友人と自撮りグループを作る
えいやで「100日続ける」と決めたが、ひとりで続けられる自信がなかった。すぐに友人を巻き添えにする。
大学時代の友人である郡司さん(左上)と山宮さん(下)である。「うわ〜自撮りか〜」と気が重そうだ。
自撮りを投稿するグループを作った。この部屋に3人分、300枚の自撮りが格納されていくのか?不安になる。
基本は毎日自撮りをする、それだけだ。とはいえ長いマラソンなのでルールも用意した。
特に最後が重要だ。我々は自撮りビギナーである。心が折れないよう細心の注意をはらい、お互いを尊重しようと強めに確認しあった。
写真だけ送るのも怖いので、日報もつけることにした。撮影した背景やその時の感情も日々記録していく。
100日後、みんなで集まって振り返りをしようとも決めた。
100日自撮り生活スタート
ついに1日目がやってきた。
家でカメラを自分に向けてみるも「あっこれは全然わからんぞ」と一人であわてる。
動揺しながら撮った初自撮りが
これだ。とにかく表情が固い。カメラアプリを使うのがやっとである。
まずカメラの位置が正しいかわからないし、背景もわからないし、顔の角度も表情もわからない。
特に表情については照れと不慣れがすごかった。もっと笑ってもみたが、顔が引きつりロボ化した。やや微笑むのが人様に出せる限界だった。
と、ひとり壁にぶつかってる中、二人から送られてきたのが
この2枚である。こんなに「仲間いた!!!」と喜ぶことも今後ないだろう。「自撮り初心者」の概念を煮詰めたような画像である。
みんな「自撮りムズすぎる」「自撮りって技術の話なんだ」「顔がテカるの何?」などと初日からうちのめされてしまった。
でも最初の課題ははっきりした。「照れの払拭」と「良い表情」である。
我々は3〜5日、それを念頭に入れて練習した。すると……
全員めちゃめちゃ上手に笑えるようになった。照れは3日あたりでほぼ消滅。カメラアプリ導入による肌のトーンアップなどを学び、自信をもって笑えるようになったのである。
「ポーズをとる」という学びも得た。手を横に置くと小顔に見えたり、写真に躍動感が出る!と当たり前の発見をしては喜んだ。
こちらが序盤1週間のまとめである。みんないろんな表情を試し、だんだん自信もついてきた。
「ノーマル自撮り」にはだいぶ慣れた。でもまだ90日以上ある。
さらに自撮りを追求するべく、2週目からは
セルフタイマーを使い、ポーズや構図の研究も行われた。左から中華料理人、背中で語る人、買ったスリッパを上手に見せたい人である。
この後も、撮る時間を変えたり、アプリを変えたり、6月から9月にかけて毎日写真を送りあった。
そして先週、9月半ばに
無事100日を達成したのである。長かった…!ちまちま振り返ろうと思ったが、大容量になりそうだったので一旦最終日の写真に飛びました。さあ振り返ります。
100日分の写真を振り返ろう
全員一日も飛ばさず、100日自撮りを達成できた。忘れないうちに、300枚を一気に振り返っていく。
「俺もう自撮りが日常なってたので寂しい」と謎の感傷からはじまった。たしかに写真を送ったり近況を報告する不思議な日々だった。
写真はデータを見るだけだと味気ないので、しっかりコンビニで印刷し
それをばーっと並べて確認していく。100日分の自撮りである。壮観!
印象に残った写真をあげていこう
まずはざーっと見ながら「これは印象的だった」という写真をあげていくことにした。
「これ良いでしょ」と自分の写真を指す郡司さん。そして「あーーーこれね!!!」とみんな声をあげる。
指をさすのは中央上の写真。これを郡司さんの1日目の写真と比べてみると
もはや同一人物か悩むほどの進化を遂げていた。セルフタイマーを使いこなしていたり、影も素敵だが「写真のうまさ」とかいうレベルじゃない。これ送られてきた日は声が出た。
実は自撮りを続ける中で、日々自分の顔を見るからか、みな美意識が向上しはじめていた。
特にこの二人は凄かった。肌をきれいにしてみようとファンデーションを買ったり、ネイルも面白いかもと爪を塗りはじめた。元々はそこまで興味がなかったらしい。すごい変化である。
「筋トレも続くようになったんですよ」「わかる!」と共感する二人。写真を友人に送り、反応があるのもよい動機になったという。
また、全員この期間でダイエットに成功している。自粛で自炊をはじめ…などいろんな要因があるが、毎日自分を撮るので、しっかり体重をキープしようという気持ちになった。
パッと見イケてる方が自撮りをする印象があったが、実は逆で、自撮りをすると垢抜けるのでは…?という仮説がたったぐらいだ。
さらに見ていく。「これ本当にはずかしい」という山宮さん。投稿忘れはなかったものの、山宮さんは寝落ちの常習犯として100日の間にキャラが定着していた。
これが寝落ちシリーズの一部である。左はもはや光量が足りていない。「すみません」というコメントと共に早朝これが送られてくるのだ。
