特集 2011年7月6日

本当に馬鹿な鍋を食べてみた

本当の意味で馬鹿な鍋を食べてきました
本当の意味で馬鹿な鍋を食べてきました
これから夏真っ盛りという時期に鍋料理の話題ってのもどうかと思ったんですが、見つけちゃったんだから仕方がない。

オシャレなイメージのある横浜の片隅で、本当に馬鹿な鍋を食べさせてくれるお店を発見したので、食べに行ってきました。
1975年群馬生まれ。ライター&イラストレーター。
犯罪者からアイドルちゃんまで興味の幅は広範囲。仕事のジャンルも幅が広過ぎて、他人に何の仕事をしている人なのか説明するのが非常に苦痛です。変なスポット、変なおっちゃんなど、どーしてこんなことに……というようなものに関する記事をよく書きます。(動画インタビュー)

前の記事:24時間営業おにぎり屋の謎に迫る

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みなとみらいに行ったんですが……

狂おしいまでにステキな景色!
狂おしいまでにステキな景色!
オシャレなイメージのある横浜の中でも、ひときわステキ感があふれているスポット・みなとみらい。
横浜ランドマークタワー……ってこういうのなんですね。東京タワー的な物だと思い込んでた
横浜ランドマークタワー……ってこういうのなんですね。東京タワー的な物だと思い込んでた
・名前が全部ひらがな
・「みらい」とかいっちゃってて若干バカっぽい

と、微妙に気になるポイントもなくはないですが、海辺に近未来的なビルが建ち並び、しかも観覧車まであるなんて、こんなとこデートで訪れた日にゃあ女子もウットリ、観覧車の中から夜景見ながらチューですよ、チュー!
キャプテン翼の名前を冠したフットサル・コート「キャプテン翼スタジアム」なんてのもありました
キャプテン翼の名前を冠したフットサル・コート「キャプテン翼スタジアム」なんてのもありました
いやあ、いつ見てもすさまじい足の長さです
いやあ、いつ見てもすさまじい足の長さです
翼コート、岬コート、若林コートに分かれていました
翼コート、岬コート、若林コートに分かれていました
『キャプテン翼』がオシャレかどうかという点には議論の余地がありそうですが、「フットサル」とかやってる人たちはみんなオシャレさんですよね、たぶん。

やっぱりこういう街の方が好き

さて、 そんなオシャレでステキな“みなとみらい”ですが、ちょこっと離れた裏通りに入ると、オシャレ感ナッシングな雑然とした地区があるんですよ。
「横浜の下町」と呼ばれる野毛地区
「横浜の下町」と呼ばれる野毛地区
観覧車よりも夜景よりも、はるかに心が癒されます
観覧車よりも夜景よりも、はるかに心が癒されます
ゴチャッとしてて、イイ具合にさびれてて、小さい飲み屋がいっぱいあって……。

いや、夜景も観覧車も結構なんですけど、ボクはやっぱりこういう雰囲気の街の方が好きですねぇ。
横浜なのに「ろっぽん樹」とはこれいかに
横浜なのに「ろっぽん樹」とはこれいかに
カリスマ美容師よりもこの店で髪を切りたい
カリスマ美容師よりもこの店で髪を切りたい
「立ち飲み!! ぴんぴん」……多くは語るまい
「立ち飲み!! ぴんぴん」……多くは語るまい
オシャレ・スポットに気圧されていたボクでしたが、野毛地区に来たら超・リラックス。

