特集 2011年10月28日

鎌倉「穴場」スポット探訪

本当の意味での穴場。
本当の意味での穴場。
古都鎌倉には穴が多い。

いきなりな書き出しだが、隠喩とかではなくそのまま穴である。壁にでかい穴が開いているのだ。

今回はそんな鎌倉の穴場スポットを紹介したい。
行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。愛知県出身。むかない安藤。(動画インタビュー)

前の記事:胃に優しいコーヒーを作る

> 個人サイト むかない安藤 Twitter

あなたの知らない鎌倉

鎌倉というと小町通り(駅前のにぎやかな通り)で食べ歩きしたあと江ノ電に乗って大仏を見てお土産にハトサブレ買って、みたいなイメージではないだろうか。
修学旅行生も多く訪れる古都鎌倉。
修学旅行生も多く訪れる古都鎌倉。
しかしそれは鎌倉の表の姿であって、実はあまり人のこない場所は恐ろしいことになっているということをみんな知らない。鎌倉には人知れずぽっかりと穴が開いている場所があるのだ。今回はそんな本当の意味での穴場スポットを紹介したい。
スタート地点は北鎌倉駅。趣のある駅舎である。
スタート地点は北鎌倉駅。趣のある駅舎である。

穴について

鎌倉の壁には穴が開いている場合がある。あとで出てくるが、例えばこんな感じだ。
穴。
穴。
鎌倉の穴はそのまま出口へと続いているトンネルタイプのものと、そうではなく出口のない巣穴タイプのものとがある。どちらもたいてい地図には載っていないので見にいくにあたって事前にネットでおおよその場所を調べておいた。秋の鎌倉、穴めぐりの始まりである。

まずは北鎌倉駅から歩いて10分ほどのところにある浄智寺。ここに穴があるとの情報をつかんでやってきた。
有名なお寺です。
有名なお寺です。

浄智寺は鎌倉五山の第四位を成すといわれており、それは格式の高い寺である。

しかし寺の周りをぐるりと歩いてみてもそれらしき穴が見つからなかった。インターネットには五山の四位とか、そういう情報はあっても穴の位置に関する情報はないのだ。みんな油断しすぎだ。

浄智寺の裏山にも穴があるという。

浄智寺の脇の道を行く人は心してかかれ、との警告。この先5分で道がなくなるらしい。
浄智寺の脇の道を行く人は心してかかれ、との警告。この先5分で道がなくなるらしい。
しかし事前の調査ではこの先に穴があるはずなのだ。
しかし事前の調査ではこの先に穴があるはずなのだ。
行く手はこんな道。けっこう整っている、と思いきや。
行く手はこんな道。けっこう整っている、と思いきや。
きっかり5分でこうなるから警告通りである。
きっかり5分でこうなるから警告通りである。
さらに進むとほぼ道がなくなる。
さらに進むとほぼ道がなくなる。
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なにしろ険しかった。

鎌倉は東西と北を山に囲まれているため(南は海)、天然の要塞として都市が守られてきた。しかしそれでは生活には不便だということで、昔の人は山に道を作ったり壁に穴を掘ったりしたのだ。

鎌倉に残る穴はその名残らしい。

しかしいま僕が登っているこの山の中にもいくつか穴があるはずだったのだが、まったく見つけられないまま気がつくとすでに下山していた。泥だらけである。

もうこのまま東京に戻って代案として考えていた猫避けペットボトルの水質調査でもしようかと思っていた矢先だった。ついに一個、穴が見つかったのだ。水質調査は次回以降にするのでまず穴を見てほしい。
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それは住宅街にぽっかりとあいていた

