朝エッセイ 2025年10月9日

ハイコンテクスト罵倒(2025.10.9 朝エッセイ/伊藤健史)

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伊藤です。
実家から戻る途中の駅のホームで乗客同士のいざこざがあったらしく、大声で罵り合う声が聞こえてきました。休日の昼下がり、各停しか止まらない郊外の駅で人もまばらでしたが、駅員さんが2人の間に入ってなだめ止める様を数人が遠巻きに眺めていました。

揉めていたのは20代後半から30代半ばぐらいの男性と50代後半くらいのおじさんで、少し酒が入っているようにも見えるおじさんがいちだんとヒートアップして、間に入った駅員さんをはさんで、「おめえが悪いんだろこのタコ!」と罵声を飛ばしました。

このタコ、か……昔は人をタコと罵る人は今よりずっと多くて、私も何度か言われたことがありましたが正直「この人ほんとうに怒ってんのか?」というくらい意味不明で、どうしてそれで相手に屈辱感を与えていると思えるの?といった感じでした。

なぜ人は他の誰かをタコと罵るのだろう。電車に乗ってからも心の中に「このタコ!」がリフレインしていた私はさっとスマホで調べました。
やはり諸説あるのですが、有名なのが江戸時代の武士で、旗本の子が下の身分の御家人の子を揶揄して「イカ(以下)!」と罵ったのに対して御家人の子が「タコ!」と言い返したのだそうです。
そんなハイコンテクストないわれがあったのか......そもそも「以下!」って悪口なんなんだよ。初手がおかしいだろ初手が。

中学生の頃、同級生にあの有名なホテルのCMをもじって「イトウに行くならハトヤ〜」と揶揄されて、何言ってんだこいつときょとんとしていたら「いいか、イトウに行くぐらいならハトヤに行くほうがましだ、だからイトウは下だっていう意味の悪口だよ」と丁寧に解説されたのを思い出しました。この闘争心の盛り上がらなさ。大いなる解釈を要するハイコンテクスト罵倒こそが、人の憎悪や争いを緩和してゆくのかもしれません。

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ラッセンとタコ。

では、記事の紹介です。

ライフネット生命保険とのコラボ記事は13年ぶりに復活した伝説のイベント「ほめられ屋敷」のレポート。来場者をくす玉、テープカット、除幕式、鏡割りとあらゆる手をつくしてほめにほめまくる。写真も笑顔だらけのピースフルな記事...かと思いきや、序盤のライフネット川端さんのコメントでジーンと来てしまいました。泣かせにもくるのかほめられ屋敷よ!

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16時はみなさんが教えてくれた「買ってよかったもの」特集です。
人生変わったっておおげさな、とコメントを読むと、うわ、これは変わるわとしか思えない逸品ばかり。「今までのブックエンドは本を取ると倒れて困っていた。お前も倒れてどうする」そう!ほんとそう!それが倒れなくなる、名状しがたき気持ちよさがじんじん伝わってきました。

ここ2ヶ月は支出が収入の1.5倍だけど私は元気です!

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