特集 2011年7月10日

ブドウと大根おろしは相性がいい

ブドウと大根、食用菊とカボスを用意。あと、醤油や酢も使います。
ブドウと大根、食用菊とカボスを用意。あと、醤油や酢も使います。
ブドウは通常皮から出した実をそのまま食べます。何かをかけて食べたりすることはほとんどありません。

しかし、江戸時代にはブドウに大根おろしをかけて食べる「はじき葡萄」という料理がありました。いったいどんな味なのか。実際に作って食べてみました。
1972年生まれ。元機械設計屋の工業製造業系ライター。普段は工業、製造業関係、テクノロジー全般の記事を多く書いています。元プロボクサーでウルトラマラソンを走ります。日本酒利き酒師の資格があり、ライター以外に日本酒と発酵食品をメインにした飲み屋も経営しているので、体力実践系、各種料理、日本酒関係の記事も多く書いています。(動画インタビュー


> 個人サイト 酒と醸し料理 BY 工業製造業系ライター 馬場吉成 website

料亭で出される料理だった

はじき葡萄は、文政五年(1822年)に出版された料理本「料理通」に出てくる料理です。

「料理通」は、文化文政の頃(19世紀初め頃)に江戸で繁盛した料理屋「八百膳」の4代目主人である栗山善四郎により書かれた本。葛飾北斎の描いた挿絵が使われていたりと、当時の流行の最先端を行く料理本だったようです。諸藩の武家や商家が江戸を訪れた際に、手頃な土産として持ち帰ることもあったのだとか。

はじき葡萄は、そんな「江戸のイケてる料理本」に載っていた小洒落た料理だったようです。でも、味はどうなのさ?

むいて、おろして混ぜるだけ

何はともあれ、実際にはじき葡萄を作ってみます。作り方は簡単です。
ブドウの皮を剥きます。ツルッと出るブドウなら包丁要らず。
ブドウを皿に盛ります。種は取っておくと食べやすい。
大根をおろします。怒って荒くおろすと細胞が壊れて辛くなりますよ。あと、おろして5、6分経過したものが一番辛いそうです。
大根おろしをブドウにかけます。適量で。
食用菊を散らします。ちょっとしか使わないので、残った食用菊はお浸しやサラダでどうぞ。
酢醤油を作ります。市販のポン酢とかでもいいようです。または醤油だけでもいいらしい。お好みで好きなものをどうぞ。
はじき葡萄完成。見た目涼やか。
はじき葡萄完成。見た目涼やか。
これではじき葡萄は完成です。酢醤油をかけてスダチやカボス、レモンなどを搾って食べます。
大根おろしと酢醤油を魚介類じゃなくて果物へかける、味はいかに。
大根おろしと酢醤油を魚介類じゃなくて果物へかける、味はいかに。
食えない味じゃないと思うけどねー。やっぱり違和感がある・・
食えない味じゃないと思うけどねー。やっぱり違和感がある・・

予想外に美味しい

はじき葡萄、思った以上に美味しいです。清涼感があって、サラダ的なサッパリとした味わいです。

大根おろしと酢醤油の味にひっぱられて最初は魚貝のようにも感じます。凄く柔らかいホタテの貝柱のような感じです。しかし、最後にブドウの甘さがやってくる。

夏の暑い頃、小鉢に少しだけ出てくる程度ならちょっと変わった爽やかな1品としてはいいかもしれません。
予想外に美味しいぞ!
予想外に美味しいぞ!

ブドウ以外の物だとどうだろう?

予想に反してはじき葡萄は美味しい料理でした。見た目だけを狙い、味は二の次という珍妙な料理かと思ったら、そんなことはない。また作ってもいい味です。大根おろしは色々な料理に合わせやすいといいますが、ブドウの甘さにも合うとは思わなかった。意外な発見でした。

ところで、ブドウの甘さに大根おろしが合うのならば、他の何か甘い食材でも大根おろしに合うのでしょうか?その辺りも少し探ってみたいと思います。

まずはこんなものから試してみましょう。
子供の頃大好きでした。缶ミカン。大根おろしとの相性はいかに!
子供の頃大好きでした。缶ミカン。大根おろしとの相性はいかに!
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はじき缶ミカン

では、ブドウ以外に大根おろしと相性の良いものを探っていきます。まずは日本で一番出荷量の多い果物。ミカンを試してみます。
日本人にとって最も身近な果物です。
日本人にとって最も身近な果物です。
はじき葡萄ならぬ、はじき缶ミカンの作り方はブドウの時と全く同じ。皿に盛って大根おろしをかけて菊の花を散らせば出来上がりです。
はじき缶ミカン。白にオレンジと黄色でブドウの時よりも色が綺麗。
はじき缶ミカン。白にオレンジと黄色でブドウの時よりも色が綺麗。
ブドウ時に比べると色が鮮やかです。ミカンの乗ったかき氷と思って見れば結構美味しそうにも思えます。
ミカンに海苔巻いて醤油で食べるとイクラの味になるらしいね。さて、これはどうなのか。
ミカンに海苔巻いて醤油で食べるとイクラの味になるらしいね。さて、これはどうなのか。
はじき缶ミカンは、はじき葡萄よりも味がハッキリしています。最初にミカンの甘さが現れ、後から強い大根の味。そのまま大根の味の余韻が続きます。

