実際の押収品を見てみよう
押収するのは違法薬物や銃火器だけではない。ワシントン条約で輸入が禁止されている動植物の素材や、ブランド物などのコピー品だってそうだ。続いてのコーナーでは、実際に押収されたそれらの品々を見て回ることができる。
例えば動植物だとこう。この熊の毛皮も実際に押収されたものだという。誰?誰なの、これを持ってこようとした人は
象の足にシマウマの皮をはりつけた腰掛。これに腰掛けようとするのはもう輸入どうこう関係なく悪い人だろ(個人の意見です)
吉田さん:ちょっと前だとコツメカワウソの密輸もありましたね。生きたままスーツケースに入れて連れてくるといった。
確かに数年前にそういうニュースを見たことがある気がする。かわいそうだから本当にやめてほしい。やめてください。
一方でコピー品ではこんなものも。大人気少年漫画のフィギュアやアクリルスタンドだ
さっきの動植物などは大まかに一旦預かってしまうなどして調査のしようがありそうだが、この手のコピー品はどうやって見分けているのだろうか。それこそキリがないんじゃないか。
吉田さん:こういったものは権利者から、新作が出るたびにこのようなニセモノが出回る可能性がある、あるいは出回っていますので差し止めるよう税関へ申し立てがあります。詳しくは言えませんが、そこである程度の見分け方も教わった上で、疑義があれば権利者に確認していく感じですね。
そうなんだ!一つ一つ申し立てしているなんて、販売元も税関も大変な仕事量である。でもそうしないとニセモノなんて際限なく入ってきちゃうんだろうな......。
このドラゴンボールももちろんニセモノ。
棚にあるものは全部ニセモノとアピールするカスタム君。吉田さん「このカスタム君はホンモノです」注釈たすかります
どっちがニセモノか本当にわからない
その先にはホンモノとニセモノを見分けるクイズコーナー。本物のホンモノと、本物のニセモノが飾られており、どちらがニセモノか見分けるのだ。書いていてややこしいな。
サプリやキャラクターグッズ、ユニフォームなどのホンモノとニセモノが並べられている。こんなの分かるのか......?
サプリの判別に挑戦する石川さん「うわあ~これどっちだ」
石川さん:左下の円の色が違いますよね。左は薄くて右は濃い
吉田さん:じゃあどっちがホンモノなのか、というのがまた難しいんですよね
石川さん:う~~~ん、左がニセモノ!
正解!「やった、才能あるかも!これずっと遊べますね......!」そう。ここ、ずっと遊べるのだ
吉田さん:それぞれの権利者さんのご協力で置かせてもらっています。こうやって摘発しているぞというアピールでもありますね。
いやあ恐れ入った。我々は今こうしてへらへらとクイズ感覚で楽しんでいるが、税関の皆さんは日々こういった悪意たちと戦っているのだ。
ブランド品なんかもう、どっちがニセモノか全然分からないですからね
カメラ用品すらある。これのどちらがニセモノなのか、ぜひ実際に訪れて確かめてみてください
横浜税関は江戸時代から輸出入を取り仕切っている
さて、横浜税関資料展示室では現在の仕事内容だけではなく、税関の歴史についても学ぶことができる。
税関の始まりはなんと、あの黒船が来航し、ペリーが日本を開国させた頃までさかのぼる。
ペリーによる開国後、函館、横浜、長崎に輸出入の取り締まりを目的とした運上所が作られた。館内入ってすぐのところには横浜の運上所(神奈川運上所)の門のレプリカがある
税関自体は現在全国に9つあるのだが、横浜税関はこの神奈川運上所から連綿と続き今日に至っている。すなわち、横浜税関の歴史は税関そのものの歴史といっても過言ではないのだ。
館内では運上所時代の取り決めについても確認することができる。ぬるっと出てきてるけど、これって貴重な資料だったりするのでは
吉田さん:近くに『関内』という駅がありますが、これはかつて神奈川運上所のあった開港場が堀と川と海で囲まれており、川を渡る橋には関所があったため、その内側を指す言葉として、関所の内側を『関内』と呼んでいたことに由来します。
うわー、そうなんだ。関内といえば高校生の頃、フリータイムが異常に安いカラオケ屋に朝から晩まで居座っていた覚えしかない。そんな歴史ある名前だったのか。
赤線より内側が『関内』。逆に外側は『関外』と呼ばれていたとか。勉強になる
税関は県庁より高くあらねばならぬ
神奈川運上所は設立から十数年後に「横浜税関」と名前を変え、輸出入の取り締まりを続けていく。
館内には歴代税関長の写真も。これは本当に存じ上げなくてごめんなさいなのですが、8代目税関長の有島武さんは、有名作家の有島三兄弟の父らしいです