ボクが非常に好きな感じの味わい深い街なので、なんか面白いお店とかあるだろうな……と思って歩き回っていたのですが。
こんなお店を発見
こんなお店を発見
看板の情報量が多いのは、ナイスな店である目印
看板の情報量が多いのは、ナイスな店である目印
「毛沢東もビックリ」やら「楊貴妃も腰抜かすギャルのアイドル」「ジンギスカンもいきり立つぼくちゃんのアイドル」等々……ワケの分からない文句が並べ立てられた看板。
この段階でどーかしているお店な予感マンマンなんですが、わりとこの辺ではメジャーなお店なのと、明らかにデイリーポータルZの色に合わないような気がするので、今回紹介するのはこのお店ではないんですよ。
一応、お店には入りましたけどね。聞いたことのないオリジナル・サワーがいっぱい
一応、お店には入りましたけどね。聞いたことのないオリジナル・サワーがいっぱい
ちなみにコレは「テポドンサワー」マムシ粉末がぶっかけられていて……なんか粉っぽかったです
ちなみにコレは「テポドンサワー」マムシ粉末がぶっかけられていて……なんか粉っぽかったです
それじゃあ、どのお店を紹介するのかといいますと……。こちらです!
夕暮れの街でこうこうと輝く「馬鹿」の文字
夕暮れの街でこうこうと輝く「馬鹿」の文字
ば……「馬鹿鍋」!?
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色々気になるこのお店

味わい深い街・野毛を歩き回って見つけた、実に気になるお店「ばか鍋・浜幸」。
格調高くも見えるし、バカバカしい感じもする不思議な店構え
格調高くも見えるし、バカバカしい感じもする不思議な店構え
「馬鹿鍋(ばか鍋?)」という料理自体も、もちろんものすごく気になるのですが、その他にも色々と注目していきたいポイントが。
入口の扉の上にドーンと設置された、泥酔して眠くなってしまったという雰囲気なタヌキのレリーフ。

全体的にユニークなデフォルメがされていて楽しいルックスになっていますが、特に股間部分のフォルムがなんともいえずこう……。
夜間、ライトアップされるとこんな神々しい雰囲気に
夜間、ライトアップされるとこんな神々しい雰囲気に
店の裏に回るとこんな看板もありました
店の裏に回るとこんな看板もありました
「一度で二度(うま)い浜幸の馬鹿鍋」!

はいはい、ダジャレですねぇ。看板等にやたらダジャレが使われている店もナイス率が高いような気がします。
「上から読むと“ばか鍋”、下から読むと“かば鍋”」

……なにか意味深なようで、おそらくなにも意味がないであろう言葉。

まあ、外観ばかり見ていても仕方がないので早速、問題の馬鹿鍋を食べに行きたいと思うのですが、そもそも馬鹿鍋ってなんなの!?

闇鍋的にジャムとか靴下とかメチャクチャな具材をバンバンぶっ込んでしまう、クルクルパーな感じのお馬鹿な鍋料理だったりするんでしょうか。
本当にそのくらい馬鹿なんだとしたら、それはそれで興味あるところですが、このイラストを見るに、まあ馬肉と鹿肉を使った鍋ってところなんでしょうな。

若干、残念な気もしますが、ボクは食べ物に関しては非常に保守的なので(虫とか食うなんて信じられない!)ちょっと胸をなでおろしたりして。

しかし馬肉はともかく、鹿の肉って食べたことがないんですが、一体どんな味がするんでしょうね。
ああー……店内もカオスな雰囲気が漂っております
ああー……店内もカオスな雰囲気が漂っております
和風の店内に、なぜかサンバ・カーニバルの写真がいっぱい……
和風の店内に、なぜかサンバ・カーニバルの写真がいっぱい……
ドーンと壁に掲げられた馬の首。馬肉料理を食べさせるから……ってことでしょうね
ドーンと壁に掲げられた馬の首。馬肉料理を食べさせるから……ってことでしょうね
さらにこの辺の飾りに至っては、もうなにがなんなのやら……。
そして、店内にも貼ってありました「一度で二度馬(うま)い」。

……そんな色んな場所で推すほど馬いダジャレじゃないと思いますよ!

ま、とにかく馬鹿鍋を食べてみましょう!
と思い、メニューを見てみると。
う、うわぁ……「いなご佃煮」とか「蜂の子高原煮」とか、虫料理の名前が……。馬鹿鍋以外でも、変わった料理を出しているお店なんですかね。

と、とりあえず馬鹿鍋だけでいいかな。
つーことで、出てきました「馬鹿鍋」! ものすごく安心感のある見た目でホッとしました……。
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馬鹿鍋をいざ食さん!

