勘違いしてた
小さい頃、家族の外食はすかいらーくと決まっていたと書いたのだが、本当にすかいらーくだったかどうか自信がなくなった。電話で母に確認すると、「すかいらーくじゃないわよ、スエヒロ5よ」と言われた。勘違いしてた。
それでも、僕と同じ年月を駆け抜けたすかいらーくの最後に立ち会えて本当に良かった。
すかいらーくがガストに変わったように、僕もまろやかな男にチェンジしたいと思ったとか思わなかったとか。
こんにちはガスト
すかいらーく最後の日から2週間後、僕と林さんは再びあのプレハブの中にいた。
新作が入荷されているかもしれないからだ。
というのは嘘で、あのすかいらーくが11月9日にガストになって復活する、と聞いていたからである。11月9日は2人とも用事があったので、その3日後の11日に再び見沼代親水公園駅に降り立った。ガストに生まれ変わった様子をこの目で確かめるためだ。
そのついでに、DVDの新作もチェックしておいたのだが、今写真を見ると林さんがまた財布を取り出している（2人ともDVDは買っていません）。
DVDの新作チェックを終え、2週間前に歩いた道を再び歩く。
「こないだネットでDVD販売のページを見たんですけど、宅配される時の品名を選べるようになってるんですよ」
と林さんが言っている。
「パソコン周辺機器とかCDとか」
それなら家の人にもアレなDVDを買ったことが分からない。買う人の気持ちを考えた良いサービスである。
そんなことを話しているうち、ガストのネオンが見えてきた。
すっかりガストだ。
何事もなかったかのように、ガストである。
2週間前のような人だかりはない。
ガストはガストでも、ここのガストは「おはしCafe ガスト」である。おはしで食べるメニューがメインなのだと思う。
2週間前はこうだった。
順番待ちをしているお客さんはいないので、名前を書く必要もない。
入ってすぐに席に通された。
店内は白を基調としたインテリアで、すかいらーくだった頃よりもお洒落な雰囲気が漂っている。
メニューのデザインもお洒落だ。
「普通のファミレスですね」
2人とも意見は同じだった。
全体的にお洒落になったこと以外、大きな変化はドリンクバーに見られた。すかいらーくだった頃より大きくなっていて、お茶の種類も増えている。
お惣菜を3品選べるメニューも魅力的だったが、ハンバーグを頼むことにした。ハンバーグの味は変わっているのか？ 確かめるためだ。
おはしCafeなのでハンバーグも箸で食べる。箸でハンバーグを食べるとグッと実家感が漂うから不思議だ。
すかいらーくだった頃よりも、まろやかなハンバーグである。箸で食べ易いように柔らかく焼き上げているのかもしれない。すかいらーくの頃のハンバーグの方がパンチがあったように感じる。
あっという間にハンバーグを食べ終わり、ビールも飲み終えた。
「終わっちゃいましたね」
「普通に晩ご飯を食べた、って感じです」
2週間前、僕たちがハンバーグを食べている時、厨房から店員さんたちの拍手が聞こえてきた。きっとラストオーダーの品を作り終えて、スタッフ全員で拍手したのだと思う。
そして2週間後、そんな劇的なことがあったとは思えない日常がここにある。