険しい山を下り、住宅街を鎌倉駅へと向かって歩いていた時である、なにやら壁際に暗い場所があるのを見つけた。
穴である。
穴である。
これが鎌倉の穴である。
これが鎌倉の穴である。
腰をかがめれば入れそうな穴がいきなりあいているのだ。さほど大きくはない。しかし迫力満点。富士急ハイランドの戦慄迷宮(お化け屋敷、僕は最初のお化けに出会う前にリタイヤした)くらいの迫力だ。
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近くには穴を利用した駐車場なんかもあった。
崖に直接彫られた駐車場。
崖に直接彫られた駐車場。
このあたりは住宅のすぐそこまで崖が切り立っている。そしてよく見るとその崖にところどころ穴があいているのだ。
いかにもなにかありそうな崖である。
いかにもなにかありそうな崖である。
見よ、昼間でもこの怖さ。
見よ、昼間でもこの怖さ。
この日は秋晴れで気温が20度後半の少し汗ばむ陽気だったのだが、崖際の道を歩いているとどこからともなく冷気が降りてくるのを感じるのだ。これ以上書くと怖いのでやめる。写真を拡大すると変な物が写っていますよ、というようなメールも送らないでほしい。デジカメのデータはもう全部消した。
たまに開いている穴にはお稲荷様が奉られていたりする。
たまに開いている穴にはお稲荷様が奉られていたりする。
なんだかわからないけど奉られている。穴の神秘的活用法である。
なんだかわからないけど奉られている。穴の神秘的活用法である。
中が明らかに墓になっている穴もあった。
かなり巨大な穴である。中は墓。
かなり巨大な穴である。中は墓。
大きな穴には中に何かある場合が多かった。何か、といってもトイレとか風呂場とかではなく、たいてい人が手を合わせるような内容のものだ。そういえば沖縄にも「ガマ」と呼ばれる穴がたくさんあって戦時中は防空壕にも使われたのだとか。長い間住んでいたけどもちろん入ったことはない。
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穴の記事は続くが、この先も穴の中の様子を写した写真はない。入るのが怖かったからだ。

不満のある読者は自分で中に入って見てきたらいいと思う。そんなの自己責任である。インターネットにはすべて載っているなんて思うのは幻想なのだ。
ひとんちの物置として利用されている穴もある。こういうのはさほど怖くない。
ひとんちの物置として利用されている穴もある。こういうのはさほど怖くない。
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海蔵寺の穴

穴を探して歩く秋の鎌倉。

このあと海蔵寺というお寺の近くですごい穴を見つけてしまった。

ぜったい入っちゃダメだ、って本能が言っていた。
ぜったい入っちゃダメだ、って本能が言っていた。
おそらくお寺へ向かう人が使う駐車場だろう。ジャリ石を敷いた広いスペースの突き当たりが黒く宇宙につながっている。
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前の広場は駐車場。穴は常時開放状態。
前の広場は駐車場。穴は常時開放状態。
近くで工事しているおじさんたちとちょっと話をしたのだが、あの穴、なんか怖いよなあ、って言っていてうれしかった。僕もいまそう思っていたんですよね。

一方、ここ海蔵寺にはもうちょっとソフトな穴もある。
こんな。
こんな。
穴だけど性格が明るいので友達になれるタイプ。妖怪人間でいうとベロである。
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しかし油断するとこんなのもある。明らかにベム。
駐車場の奥が穴になっている。
駐車場の奥が穴になっている。
海蔵寺付近には見つけただけで4~5穴あった。お寺の歴史的背景とか文化的価値とかについては詳しくなくとも、海蔵寺といえば近くに大きな穴があるお寺、と覚えておいて損はないと思う(得もないかもしれないけれど)。

穴にはなにかある

ここまで穴をいくつかめぐってみて感じたのはその有無を言わさぬ迫力である。

向こう側があいていて抜けられるトンネルタイプの穴はさほどでもないのだが、光りが途切れて奥が暗闇になっている巣穴タイプの穴は覗く者にあらぬ妄想をかき立てさせる。「悪魔の辞典」を書いたアメリカの作家ビアスは穴に入っていったまま出てこなかったと聞く。穴には常識なんて通用しないのだ。

穴におびえながらも記事はまだ続く。
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穴アラカルト

今朝家を出るときに家族には「鎌倉で穴の写真を撮ってくる」と言ってある。しかし穴観光はまだ一般的ではないのでもうちょっと言い方があったかな、と来てみて思った。そんなことを急に思い出したのはたぶん心細かったのだろう。穴がつなぐ家族の絆である。

