知らなければ入っていかない場所にある
都営地下鉄浅草線の高輪台駅から歩いて3分。「味の素グループ高輪研修センター」内にその図書館はあります。
見た目は普通に研修センター。一般利用可能な図書館があるようには思えない。
警備員の立つガラス張りの入口を抜け、受付を通り建物の奥へ。ロッカーにカバンを預けて、自動ドアを抜けた先が目的の図書館となります。
本の貸し出しを行う受付や、書籍検索用の端末があるなど内部は普通の図書館と変わりません。しかし、本の種類が全く異なります。
いきなり棚1段全部が江戸料理本で埋まっている!
こちらは海系食材別の本だ!
炭水化物バンザイ!米、餅に関する本が続く!
発酵の中でも乳酸発酵で1区分だ!
人参史?ニンジンの歴史だけで厚い本が数冊も!
つまみ類も充実だ!
日本酒関連で2段以上!瓶じゃなくて本が。
飲みすぎる前にこの本で勉強だ!
「そしゃく」食べ物を噛む話だけで1区分!
食だけに「美味しんぼ」までもが!
余りの本のラインナップの凄さに興奮して「!」を多用してしまいました。いや、食に関する本好きの方ならそうなること間違い無しのパラダイス図書館なのです!
「食の文化ライブラリー」といいます。
この図書館は財団法人 味の素食の文化センターが運営する「食の文化ライブラリー」という図書館です。味の素食の文化センターは、食文化研究活動の支援や、食文化発展のための普及事業を行う財団法人。味の素株式会社が開始した食文化事業を継承しつつ、1989年に設立されたそうです。詳しくは
財団のホームページをご覧ください。
財団の発行する食文化専門誌「vesta」。食文化に関する研究報告など色々載っています。
ちなみに、この号はイマイチ反応が悪かったのだとか。やはり写真がちょっとね。
食の文化ライブラリーは、財団が1989年から収集してきた食文化に関する単行本、学術論文、文献、雑誌、古書、錦絵などを集めた食の専門図書館です。3万冊以上の食に関する本があり、一般に貸し出しも行っています。蔵書は毎年1000冊ぐらい増えているそうです。
映像ライブラリーもあります。こちらは図書館内での閲覧のみ。
映像ライブラリーには食をテーマとする映画も多数。「南極料理人」も食文化。
図書館の主な利用者は食文化を研究する学者や学生。マスコミや料理人など仕事として食に係わる人。趣味として食に関する知識を楽しむ一般の人に分けられます。
案内をしていただいた財団の方の話によると、食文化というものは、栄養や調理など食品そのものの研究と違い、学会や特別な講座というのが無いそうです。この食の文化ライブラリーや財団の活動はその受け皿となっています。
確かに、これだけ食に関する本があればかなりのことが調べられるはず。蔵書は図書館内の端末や財団のホームページでも検索可能です。
江戸時代の諸国産物についての本。厚さも巻数も凄い。
軍用給食の本も多数。
また、こちらの財団は味の素株式会社とは別の法人となるので、会社のシバリにとらわれることなく様々な活動が行えるのだとか。その為、こんな本も置いてあります。
巨大チキンラーメンと日清食品の社史。
その他、各種食品会社の社史を所蔵。
各種食品会社の社史です。恐らく本屋で売っているような物ではないので、ここに来なければなかなか見ることが出来ないでしょう。
他にも貴重な本が色々
他にも食の文化ライブラリーでは、江戸時代に出版された本の原書や錦絵など、食に関わる貴重な本を所蔵しています。
かなり古い本の数々。中を見ても読めないような字で書かれていたりする。
それら特別な本も、多くの物は鍵のかかった棚に入っていて、一般の人も受付に言えば見せてもらえます。例えばこちら。
「料理の友」。文字や絵に時代を感じる。
日本で初めて出版された主婦向け料理雑誌「料理の友」です。
雑誌でも写真じゃないところが大正時代。
雑誌と言うより国語の教科書を見ているようだ。
大正時代に出版された雑誌で、食の文化ライブラリーでは創刊号からほぼ全巻揃っています。国会図書館にもこの数は揃ってないそうです。
戦時中に出版された「料理の友」。紙の質があまり良くない。
掲載されている広告も時代背景を感じさせる。
他にも紹介しきれないほどの食の本がある
食の文化ライブラリーは、これだけに留まらず、食関係の雑誌が50種類以上。統計資料などもあります。一日居ても飽きない。いや、何日も居て全部の本を読み倒したくなるようなパラダイスなのです!
男の料理の向こうには行事食。
食器も食文化。
子供向けの世界のごはん絵本。大人が読んでも楽しい。
世界中の料理を作れるようになれるかも。
マンガは「美味しんぼ」の他、「夏子の酒」もある。
日本酒で「夏子の酒」ならワインで「神の雫」も揃っている。
他にもこんな施設があります。
食の文化ライブラリーだけでも十分すぎるのに、同じ建物内には他にも楽しい施設があります。1つ目が「食文化展示室」です。
小さな会議室程度の展示スペースです。
通常は金庫に保管されている貴重な錦絵もこのように展示されていることがある。
ここは通常見ることが出来ない所蔵品の錦絵などが展示されていたり、食文化に関する企画展が行われていたりします。
もう1つが「食と暮らしの小さな博物館」です。
こちらの施設も無料で見学できます。
歴代の味の素製品のパッケージが並ぶ。
その当時の食卓風景を再現。私の子供の頃の記憶にある台所はもう少し後ですね。
その当時流行した商品なども展示。これを見るだけでも楽しい。
こちらでは味の素製品の歴史。その時代の食卓風景や、流行の品。各国で販売されている味の素製品のサンプルなどが見られます。
どちらも規模は小さいですが、見ていて楽しいものばかり。食の文化ライブラリーを訪れたら、一緒に立ち寄ってみるのもいいかもしれません。
毎日でも行きたい
食の文化ライブラリーにある本についてザックリと紹介しましたが、紹介出来たのは本当に極一部です。実際に行ってみると、食という単一の分野でこれだけの本があるのかと、その多さに驚かされます。
食に興味のある方なら是非一度行ってみてください。何度でも行きたくなるような場所です。食にあまり興味の無い方でも、一度行って中を見回し、気になるタイトルの本を手にとってみてください。そこから思わぬ発見があるかもしれません。
今回、一般公開はしていない、金庫室に保管されている江戸時代の原書なども幾つか見せて頂けました。これは和菓子の図案集のようです。豆腐百珍の原書などもあるらしい。見ても読めないと思うが見てみたい。
味の素食の文化センター
http://www.syokubunka.or.jp/
食の文化ライブラリー
開館日:毎週月曜日~土曜日
開館時間:午前10:00~午後5:00
注)
7月~9月の間はライブラリー・展示室の開館時間が午前9:30~午後4:20となっています。また、8月10日~18日の間は夏期休館日です。