所沢は航空発祥の地なんだぜ!
みなさん、埼玉県所沢市といえばどんなイメージをお持ちでしょうか? 西武ライオンズ、所ジョージ、うーんと……まあそんなもんですかね。
比較的地味な県である埼玉県の中でも、ひときわ地味なポジションに置かれている所沢市。しかし、余り知られていないものの、実は所沢って1911年に日本初の飛行場が開設されたという、日本の航空発祥の地なんですよ。
そんな所沢で、航空発祥100周年を記念した「折り紙ヒコーキ大会」なる大会が開催されるというとのこと。さっそく参加してきました。
住宅街の中にある市民体育館という地味な会場ながら「ギネスに挑戦」と世界を見据えた大会!
「梅の種飛ばし大会」などをはじめとして、こういう変わった大会っていくつも開催されていますが、なぜその中でもこの「折り紙ヒコーキ大会」に注目したのかというと、何といっても「ラクそう」だから。
だって折り紙ヒコーキなんて、チャチャッと紙を折って、ピャーッと投げるだけでしょ? そんなに技術に格差が出るとも思えないし、体力も必要なさそう。コレだったらボクも入賞できるんじゃないの!? と思ったわけです。
こんなイメージ
男35才、賞とか名誉とか欲しくなるお年頃なんですよ……。
午後の個人戦に参加します
会場入口でいきなり物産展が行われているあたりも「ラクそうな大会」感をかもし出しております
日本の航空発祥の地ならではの「飛行機せんべい」「所沢名菓・ファルマン」(日本ではじめて飛んだ飛行機はアンリ・ファルマン号っていうんだよ)なんてのも売られていました
意外とガチな雰囲気が……
ま、こんな感じで、所沢ローカルのほのぼのとしたユル~い大会なのかなー、と思いながら会場に入ってみると……。
げげ、ものすごくちゃんとした体育館。そして広い!
しかもこの体育館で、すでに子どもたちがガンガン折り紙ヒコーキを飛ばしてるんですよ。まさか特訓中!?
さらに気になるのが、そろいのユニフォームを着て参加している子どもたちが結構いるということ。まさか「少年折り紙ヒコーキ倶楽部」的なチームがあるわけじゃないんでしょうが、とりあえず「ものすごくやれるヤツ」感がビンビンに伝わってきます。
思ってたんと違う!
取材に同行してくれた編集部の石川さん、ライターのほそいさんも、いきなり戦意喪失……。
ちょっとした休日の行楽気分でやって来た大人たちには太刀打ちできなそうな熱気です。
会場には、様々な折り紙ヒコーキが展示されたコーナーも
こんな折り紙ヒコーキ、今まで見たことねえっすよ
さらに、こんど宇宙から投下する予定だという折り紙ヒコーキも……デケエ!
いやあ、なめててスミマセンでした! 折り紙ヒコーキ、想像以上に奥深い世界のようです。
こんな折り紙ヒコーキ作ったことないよ!
さて、大会の開会式&折り紙ヒコーキ教室がはじまりました。
折り紙飛行機競技は、飛距離競技、滞空時間競技、的当て競技などジャンルが分かれているのですが、今回の大会では折り紙ヒコーキを投げてから地面に接するまでの時間を競う「室内滞空時間競技」を行うようです。
こちらの人が日本折り紙ヒコーキ協会の会長・戸田拓夫さん。なんと、折り紙ヒコーキ室内滞空時間競技のギネス記録(27秒09)保持者!
そしてコレが大会のオフィシャル・ペーパーです。コピー用紙をちょっとザラザラにした感じの、わりとペラペラとした普通の紙……。
紙ヒコーキを作るなら、もっとしっかりとした紙で折った方がよく飛びそうな気がしますけど。こんな頼りなさそうな紙でいいんですかねぇ?
戸田さんの指導の下、競技で使う折り紙ヒコーキを折っていきます
今回は「滞空時間が長い」ことに特化した戸田さん考案の「スカイキング」という折り紙ヒコーキを作ったのですが……、コレが想像してたよりはるかに難しいんですよ。
折り紙ヒコーキ教室にまったくついていけず、うろたえる大人たち
どれくらい難しかったかというと……。ま、作り方を紹介しましょう(ボクの記憶を頼りに書いてるので間違いがあるかもしれないですが)。
まずはこの紙を
半分に折りまして
再び開いて、折り目を中心線とします
その中心線に合わせて、こんな風に折る。中心線ピッタリにするんじゃなくて、2ミリくらい開けた方がいいらしいです
さらにこう折って……
こうで……
こうじゃっ!