味そのものは悪くはないものの、ブドウの時のような一体感がありません。昔、素麺の中に入っていた缶ミカンをうっかり麺ツユで食べてしまったような感覚です。
やや低調な滑り出しです。

はじきラフランス

つづいても果物でいきます。こちらです。
ラフランス。洋ナシです。随分メジャーな果物になったな。
ラフランス。洋ナシです。随分メジャーな果物になったな。
ラフランスです。洋ナシですね。最近ではスーパーでも見かけるような果物になりました。
目を細めるとカズノコとかに見える・・気もする。
目を細めるとカズノコとかに見える・・気もする。
同じく酢醤油をかけてカボスを搾ります。
いや、目を細めてもラフランスだな。さて味は?
いや、目を細めてもラフランスだな。さて味は?
はじきラフランスは、割とはじき葡萄に近いです。ラフランスの味と大根の味が一緒にきてバランスがいい。違和感もありません。ラフランスの少しザラッとした食感が大根おろしと似ている為か、酸味がミカンほど多くないためか。はじきラフランスなかなかいいですね。
果物はもう一つ調べてみます。

はじきリンゴ

ミカン、ラフランスの次は、ミカンに続き日本で収穫量の多い果物。こちらです。
缶詰リンゴ。給食に出ていた冷凍リンゴ、結構好きだったなあ。
缶詰リンゴ。給食に出ていた冷凍リンゴ、結構好きだったなあ。
リンゴです。小学生の時の学校給食でポテトサラダに入っていたことがありました。あまり好きな味ではありませんでしたが、そんな感じで料理にも取り入れられることがある食材。期待が持てます。試してみましょう。
こういうお菓子がありそうな気がする。
こういうお菓子がありそうな気がする。
はじきリンゴは、大根の味よりもリンゴの味がはっきり感じられます。使ったリンゴが缶詰のリンゴでシロップに浸かっていた為かもしれません。大根がリンゴの味に負けています。

ただ、大根おろしの食感が、リンゴのシャリシャリとしたフレッシュな感じを呼び戻し、全体として美味しくまとまっています。いずれにしろ、美味しいが主にリンゴと言った感じは否めません。
果物類は、バランスの悪さの目立つ物があるものの、概ね大根おろしと合わせても大丈夫なようです。続いては果物寄りだが、お菓子的な物との相性を探ってみます。
果物類は、まあ概ねアリですかな。
果物類は、まあ概ねアリですかな。
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はじきブドウセリー

続いてお菓子的な物と大根おろしの相性をさぐります。まずはこれ。
ブドウゼリー。ナタデココも入っています。でもカロリーはゼロ。
ブドウゼリー。ナタデココも入っています。でもカロリーはゼロ。
はじき葡萄だけに、ブドウゼリーを用意してみました。味は一応ブドウ味。ツルンとした食感は、ややブドウに近い。はじき葡萄的な調和が見られるかもしれない。
なんといいますか・・・色は割と綺麗なものの、失敗作の夏の和菓子のような。
なんといいますか・・・色は割と綺麗なものの、失敗作の夏の和菓子のような。
柔らかめのゼリーの中に硬めのゼリーとナタデココが入ったこのゼリー。大根おろしをかけると、色は綺麗なのですが、ドロッとした感じが増してきます。
異物感が凄いね、こりゃ。
異物感が凄いね、こりゃ。
はじきブドウゼリー。これはいけません。ブドウゼリーの人工的な味が大根おろしの味と全く合いません。味だけでなく、柔らかいあとにザラザラとくる食感もダメです。

同様に、ナタデココも人工的な味を大根おろしが悪い方向に引き上げています。そこへ酢醤油の味が決定打を下します。これは完全に失敗。

別々に分ければ一応食べられます。なら最初からそうしろということですね。
二度とやりません。次はなんとかなるでしょう。

はじき杏仁豆腐

つづいては中華よりこちらです。
杏仁豆腐。子供の頃は牛乳寒天と同じ物と思っていました。
杏仁豆腐。子供の頃は牛乳寒天と同じ物と思っていました。
杏仁豆腐です。豆腐と大根おろしは相性がいい。これも豆腐と言っているだけに何とかなるかもしれない。
杏仁豆腐としては何だか美味しそうには見えますが・・・
杏仁豆腐としては何だか美味しそうには見えますが・・・
はじき杏仁豆腐は、大根おろしの味がまず感じられます。その後に強い杏仁豆腐の味と香り。それぞれの食材の主張が強くバラバラです。また、杏仁豆腐のツルリとした食感が、大根おろしのザラザラした感じとぶつかり調和が全く見られません。

豆腐と言ってはいても、白い見た目だけ。大根おろしをかたくなに拒絶し続けます。拒絶するだけならまだしも、悪い方向へ走る感じです。これもダメですね。ただ、付け合せの黄桃は無難に大根おろしと渡り歩いています。これが無ければ食べるのが辛い1品でした。
立て続けに失敗です。次いってみましょう。

