特集 2019年4月3日

養蚕農家がデカくてユニークでカッコ良い

絹産業を発展させた群馬県に残る六合赤岩集落

お次は群馬県の養蚕集落を訪ねてみたい。群馬県といえば明治初頭に富岡製糸場が築かれ、日本の絹産業を牽引してきた地域である。期待は大だ。

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日本初の本格的な器械製糸場として全国の模範となった富岡製糸場


今や世界遺産になった富岡製糸場を擁する群馬県の北西部、中之条町の六合(くに)地区に赤岩という養蚕集落が存在する。先ほどの大杉集落と同様、周囲を山によって囲まれた川沿いの山村である。ここまた、昔から養蚕が盛んであった。

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山の麓に家々が建ち並び、その下に畑が広がる赤岩集落。実に良いロケーションだ
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遠目からみるとやはり普通の集落……と思いきや、左下の家が存在感を放っている
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このような二階建ての主屋が赤岩集落における養蚕農家の典型のようだ


大杉集落の養蚕農家と比べて見た目がだいぶ違うものの、一階部分が居住スペースで二階部分が蚕室という点は共通だ。一見すると普通の古民家っぽい感じではあるが、よくよく見ると養蚕農家ならではの特徴が表れている。

印象的なのは二階の外側に備えられているベランダであるが、これは部屋いっぱいに蚕棚を並べるので室内には身動きするスペースが少なく、人が行き来する通り道として設けられているという。また天井の梁が外にせり出しているのだが、これは軒先を広げることで床面積を増やすための工夫だそうだ。

蚕室を少しでも広く利用するため、あれやこれやと考えるものですなぁ。

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通りに沿って、同じタイプの養蚕農家が並んでいる


これはこれで上品かつ機能的にまとまっていて良い感じではあるのだが、さすがに大杉集落の養蚕農家のようなインパクトは薄い感じだ。もっと、直感的にビビッとくるような養蚕農家はないだろうか。

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より迫力ある養蚕農家を求めて、良い感じの火の見櫓を横目に集落内を進む
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……ん? 生垣越しになにやら大きな建物が
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おぉ、この集落にも三階建ての養蚕農家があるではないか! カッコ良いぞ!


通りから奥まったところにあるので少々見え辛いのだが、まさしく三階建ての養蚕農家である。大杉集落のものとは入口の向きやベランダの有無などの違いはあるが、黄色い土壁といい、縦長の窓といい、共通点はかなりある。

この立派な湯本家住宅は江戸時代後期の文化3年(1806年)頃に二階建ての主屋として築かれ、明治30年(1897年)に三階部分を増築して現在の姿になったという。

湯本家は江戸時代から医者を務めており、幕末には蘭学者であった高野長英をかくまっていたそうだ。見た目がカッコ良いだけじゃなく、非常に歴史ある養蚕農家である。

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通りからは見にくいけど、この家もよくよく見ると……
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やっぱり! 三階建ての養蚕農家だ! デカいぞ!

先ほどの大杉集落は各家の敷地がそれほど広くなく、なおかつ生垣など敷地を仕切るものがなかったので主屋の姿が良く見えた。

一方でこちらの赤岩集落は敷地の奥行きが深く、通りからでは主屋が見えにくいのが珠に傷である。それでも注意深く目を凝らして見ると、シブカッコ良い養蚕農家が鎮座しているのだから、まったくもって侮れない。

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通りを歩いていると、主屋よりも土蔵の方が手前にあって良く目立つ
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ここも山村集落としての雰囲気が良く、未舗装の里道は情緒たっぷりだ
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集落の外れには茅葺屋根の仏堂もたたずんでいる

赤岩集落の養蚕農家は大杉集落ほどパッと見の分かりやすさは少ないものの、抑えるべきポイントを知っていれば発見と驚きがある。やや玄人向けではあることは否めないが、だからこそ垣間見れるシブさがキラりと光る、実に良い養蚕集落である。

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