特集 2021年7月9日

黒板消しとか73色方眼とか!夏の文房具フェス2021

コロナ&オリンピックで今年も「開催できんのか」と不安だったISOT。大丈夫、ちゃんと盛り上がってたよ!

さぁ今年もやってまいりました! 僕らの夏フェスことISOT(国際文具・紙製品展)2021!

……と気分的に頑張って盛り上げていきたいところだけど、前回に続いてコロナ禍での規模縮小に加えて、今回はオリンピックのアレで会場まで縮小されちゃって、もう大変。

それでも新製品はあれこれ面白いのが出てるし、このご時世ならではのアイデア製品もあるしで、やっぱり見逃せない。ということで、今年も気合い入れてレポートすんぞオラー!

1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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環境はツラいが頑張ってるぞ、ISOT2021

今回の会場は、東京ビッグサイト青海展示棟。本体のビッグサイトから一駅ぶん離れた場所にぽつんとある、離れみたいなところだ。

現在のビッグサイト本棟は、東京オリンピックの国際放送センターとして使われているため、使用不可となっている。なので、この時期に行われる展示会は、全て青海展示棟でひっそりとやらざるを得ない次第である。

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ビッグサイト青海展示棟。あれ、なんか思ったより人がいる…?

もちろんスペースも本棟に比べたらかなり小さいし、飲食店・コンビニも無いし、ところどころ携帯の電波まで悪い、と悪条件の固まりみたいな場所だ。

これはヘタしたら昨年以上の寂れ感あるかも……と思いつつ行ってみたら、なんと会場は朝からやたらと賑やか。人、多いな!

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感染症対策で喋ってる人が少なめな中、粛々と伸びている受付の待機列。

どうやら、この一年自粛に自粛を重ねてようやく開催できた大きめな展示会ってことで、出展メーカーも来場者も「わー、ひっさしぶりー!」とテンション上げつつ参加してるようなのだ。

もちろん感染症対策は変わらず厳しいし、会場も狭いけど、それでもみんなわりと楽しげ。

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実は数年前から「ISOT 文具PR委員」という肩書きをいただいております。見よ輝く「VIP」の文字(偉そう)!
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他の雑貨系展示会との併催でスペース的には全体の1/6程度、という悲しみはさておき、人の入りは上々。

会場が小さくなって密度が上がってるというのもあるけど、前回のように「あちこちで空きブースが休憩所になってる」的なツラい感じじゃなくて、ちゃんと活気もある。

いやほんと、無事に開催されて良かった。

書類の持ち運びがスマートなノートカバー

会場に入ってまず目に付いたのが、高波クリエイトのブース。

もともとはバッグなどのOEMが中心なんだけど、ここ最近はアイデアの効いたオリジナル文房具を意欲的に投入してきている。ここしばらく、個人的にもわりと注目しているメーカーなのだ。

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高波クリエイトの自立型ペンケース。巾着タイプで、開くとモコモコかつ動物の耳っぽいのが出てくる。意味なくかわいいやつ。

ここで面白そうだなと思ったのが「Offista手帳カバー」。

合皮製のA5サイズノートカバーなんだけど、表紙部分が二重になっていて、A4の書類などを収納できるギミック付き。つまり、ノートカバーがクリアホルダー(クリアじゃないけど)みたいにも使えるというわけだ。

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見た目はなんの変哲もない合皮のノートカバー。
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でも、こんな感じでカバーの中にA4書類を収納可能。いいアイデアだ。

これ、書類に折り目などもつきにくいし、かなりスマートなやり方だと思う。

昨年には同タイプのメンズ用が出ていたんだけど、今年はスピン(しおり紐)をリボン風に替えたレディース用としての出品である。

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捺せる蛍光色のラインマーカー

続いては、過去にはサランラップ(旭化成)と共同開発で「食品用ラップに絵が描けるマーカー」を作るなど、妙なひねりを効かせた製品を打ちがちなエポックケミカル。

今年の新製品は、ドットタイプのマーカー「Maru liner」だ。

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柔らかい球体チップでドットが捺せる「Maru liner」
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マーカーの先端チップをポンと捺すとこの通り。力加減でドットの大きさも自由自在。

