意外な鍋の具を募集した企画への情報
鍋の具にすると、干し芋が豚肉になる。情報は当サイトのTwitter投稿コーナー「文章ヒルズ」でのお題「鍋の具、実はこれがうまい」に寄せられたもの。
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「鍋の具、実はこれがうまい」投稿をまとめたtogetterはこちら)
全体的に「それがあったか!」とひと目でおいしさを確信するような投稿が多かったなか、干し芋は大変に意外だった。
意外ながらに垣間見える情報の信憑性の高さからこの回のMVP投稿にもさせてもらい、その際、投稿者の方にも企画化を快諾いただいたのだった。
香川からは最初から最後まで鍋にうどんを入れるという情報も届き、うどん県の期待通りの仕事に胸が躍った(写真は「
うどん修行部」より)
干し芋への期待と不安
早速にも鍋に干し芋を入れて試したい。
スーパーで白菜、ネギ、きのこ、豆腐といかにも「今日の晩ご飯は鍋ですよ!」という状態の買い物かごに追加して干し芋を入れた。
買い物かごの中でまだ煮ぬ干し芋が、すでに鍋の一員として馴染んでいる。
違和感はあるが、どこか「これはいけるんじゃないか」という妙な自信がわいた。いけるぞ、鍋に干し芋!
考えてみたら自分で干し芋を買うのは初めてかもしれない
いけるぞ! と振りかぶってみたものの、自宅に戻り買ったものを広げて下ごしらえしする段になると今度は一気に自信がなくなってきた。
気持ちがあっちこっち行って申しわけない。でも、こんな状況なんだ。
ニンジンのとなりで居心地の悪そうな干し芋
転校生ならかわいそうなくらい馴染んでない
「期待と不安が入り混じる」とはよく聞く言い回しだが、鍋の準備をする間は私の人生の中でも一、二を争うのではないかと思う期待と不安の入り混じる時間だった。
本当に、本当にこれでいいのだろうか。干し芋を煮るような人生でいいのだろうか。短い時間の間にうっかり人生単位で良し悪しを問うようなことになっているぞ。
そんな、まさか人生までをかけるような事態になった鍋が煮えたぎりました。さあ、どうなの?!
はっ! 干し芋どっかいった!!
干し芋は豚肉になったのか
しまった。鍋というのはとかく具がどっかへ行くものなのだ。大事なことを忘れていた。
ぐつぐつと煮えた(味噌仕立ての鍋にしました)鍋のなかで、生来の色の地味さを発揮して見事に干し芋はどっかへ行ってしまった。
おーい干し芋やーい。
奥底に沈んでいたところを救助。溶けてなくてよかった(干し芋は豆腐の左隣のです)
色がサツマイモ色に戻ってる?
救出された干し芋は、芋になっていた。
乾物というのはだいたい水やお湯で戻して食べるものが多いが、煮ることによって干し芋も芋に戻ったということか。
あれ、豚肉って話はどこにいったんだ?
いろいろと言いたいことはがまんして、とにかく食べてみよう。
あ!
干し芋に感じる揚げ衣
干し芋は、芋だった。だが、芋である以前にとろーっとしてくたくたになった揚げ衣のような食感がある。芋の天ぷらが煮汁を吸ったような、というと一番近いかもしれない。
なぜだかたんぱく質系のコクも感じ、豚肉のようだというのも分かる気がした。私はどちらかというと、白身魚のようにも感じた。
うわ、なんだこれ。不思議とおいしいじゃないのさ。
その後も沈んだ分の干し芋が続々と現れて嬉しくなった。いつもの鍋に飽きたときにイースターエッグとして干し芋を入れるのもいいかもしれないですよ
「干し」ブームの今、もっと干し芋を利用したい
思ったのは、干し芋は完成されたお菓子でありながら一方で食材としての余地があるぞ、ということだ。
近ごろ野菜や果物を干すことによって栄養価や味を高めて食べるというのが流行らしいと聞いた。もしかすると今こそ干し芋、なのではないか。
よし、干し芋の余地をもっと試してみよう。
調べてみると、干し芋料理というものが世の中にはちゃんとあるようだ。みそ汁や天ぷらなどのレシピはいろいろなところで見つかった。鍋でおいしいならみそ汁は当然ありだろうし、天ぷらも間違いないだろう。
そんななか、カレーのトッピングにするといいという情報も見つけた。カレー……。
ちなみに、「鍋の具、実はこれがうまい」にあった投稿でで干し芋のほかに気になっていた おかきとフランスパンも試した!
