ある日の朝ごはん
とつぜんだが、拙宅のしょうゆ差しをご紹介したい。
曲線的なフォルムのおしゃれなしょうゆ差し
デザインがいいのでなかなか気に入っているのだが、ひとつだけ難点がある。
この口が詰まるのだ
詰まったときの口は、覗いてみるとしょうゆの薄い膜ができている。これをあらかじめ爪楊枝などで破っておけばいいのだけど、家でくつろいでいる時はそういうひと手間が面倒なものだ。
そのため、詰まったまま使ってしまうことが多い
口の詰まったしょうゆ差しをしばらく傾けておくと、中のしょうゆの水分が、固まったしょうゆを溶かしてくれる。これでいちおう詰まりはとれる。問題は、詰まりがとれた時点で、しょうゆが口までなみなみ流れ込んでいることだ。
あっ!
決壊した堤防に濁流のごとくしょうゆが流れ込み、目玉焼きはたちまちしょうゆの大洪水である。朝ごはんの世界に、ノアの箱船は、無い。
しょうゆまみれからは何者も逃れられない
しょっぱっ…
こうしてしょうゆのかけすぎを繰り返すことにより、塩分の過剰摂取でじわじわと人類の血圧が上がっていく。
これが今回の論点、「しょうゆかけすぎた問題」の一部始終である。
エンパワーメント、醤油のかけすぎ
問題提起の後、いつもならこう展開するだろう。「かように厄介な、しょうゆかけすぎた問題。人類の不幸を根絶するため、しょうゆを確実に適量かける技術について考えてみたい。」
しかし今回に限っては、この問題を解決するつもりはさらさらない。何を隠そう、僕は世界中のみんながもっとしょうゆをかけすぎればいいと思っている。だってこのくらいのプチ不幸、むしろファニーな出来事じゃないか。しょうゆをかけすぎた人に対しては全力で「やーい!」と冷やかしていきたいし、インターネットっぽく表現するなら「いまどんな気持ち?ねぇねぇ今どんな気持ち?」といいながら相手の顔を斜め下から上目遣いで覗き込んだまま、周囲360度を跳ね回りたい。
しょうゆのかけすぎ、むしろ積極的に荷担していく所存である。
さっそく加担しましょう
唐突だが、工作の時間である。材料。
しょうゆ差し、小ネジ、コルクボード、ステンレスフレーム
コの字のサイズはしょうゆ差しの直径に合わせること
工程2.しょうゆ差しをマジックテープでフレームに止める
コの字の開口部は、しょうゆ差しの背中(差し口がない方)に
接点の3ヵ所を止めれば充分
工程3.コの字型のフレームの先に、短いフレームをネジ止めする。
可動するようにネジ止めは緩く。
工程4.コルクボードにフレームの先を差し込み、固定する。
自立させる
最初のプロトタイプはこれで完成である。しょうゆ差しの丸い頭が、スターウォーズの
R2-D2やアンドロイド携帯でおなじみの
ドロイド君を彷彿とさせる。また前後にスイングしておじぎをする姿は、
水飲み鳥のおもちゃを思わせる。
しかし、こんなキュートな姿ではありながら、必要最低限の機能は充分にそなえているのだ。
色水でその性能を確かめてみよう。
これ単体でしょうゆをかけすぎることが可能
充分な機能を有していることがおわかりいただけただろうか。
醤油かけすぎ機として。
醤油かけすぎ機とは
この工程で何が作られるのか、いままであえて説明してこなかった。何を隠そう、醤油かけすぎ機である。
この記事の目的は、この醤油かけすぎ機をどんどんビルドアップしていくことで、しょうゆかけすぎた問題について「考えすぎてよくわからなくなった」レベルまで人々の意識を高めることである。
(しょうゆをかけすぎるために)僕にその手を汚せというのか
21世紀も1/10が過ぎ、いまやスマートフォンでいつでもどこでもインターネットが出来る時代だ。いろんなものが自動化され、ドアや階段はずいぶん前から自動だし、最近はトイレをながすのだって自動だ。それなのに、ことにしょうゆかけすぎ問題に関してだけは、技術の進歩は遅れていると言わざるを得ない。
いちいち人間がしょうゆをかけすぎているのはおかしい。しょうゆぐらい機械が勝手にかけすぎたらいいんじゃないのか。
第2世代
いったんかけすぎ機を解体し、コの字の端に小さな部品をつけた
一方、脚の側にはコルク片を接着
ここに黒い部品を接着する
黒い部品を、コの字の端に接続した
全貌
この黒い部品が新型かけすぎ機の心臓部である。
サーボモーターという部品で、自由な角度で回転を止められるモーターだ。
当サイトでの活用事例としては、過去に
