特集 2011年10月5日

どんぶりを三倍楽しむレシピ、ひつまぶ式

ひつまぶし美味いよねぇ。1回で3種類の美味しさってのがニクイ。
ひつまぶし美味いよねぇ。1回で3種類の美味しさってのがニクイ。
先日ひつまぶしを食べた。ざっくり言うと鰻が細かくなっている鰻丼だが、茶碗に一杯目はそのまま食べて、二杯目は薬味を乗せ、三杯目はお茶漬け(掛けるのは出汁だが)にする。鰻丼を3種類の方法で食べるのだ。なんだかお得というか、満足感が高い。

鰻丼の錬金術やぁ!と興奮した。

後日、トンカツチェーンの「かつや」でカツ丼を食べながら熱いお茶をすすり、あ!これもお茶漬けにしたら美味しいのでは!とひらめいた。今回はそんなひらめきから始まります。
あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。

1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)

前の記事:電柱と電信柱は違うものだ

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かつやのカツ丼をひつまぶ式で

最初は思いつきの発端、かつやから。しれっと見出しに「ひつまぶ式」って書いたが、これは1つの丼物を3種類の方法で食べるスタイルの名前である。僕が勝手に付けた。
カツ丼とかトンカツ定食を安く食べられる。しかも美味い。
カツ丼とかトンカツ定食を安く食べられる。しかも美味い。
カツ丼は竹と梅があるが30代後半の胃には梅で十分です。
カツ丼は竹と梅があるが30代後半の胃には梅で十分です。
かつやのカツ丼(梅)は税込み514円。割引券を使えば414円だ。昨今の激安牛丼と比べればやや高いかも知れないが、普通の店でカツ丼を食べると900円とかしたはずなので大分安い。

注文して5分ほどで運ばれてきたカツ丼には、六つに切られた美味しそうなトンカツが乗っていた。
うほ、美味しそう。肉は軟らかくて美味しいです。やや薄いけど十分腹は満たされる。
うほ、美味しそう。肉は軟らかくて美味しいです。やや薄いけど十分腹は満たされる。

一杯目はそのまま味わう

店員さんにお願いしてお茶碗を持って来てもらった。流石にしゃもじはないが、箸でもって茶碗にご飯とカツを移動する。6切れに分れているので一杯につき2切れづつ攻める作戦を立案。

三つ葉もどけて、純粋にカツとタレが染みがご飯のみを味わう。甘辛いタレが多めで味が濃くて美味い。
美味い!お前さん、安いのにやるじゃないの!
美味い!お前さん、安いのにやるじゃないの!
頼もしい調味料&漬け物選手団。
頼もしい調味料&漬け物選手団。

二杯目は味を変えて楽しむ

ひつまぶ式の二杯目は薬味などで味を変えて楽しむ。かつやのテーブルには、醤油、七味、胡麻ドレッシング、カラシに漬け物が用意されていた。

まずは漬け物とカラシで味変をしてみたい。
この細切り沢庵がコリコリと美味い。
この細切り沢庵がコリコリと美味い。
カラシは風味のアクセントを、沢庵が食感のアクセントを生み出した。
カラシは風味のアクセントを、沢庵が食感のアクセントを生み出した。
一杯目とは全く違う食べ物のようだ。柔らかく煮込まれたトンカツとご飯の中に、沢庵のコリッという食感が見事に調和している。ドラムのシンバル的存在と言える。

カラシも同様、油でやや重くなった口の中に良い刺激をもたらしてくれる。美味いじゃないの!

二杯目を8割方食べたところで七味を投入したら、これがまた良かった。音楽で言えば転調みたいなもんである。
にじみ出てくる喜び。
にじみ出てくる喜び。

最後はカツ丼茶漬けだ

二杯目を食べきる直前に「すみません、温かいお茶下さい!」と頼んだ。店員さんがすぐに持って来てくれたそれをジャバーっと残りのカツ丼に掛ける。

お茶は最初に頼んでしまう手もあるが、出来れば三杯目に入る直前に持って来て貰うのが望ましい。とはいえ、店員さん的には二度手間の感もあるので店の混み具合を見極めて最初か直前かを判断したい。

お茶の温度も重要だが、この時はややぬるめのお茶だったので直前オーダーが正解だった。
予想外の美味しさ、新しいカツ丼との出会い。
予想外の美味しさ、新しいカツ丼との出会い。
濃いめの番茶がすべてを爽やかにしてくれた。お茶を吸って少しへなっとした衣は、揚げ物とは思えないサッパリ感。好みは別れるかも知れないが僕はこれ、好きだ。アリだ。大いにアリだ。

ご飯とお茶とトンカツ、それらがスルスルと口に入ってくる。うめぇ。カツ丼一杯とは思えない満足感を感じつつ、514円を払って店を後にした。100円割引券を貰ったのでまた今度行こう。
てんやが大好きすぎる。
てんやが大好きすぎる。

