売ってない
先日、デイリーポータルラジオの公開収録のため、京都に行った。
夜の収録までは時間があるので、京都、滋賀で幻のサラダパンを探してみることにした。
食べ物記事なのになぜか地理ネタが紛れ込む
京都といっても京都の市街地と大津の市街地とは15キロほどしか離れていない。京都駅を東京駅だと考えると、大津駅は江戸川区役所のあたりなのだ。
京都でよく見かけるスーパー「フレスコ」
ランチパックのような定番商品しかない
そんなに近ければ滋賀のご当地パンぐらい何かの間違いで売ってるかもしれない。と目論んだぼくは、まず、京都で宿泊するホテルの近くにあるスーパーに行ってみた。
で、結果からさきに言うと、売ってなかった。
スーパーの従業員に確認したところ「サラダ?パン? サンドイッチですか?」とききかえされてしまった。
滋賀のすぐ隣の京都でさえこの知名度とは……それとも、京都府の矜持として、そんなわけわからんもん売るわけおまへんがな。ということだろうか?
大津をさまよう
ただ「京都のスーパーではサラダパンは売ってない」なんてことはちょっと前に流行った言葉でいうと、想定の範囲内だ。そんなにあっさり見つかるなんて1ミリも思ってない。
京都市の隣町、大津市まで行けば滋賀県だ。大津市のスーパーに行けばたぶん売ってるだろう。ということで、滋賀県の県庁所在地、大津までやってきた。
京都駅から電車で数分!
滋賀県民心の故郷・平和堂
さいわい、大津駅の駅ビルに平和堂というスーパーがあったので、まずそこを探してみることにした。
ここにも定番パンしかない
さっそくパンコーナーを探す。しかし……売ってない! サラダパン、本当に滋賀のご当地パンなのだろうか?
サラダパンのことをスーパーのおばちゃんに聞いてみた。
「すみません、サラダパン……ってありますか」
「サラダパンですか、うーん、このあたり(大津周辺)ではめったに売ってないナァ」
あ「サラダパン」が通じた。さすが滋賀県だ。ただ、残念なことに県の南側ではあまり取り扱ってないらしい。
「サラダパンって食べたことあります?」
「……(苦笑い)まぁ、好みもあると思うけど……あまりおすすめはしないねえ」
苦笑いで「あまりおすすめはしないねえ」か……おもわずテンションの下がる情報を入手してしまった……。
その後、市内のほかのスーパーを回ってみたものの、サラダパンはいっこうに見つからない。スーパーのおばちゃんの言ったとおり、いよいよ彦根や長浜あたりの北側まで出向かなければ入手できないのか……。
でも、そんな遠くに行くほどの時間もない。どうする……。
インターネットって便利ですよねー
メーカーに直接電話
そんなときのインターネット。スマートフォンのおかげで出先でも気軽にチョチョイのチョイで、パン屋さんの連絡先がわかってしまう。便利なよのなかだ。
結局、製造元のメーカーに直接電話を掛け、パンを卸しているスーパーを聞き出した。
すると、大津市内で取り扱いのあるスーパーがあっさりと判明。
「最初からこうすればよかったのに」という思いがうずまくなか、電車で取り扱いのあるスーパーの最寄り駅、滋賀里駅に向かう。
念願のサラダパンとご対面
平和堂の一形態
大津市街から電車でしばらくいったところにあるスーパー、フレンドマート。そこにサラダパンはあった。
サラダパン! あったー!
あまりの感動につい写真をでかくしてしまった。
文章ではさらっと流したけれど、京都から大津、滋賀里までけっこうな時間がかかっている。
実は、サラダパンはネット通販でも手にいれることができるのだが、送料が900円超もしてしまうため、買うのに二の足を踏んでいたのだ。
そんなサラダパンが今目の前にこんもりと山積みにされている。「テレビでおなじみ」なんて甘い言葉で購買欲を刺激してくる。つい必要以上に買ってしまいそうになる衝動を押さえ、とりあえず、5本だけ購入する。
テレビでおなじみ
いったいどんな味がするのか?
わざわざ滋賀里まで行って買ったサラダパンは、デイリーポータルラジオの収録に持って行き、みんなで食べてみた。果たして、肝心の味はどんなものなのか?