実は他社製品でも同じような機能のドットマーカーというのはいくつかあったんだけど、基本的には画材寄りのスタンスだった。「絵を描くのにいいよー」という売り方である。

対して「Maru liner」は、カラーラインアップの先頭に蛍光イエローが来ていることで推測するに、「基本はラインマーカーだけどドットも捺せるよー」という方向性だ。確かに従来のドットマーカーには蛍光色が無かったので、そこは目新しい。

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柔らかチップはドット捺しに加えて、普通に引けば太いラインも簡単に書ける。

ローンチのカラーラインアップは24色。蛍光色からマイルド系まで、ラインマーカーで人気の色を取り揃えてある。

後発だけに、ちゃんと研究してるなー、という印象だ。これはラインマーカーを多用する学生さんにウケるんじゃないだろうか。

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コロンとしてかわいいホワイトボードイレーザー。側面に磁石がついてるので、板面にくっつけておける。

あともうひとつ面白かったのが、家庭用のホワイトボードイレーザーだ。

ミニタイプの黒板消しみたいなデザインもかわいいが、イレーザー部に折ったペーパータオルを巻き付けて使う、というのがユニーク。これなら消耗パーツを気にせずザカザカと消すことができるな。

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感触としては「うん、普通に消せるな」というところ。言うても家庭用だし、普通に消せれば充分だ。
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で、イレーザー部が汚れて消しにくくなったら、ペーパータオルを交換するだけ。この安上がりな感じがとてもいい。

コロナ禍の昨今、家庭用ホワイトボードは伸びが期待されているジャンルだ。

これまで家族間の連絡はLINEなどが使われていたんだけど、在宅ワークが増えると、わざわざスマホを使うまでもない。「牛乳もう無いよ」「今日は11時からZoom会議なので、静かに」といった感じで、伝達事項をホワイトボードに書いておくのが効率的なのである。

ということで、たぶん今後も家庭用のホワイトボード関連製品、いろいろ出るんじゃないかな。

シール印刷会社が作ったワクチン接種会場用シール

コロナといえば、文房具業界でもやっぱり抗菌・抗ウイルス仕様のノートやボールペンなんかが注目されがち。

そんな中、シール印刷に強いOSPは「おお、そう来たか」というコロナ関連製品を出してきた。その名も「ワクチン接種会場設営シールセット」である。

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名前だけでもう「なるほどー」ってなるセット。間違いなくいま必要なやつだ。
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接種会場の設営ノウハウを持っていなくても、シールを貼ればなんとかなる感じが心強い。

順路の誘導用矢印とか、ソーシャルディスタンスを保つ待機位置、担当の名札など、ワクチン接種会場を設営するのに必要なシールをまるっとセットにしたもので、つまりはこれさえ用意すれば、接種会場の貼りものは過不足無く揃うわけ。

個人レベルで使うものではないが、これを必要としている場所は多そう。というか、すでにもう地方自治体などからいくつも問い合わせが来ているとのこと。

今後ワクチン接種の際にこういったシールを見たら、「ははーん、OSPのやつかな?」と訳知り顔をしてみよう。

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メッセージカード「サバカレター」。背びのれシールで書類に貼って添付もできる。

あと、OEMサンプル(こういうのも作れます、的なもの)として展示されていて面白かったのが、「サバカレター」だ。

魚型のメッセージカードに書き込んだら、シールで閉じる。で、開封するときは真ん中のミシン目をぺりぺりと切り開いていくと、メッセージ面が出てくるという仕組み。“魚をさばくように開く”というのは、メッセージカード業界における新概念と言えるだろう。

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アジのぜいごを取るようにぺりぺりと引いていくと…
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中骨もキュートな魚の開きが完成。さばくまでは中が読めないので、秘密のメッセージにぜひ。
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全ページ色違い方眼罫が壮絶なノート

