特集 2011年8月6日

名古屋VS三重の味噌カツ戦争

味噌カツ戦争です!
味噌カツ戦争です!
名古屋名物はといえば、味噌カツや天むす、きしめんなどが浮かぶ。これらは「名古屋めし」などとも言われ全国的に有名だ。

名古屋に出かければ、これらをきっと食べることになるだろう。そして、せっかくなら発祥の店で食べてみたいと思うはずだ。

ということで、今回は名古屋めしでも、人気上位にランクインする「味噌カツ」を食べに味噌カツ発祥の店に行ってみようと思う。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

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> 個人サイト Web独り者 彼女がいる風の地主恵亮

味噌カツ発祥の店へ

「味噌カツ」と言われれば冒頭にも書いたように多くの人が名古屋を思い浮かべると思う。現に名古屋を歩けば「味噌カツ」の文字が駅前の社交ダンス教室の生徒よりも踊っている。
味噌カツ
味噌カツ
泊まったホテルにあった「るるぶ名古屋」にも当然味噌カツ
泊まったホテルにあった「るるぶ名古屋」にも当然味噌カツ
そんな名古屋名物の代表ともいえる「味噌カツ」を食べに、味噌カツ発祥の店に行ったみようと思う。ワクワクしながら名古屋駅から電車に飛び乗った。
名古屋駅から電車に乗り、
名古屋駅から電車に乗り、
三重の県庁所在地「津」を通過して、
三重の県庁所在地「津」を通過して、
津駅の隣駅「阿漕駅」に到着! ここに味噌カツ発祥の店がある
津駅の隣駅「阿漕駅」に到着! ここに味噌カツ発祥の店がある

味噌カツは三重県が発祥!

名古屋から電車に乗って三重県の阿漕駅にやって来た。そう、名古屋名物と言いながら味噌カツ発祥の店は三重にあるのだ。味噌カツは三重生まれなのだ。ドン小西と同じように津出身なのだ。
駅から10分くらい歩く
駅から10分くらい歩く
阿漕駅は県庁所在地である津駅の隣にある駅だけれど、無人駅となっている。なんとものどか。なんとなく味噌カツが名古屋名物になったのも分かる気がする。僕もここに住んでいれば都会を目指したと思う。
発祥の店に到着!(カインドコックの家 カトレア 住所:三重県津市上弁財町17-108-1)
発祥の店に到着!(カインドコックの家 カトレア 住所:三重県津市上弁財町17-108-1)

味噌カツの勝ち!

味噌カツが生まれたのは阿漕駅から歩いて10分くらいのところにある「カインドコックの家 カトレア」というお店。1965年にこのお店で生まれたそうだ。友達の家みたいな外観に親しみを覚える。
メニューにバッチリ書いてある
メニューにバッチリ書いてある
楽しみでにやり
楽しみでにやり
メニューを開けば味噌カツはこのお店で誕生したと書いてある。やはり名古屋名物といいながら、三重が発祥の地なのだ。ちなみにこのお店に僕が訪れたのは朝9時ごろ。人生で一番早くカツを頼んだ瞬間だったと思う。
これが元祖味噌カツです(ご飯もついて880円)
これが元祖味噌カツです(ご飯もついて880円)
運ばれて来た味噌カツはどこか酸っぱい匂いがした。しかし、その酸っぱい匂いは食欲をそそる感じ。初めて妊婦さんの気持ちを理解した。カツを通して妊婦さん体験をするとは思わなかった。
うまい!(写真がすごく近かった)
うまい!(写真がすごく近かった)
食べてみると味噌の味は強くなく、程よい酸味とその向こうに味噌の持つ甘みが感じられる。それらは決して全面には出てこずカツの旨みを高めている。肉が持つ美味しさを最大限に引き出しているのだ。正直な話、今まで食べたカツで一番美味しかったと言っても後悔は無いほどだ。
デカいのも嬉しい!
デカいのも嬉しい!
店員さんに話を聞くと、名古屋の味噌カツとは違い、こちらの味噌カツはソースがサラッとしているとのこと。味噌カツといえば名古屋が有名ですがどう思いますか? と聞くと別物かな? と言っていた。パクリやがって! みたいなのはなく、ソース同様にサラッとしている。
食べ終わったらこの時間。カツを食べる時間ではなかった
食べ終わったらこの時間。カツを食べる時間ではなかった