「昔から友人してるが寝起きの顔は見た事がなかった」と笑う。たしかに毎日「お前こんな顔もできるのか」と誰かに驚いた。また友人の生活感をここまで感じた事がなかったので笑ってしまう。
と、二人ばかり見ていたがきちんとこっちにも矢が飛んできた。「よざさん疲れてるとマジで顔でわかって面白かった」という。
こちらがシリーズ「疲れ」である。自撮りをはじめて気づいたのだが、私は疲れているとうまく笑えず顔に出てしまうらしい。
「右とか眉なに?」と言われ自分でもおかしくなってしまう。でも本当に疲れてる日に笑おうとしても笑えなかった。よい自撮りはよい精神からくるのだ。思想が強まってきた。
さらに分解、カテゴリ分けをする
ざっと見ただけでもこれだけ個性がでている。ここから一枚ずつ切り分け、各々の特徴をさらに洗い出していくことにした。
まずは私の100枚をカテゴリに分けてもらう。「疲れ」はわかった。他にも規則性があるのだろうか。
すぐ見つかった。シリーズ「左向き」である。私は左側の顔の方が写りがいいのだ。こういう自覚も即バレてしまう。
こちらはシリーズ「歯」である。歯列矯正中なので、進捗をどうしても他人に言いたかった。まとまると申し訳ない気持ちになる。
次は山宮さんだ。「寝落ち以外にあるか?」と心配するがめちゃくちゃあった。まずは
シリーズ「半顔」である。とくに口を隠し、目だけを出す写真が本当に多かった。「髭の処理が甘かった日で気にしたのかも」と自分でハッとしていた。無意識の心理と向き合わされる。
シリーズ「仕事中」も見つかった。だいたい電車や職場から慌てて送られてくる日があるのだ。これもこんなにあるとは思わず「暮らしぶりが全部でるな…」とうなっていた。
最後は郡司さんの写真を分けていく。郡司さんは表情によるものが多かった。たとえば
こちらはシリーズ「変顔」である。3人の中では屈指の表情力だ。顔が柔らかいのだろうか。
またこちらはシリーズ「かわいらしさ」。キュートな顔をすることも多かった。
この辺りで違和感に気づいた。表情でしか分けられないのだ。生活感や、暮らしぶりがまるで見えてこない。背景もほぼ白壁である。急に気付き怖くなってきた。
「えっ何?隠してることある?」と変な空気になる。理由を聞くと
「100日間、本気で自分の表情を追求したい」と、毎日夜パジャマに着替え、白壁の前で30枚ぐらい撮ることをルーティーン化していたらしい。たしかに同じ表情がほぼないし毎日パジャマだ。
「うわ!!言われてみたらそうだわ」と思わぬストイック性と遭遇してしまった。我々が寝落ちしたり、歯を見せるかたわら、郡司さんは毎日表情力を磨いていたのだ。しかも表情力はすごく上がっていた。怖いぐらい性格が出る実験である。
まだまだ見つかる法則
一度100枚を分けきっても、また新しく分けると法則が見つかった。例えば
山宮さんを分け直すと「めちゃくちゃエアリズム持ってる」が見つかったり
郡司さんのパジャマも分類すると水色が多く、なぜか聞いたら「水色のTシャツの方が着心地がいい」と思っていることがわかった。
さらにこれらの写真を曜日ごとに比較すると
郡司さんの赤Tシャツは必ず月曜に登場するのである。他人の洗濯の周期までわかってしまった。
「いやもう自撮りうまくなるとかじゃない」「自撮り占いだこれ。全部バレるやつだ」と統計による怖さも際立ってきた。
一枚一枚は情報がなくても、まとめて俯瞰すると新しい情報が見つかる。多分気づいていないだけで、じっくり見ればもっといろいろ見つかるのだろう。怖い!
結論:自撮りが怖くなくなったしうまくなった
とはいえ、日々みんな自撮りに慣れ、どんどんうまくなっていった。また、写真に対する興味もでてきて
途中で各々新しい構図を見つけようとチャレンジする期間があったり
「影とか照明って重要なのでは?」と気付き研究する日があったり(急にクオリティあげるなと戸惑いつつ褒めた)
「自分を撮る」という概念の限界はどこなのか、境界線に挑んだ日もあった。
日々はへらへら自分を撮っていただけだが、まとめるといろいろ成長していることがわかる。「習慣が人を作るって本当だった」と想定外の学びを得た。
また、毎日自分の顔をみて一日を振り返るので「あ、きょう調子悪いんだ自分」など己を客観的に見ることができ、コントロールもできるようになった。
自撮り、いいことばかりだった。そりゃみんなやるわと思った。
ぜひみなさんも気まずくならない人と、定期的に送り合ってみてください。
他の人やキャラクター版も見たい
100日の間も楽しかったが、振り返って特徴を見つけるのが相当たのしかった。家族とやったらどうなるか、また、好きなキャラクターや芸能人がやったらどうなるかなども考えてしまった。
終了後、100日ではなく、1年10年と続けたらどうなるんだ、とも気になった。きっとすごいデータになるだろう…うぅ…やるか…(やらない)。
無数の自撮りをみると「なんで今こんな人の顔見てるんだろう」という気持ちにもなります。