次に訪れたのは鎌倉駅近く、寿福寺。この近くにも穴がある。
ここは境内には入れないのですが、緑深くてとてもきれいなお寺です。
ここは境内には入れないのですが、緑が深くてとてもきれいなお寺です。
修学旅行生がいるとほんと安心する。
修学旅行生がいるとほんと安心する。
寺の脇を抜ける道の突き当たりに穴があるのが見えるのだが。
寺の脇を抜ける道の突き当たりに穴があるのが見えるのだが。
なんとこれ、ひとんちだ。
なんとこれ、ひとんちだ。
ここでは穴が門になっているお宅を見つけた。

やはり向こう側の見える穴は怖くない。しかもこのお宅に限ってはかなり趣味がよく、妖精でも住んでいそうな穴雰囲気である。こんな穴なら住んでみたい、と思わせる穴だ。

そして寿福寺付近にはもう一つ大きくて怖くない穴がある。
実にいい穴である。
実にいい穴である。
向こう側に家まで見える。こういう社会性を備えた穴は見ていて実に気持ちがいい。
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しかもこの穴、車が通る。
車がぎりぎり通れる穴。
車がぎりぎり通れる穴。
しかし油断していると5メートルくらい横にちゃんと真っ暗な穴もあるので安心できない。
ごーん。
ごーん。
近づくのはこれで精一杯。
近づくのはこれで精一杯。
この界隈は修学旅行生が多いので、昼間ならば人の往来があって穴観光にも向いていると言える。夜のことは考えたくないが。

すぐ近く、寿福寺から源氏山へと登る途中にも穴がある。このあたり、さながら穴銀座である。
すぐ逃げられるようにカバンは置かない。
すぐ逃げられるようにカバンは置かない。
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たまに「ガサッ!」とリスが飛び出してきて心臓が止りそうになる。
たまに「ガサッ!」とリスが飛び出してきて心臓が止りそうになる。

墓にも穴が

寿福寺の奥の墓地には源実朝と北条政子の墓がある。墓地になんてぜったい一人では行かないが、修学旅行の中学生が集団で入っていったので試しについていってみた。
あの墓石の裏に穴があるのだ。
あの墓石の裏に穴があるのだ。
ひたすら暗い。
ひたすら暗い。
これ以上近づきたくなかったのでレンズをめいっぱい望遠にして撮影。修学旅行生からはぐれたくなかったので歩きながら撮ったらちょっとブレたが、それが巨大な穴であることだけはわかる。
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どうだろうか、もう穴欲もある程度満たされただろうか。しかし鎌倉駅へと戻る途中にも穴があるから見ておきたい。

今回の取材で遠くの穴も見つけられるようになった。
今回の取材で遠くの穴も見つけられるようになった。
誰かのぞき役の人と一緒に来たらよかったと思う。
誰かのぞき役の人と一緒に来たらよかったと思う。
原人でもいそうな穴だ。
原人でもいそうな穴だ。
かなり住宅街に近い場所にある穴。だからといって生活に密着しているわけでもなく、崖にただひっそりとその口を開けていた。穴とは本来そういうものなのかもしれない。
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穴とはなにか

近くのお店で飲み物を買うついでに穴のことを訪ねたら「ああ、そういえばあるね、穴」と言っていた。あるよ、穴、って思った。

しかし考えてみると穴がある、という表現はちょっとおかしい。穴は空間なのでそこにはなにもないのだ。周りに岩があるだけだ。

しかし我々は穴を「ある」という。なにもないものに、あると言い張っているのだ。

最後の最後でなに言い出すんだ、と自分でも収まりがつかなくなったところで終わりたい。


鎌倉に穴あり

海と山が有名な鎌倉には穴もあることがわかってもらえただろうか。何かの機会に鎌倉に行くことがあったら少し注意して崖のあたりを見ていてもらいたい。穴は意外とあなたの近くに開いているものだ。
こういうトンネルのなんと安心できることか。
こういうトンネルのなんと安心できることか。
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