一回開いて
こう!
さらに折り込んでこう!
下のベロみたいになってるところを折り返して
先端同士がくっつくように、ヒコーキの先っぽを折り返します
一回戻して
大胆に半分に折ります
そんで、ヒコーキの先っぽ部分を
こうして
こうして
こうじゃっ! ……この説明だけじゃ意味分からないと思いますが、記事の本筋とあんまり関係ないんでスルーしていきますよ
で、この先端に合わせて翼部分を折っていきます
おおっ、ヒコーキっぽくなってきましたね
さらに裏返して
お尻の部分をこうヘナッと折り曲げまして
この折り目をひっくり返して
ピョコッと垂直尾翼を作ります
最後に翼の両端を垂直に折り曲げて完成!
ほらー、こうやって細かく写真つきで説明してもかなり難しそうでしょ。
ボクが途中で、どこをどう折っているのかスッカリ分からなくなってしまい、うっすら泣いてしまったのも仕方のないことです。
あと、実際に作ってみて分かったのが、何重にも折り返す部分があるため、これくらい薄い紙じゃないと作るの難しそうだということ。いやあ、紙の種類までちゃんと考えて選んでいるんですねぇ。
ふと見ると……あ、ほそいさん、指導員の人に手伝ってもらってる! ズルーイ!
子どもたちはひとりで作ってるのに……というプライドをかなぐり捨てて、ボクらも教えてもらい
なんとか完成させました!
どうしてこんなに飛ばないのか!?
さて、折り紙ヒコーキはなんとか完成しましたが、すぐに大会がはじまるわけじゃないのです。
まずは、作ったヒコーキの調整タイム。
とにかくガンガン投げまくって飛び方を調整していきます
今回作った折り紙ヒコーキ「スカイキング」は、ちゃんと作れてればこういう風に飛ぶようになってるハズなんですが……。まあ、そう上手くいかないのが人生ですよ。
戸田さんの模範飛行。本来はコレくらい飛ぶものなのだ!
構造が複雑なだけに、上手くできてればすごく飛ぶんでしょうけど、ちょっとでもバランスが悪いとぜんっぜん飛ばないの!
その辺を、実際に飛ばしてみながら翼の角度を変えたりして調整していくわけですが、そもそもどこをどういじったら飛び方がどう変化するのかが分からないので、ホント手探りで試行錯誤を繰り返すしかないわけです。
渾身の力で放り投げるものの
ヒコーキは即落下
飛び方が改善されてるんだかされてないんだか分からないまま、全力で何回も何回も放り投げていたら肩がパンッパンになってしまいました。
うーん、こりゃ三人とも好成績は期待できそうにありません。
こんなことなら、ごくフツーの折り紙ヒコーキを作った方が、まだちゃんと飛ぶんじゃないかと思うくらい……。
今はまだ調整タイムだからいいですけど、大会本番になったらみんなに見守られている中、このたいして飛ばないヒコーキをぶん投げなきゃならないワケで……。
ただでさえ大人の出場者は少なくて目立ってるっていうのに、コレは恥ずかしい!
ホント恥ずかしかったなぁ
しかし、いっくら手探りで調整してみても、ちっとも飛ぶようにならないので「ま、テキトーに飛ばしてさっさと帰っちゃえばいいか」的な気持ちになっていたところ……。
ほそいさん、また教えてもらってる! ズルイッ!
クソーッ! ムンムンのフェロモンで誘惑して丁寧に指導してもらいやがって(被害妄想)……ギリギリギリギリ!
まあ、嫉妬ばかりしていても仕方がないので、ボクもコッソリ聞き耳をたてて折り紙ヒコーキ調整のコツを聞くことにしました。
この辺が調整ポイントのようです
このポイントを念頭に置いて調整してみたところ……。
数段レベルアップした飛び方に!
ま、戸田さんのようなものすごい飛び方……とまではいきませんが、とりあえず大会に出場しても恥ずかしくないくらいにはなったんじゃないかと。
普通の折り紙ヒコーキのようにスーッと飛んでいくというよりは、翼で風を受けてフワリフワリと浮かびながら進んでいくという感じ。コレが「スカイキング」の実力か。
そして、さらにボクを勇気づける情報が!
