特集 2011年8月13日

本は匂いで選ぶ時代

本によって匂いはバラバラです!
本によって匂いはバラバラです!
本屋に行けばスラリと本が並んでいる。
お目当ての本があればいいのだけれど、何か面白い本ないかな~で行くと、もうどれを買っていいか分からない。

そんな時は、作家で選んだり、パラパラと本を開いて少し読んでみたりして、どの本を買うか決めると思う。

そこに新たに「匂い」という要素を加えることをご提案したい。本ごとに匂いは全然違うのだ。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

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> 個人サイト Web独り者 彼女がいる風の地主恵亮

鼻で本を楽しむ

本を買う時は、著者や話題性、中を少し読んでみたりなどして、どの本を買うか決めると思う。CDのように表紙で決めるジャケ買いなんていうのもあるかもしれない。
本屋に行けば本がいっぱい
本屋に行けば本がいっぱい
そこに新たに「匂い」を加えたい。
僕は小学生の頃から、新しいノートや新しい教科書などをよく匂っていた。インクと紙のいい匂いがするのだ。これは僕だけでなく、下校時にノートの匂いを嗅いでいて田んぼに落ちたという人に出会ったこともある。意外と紙の匂いが好きな人は多いようだ。
そこで匂い基準で本を選びたいと
そこで匂い基準で本を選びたいと
いい匂いとそうでない匂いならば、いい匂いを選びたいというのは、世の常というもの。食虫植物はいい匂いで虫をおびき寄せたりするそうだ。匂いは重要なのだ。ということで、今回は出版社ごとに本の匂いを比べてみようと思う。
本によって匂いはバラバラですよ!
本によって匂いはバラバラですよ!

新潮社文庫「秘密の花園」の匂い

秘密の花園の匂いは?
秘密の花園の匂いは?
新潮社文庫から出ている世界的に有名な小説「秘密の花園」。恥ずかしながら僕はまだ読んだことが無いのだけれど、今後読むに値するか否かは僕の鼻が評価する。
ということで、秘密の花園の匂いをかぐ
ということで、秘密の花園の匂いをかぐ
文化的な匂いがした。大き目の市民会館のような匂いだ。インパクトは決して強くはないけれど、マイルドでずっと匂っていたい感じ。

こういう香りのファブリーズがあったら間違いなく買うと思うし、この匂いを嗅いで育った子供は、高校時代に私立文系か国公立文系かの進路で迷うことになると思う。匂いからして読むに値する本だ。
ちなみこれは臭書(読書みたいなもの)の姿勢です
ちなみこれは臭書(読書みたいなもの)の姿勢です

文春文庫「家族」の匂い

まだ読んだことがない
まだ読んだことがない
文春文庫から出ている南木佳士の書いた小説「家族」。亡き父への鎮魂小説らしい。さてさて「家族」の香りはと本に鼻を近づけ胸いっぱいに家族の匂いを吸い込む。
本との距離が近い
本との距離が近い
お酒のおつまみになるイカ系のスナック菓子の匂いがした。その向こうにちょっと酸っぱいに匂いもする。匂った時に書いたメモには「久々に帰った実家の匂い」とも書いてあった。

若干タイトルの「家族」に引っ張られた感じもするけれど、確かに僕の実家はこういう匂いがする。自分の実家がイカ系のスナック菓子という事実に、可愛いぬいぐるを2時間くらいデコピンし続けたくなった。
そういえば父親がお酒のおつまみによく食べていた
そういえば父親がお酒のおつまみによく食べていた

角川文庫「世界屠畜紀行」の匂い

同じく読んだことがありません
同じく読んだことがありません
角川文庫から出ている「世界屠畜紀行」。各国の食肉の生産過程が書かれた本である。どんな匂いがするのだろうと鼻を近づけると、肉とは正反対の匂いがした。
白米を食べたくなる匂い
白米を食べたくなる匂い
おしんこの匂いがしたのだ。
祖母の家に行ったらこういう香りがする。醤油をちょっぴりたらして、白ごはんで食べたい。

「おしんこだ!」と本で初めて内容以外で興奮したと思う。親しみのある香りで、この本をまず読むことに決めた。読んでみるとなかなか面白い。匂いのおかげで出会えた一冊だ。
おしんこ=世界屠畜紀行
おしんこ=世界屠畜紀行

岩波文庫「お菓子とビール」の匂い

お菓子とビール
お菓子とビール
岩波文庫から出ているモーム著の「お菓子とビール」。「人間の絆」、「月と六ペンス」と並ぶモーム円熟期の代表作だそうだ。残念ながらそのどれもを僕は読んだことがない。これがモームとのファーストコンタクトである。
ファーストコンタクトはクンクン。お菓子とビールの匂いをクンクン
ファーストコンタクトはクンクン。お菓子とビールの匂いをクンクン
蒸気機関車の匂いだ。どこか懐かしく感じるあの匂い。香ばしくて重厚でクセになる。地方に旅に出て、降りた無人駅で取り出して、思いっきり嗅ぎたい感じだ。次の電車まで2時間くらいあってもその絶望を、若干やわらげてくれる気がする。
無人駅で嗅ぎたい
無人駅で嗅ぎたい

幻冬舎文庫「うつくしい人」の匂い

うつくしい人の匂いを嗅ぎます
うつくしい人の匂いを嗅ぎます
幻冬舎文庫から出ている西加奈子著の「うつくしい人」。何でだろう、どんな匂いなんだろうと胸がドキドキしている。僕の本能がしつけがイマイチな犬のように吠えている。
うつくしい人の匂いを胸いっぱいに吸い込む
うつくしい人の匂いを胸いっぱいに吸い込む
春の草原のような香りがした。緑の草原に寝転がって青い空を見ているような光景が頭に浮かぶ。

この匂いから察するにかなりの美しい人だと思う。しかも、お高くとまっていなくてファミレスにも行くし、ドリンクバーも頼むし、そこでオレンジジュースの原液だけを入れて飲んだりする茶目っ気もある。「世界屠畜紀行」の次に読もうと思う。
匂った時こんな光景が浮かびました
匂った時こんな光景が浮かびました

光文社文庫「チヨ子」の匂い

チヨ子の匂いをかぎます!
チヨ子の匂いをかぎます!
光文社文庫から出ている宮部みゆき著の「チヨ子」。表紙からも怖い内容なのだろうと予想が付く。ホラーとファンタジーの珠玉の短編集らしい。どんな匂いなのだろうか。
チヨ子に鼻を近づける
チヨ子に鼻を近づける
すごくいい香りだ。爽快感があって本の匂いとは思えないほど。ミント系のアイスの香りってこんな感じだったと思う。チヨ子の匂いが好きすぎてずっとクンクンとしていた。怖いのは苦手なのだけれど、ぜひ読んでみようと思う。
ミント系のアイスの匂いだった(何店か周ったけれどミント系のアイスは売っていなかった)
ミント系のアイスの匂いだった(何店か周ったけれどミント系のアイスは売っていなかった)

匂いで世界は広がる!

今回6冊の文庫本の匂いを嗅いだけれど、本の内容がそれぞれ違うように、匂いもまたそれぞれ違った。匂い基準で本を買うというのは、読む本の選択肢が広がってよいのではないだろうか。出版社が同じでも匂いが違ったりするので、本屋さんで匂い始めるときりが無い。
みなそれぞれ匂いが違う!
みなそれぞれ匂いが違う!
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