意外にも(?)ものすごくまともな見た目だった馬鹿鍋。

店員さんによると「桜が乗ってる方が馬肉、もみじが乗っている方が鹿肉ですよ」とのこと。手前側が鹿肉なんですが、馬肉よりもさらにキレイな赤い色をしています。
馬肉を「桜肉」と呼ぶのは知っていましたが、鹿肉の方も「もみじ」と呼ばれているそうです。なんでも、肉食が禁止されている坊さんが隠語として「もみじ」といって隠れて食べていたんだとか……ほー。
グッツグツに煮えてきました。ポー、いいニオイっす
グッツグツに煮えてきました。ポー、いいニオイっす
さて、この馬鹿鍋。使われている肉が馬と鹿という違いはあるものの、基本的にはわりしたで味付けされたすき焼き的な鍋となっています。

肉以外の具材でネギ、豆腐などの他に、お麩、ごぼうなどが入っているのは変わってますけどね。
すき焼き的に溶き卵につけて食べます
すき焼き的に溶き卵につけて食べます
この手の獣肉料理ってクセが強いイメージがありますが、意外とフツーに食べやすく、特に初めて食べる鹿肉は、肉というより煮魚に近い感じすらするさっぱり感で美味しかったです。

馬鹿鍋……馬鹿な名前のわりに侮りがたし!
残った汁に
残った汁に
うどんを投入して締め!
うどんを投入して締め!
馬、鹿ともに脂の味があまり強くないので、残り汁が牛肉のすき焼きのようにギトギトしておらず、締めのうどんにもちょうどイイ感じでした。

馬鹿鍋の由来は……

--え、じゃあ馬鹿鍋ってこちらのお店のオリジナルなんですか。

「先代が考案した料理なんですよ! もともとは馬料理を出していたんですが、馬肉の鍋に鹿を入れたら馬鹿になるじゃないか! ……ということで馬鹿鍋を作ったみたいですね」

--あ、じゃあ味とかそういうことではなく……。

「名前ありきで作ったらしいです」

確かに「馬鹿鍋」って面白い名前だとは思いますが、「馬鹿」ありきで馬肉と鹿肉を使うことにしたんですね……。まあ名前ありきで作ったわりに、ちゃんとした味に仕上がっている辺りはすごいと思いますが。

ちなみに、鹿肉を出しているお店って他に見たことがないんですが、「馬鹿」を成立させるためだけに鹿肉を入手するのは大変なんじゃないかと思い、その辺も聞いてみたところ。

「一部地域の郷土料理や、フランス料理などで鹿肉が使われているので、一応取り扱っている業者があるんですよ。場所によっては、畑を荒らす鹿を退治して、それを食材にして食べているところもあるみたいですけどね……」

あとひとつ、コレだけは聞いておきたかったことがあります。
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ま、そりゃそうか。

じゃあどうしてこんな名前なのかというと、先代店長の名前が「幸雄」で「横浜」にあるから合わせて浜幸ということらしいです。
よく見たら箸袋に書かれていました。何回も聞かれたんだろうな……
よく見たら箸袋に書かれていました。何回も聞かれたんだろうな……

馬鹿が入った美味しい鍋でした

まさかの「馬肉と鹿肉を鍋に入れたら馬鹿鍋じゃーん!」という思いつきの一点突破で作り出されていた馬鹿鍋。

そんな理由がスタートなのに、どこかの地方の郷土料理なんじゃないか……と思わせるような雰囲気をかもしだしていました。

変なことでも長いことやり続けていると妙な風格が生まれるってことなんでしょうね。
「コレも食べてみて」と出された「おたぐり」という料理。馬の腸をニンニクと炒めたものなんですが、名前の由来は腸を“たぐり”ながら洗って下準備するから……生々しい
「コレも食べてみて」と出された「おたぐり」という料理。馬の腸をニンニクと炒めたものなんですが、名前の由来は腸を“たぐり”ながら洗って下準備するから……生々しい
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