印刷会社が母体の文房具メーカー pagebaseは、新方式のファイルノート「SLIDE NOTE」のA5サイズが展示のメインだ。

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ルーズリーフ感覚で紙がファイリングできて、綴じノートのように使える「SLIDE NOTE」待望のA5サイズ。

スライドクリップで紙をまとめてノート化できるギミックで、昨年に発売されたA4サイズはすでにかなりの注目製品。で、今回はさらに要望の多かったA5サイズが追加された、という次第である。

そもそも僕も「A5出せー」としつこく要望を出していた一人なので、これは購入するの確定なのである(というかもうAmazonで注文した)。

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外見は普通だけど、中身がかなりおかしなことになってる「73色の風景を包んだノート」

さらに追加で購入確定なのが「73色の風景を包んだノート」。

なんと全見開きで5㎜方眼の色が違う(全73色)という、かなりクレイジーな仕様の方眼罫ノートだ。

方眼なんか普通にグレーとか薄ブルーで印刷すればいいものを。蛍光イエローの方眼なんか、目に厳しすぎてチカチカするぞ。わー、バカっぽくておもしろーい。

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何がしたくてこういう仕様にしたのか、見当も付かないカラー方眼。

さらに、方眼カラーひとつひとつに「使わなかった口紅」や「24.5561の電磁」といったリリカルな名前がつけられているのも、クレイジーだ。

73色罫線の印刷コストを考えると、クレイジーのひと言で済ませていいのか分からないけど。

目が悪くなる前にかける最新の近視予防メガネ

文房具要素はゼロな気もするけど、子どもが勉強をするときにかける専用のメガネというのも展示されていた。クリア電子の「エーアイグラス」は、近視を矯正するのではなくて、目が悪くならないようにかけるものなのだとか。

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視力周りの生活習慣を改善する「エーアイグラス」。標準レンズは矯正無しのブルーライトカットだけど、度入りに変更も可。
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わりとあれこれセンサーが詰まったフレーム。

まず、内臓の6軸傾きセンサーで猫背になってないか/首が傾きすぎてないかを検知し、振動でお知らせ。

レンジセンサーでメガネと対象物との距離も測定しているので、テレビやスマホに顔が近付きすぎると振動。暗すぎる環境も良くないので、周囲の光量も検知。さらにスマホやタブレットの見過ぎも良くないので、設定した時間を超えて見てるとこれまた振動。

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ことあるごとに振動でおしらせ。ほれ、姿勢を正せ。
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情報はBluetooth接続でスマホの専用アプリへ。さすがに「どんな動画を見てたか」までは認識しないので、一安心。

そして当然ながらその情報は親のスマホアプリですべて管理されるという…わりと子どもにとってはディストピア感溢れるメガネじゃないだろうか。

もういっそ振動でお知らせじゃなくて、ビリッと電気が流れるようにしたほうが効くんじゃないかという気もするが、それも子どもの視力を守るためである。

メガネ歴40年でいろいろと不便を受けてきた身としては、彼らもいずれ大きくなったら「昔にエーアイグラスかけておいて良かった」と感じる日も来ると思うのだ。

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「なんでこれ文具大賞じゃないの」を集めた特集ブース

メディアでも大きく取り上げられるのが、文房具業界最大のアワードでもある「日本文具大賞」だ。

こちらは毎年ISOTの会期初日にグランプリが発表されるんだけど、ただ、これに対して文房具ファンたちも毎年ザワつくのもお馴染みの風景。

もちろんグランプリに選ばれる製品は間違いなくすごいんだけど…どうしたって「なんであれが選ばれてねえんだ、オイ」というのが出てきてしまうのだ。仕方ない話だけど。

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文具大賞グランプリ、今年の結果はもうあちこちで報道されてるので割愛。

それに対して「大賞にノミネートはされてなくても、いい文房具いっぱいあるからね」と立ち上がったのが、文房具界の重鎮、文具王こと高畑正幸氏である。

なんと今年から、文具大賞に応募された製品から文具王が厳選ピックアップした特集ブースを立ち上げたのだ。

つまりこれ、裏の文具大賞的なやつ?

