こころのふるさと、木工用ボンド
身近にあって、固まると透明になるものといえば、木工用ボンドである。
500mlのを買ってきた。マスタードっぽいボトル
古くは小学校の図工の授業でもお世話になった、あの白いヤツ。
中学生にもなればいろんなボンドの存在を知り、「木工用ボンド?あの子供が使うやつね」なんてちょっと見下したりもした。でもいま自分で工作をするようになってみると、やっぱり手軽で、便利なのである。あの時はバカにしてごめんな…。
そんなこんなでもう20年以上の付き合いを経て、こんどは樹脂標本である。まさかこんなポテンシャルを秘めていたとはね。
プラ板を切って適当に型を作ります
この色に先日の人間ドックで飲んだバリウムを思い出してちょっと苦しくなるなど、小学生の頃は思いもよらなかった
この状態でいったん乾燥させる
中身が沈まないように、いったん半分までの樹脂を乾燥させるのだ。ある程度かわいて物が上に乗るようになってから、初めて中身を入れる。
3時間くらい放置後、表面が乾いて透明になってきた
中身を入れる
すごくどうでもいいものを標本にしたら味わい深いのではないかと思い、冷蔵庫に残っていたカラシを入れた。大阪出張に行ったとき買ってきた、豚まんについていたやつである。
我ながら絶妙にどうでもいいものをチョイスしたな!と思ったのだが、後から調べたら6年も前に
ウェブマスターがコンビニ弁当の七味を固めていた。これがこのサイトの血なのか。
上からさらにボンドを注いだら
ベランダにおいて乾燥工程へ
あとは放っておけば、カラシの樹脂標本の完成である。いやーほんと手軽。木工用ボンドを使うの、本当にすばらしいアイデアだよね!俺が考えたんだよ。俺が!
そのあとすっかり完成したつもりになって会議に出たり
そのまま飲み会になだれ込んだりした(酔っててこんな写真しか残ってなかった)
その後、家に帰るともう夜中で、ボンドを注いでからはだいたい10時間くらい経っていた。半分くらいまで固まったかな、なんて思いながらベランダの様子を見にいくと…。
あの頃と変わらぬキミの笑顔
まあこんなものか、朝までにはちょっとは乾くだろう、と思いそのまま寝た。
で、翌朝。
本当にいつまでも変わらぬキミの笑顔
緊急招集
さあ、立ち込めた!暗雲が立ち込めましたよ!
こんなときはどうしたら。プロジェクトがうまくいかなくなったら、なんでもいいからとりあえず追加の人員を投入するのだ!(ダメな管理職)
急遽集められたバイト君4人
ホームセンターに行って透明に固まりそうなものを買ってきたのだ。
左から、水周りに使うシリコン補修材、ゼラチン、これも懐かしいアラビックヤマトのり、そしてヘアジェル。木工用ボンドと合わせて5種類もあれば、どれか成功するだろ。
ヤマトのりはハチミツみたいな色。改めてみるとすごくおいしそう
固まったら琥珀のようなきれいな石になるのだろう
そしてヘアジェル。「超ガチガチに固める」と頼もしいコピー
気泡がたくさんだけどそれもまたきれいで良いじゃない
どちらも独特の透明感があり、きれいな素材だ。最初は真っ白い木工用ボンドとちがって、この段階で仕上がりが想像しやすいだけに期待も膨らむ。
そして補修材だが…。
ニョロリと出すと
即座に固まり始める。やばい、平らにならせ、ならせ
ならしているうちにすでに固まってしまったので、中身を入れてみる。今度はクリップでいこう
上からも樹脂で封入。すぐに乾くも、この透けてなさ
…
一応「クリア」と書いてある色を選んだのだが、この驚きの白さ。(悪い意味で)
これ以降、補修材標本はとくに変化することなく、いつまでも真っ白なまま、クリップのプライバシーだけを守り続けていた。要するに失敗である。
左から補修材、ジェル、ヤマトのり、木工用ボンド。仲良く天日干しに
容器に入れて
混ぜて
冷蔵庫に
標本っていうかそれゼリーじゃねえか、という批判はごもっとも。
でもさ、多少方向性がおかしくても、確実に完成する素材をひとつ仕込みたかった気持ち、わかってほしいんだ…。
中身を封入
約5時間後。後発組にもそろそろ中身を封入していい頃だ。
すっかり暗くなりましたが見た目的には変化なし
机の引き出しを漁って、どうでもいいものを見つけてきた。
ヘアジェルには余ってたLEDを入れました
なんだか涼しげで良い感じ
ヤマトのりには、壊れたアダプタ(マイクロSDをミニSDにするやつ)
ゼラチンにはネジを封入
4日後
あれから4日が過ぎた。経過を見る限りこれ以上放置してもあまり変化はなさそうだし、原稿の締め切り的にももう限界である。この時点をもって、今回の実験結果とさせていただきたい。
まずは木工用ボンド。
相変わらずのこの白さ
型をはがそうとすると、とろける半生のシズル感
4日前とあまり変わってなかった…。
1日目の段階で表面は乾いて固まっていたため、中身が密封状態になってしまったのだと思う。放っておいてもこれ以上乾かないのだ。
一方、ヘアジェルは残りカスみたいな状態に
水分が抜けてすっかり量が減ってしまった。LEDの足に残ったサビが、かつてはここにも潤沢な水が存在していたことを偲ばせる…。
ヤマトのりも乾かず
こちらも量が減ったうえに、表面だけ乾いて木工用ボンドと同じ自己密封状態に。
色は相変わらず魅力的な琥珀色だけに残念。
あと一週間くらい放っておいたら、もしかしたら乾くかも…。
そして、いちばん酷かったのがこれ。
全然透けてなくて標本になってないうえに
型をはずそうにもガッチリ固定
うう、そうきたか。水漏れを一切許さぬ補修剤、成形型までガッチリ固定してくれた。補修材としては本領発揮といったところか。足りないのは自分の知恵であった。
いっぽう、唯一成功したのがこちら。
すごいぞゼラチン!
大量に溶かしたゼラチンの色なのか黄色がかった透明色になったが、そこそこ硬く仕上がった。
今回の中で唯一、ちゃんと型をはずすことができた標本だ。
ねじゼリー
空に透かしてみる
きれい!見た目は本当に申し分ない。
でもちょっともろくて崩れやすいのと、部屋に飾って置いたら腐るだろうし、まあ冷静に考えたら、やっぱり標本には向いてないよね…。
この表いるのか
本物を試す
このまま記事を終わらせるのもなんなので、本当の樹脂も試してみることにした。
エポキシ樹脂というのを買ってきた
樹脂と硬化剤をよく混ぜ、注ぐ
半分まで固まったら
中身(ベルマーク)を入れて、残りの樹脂を入れる
できた!ここまで約24時間。
すごい簡単であった。そしてボンドより圧倒的に乾きも早い。
「樹脂だから難しいに違いない」と思いボンドやヘアジェルと格闘してきたこの一週間はなんだったのか。
結論:標本はちゃんとした樹脂で作れ
どうも性格的にひねくれたところがあり、定番の方法を外して試し、結局うまくいかないことが多い。
料理が下手な人の典型例として「基本を守らない」「勝手な自分流のアレンジをする」がよく挙げられるが、工作においても同じなのだろう。
冒険心や創意工夫は常に美徳なわけではない。肝に銘じよう。
でも最終的にかっこいい標本ができたのでとても満足しています