お次はてんやだ

天丼チェーンのてんやは天丼が税込み500円。子供の頃からのイメージだと天丼は高級料理で500円じゃ食べられない筈なのだが、てんやは500円で天丼を食べさせてくれる。

そこにしびれて憧れるので、てんやにはよく行く。かつては「てんや倶楽部」なんてのにも入っていた(当時はそれで天丼が50円引きになった。今のは面倒くさいので入ってない)。

天丼もひつまぶ式で食べたら美味いに違いないと思ったので出向いてみた。
天丼500円。海老、イカ、キス、カボチャ、インゲンが乗っている。
天丼500円。海老、イカ、キス、カボチャ、インゲンが乗っている。

5つの天ぷらをどう割り振るかが鍵だ

天丼に乗っている5つの天ぷら、それを三杯に割り振るのだが、最初の一杯はインゲンとキスを選んでみた。最初はサッパリ系の天ぷらから攻めるという作戦だ。
小さめの器くださいって頼んだ。
小さめの器くださいって頼んだ。
流石てんや、安定の美味さである。そりゃ高級店のコースで1万円とか取る天ぷらとは別物である。フリッターと揶揄する声も希に聞えるが、値段が全然違うのだ。この値段と味の両方を楽しむのがてんやの正しい味わい方だろう。
ねぎと生姜を利用するのだ。
ねぎと生姜を利用するのだ。

二杯目の鍵は冷や奴にあり

さて二杯目だが、ここで冷や奴が登場する。冷や奴にはネギとおろし生姜、鰹節が乗っているがこれを天丼二杯目の薬味とするのだ。

薬味を失った冷や奴は味噌汁に投入してもよし、醤油を掛けて豆腐本来の味を楽しんでも良しだ。
イカとカボチャ半分乗せ+ネギとおろし生姜。
イカとカボチャ半分乗せ+ネギとおろし生姜。
二杯目の天ぷらはイカとカボチャを選んだ。しかしここでカボチャを使い切ると三杯目が海老だけになりやや寂しい。そこでカボチャは箸で二つに分けて半分だけ使う事にした。これで三杯目にも天ぷらを2種類温存できる。

しかして薬味が乗った天丼はやはり新しい味を生み出した。生姜とネギの香りが爽やかであり、通常の天丼とはまた違った味を楽しめる。ひつまぶ式の有用性をまたしても証明した。
そして〆の三杯目。
そして〆の三杯目。
写真を見てもこれが美味いのは判るだろう。美味いのだ。
写真を見てもこれが美味いのは判るだろう。美味いのだ。
天ぷらをご飯に乗せてお茶を掛ける「天茶(天ぷら茶漬け)」という食べ方をご存じ方も多いだろうが、これはまさに天茶である。

普通は天丼を食べているとやはり最後の方はもたれを感じるが、天茶にすればもたれは感じず最後まで労することなく食べ切れてしまう。

ひつまぶ式天丼ヤバイ。正式メニューにしてもいいんじゃないかと思えるくらいヤバイ。このヤバイは、TOKIOの山口メンバーがよく言う良い意味のヤバイです。
天ぷら単品を頼んでオリジナル天丼を。
天ぷら単品を頼んでオリジナル天丼を。

ここでてんや豆知識

てんやで天丼を頼むと、天ぷらは海老、イカ、キス、カボチャ、インゲンと内容が決まっている。以前は注文の時に頼めば同じ値段の違う種類に変えてくれたのだが、最近はやってくれない場合が多い。

でもあんまり好きじゃないネタが入ってる天丼を頼むのはやだなーという場合もあるだろう。そういう時は、ごはん単品+お好み天ぷらでオリジナル天丼という手がある。
インゲン、レンコン、野菜かき揚げ+ご飯で370円。注文するときに「どんぶり仕立てにしますか?」と聞かれるので「はい」と言えばごはんに載せてタレも掛けてきてくれる。
インゲン、レンコン、野菜かき揚げ+ご飯で370円。注文するときに「どんぶり仕立てにしますか?」と聞かれるので「はい」と言えばごはんに載せてタレも掛けてきてくれる。
ご飯は単品で150円。どんぶりで出てきます。
ご飯は単品で150円。どんぶりで出てきます。
例えば上の写真のように、インゲン、レンコン、野菜かき揚げをご飯単品に載せると合計で370円。海老が無くても良ければ普通に天丼を頼むより安上がりだ。小食で天ぷらの数はそれほど要らない、好きな天ぷらで天丼を食べたい、という場合にはいい。

ただ、海老天を食べたいなら普通に天丼を頼んだ方が良い。天丼の内容を分解してオリジナルとして組み立てると、海老、イカ、キス、カボチャ、インゲン+ごはんで合計610円になってしまって損だ。