おかきは確かにもちもち、フランスパンもじゅわっとしておいしかった。鍋の懐の深さよ……。
カレーに干し芋を乗せさせてもらう
ある素材を意外な料理に使おうというとき、選択肢としてカレー味が上がるのは、もうカレーの宿命といってもいいと思う。
しかし干し芋、お前もか。
ちょうど友人の家でカレーをご馳走になることになっていたので干し芋持参で行くことにした。
「カレー作ったから食べにおいでよ」と誘ったら、「うん! じゃあ、そのカレーに干し芋いれさせて!」って返される。
憤慨するというより、なにそれなんか怖い、みたいなことになってしまったかもしれない(友人は笑ってくれました)。
ひとんちで干し芋を焼かせてもらう
干し芋以前に用意されていたトッピングのフライドオニオンが輝いていた
しかしここはわき目もふらず、遠慮なく干し芋をトッピング!
カレーのライスにレーズンの原理
おしゃれなカレーパーティーのような趣を前にして完全に恐縮していた干し芋(というか私)だったが、干し芋トッピングはちゃんとおいしかった。
レストランでカレーを頼むとご飯にレーズンが乗ってきたりするが、あの原理なんじゃないか。
この日のカレーが甘めのひき肉カレーだったのも幸いしたのだと思うが、食感も甘い味もカレーの良いアクセントになっていた。
すごいぞ、干し芋。確かな手ごたえだ。大満足してこの日は友人宅を後にした。満足しすぎて残りの干し芋を置き忘れ、友人にとって私は完全に「あの干し芋の人」に認定されたと思う。光栄だ。
こちらではカレーのお供として白いご飯や十六穀ご飯のほか、見たこと無いパスタや
焼きたてのパンも用意。干し芋以前に私の知らないカレー文化圏であった
干し芋のたたき
鍋によし、カレーによし。思いもよらぬ干し芋の活躍に胸がすく。
この勢いならばもっとすごい料理があるんじゃないか。図書館で郷土料理や世界の料理をあたってみた。
さらなる干し芋の使い道を探るべく、本に頼る!
調べ方が足りなかったか、干し芋を利用したような記述は見当たらなかった(干し芋は干し芋ではなく「乾燥芋」として掲載されていることが多いことは分かった)。
あとはやはり産地発信の情報だろうか。調べていて、これはという料理にめぐりあった。干し芋のたたきである。
干し芋の、たたき
レシピを見つけたのは、干し芋を扱うお店のホームページ(
「干し芋のタツマ」の干し芋料理のページ)。
干し芋はまずはシンプルに味わって欲しい、としながら、色々とためして上手くいった調理例を紹介していた。
そのなかにあったのがこの、干し芋のたたきだ。たたきといえば、やはり代表はカツオだと思うのだが、そのカツオをまんんま炙った干し芋に差し替えたというレシピである。
大胆だ。大胆さでいえば世界ランク100位には入るレシピなのではないか。
玉ねぎのスライスや大葉、にんにくのスライスと一緒にポン酢と食べる
これが驚いた。おいしいのだ。
味は「干し芋」で「ポン酢」で「薬味」で、それぞれの味そのままだ。
でも、一緒に食べたらなんだか不思議とおいしい。それに胸を張って「これは たたきだ」、という味がするのだから、干し芋としてこれは立派な仕事をやってのけている。
食べながら「どうだ、参ったか!」と思ったが、参ったのは完全に私である。
干し芋として生まれ育ち、まさかこういう形で食卓にのぼるとは
干し芋は料理に使える
他にもピザやカナッペに干し芋がおいしいという情報をいくつか見かけた。
もしかしたら干し芋、食材として干ししいたけくらいの実力はあるんじゃないか。
豚肉にみたいな味になる、というところから始まって最後は干ししいたけみたいに使えるんじゃないかというところまで流れ流れてやってきた。
おやつの定番にまさかの展開だった。
今後の干し芋生活に増したありがたみ
干し芋はそのまま食べるのがやっぱりおいしいと思う。もしまた買っても料理に使う前にきっとがまんできずにそのまま食べちゃうんだろう。
でも、カレーにも使えるんだよなあと思いながら食べるとまたありがたみをひとしおだと思うのだ。
普段の生活では一切英語は使わなくても、やっぱり話せた方がいい。それと同じだ(同じか?)。
芋といえば、友人宅では安納芋の炭火焼きも食べさせてもらった。焼かれたり干されたり、芋の一生も色々だけど、どうなってもおいしいんだからえらい。