ジャパンケーキショーに行く
毎年10月に開催されるジャパンケーキショー。いくつかの部門に分かれ、全国のパティシエが作品を出品する国内最大規模の作品展だ。そこにはもはや芸術と呼ぶべきケーキ達が並ぶ(らしい)。
誰でも見ることができます(僕は今回初めて行きました)
今回はそのショーを見に行こうと思うのだけれど、僕はケーキについては素人。せっかくなら詳しい人に解説をしてもらおうと、パティシエをしている弟に解説をお願いすることにした。
パティシエをしている弟
しかし弟から、スケジュール的にムリ、と断られてしまった。パティシエを目指す人達が通う専門学校で先生をしている弟は忙しいそうだ。そこで、いろいろ考えた結果、弟の彼女(マホちゃん)に解説をお願いすることした。
弟の彼女のマホちゃんを呼びました
パティシエの彼女だから僕よりはケーキに詳しいはずだ。それにマホちゃんは現在、ケーキ屋で働いており、以前は洋菓子の専門学校にも通っていたそうだ。詳しくないはずがない。ということで、僕と弟の彼女の二人でジャパンケーキショーに行くことにした。
入り口からオシャレ
もはや芸術
弟の彼女と僕の2人。何を話していいのか分からない天気でいうと小雨みたいな状態で会場に足を踏み入れた。そのとたんに驚く。僕の知っているケーキとは違う芸術と呼ぶべきケーキたちが目の前に広がる。
これ全部チョコで作られています
もうチョコと言われなければ分からないレベル
まず目に入ったのはチョコレート工芸菓子部門。1メートルはあろうかという作品がズラリと並ぶ。本当ににチョコなのか? と疑問が浮かぶけれど、マホちゃんはそうですよ、と当たり前のように言う。十キロを越えるチョコを使い、2カ月ほどかけて作るそうだ。
すべてがチョコ(この作品の場合はチョコを彫るらしい、それはもう本当の大仏だ)
デザインも作るのも全部出品する一人のパティシエがやるそうだ。技術だけでなく、デザインもできなければならないところが厳しい。ビックリするくらい僕にはできる気がしない。ホットケーキすら焦がすのに。
できるきがしないよね
飴ちゃん
飴で作られている部門もある。僕の知っている飴(のど飴とか)とは違いすぎるが、飴ちゃんですよ、と関西出身のマホちゃんは解説してくれる。飴ちゃんと言われると急にすごくない気がしてくるけれど、やっぱりすごい。
全部飴
全部飴ちゃん
出品された物の中でも素晴らしいものには金賞や銀賞などの賞が与えられる。ただ素人の僕には全て等しくため息が出るものになっている。マホちゃんの解説で、その差を知るのだけれど、それでも逆どんぐりの背比べ状態だ。
飴の薄さやつやなどが技術力らしい
熱い飴を引っ張り伸ばして作っていくので、指に水ぶくれができることもある。また温度の管理も大切で、せっかく作ったものが溶けることも。業界用語で「なく」というそうだ。
美術館にあってもいいと思う
全部すごい
このショーにはこの業界の人たちが多くやって来ている。有名なパティシエもいれば、専門学校の生徒もいる。学生の多くはスーツを着ていて、キッチリした業界なんだと知る。
これはマジパンというもの
有名なパティシエに会うとマホちゃんがとんでもなく興奮していた。嵐のコンサート会場にいるファンのように。そうか、パティシエはモテるのかと知った瞬間だった。もっと早く知っていれば僕も目指したかもしれない。
仕事が細かい!
マジパンは日本人しかできない、とマホちゃんが言う。こんなにも細かい仕事は目を閉じて針に糸を通すような難しさなのだそうだ。ユウスケ君(弟の名前)も作るんですよ、とたまに弟情報が入ってくる。仲いいな~とちょっとだけつまらなくなってしまった。
これは学生部門の作品。学生でも十分にすごい
僕がマホちゃんなら、まず間違いなく弟とは付き合わないし、彼氏の兄と二人でケーキショーに来たりはしない。今年の夏はマホちゃんだけで僕の実家に行き、父と一緒に吉野ヶ里遺跡で勾玉を作ったそうだ。いい娘だ。
どれも美しい(プティ・ガトー部門)
ケーキを見て美しい、という言葉が先行する。美味しいという感想ではなく美しいがこの会場には溢れている。正直、その辺の個展を見に行くより断然僕の心を刺激した。心地よいため息だらけである。
みんな熱心に見ている
美味しさも体験!
会場では「トップオブパティシエ」という実技部門も開催されていた。予選を勝ち抜いた人たちが、会場で先のチョコや飴を作るのだ(その様子は現在も
USTREAMで見ることができます)。
その技を見ようとすごい人だかり
展示会も行われている。ケーキ屋でケーキが並ぶショーケースやオーブンなど展示され、そっちか、というものがメインで目新しい。ケーキではなくケーキ周りのものが並ぶのだ。
ショーケースの展示(中のケーキは売っていません)
オーブンの展示(1台50万円ほどらしい)
喫茶室も設けられ、そこでは作品展に出品されているケーキを実際に食べることができる。僕が行った頃には人生で一番の「sold out」の文字が並んでいた。早く行かないとダメらしい。
sold outが踊る
全品400円
マホちゃんと二人で喫茶室に入り、ケーキを食べる。当たり前だけれど美味しい。マホちゃんの顔を見ているとこれはプロが食べても美味しいケーキなんだと分かる。僕はといえば言葉を覚えたての九官鳥のように「美味しい」を連呼していた。
美味しいとのこと(いい表情するな~)
また食べたい!
弟の彼女と僕の二人。何を話せばいいか初めは分からなかったけれど、ケーキの解説と弟の悪口という共通の話題があったので、最終的には天気で言えば薄曇くらいまで仲良くなれた。ケーキも美味しく幸せな時間だった。
布みたいに見えるけれどそれも食べられる
ドラマがある
後日弟から電話がかかって来た。弟も学校の引率として見に行ったそうだ。そして、とても悔しがっていた。その気持ちはなんだかよく分かる。多くのパティシエがこの大会に出品しようと思い、出品した全員が賞を狙っている。しかし、賞をもらえるのはほんの一握り。
僕のような全く関係ない人間は単純に綺麗とかすごいとかと感想を持つけれど、パティシエはその場に自分の作品がないことが悔しいのだろう。いつか弟が賞を取れればいいのに、と弟思いの自分はなんて優しいのだろうと気付いた瞬間だった。