はじきトマトゼリー

次の物はかなり期待できます。こちら。
トマトゼリー。結構甘い。
トマトゼリー。結構甘い。
トマトゼリーです。珍しかったので買ってみました。トマトの味がハッキリするが、かなり甘く、青臭くもありません。
丸ごと1個の完熟トマト入り。
丸ごと1個の完熟トマト入り。
野菜とお菓子の中間ぐらいの感じです。なかなか美味しいゼリーです。さて、大根おろしとの相性は?
トマトの感じがしないがトマトです。なんだかグロテスク。
トマトの感じがしないがトマトです。なんだかグロテスク。
はじきトマトゼリー、うまいです。すこし甘さのあるトマトの味と大根おろしの辛味、酢醤油の酸味がよく合っています。むしろ、トマトゼリーをそのまま食べるよりも、大根おろしと酢醤油で食べるほうが美味しいぐらいです。製造元にこの食べ方を推奨したい。
最初はダメかと思いましたが、お菓子的な物でも意外に大根おろしと合う物が有りそうな気がしてきました。最後はチャレンジ食材でいってみます。
もう3種類ほど挑んでみます。
もう3種類ほど挑んでみます。
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はじき黒糖わらび餅

最後はチャレンジな食材でいきます。まずはこれ。
黒糖わらび餅。缶詰コーナーの横にあったのでうっかり購入。
黒糖わらび餅。缶詰コーナーの横にあったのでうっかり購入。
黒糖わらび餅です。粘りのあるツルンとした食感の美味しいお菓子です。さて、はじき黒糖わらび餅にしてみたらどうだ?
白と黒で和菓子の雰囲気ですが、味はどうにもこうにも。
白と黒で和菓子の雰囲気ですが、味はどうにもこうにも。
はじき黒糖わらび餅は、黒糖の味が強すぎて、まとまりがありません。一応食べられる味ではありますが、あまり美味しくない。和菓子系は結構行けるかと思いましたがそうでもありませんでした。そのままわらび餅として食べた方が美味しいです。
もう少し、味の淡い和菓子を選べば美味しかったかもしれません。次いってみましょう。

はじきプッチンプリン

つづいては長いこと愛されるこちらのお菓子。
プッチンプリン。1972年発売。39年間揺るがないその美味しさ。
プッチンプリン。1972年発売。39年間揺るがないその美味しさ。
プッチンプリンです。流石にこれはちょっと厳しいかなと思いつつやってみました。
大人になって大根おろしの上にプッチンする日が来るとは、子供の頃夢にも思わなかった。
大人になって大根おろしの上にプッチンする日が来るとは、子供の頃夢にも思わなかった。
プリンアラモードと思えばなんとかなるか。
プリンアラモードと思えばなんとかなるか。
はじきプッチンプリンは、驚くべき味です。不味くはありません。むしろ美味しいと言っていいでしょう。

理由は簡単。プッチンプリンの味が強すぎて、大根おろしの味も酢醤油の味も全て飲み込んでしまうのです。食べた瞬間、大根おろしや酢醤油の味はします。しかし、直ぐに口全体がプッチンプリン味になるのです。

プッチンプリンは美味しい。だから、はじきプッチンプリンの味も大体のところ美味しい。プッチンプリンは揺れてもその味は揺るがないといった所でしょうか。驚きました。
次が最後の食材です。

はじきブドウグミ

はじき葡萄はブドウでシメることとします。最後はこちら。
ブドウ味グミ。果物のブドウよりも硬く、味もかなり人工的。
ブドウ味グミ。果物のブドウよりも硬く、味もかなり人工的。
ブドウ味のグミです。食べた歯ごたえは全く違うが一応ブドウ味。はじき葡萄のブドウとはブドウという呼び名以外ほぼ違う物と言ってもいいでしょう。
何か凄い間違いを犯しているという感じが強い映像。
何か凄い間違いを犯しているという感じが強い映像。
はじきブドウグミ。はっきり言って不味いです。 グニグニした食感、舌に残る人工的な味。いいところ無し。やってはいけません。

考え出されたのには訳がある

はじき葡萄のブドウの部分を色々変えて相性を試してみたこの実験。トマトゼリーなど美味しい物があり、果物類は大体大丈夫なことがわかりました。大根おろしと甘い物を合わせるのはなかなか厳しいようです。

幾つもやってみましたが、結局のところ一番バランスがよく、味の良いものは普通のはじき葡萄でした。書物に書き残されるぐらいの料理ですからね。思いつきでスーパーの棚に並んでいる物をかきあつめ、適当に組み合わせた程度の物とは訳が違うのでしょう。確かな味です。

これから夏本番となったら、普通の、はじき葡萄をもう一度作りその涼やかな味を楽しむことにしよう。それ以外はもうやらない。
それにしても、プッチンプリン。驚くべき味の揺るがなさだな。今回改めて見直した。
それにしても、プッチンプリン。驚くべき味の揺るがなさだな。今回改めて見直した。
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