先日。私は友人とお台場の人工砂浜で「不景気だねえ」「パっとしないねえ」なんてグチりながら水面をながめていた。
レインボーブリッジが美しい。目前には屋形船だらけ。遠くからジャイアン級に下手くそなカラオケが聞こえてくる。ふと、水面を見ると、目の前でパシャ、パシャと何かが跳ねている。
……魚？
こんな所にも魚がいるのだ。お台場の魚、トレンドスポットの魚、江戸前の魚……。
「この魚、捕りたい」
私の狩猟欲が、ぶわっと燃えあがった。捕って食べたい。干物にしちゃいたい。果たしてそんなこと、可能なのだろうか。

初心者の海釣り

私は釣りのことは何も知らない。しかも海での釣りは難しいときく。初心者なんかに、出来るものなんだろうか。
まず、ネットで台場周辺で釣れる魚を調べる。すると、比較的簡単に釣れるのは「ハゼ」だということがわかった。
ハゼ。あの変な顔の魚は、お子さまもOKの、初心者歓迎な魚であるらしい。

さらにハゼ釣りについて調べる。釣りマニアさんのサイトには、超ビギナー向けに、親切丁寧に説明してくれているところがあった。
「道具とかも、最初はテキトーでいいです。はまったら、自然に詳しくなるし、高いの欲しくなりますから」「とくにハゼは簡単な魚なので、極端に言えば、そこらに落ちてる棒と糸と針でオッケーです」
棒でもいいのか。その言葉に勇気付けられて、私は釣り具店に行ってしまった。

オモチャのような釣り道具

釣り具大手チェーン店、Ｊ州屋にはいってみた。
あるある、ファミリー向けの、ハリやリール、ウキやオモリがセットになってるもの。夏のセールで1280円だった。思っていたより安い。
専門店で初心者っぽく買い物するのは、なんだか恥ずかしいものだ。かたい表情でレジに向かう。
「あ、あの、青イソメって無いですか？」と、ネットで調べた知識のまま、店員さんに訪ねた。ハゼのエサだ。
「ありますよ」店員さんは、ものすごいウネウネした虫を、スコップでザラっと箱に入れてくれた。これ？　　これエサ？　これさわらなきゃいけないの？

虫にビビり、スーパーでエビの剥き身も買ってみる。エビでも連れるという情報もあったのだ。エビで済めばいいなあ、と思いながら、台場に向かう。