開けてみるものではないな
NYのダウンタウンで食事するひとみたい
編集部の工藤さんは「あ、これアリじゃないですか!? からしマヨネーズとタクアンの甘みとシャリシャリした感じがよく合ってておいしいですよ」と高評価。
しかし、編集部の石川さんは「これなんだろう……?」と顔を曇らせてちょっと納得できてない様子……。
むしろ、ぼくは好きだ
素材そのままの味だ。
かくいうぼくも食べてみた……「こ、これはコッペパンにからしマヨネーズを和えたタクアン……そのままだ……」
こういう食味を表現する場合、ライターとして歯ざわりや味の雰囲気を言葉を尽くして説明するべきだとは思うけど、サラダパンはマヨネーズで和えたタクアンをコッペパンで挟んだ。そんな味なのだ……。
うまいまずいでいうと、そんなに嫌いじゃない。というかぼくはむしろ好きな方だ。ただ、工藤さんもあとで言っていたけれど、毎日食べたいわけじゃなく、年に数回、思い出したときに食べたくなるようなそんな味だ。
会場で食べてもらったお客さんからは「おにぎりみたい」とか「素朴な味」という率直な感想をもらった。そうか、素朴な味、か。
事前に「おすすめはしない」なんて評価を聞いていたので、こころのハードルはかなり下げ気味で相見えたのだが、意外とおいしく食べられた。
漬物+からしマヨネーズ+パンでいけるんじゃないか?
はからずも、日本、中国、韓国。東アジア三カ国がそろい踏み
ひとまず「まぼろしのサラダパンを食べてみる」というミッションは果たした。これでまとめて終わってもいいのだけど、さすがにそれだけだとちょっと寂しいので、ひとつ実験をしてまとめにしてみたい。
サラダパンは「漬物+からしマヨネーズ+パン」という組み合わせで、「年に数回は食べたくなりそう」という郷愁を誘ううまさを実現している。そこで、タクアンだけではなく、他の漬物だとどうか? やってみた。
見た目はギリギリセーフだけど、地面に落ちたらアウト
食欲をそそるビジュアルではない
スーパーで適当にみつくろってきた、野沢菜、ザーサイ、キムチ。この3種類の漬物を、刻んでからしマヨネーズと和え、パンに挟む。
左から、野沢菜パン、ザーサイパン、キムチパン。シズル感はゼロ
パンはコッペパンを入手できなかったので、ホットドック用のパンで代用した。これを、デイリーの企画会議の合間にみんなに食べてもらって感想を貰った。
まずは、日本代表の野沢菜だ。野沢菜はぼくが個人的にすきなのでチョイスしたのだが、味はどうか?
石川「うまい! タクアンよりうまい!」
工藤「うまい! これローソンにあったら買います」
地主「すっごいうまいじゃないですか! 野沢菜のしょっぱさがパンの甘さに合ってる!
すっごいうまいじゃないですか!のときの顔
おぉ、大絶賛。どうやら野沢菜の塩気とパンの甘みが上手くマッチしたようだ。ぼくも食べてみたけれど、これは本当にうまかった。野沢菜のシャリシャリした食感もポイントが高い。
続いては、キムチ。これは食べる前からすでにうまそうな雰囲気(匂い)を醸し出している。はたして味は?
石川「キムチとマヨネーズ混ぜるとこんな味になるんですねー、うまい。」
工藤「うまい。キムチとマヨネーズはシーチキンいれてよく食べてます」
地主「あーおいしいですねー」
キムチとマヨネーズの出会いを噛み締める
キムチ、安心のうまさ。キムチとマヨネーズを和えるという食べ方はけっこうメジャーらしい。マヨネーズで和えると、キムチのとがった味がまろやかになってパンによく合う。
すでにこういうパンを売っているパン屋もあるかもしれないけれど、あえて検索はせずに実験しております。
そして最後はザーサイパン。ザーサイってあんまりメインで食べることはないけれど、マヨネーズと和えてパンに入れるとどんな味になるのか?
工藤「うーん、ザーサイの味とパンがあまり合わない感じが……」
石川「これは微妙ですね……でもタクアンよりはうまい」
橋田「えー、私はこれすきー」
ザーサイ好きなんです!
全体としては、残念ながら今ひとつという結果になってしまった。ただ、橋田さんはザーサイが好きなので、これが一番好きらしい。
ただ、これは使ったザーサイがわりと薄味だったので、油でベトベトな中華料理屋で出てくるような、もうすこしパンチのきいた野趣あふれるザーサイで作ればもうちょっといい結果を残せたかもしれない。
以上、全体の評判とぼく自身の主観的な評価を加味して星をつけると下のような感じになった。
野沢菜パンが予想を裏切るほどのうまさでおどろいた。
サラダパンがあるならば、野沢菜パンも商品として流通していてもおかしくないんじゃないか、と思うレベルのうまさだった。
ぜひ、コンビニエンスストア各社は商品開発を急いでいただきたい。売ってたら絶対買う