以上、「てんやでオリジナル天丼を」のコーナーでした。
2011/10/5現在一番安い牛丼(牛めし)を出す松屋。
2011/10/5現在一番安い牛丼(牛めし)を出す松屋。

最後は松屋

牛丼でもひつまぶ式を試してみたい。そこでやってきたのは、ちょうど2011/10/3~10/10まで牛めし240円セールをやっている松屋。

べ、別に安いから松屋に来た訳じゃないんだからねっ!松屋に来た理由はちゃんとあるんだからねっ!
注文は当然牛めし240円。240円でも味噌汁が付く。カレーでもビーフシチューでも味噌汁を付けるのが松屋の矜持。
注文は当然牛めし240円。240円でも味噌汁が付く。カレーでもビーフシチューでも味噌汁を付けるのが松屋の矜持。
牛めしのひつまぶ式、一杯目はそのままで。紅ショウガも薬味もなしで牛丼本来の味を楽しみたい。

松屋は吉野家やすき家と比べて味がしょっぱい系で濃いのが特徴。おそらく若い男性をメインターゲットにしている。吉野家は年齢層が少し上、すき家は女性や子供もターゲットにしている様に思う。
牛丼界のガスト的存在、それが松屋。
牛丼界のガスト的存在、それが松屋。
この豊富な調味料師団が松屋の特徴だ。
この豊富な調味料師団が松屋の特徴だ。

松屋を選んだ理由が明らかになる

松屋はなんといってもタレが豊富なのがすごい。焼き肉メニューがあるからだろうが、酸っぱいのから甘辛いのまで3種類のタレと3種類のドレッシング、醤油、カレー用辛味スパイス、七味唐辛子、紅ショウガが揃っている。これが松屋を選んだ理由。ほ、ほら!ちゃんと理由があったでしょ!

二杯目のアレンジにこれらをどう使うかというのはかなり悩ましいが、僕は辛味スパイスとカルビソースを選んでみた。
掛けるとたちどころにカレーになる魔法の粉。売ってたら買いたい。
掛けるとたちどころにカレーになる魔法の粉。売ってたら買いたい。
タレとしてはややマイルド、鰹の風味が効いてて美味い。
タレとしてはややマイルド、鰹の風味が効いてて美味い。
辛味スパイスのお陰でもう、全くもってカレー風味であり牛丼っぽさはかなり遠い物になった。ここで普通に紅ショウガという手ももちろんあるし王道であるとは思うが、敢えて邪道に走ってみました。

スパイシーな牛丼、目を瞑って食べるとまるでインドにいるような気分になる。インドには行ったことないけど。
インド風牛丼を楽しむ。ただでさえしょっぱい牛丼の味が更に濃くなってジャンク感溢れる味になった。
インド風牛丼を楽しむ。ただでさえしょっぱい牛丼の味が更に濃くなってジャンク感溢れる味になった。

三杯目に紅ショウガとお茶

実は二杯目に紅ショウガを使わなかったのは、ここで初めて紅ショウガを使うためだったのだ。牛丼に紅ショウガを乗せ、ジャバーっとお茶を掛ける。

なお、牛丼240円セールのせいか妙に混んでたのでお茶は注文の時一緒に頼んでみました。店員さん一人しかいなかったし。
松屋のお茶は濃くて美味い。
松屋のお茶は濃くて美味い。
七味もここで使ってみました。
七味もここで使ってみました。
美味い。どんな時にいいかって言うと、これはお酒を飲んだ後にいい。濃いめの松屋味がお茶でアッサリして酒の締めにピッタリだ。味が濃くないつゆだくだくといった風情。

紅ショウガは、かつやの細切り沢庵と同じように食感にアクセントをもたらして、なおかつてんやのおろし生姜と同じように爽やかな香りを放っている。茶漬けと凄く合う。

これ、全然アリだ。しかも240円で三つの味を楽しめて凄くお得だ。ちょっと行儀とか考えるとアレな気もするがなに、そんなの誰も気にしやしない。だってここは松屋だぜ。

ひつまぶ式すげぇ

完成された一杯のどんぶりをこねくり回すのは邪道かも知れない。が、一杯のどんぶりで三つの味が楽しめるなら、僕は邪道でも歩き続けたい。邪道結構、うまけりゃそれでいい。

世の中にはまだまだどんぶりがある。食べ方もたくさんある。お茶を掛けるだけでなく、富士そばのカツ丼セットを頼んでカツ丼にそばつゆを掛けてみたらどうだ!?炒飯にラーメンスープは?いや、オムライスにコーンポタージュとか?!

きっとまだまだ発見されてないレシピがあるに違いない。これはどんぶりの錬金術。等価交換なんてケチくさい事言わない、ただただ美味しい錬金術。それが「ひつまぶ式」だ。

僕の事は「どんぶりの錬金術師」とでも呼んでください。
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