特集 2019年6月28日

ウォンバットのうんこは、やや四角い

探した、堀った、ウォンバットのうんこ

ある日「ウォンバットのフンは四角いらしい」という話を聞いた。

取材時に知ったのだけど、昨年大ヒットした書籍『ざんねんな生き物辞典』にも取り上げられているのでご存知の方も多いかも知れない。なんでも、なわばりを守るために転がりにくい四角いフンをするというのだ。

ウォンバットといえばずんぐりしたあのなんとも愛らしい動物である。彼らのフンが四角いだって…?そんなの、見たいに決まっている。

埼玉生まれ、神奈川育ち、東京在住。会社員。好きなキリンはアミメキリンです。右足ばかり靴のかかとがすり減ります。(インタビュー動画)

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新事実。冬は四角くない、ウォンバットのうんこ

ウォンバットに会いたい、と取材依頼メールを送ったのは長野の茶臼山動物園。今から半年近く前、1月のことだ。

「ウォンバットのフンが見たいんです」という若干特殊な取材依頼にも快く了承いただき、トントン拍子に進むかと思われた矢先、担当者から「実は、冬は四角くないんですよ」というまさかの事実が告げられる。

ウォンバットのフンって1年中四角いわけじゃないのか!

インターネットではわからなかった事実を知り興奮するも、やはりどうせなら四角いフンが見たい…とのことで、フンが四角くなったらまた連絡いただく、ということになった。

ウォンバットのうんこ情報1
冬は四角くない

それから数ヶ月経ったある日、ついに待望のメールが届く。

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メール文面より。力強い

「うんこは四角になりました」。

なんていい響きなのだろう、手紙の冒頭、時候のあいさつのようですらある。四角いうんこは夏の季語だ。

ここまで”フン”なんて行儀よく表記していたが、これ以降は”うんこ”と書かせていただく。動物園の担当者もずっとうんこと呼んでいた。きっと正式名称なのだ。

さあ行こう、四角いうんこに会いに行こう。

ウォンバットに会うなら大阪か長野

取材メンバーは筆者 北向ハナウタと編集部から林さん、そして動画撮影の西垣さんの3人。万全の体制で長野へ向かう。半年待ったこの企画、胸は高鳴るばかりだ。

最寄りの篠ノ井駅からタクシーで15分。さらにモノレールで山を登ったところに茶臼山動物園はある。取材に応じていただいたのはウォンバット担当の髙田さんだ。

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ウォンバットのもとへ向かいながら話を聞く。いい天気

日本でウォンバットが飼育されているのは大阪の五月山動物園とここの2園のみ(2019年6月現在)とあって、全国各地からウォンバット好きが集まるらしい。

北向:
ウォンバット、ここには2匹いるとお伺いしました
髙田:
そうですね、雌雄で1匹ずつ。オスのウォレスが22歳、メスのモモコが26歳、2匹ともそこそこの歳ですね

ウォンバットの飼育下での寿命は20歳くらい、とのこと。すごい、2匹とも長寿だ。

髙田:
この動物園にウォンバットが来たのは1998 年の長野オリンピックがきっかけなんです。オーストラリアの方が長野へ視察に来た際に、あれやこれやの中でウォンバットが贈られたんです

親善大使のようなものだ。オリンピックがもたらすものって思ったよりいろいろある。

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着いた!確かにオーストラリア感の強いゲート

そもそもウォンバットはオーストラリアのみにしか生息しない有袋類の一種。生態は違えど種族としてはコアラが近いそうだ。

日本にウォンバットが少ないため希少な動物なのかと思っていたが、髙田さん曰く、オーストラリアの生息地では日本のたぬき並に見られる動物らしい。

ウォンバット、思ったよりゴワゴワ

待ちに待ったウォンバットとの初対面の姿がこちら。

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いた!屋内の隅っこにいた。メスのモモコである

もともと夜行性の動物、まだ半分寝ぼけている様子だ。触ってみますか?と髙田さんに促され、背中を撫でさせてもらった。

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見ての通りわりと大きい。「伸びると90cmあります」とのこと。伸びるんだ

毛はゴワゴワしていて短め。毛が長いと地面を掘ったときに土が入ってしまう為だそうだ。

触った感触は、まだ糊でパリパリの、初めて使った筆くらいの硬さと言ったらなんとなく伝わるだろうか。

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起きてきた!しまった、かわいい!
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うぉーかわいいぞ!!
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モモコー!うおー!

