100グラム8000円
星野村は八女市の東部に位置する。人口約2200人の山林に囲まれた村だ。標高は200-800mで朝夕の寒暖差が激しく朝霧が発生する。先に福岡は茶生産量が全国6位と書いたけれど、玉露だけで見ると実は福岡が一位なのだ。しかもシェアは40%以上。その中心が星野村となる。
八女茶の玉露は4月から5月の一番茶時期の20日程度、「稲わら」で茶の木を覆う伝統的なもので育てられる。「稲わら」が特徴的だ。最高峰の「八女伝統本玉露」は、覆う素材が天然素材である必要があるなど生産条件が定められている。
茶の文化館は八女茶について知れるだけではなく、体験や飲んだり食べたりもできる。そこで「八女伝統本玉露」を飲むことができた。これ、100グラム8000円です。茶の文化館では和菓子付きで1000円で飲める。8000円は無理だけれど、1000円なら、と思い飲んだ。
これがめちゃくちゃ美味しい。甘みとキレとコク、そのどれもが遺憾無く発揮されている。日本茶ではあるけれど、別のカテゴリーという感じだ。同じ八女茶だとしても、玉露と煎茶では別のもの。求める美味しさが異なる。玉露はハレの日に飲みたい感じだ。
酢醤油か塩につけて、玉露そのものを食べることもできる。これが美味しい。4回ほどお湯を入れて飲んだあとだけれど、風味は落ちずというか適度にあり、柔らかくて美味しい。口の中でモチャモチャすることはなく、茶葉は食べるためにある、みたいに感じる一品だ。100グラム8000円に納得した。飲むだけではなく食べてもいいのだ。
明治政府は外貨獲得のために紅茶生産に力を入れ、八女でも輸出用に紅茶が作られた。大正時代まで政府の奨励は続いた。そのような歴史があるからぜひ、八女茶の紅茶も飲んでみたかった。ちなみに紅茶も日本茶も茶葉は一緒で、製茶工程での発酵の有無で変わってくる。
お土産に煎茶のティーバッグを買って帰ったので自宅で飲んだ。美味しかった。甘みがすごいのだ。もちろん深みもコクもあると思うけれど、甘みだけを見ると八女茶が一番あるような気がする。大切なのはバランスだし、好みの問題もあるけれど、私は八女茶の鼻に抜ける爽やかな甘みがたまらなく好きだ。
八女茶を使った茶そばや茶がゆなども食べることができる。これがまた美味しい。程よい茶の風味が鼻に抜けていく。美味しいのだ。飲んでも、食べても八女茶は美味しい。茶は産地によって味が違うので、どれが一番美味しいとかではなく、その日の気分で飲み分けるのがいい気がする。