コレが入賞者がもらえる盾か。意外と立派だなぁ……などと思って見ていたところ。
あ、小学生の部、一般男子の部、一般女子の部って部門が分かれてるの!?
体育館中には100人以上もの参加者がウジャウジャしているものの、そのほとんどは小学生。大人の出場者っぽい人なんてホント男女合わせて10人もいないくらいなんですよ(開催が平日だったので)。
……コレは入賞できる可能性が高まってきたんじゃないですか!?
子どもたち全員相手にするのは無茶ですが、五人中の三位以内だったら狙えるんじゃないかと
まさかのデイリーポータルZ快進撃
……と、いうわけでいよいよ本番!
それぞれ三回投げて、その中で一番いいタイムが記録となるのですが、ボクらデイリーポータルZチームの成績は以下の通り。
・北村ヂン 10秒35
・ほそいあや 5秒06
・石川大樹 4秒13
いやあ、本番に強い男・北村ヂン! 映像で見るとそれほどでもないですが、投げてる自分目線では、キレーに旋回しながらフワフワと滑空してくる折り紙ヒコーキに感動すらしてしまいましたよ。
……ボクの才能がこんなところにあったなんて!
アトラクション用紙に名前を書き、そのまま折り紙ヒコーキにして
二階席から、フロアに置かれた色紙めがけてバンバン投げつけます。それぞれの色紙に一番近かった人に賞品が出るようです
アトラクション後はモップでザザーッと掃き出されてました。折り紙ヒコーキが一瞬にしてゴミに……
所沢のゆるキャラ「トコろん」……カワイイ!
会場を見渡しても大人の参加者なんてほとんどいなそうだし、入賞の可能性は十分にあると思うのですが……。
名前を呼ばれた瞬間、リアルに「うおおっ」と声が出ちゃったくらい、わりと本気で嬉しかった
まあ、こうやって「3位です」って顔して並んでますが、1位が18秒37、2位17秒04、そして3位のボクが10秒35と、かなり大幅の差をつけられてのギリギリ3位なんですけどね。
話を聞いてみたところ、2位の人は千葉から、1位の人はなんと佐賀から、このイベントに参加するためにやって来てるんだとか。おふたりとも「やってる」人なんですね!
チャンピオンのお言葉。3位入賞でコーフンしている今ならものすごく共感できます!
まあ、形だけとはいえ見事に3位に入賞することができ「コレで記事も締まるな、めでたしめでたし……」などと思っていたのですが、デイリーポータルZの快進撃は止まりません!
なんとほそいさん、5秒06という(わりとショボイ)記録にも関わらず、一般女子の部第2位入賞! ええええーっ。
よくよく聞いてみると、一般女子の部は1位の人でも6秒54という記録で、男子以上に参加者が少なかったんじゃないかと……なんか、やっぱりほそいさんズルイよっ!
ほそいさん、さっきまでさんざん調整を手伝ってくれてた人がプレゼンターだったので「あ、この人、入賞しちゃったんだ……」と若干、苦笑いされてたけど
ま、とにかくデイリーポータルZで、まさかの男女部門両方入賞しちゃいました!
「折り紙ヒコーキ大会」とはいえ、賞状なんてもらったのはホントに20年ぶりくらいのことなので、すごーく嬉しかったです。
さっきやったアトラクションの賞品が、まさかの石川さんに当選! ちょっとイキオイに乗りすぎじゃないの、デイリーポータルZ!
超・嬉しそうな石川さん
かくして、デイリーポータルZチームは全員賞品を頂いて帰りましたとさ、チャンチャン。
取材でうかがったのに思いっきりエンジョイしちゃって、なんかスミマセン!
次の日、肩が上がらないくらい疲れましたが……
予想以上に本気の大会で、それでも折り方をちゃんと教わって丁寧に作っていけば誰でも楽しめる折り紙ヒコーキ大会!
最初は正直、かなりお気軽な感じで参加しようと思っていたんですが、ほんのちょっとの調整でまったく違う飛び方になってしまうなど、かなり奥深い世界でした。
ちなみに
日本折り紙ヒコーキ協会のサイトを見たところ、ボクもあと2秒くらい記録が伸びれば世界ランキング100位に入れるみたいなのです。コレは……また挑戦しちゃいますか!?
商品としてもらった本。見たことも聞いたこともないような折り紙ヒコーキが沢山紹介されていました