、シールって手があったか。じゃあこれで・・・

ということではなく、やはり自分で印面を作ってみなけりゃなるまい。
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カフスならどうだったんだろう

印面を考える前に、封ろうについていくつか試してみたい。

シャーロックホームズの探偵小説に、封ろうをとめるのにカフスボタンを使っている場面があったかと思う。いかにも、本場ヨーロッパの人々の、封ろうへの慣れ具合が感じられて、かっこいいなあと思った記憶がある。

うちにカフスボタンはないので、代わりに指輪やペンダントで試してみる。
これもなんでか買った、陶器のリング。指輪の人の顔が怖い。
これもなんでか買った、陶器のリング。指輪の人の顔が怖い。
これをぐいっと押し付ける・・・すまん、指輪の人!
これをぐいっと押し付ける・・・すまん、指輪の人!
プハッ。もっと恐ろしくなってしまった。
プハッ。もっと恐ろしくなってしまった。
蝋離れが悪く、指輪にくっついてくるわ蝋は壊れるわ、さんざんな結果に。リップクリームでも塗ってから押したらよかっただろうか。金属のほうがいいのか。

ならばシルバーのこれはどうか。
いつも着けているペンダント。この小鳥が写し取られると愉快だろう。
いつも着けているペンダント。この小鳥が写し取られると愉快だろう。
蝋の熱に気をつけてぐいっと。
蝋の熱に気をつけてぐいっと。
あわわわわ。
あわわわわ。
印面を何でどう作るか、悩んでいた。金属を彫るのは大変だから、オーブン粘土か何かを加工して…と思っていたのだが、金属でも陶器でもこんな結果になるとは。なんだか足がすくんできた。

とにかくテストとして、まずは消しゴムはんこで印面を作ってみることにした。進めなければ進まないわけで。ゴム、余計くっついてしまう気もするが…
とにかく絵柄部分を凹ませればよい。
とにかく絵柄部分を凹ませればよい。
ぐにっと。
ぐにっと。
しばらく置いて、そーっと外してみたら・・・おお、思ったよりきれいに出ている!
しばらく置いて、そーっと外してみたら・・・おお、思ったよりきれいに出ている!
乙幡の頭文字、乙である。Zではない。

消しゴム、大丈夫でした。それに外すとき、ゴムの適度な弾力で、蝋が割れにくくとても外しやすい。よかった、オーブン粘土焼く手間が省けた。

調子に乗って、作ってみよう。
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和封ろう

どんな印面にするか。やはり「封をする」からには、それに適した印面にするのがよかろうと思う。
マル秘文書に。普通のスタンプより、秘密度合いが深くなった気がしないだろうか。
マル秘文書に。普通のスタンプより、秘密度合いが深くなった気がしないだろうか。
意味も見た目もそのまんま「〆」。毎月の請求書にももっともらしく押して、箔をつけたい。
意味も見た目もそのまんま「〆」。毎月の請求書にももっともらしく押して、箔をつけたい。
徳川の家紋「丸に三つ葉葵」。徳川家用に。水戸黄門のオープニング背景に出てくるぷっくりした立体物のイメージだったのだが、掘り込みが足りなかったか。
徳川の家紋「丸に三つ葉葵」。徳川家用に。水戸黄門のオープニング背景に出てくるぷっくりした立体物のイメージだったのだが、掘り込みが足りなかったか。
寛永通宝。これも、香川県の琴弾公園の砂絵(銭形平次のオープニングに出てくる)をイメージしたが、ほっそりした仕上がりに。内容に特に意味はない。
寛永通宝。これも、香川県の琴弾公園の砂絵(銭形平次のオープニングに出てくる)をイメージしたが、ほっそりした仕上がりに。内容に特に意味はない。
指紋をスキャンして、線を適当にゆるくして彫ってみた。「親指で押したのか!」と思わせ、こっちの本気ぶりをアピールしよう。何の本気かは、あなた次第。
指紋をスキャンして、線を適当にゆるくして彫ってみた。「親指で押したのか!」と思わせ、こっちの本気ぶりをアピールしよう。何の本気かは、あなた次第。
というわけで、消しゴムはんこで代用できることがわかった。寛永通宝以外は、これはこれで有りだと思う。

検索してみたら、すでに消しゴムはんこで試している人がいたので特に新発見というわけではないが、自由な封ろうができると思うとうれしい。あの真鍮の印面、木の持ち手の雰囲気も捨てがたいがね。

前に作った「心臓」はんこをハート代わりに押してみたが、凹凸がしっくり来ずよくわからん結果に。やけに生々しい気もする。
前に作った「心臓」はんこをハート代わりに押してみたが、凹凸がしっくり来ずよくわからん結果に。やけに生々しい気もする。
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