すね毛はがしマシンでも使われている。しょうゆをかけすぎたり、すね毛をはがしたり、ろくなことに使っていない点については素直に申し訳ないと思っている。
動作例。回転しているのではなく往復している
電源、制御用マイコン等を接続し、スイッチを押すと
自動で傾斜する。動作チェックOK
あとは基板に小さくまとめて
完成
2号機は配線や電子部品が加わることでいくぶんかインダストリアルな見た目になった。いままで食卓には登場してこなかったタイプのビジュアルだ。
しかしこのちいさな機械が、人々の生活を変える。
まじでクール。
これまでの「しょうゆかけすぎた」には、人の感情がつきものであった。しょうゆをかける前の緊張感、かけすぎてしまった瞬間の焦り、そして後悔。しかしこのしょうゆかけすぎ2号機の「しょうゆかけすぎた」には、そういった感情の機微が一切ない。ただ淡々とかけすぎるのみである。本物のクール。ゾクゾクくる。
国民的調味料であるしょうゆをジャパンとするならば、経済産業省の推進するクールジャパンとはまさにこのしょうゆかけすぎ2号機のことである。
経済産業省はいますぐ僕の口座に助成金を振り込んでほしい。
しょうゆかけすぎ事例としては非の打ち所がない
染み込み、ヨシ
辛っ…
明日のしょうゆかけすぎについて考える
やるべきことはやったように思う。しょうゆのかけすぎを機械化し、さらに自動化した。愉快な食卓が、無感情でしょうゆをかけすぎるディストピアと化した。実験動画を通して、筆者がコロッケにはしょうゆ派である、ということもさりげなくアピールできた。いいだろう、上々じゃないか。
一仕事終えた満足感。お菓子でも食べながら休憩しつつ、携帯電話のことを考えていた。
考えてみれば、お財布ケータイだってワンセグだって、要らんなーと思っていたものがなんだかんだで普及していたりする。カメラ付き携帯だって最初は「なんで電話にカメラ??」って思ったものだ。それが今ではなくてはならない機能。
要らん機能がけっきょく血肉となっていくこともあるはずだ。
やるしかない。かけすぎ機3号。
オプション(別売)
新機能の心臓部はこれ
これはチルトスイッチという部品である。直立しているときは2つの端子が繋がっているが、傾けると遮断される。
動作例。傾きでLEDのON/OFF
このチルトスイッチの両極にそれぞれ銅線を接続
銅線の先はUSB端子に接続する
この黄色いゴムチューブは
ライターであぶると収縮して、ケーブルの継ぎ目を固定してくれる
いっぽう、かけすぎ機の本体側にはUSBポートをつけた
ここの端子はUSBである必要は全くないのだが、家に余ってるのがこれしかなかったのだ。
チルトスイッチは、新しく用意した別のしょうゆ差しに貼り付ける。目立つとかっこ悪いのでラッコシールでカモフラージュ
どう見てもよけいに目立っていたのでセロハンテープに変更
完成・全体図
さまざまな事情が相互作用して、「USB接続のしょうゆ差し」という異常なものが完成した。しょうゆかけすぎ機専用オプションだ。
ちなみにこの適当なデバイスをパソコンに接続すると、(USB規格の仕様書を見る限りでは)即故障しない程度の弱い負荷をかけ続けることができる。
このじわじわ害するさじ加減は、人間にとってのしょうゆかけすぎ(塩分とりすぎ)と似ている。
3号機、完成
新しい方のしょうゆ差しにもしょうゆを入れておく
この3号機、一体どういう動きをするのかは、実際に動画で見ていただこう。
最初に手に取っている方が、新しく増設した、USBしょうゆ差しである。
人間が適量のしょうゆをかける気配を一瞬早く察知し、すかさずしょうゆをかけすぎてくれる。しょうゆかけすぎアシスト機能とでも言おうか。
2号機のクールさから一変、「意地でも適量のしょうゆでは済まさせない」という気概のようなものを感じる。
その気概がもたらした結果
辛っ…
こうして強力なオプションデバイスが完成し、しょうゆかけすぎ機業界も年末商戦準備万端である。
まだ終わっちゃいない
実はこのアシスト機能をさらに強化した、「人間が適量のしょうゆをかけようとするとすかさず遠くから走ってきてしょうゆをかけすぎた上で去っていく」機能をつけたかったのだが、無線通信やしょうゆ皿の所在地センシング、走行経路のコントロールなど技術的な困難が多かったため、今回は見送りとなった。
しょうゆかけすぎ機の進化はまだ終わっちゃいないのだ。
最後に、ここまで読んでくれた読者のみなさまに、一言だけ言っておきたい。
高血圧には気をつけようぜ。