また、横浜税関の建物自体も様々な理由で建て替わっていく
吉田さん:2代目の庁舎が関東大震災で倒壊して、現在のこの場所に3代目庁舎が建てられました。神奈川県庁、横浜税関、横浜市開港記念会館は建物の上に塔が建っていて、それぞれキング、クイーン、ジャックの塔と呼ばれているんですよ。
確かに言われてみればここ、横浜税関はGoogle Mapで調べると「クイーンの塔」と書かれている
横浜税関(上)、横浜市開港記念会館(左)、神奈川県庁(右)。確かにみな塔が建っている
なんだかおしゃれな話だ。そもそも建物の上に塔を建てて分かりやすくしようっていうのがいい。
3代目庁舎建設当時のスクラップも。ははあ、貴重な資料だなあ
いやなんだこれ
吉田さん:再建時の当初の設計では横浜県庁よりも2mほど低かったんですよね。それを当時の税関長が『税関は国の機関だろう。どうして県の建物である県庁より低いんだ』と言いまして......。使える予算は決まっているので、建物の一部を削って安く抑え、そのぶん塔を当初よりも高くしました。
最高すぎる。そういう見栄の張り合い大好き。結果的には県庁よりもどれくらい高くなったんだろう。
吉田さん:2m高くなりました。
重ねて最高すぎる。なんでそんなにぎりぎりの勝負なんだ......。
楽しく学べる最高の施設、横浜税関資料展示室
これにて全コーナーが終了。最後にスタンプラリーを集めた者だけが記念品をもらうことができる。
そう、我々のように
記念品は職員さんお手製のシールである。これがまた良いんだ。
ほら見て、このラインナップ
味わいがすぎる。公式イラストを流用したものや、オリジナルイラストのもの、中にはもう、明らかにペイントツールで書かれたようなカスタム君すらいる。最高のお土産である。
迷った末に「ワン」と書かれたシールをもらった。うれしすぎ
「昔は小学生以下の子供には小さいマスコットをあげていたんですよ」とスタッフの方。
あの、実はそれ、僕持ってます。
20年前に初めて訪れた際にもらったものが実家にまだあったので持ってきていた。職員さんから思わず「お~」という声が漏れた
税関というとちょっとお固めなイメージがあるかもしれない。しかし、この横浜税関資料展示室がいかに楽しく学べるステキ施設であることか、分かっていただけただろうか。
時折イベントに合わせてカスタム君も来てくれるらしいので、ぜひ一度うかがってみてほしい。
ありがとうございました。また来ます
記事に収まらなかったプチQ&Aコーナー
Q:来館するお客さんにはどんな方が多いですか?
A:個人や家族連れだとやはり、近くの観光帰りの方が多いですね。団体だと企業の研修や学校の見学で来られたり、ツアー客や各種コミュニティの方などがいらっしゃいます。
Q:イベントに合わせてカスタム君が来てくれるということでしたが、具体的にはいつ会えますか?
A:数か月に一度、横浜税関の庁舎公開イベントで会うことができます。次回は11月29日(土)です!その他の実施予定については税関公式SNSやサイトをご確認ください。(参考:https://www.customs.go.jp/yokohama/choushakoukai20250607.html)
Q:横浜税関資料展示室に持ち込み不可のものってありますか?
A:特にありませんが、飲食物は控えていただけると助かります。
さらに記事本編では使わなかったけど良かった画像たちも見ていってください。
カスタム君とミャクミャク。両脇に抱えられてるカスタム君がかわいい
税関職員の制服とカスタム君。かっこいい~
いや、カスタム君、でかいし重くない?
ちなみに麻薬探知犬の世話は専門の職員の方が行うわけではなく、取り締まりや広報含め、他の業務と一緒にジョブローテーションしているらしいです。意外。
こども向け塗り絵コーナーにあった陰影がていねいすぎるカスタム君
資料展示室「クイーンのひろば」
所在地:横浜市中区海岸通1-1 横浜税関本関1階
開館時間:10時~16時
入場料:無料
休館日:年末年始(12月29日~1月3日)
施設点検日(2026年1月10日)
電話:045-212-6300(税関広報広聴室)
くわしくは公式サイトにて
編集部からのみどころを読む
編集部からのみどころ
税関という固めの組織の一般公開展示なのに、普通にエンタメなテーマパークでした。後半に出てくるニセモノ製品を見分けるブースは、その性質上アップの写真が載せられなかったので、ぜひ現地に行ってじっくり見比べてみてほしいです。ここで差がつくのか…!と思ってかなり面白い。あとカスタム君のXも押収品クイズとかあってかなり面白いのでおすすめです。(石川)