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文具大賞の表彰会場の真正面で展開された文具王ブース。
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木材の表面にホワイトボードコーティングした、ほのぼの感の高い「木のホワイトボード」(デザインフィル)
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サッと素早く指に着け外しできる指サック「フィンガースリッパ」(カツマタデザイン)
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3面を切り替えて0〜9の大きな数字が捺せるナンバリングスタンプ「NUMBAGE」(ビーミングウェイ)

並んでいる製品は、選には漏れたものの「確かにこれ大賞になってもおかしくないな」級の文具がずらり。

残念ながら大手メーカーが軒並み撤退しちゃった現在のISOTだけど、そういうとこの最新アイテムも展示されているので、見応え充分だ。

キンケシとかなに言ってんすか。時代はキメケシですよ!

最初の方でも述べた通り、ISOTは他の雑貨系展示会との併催という形になっている。

そして、せっかく同じ会場でやってるんだから、そっちも見なきゃ損に決まっている。だってISOTに出てない文房具がしれっと展示されてたりするんだから。

ということでISOTを離れてウロウロしていたら、案の定、なんか変なのぼり旗を見つけた。

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のぼりの「己を滅して文字を消せ!」という文言から瞬時に文房具臭を嗅ぎ取るのが、プロの文房具ライターだ。

その名も「キメケシコレクション」。すさまじい語感の悪さだが、言いたいことは分かる。

つまり、大ヒットしたアレの消しゴムってことだな。キン肉マン消しゴムがキンケシだから、鬼滅の刃消しゴムはキメケシで当然だろう。当然なのか。

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鬼滅キャラを軽くデフォルメした消しゴム。販売時はランダム封入で、レアは蓄光バージョンだ。

ブースで実物を見せてもらうと、その脱力ネーミングに比して、なかなか完成度が高い。禰豆子は上下の帯締めまでちゃんと再現できてるもんな。へー。

メーカーの人に「すごい良くできてますねー」と言ったら「消しゴムメーカーのイワコーさんってご存知ですか?そこで作ってるんですよ」とのこと。

イワコーと言えば、動物やお菓子モチーフの面白消しゴムで有名なメーカーである。ご存知どころか、爆破結婚写真の撮影時に持っていた消しゴムブーケはイワコー製だもの。

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キメケシと同時展開の鬼滅ゲーム鉛筆。「これ、バトエン(バトル鉛筆)ですか?」と聞くと、「えー、バトエンとは違うんですが、まぁソレ的な」と言葉を濁された。そこは察しろ、と。

そしてイワコーの消しゴムはちゃんと文字が消せるので、その点だけで言えば、先輩のキンケシよりも優秀ということだ。

キメケシがキンケシ級にヒットするかは今のところ不明だが、こっちも売れたら「え、なにこれ。こんなヤツ出てきた?」みたいなキャラを消しゴム化していくのかな。無限列車の車掌さんとか。

 

さてさて、正直、年々と規模が小さくなっていってる+コロナ禍で大変なISOTだが、来年はもうワクチンも行き届いてるだろうし、オリンピックも終わってる。

おそらく次回はもうちょっとブースも復活して、より見どころも増えるんじゃないかなー、と期待する次第である。来年もがんばれISOT。


コロナでなにがキツいって、楽しみのひとつである海外メーカーのブースが消えちゃってるのがキツい。特に韓国や台湾は、いま世界的にも文房具がかなり面白い国なので、その辺りの情報が入手できないのは壮絶に勿体ないのである(過去にはインドやイラクのメーカーブースもあった)。

今年はなんとか韓国・台湾の遠隔出展ブースがいくつかあったけど、それでは直接に話を聞くこともできないし。

ほんと、来年は頼むよISOT。

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展示されてた数少ない台湾製文房具(先端が360度回転する修正テープ)。こういうの、もっと見たいの。

 

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