名古屋の味噌カツ発祥の店へ

調べてみると名古屋にも味噌カツ発祥の店がある。東京にも支店がある「矢場とん」というお店だ。しかし、こちらで生まれた味噌カツは先に行った店の味噌カツのような一般的によく知られる味噌カツとは形が違う。
大須にある矢場とん本店(矢場とん矢場町本店 住所:名古屋市中区大須 3-6-18)
大須にある矢場とん本店(矢場とん矢場町本店 住所:名古屋市中区大須 3-6-18)
矢場とん発祥の味噌カツは串かつに味噌(ソース)が付いたもの。戦後間もない頃、名古屋名物どて煮に串カツを浸して食べたことが始まりだそうだ。お店は大賑わいで名古屋の人は味噌カツが好きなのだと身を持って実感した。
これが名古屋発祥の味噌カツ。串カツですな
これが名古屋発祥の味噌カツ。串カツですな
食べてみると甘い。カトレアのソースとは花瓶と過敏くらいに違う。全く別物なのだ。こちらのソースはとにかく甘いのだ。キットカットをおかずに白米を食べていた時期がある僕でも驚くほどに甘い。
美味しいけれど、甘いとしか感想がないほど甘い(味噌が甘い文化圏にいなかったからだと思う)
美味しいけれど、甘いとしか感想がないほど甘い(味噌が甘い文化圏にいなかったからだと思う)
串カツ形式の味噌カツだけでなく、こちらにもカトレアと同じ形の味噌カツがある。こういう形式がカトレアの発祥らしい。味は相変わらず甘い。もしこれが子育てだとすると相当なワガママな子に育つと思う。それくらいに甘いのだ。また、このお店だけでなく大体の味噌カツはこのように甘い。
こちらはソースがドロッとしている
こちらはソースがドロッとしている
そういえば三重で乗ったタクシーの運転手が味噌カツは三重で生まれて名古屋で花開いた、と言っていた。

名古屋に出た味噌カツは、どて煮や味噌煮込みうどんなど味噌文化の強い名古屋に染まってしまい今のよく知られる味噌カツになったのだと思う。

同じ味噌カツでも、味噌っぽさは名古屋の方が強いので、どちらが味噌カツかと言われれば確かに名古屋の方になってしまう。そりゃ、味噌カツが名古屋名物になっても仕方が無い。
お土産も売っている
お土産も売っている

三重VS名古屋

味は別物とはいえ、味噌カツ発祥が三重であることに違いは無い。実は名古屋名物の「天むす」も三重が発祥である。名古屋名物と言いながら三重発祥の物が多いのだ。その辺をどう思っているのか、それぞれ30年、三重と名古屋に住んでいる人に話を聞いてみることにした。
顔はダメとのことです
顔はダメとのことです
名古屋に住んでいる知人に三重県人と名古屋人を呼んでもらった。僕は彼女ら二人とは初対面なうえに、やたらオシャレなカフェで話を聞いたので、無駄に緊張している。そんな状況で早速話を聞いた。
三重ヒートアップ!
三重ヒートアップ!
三重県代表に「味噌カツは三重が発祥ですが、名古屋名物になっているのはどう思いますか?」と聞いたら「え、そうなの!?」という答えが返ってきた。気付いたら終電がない、ぐらいの驚きかただ。「天むすもですよ」と言うと「あ、そうなんだ」と風呂上りのような気の抜けた答えが返ってきた。
では、なぜ三重がヒートアップしているかといいますと
では、なぜ三重がヒートアップしているかといいますと
赤福を名古屋名物と思っている人が多い、と三重代表は言う。あれは三重のものでそこをキチンと認識して欲しいとヒートアップしている。味噌カツはどうでもいいが、赤福にはこだわりがあるようだ。

「赤福も味噌カツも天むすも、三重はものを作る力はあるけれど、宣伝する力が無い」と嘆いていた。今の知事には期待している、と三重代表は熱く続けた。
これが赤福です
これが赤福です
一方、名古屋代表は余裕。味噌カツは名古屋で有名なものだから三重発祥と言われてもね~、と。

家には「つけてみそかけてみそ」もあるそうだ。名古屋人の味噌への愛はハンパない。

三重代表の家に「つけてみそかけてみそ」はないらしいので、味噌の好き具合は名古屋人が上。そう考えると味噌カツを名古屋名物と言われても仕方がない気がした。
これが名古屋では絶対に家にあるという「つけてみそかけてみそ」。名古屋の味噌カツのソースのように甘い味噌です
これが名古屋では絶対に家にあるという「つけてみそかけてみそ」。名古屋の味噌カツのソースのように甘い味噌です

個人的には三重の味噌カツ

同じ味噌カツでも結構な違いがあって驚いた。
僕は三重の味噌カツが好みだったが、全くプッシュされておらずもったいない気がした。

ただ三重の人たちは、味噌カツが名古屋名物になっていることをなんとも思っていなかった。タクシー運転手も、店員さんも、三重県代表もそうだ。その心の広さに感激したが、期待していた味噌カツ戦争は勃発しなかった。名古屋代表との殴り合いを期待していたのだけれど。

一方、名古屋の知人は「味噌カツは名古屋の物!」と断言していてその自信が羨ましかった。
あとカフェで飲んだ「あずき茶」が美味しかった
あとカフェで飲んだ「あずき茶」が美味しかった
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