ちょっと取り乱すほどのかわいさである。
前足のがっしりした爪を見ると、ウォンバットが普段穴を掘って暮らしているというのも頷けるだろう。

にしても、人懐こい。
上の写真の感じで誰にでも擦り寄ってくるのだ。そりゃあ愛される。

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特に西垣さんが懐かれていた。もう土まみれ
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我々取材班はメロメロである

モモコはフランスパンが好きらしく、食べる様子がインターネットでも人気を集めているとのことだ。「モモコ フランスパン」で検索すると写真がたくさん出てくる。

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食べるときに目を閉じるのがまた良いな

うんこの四角さは食べ物によるらしい

髙田:
ウォンバットのうんこの四角さは、僕はかなり食べ物に影響されるんじゃないかと思うんです
北向:
冬が四角くないのは…?
髙田:
冬は野菜やペレットを中心にあげているので、水をよく飲むんですよね
林:
乾いたものを食べるから、逆に水を飲んでやわらかくなるんですかね
髙田:
夏のほうがうんこが四角いのは…夏は外に生える草をよく食べるから、水分がそれだけでまかなえているようです

なるほど、夏は水分の多い草を食べるためにあまり水を飲まず、結果的に乾いた四角いうんこになりやすいということのようだ。

そうだ、ウォンバットのかわいさにうつつを抜かしていたが今日の本題はうんこだった。髙田さん、うんこを見せてください!

ドキドキの初対面(うんこに)

まだ寝ているウォレスのほうが四角いうんこをするとのこと。
朝したのを掃除せずとっておいていただいたとのことで早速ウォレスの飼育スペースへ向かう。ウォレスとモモコのスペースはフェンスをひとつ挟んで分かれているのだ。

ウォンバットのうんこ情報2
個体差がある

西垣:ありました?
北向:ありました!

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あれ?

北向:四角くないな…
西垣:えっ!?

驚かないでほしい。うんこが四角くないのだ。
あの、至って普通のうんこなのでお見せしづらいのですが…

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こんなのです
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タイトル「唖然」

林:もっと乾いているのかと思ったんですけど、思ったよりうんこですね
西垣:うんこですね

雲行きが怪しい。録音を聞き返したらものすごい静かな数分間だった。

ウォンバットのうんこ、四角いとは限らない

もともと、野生のウォンバットほど動物園の彼らのうんこは四角くならない、ということは髙田さんからもお伺いしていた。とはいえ、とはいえやっぱりもう少し四角いものが見たい…

ウォレスが起きてからのほうが四角いうんこをすることが多い、とのことでもう少し待ってみることにする。

現在14時。起きるのは15時ごろ。ふらふらと動物を見ながら過ごす。

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園内をアルマジロがちょこちょこ歩いていた。かわいい
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こんなに丸くなるのだ、道端に転がっていたら大きめの植物の実かと思いそう

西垣:四角くなかったですね
北向:やー、自然相手のむずかしさですね〜
林:「ウォンバットはかわいい」っていう記事にしますか?

ウォンバットはかわいい、間違いなくかわいいのだが。

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アルパカもかわいい。親子アルパカ
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珍しいビントロング。身体からポップコーンの匂いがすると言われる
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編集長の林さんもいます

北向:「ウォンバットのうんこは四角くなかった」とか
林:たいていの動物のうんこは四角くないから
西垣:手で整形するしかないですかね
林:「ウォンバットのうんこを四角くする」
北向:めちゃくちゃな記事だ

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うんこ待ちという時間がこの世にはある
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北向「見ようによっては四角いですか?この写真」 林「感覚がおかしくなってる」

四角くないよな。びっくりしてこの1枚しか撮ってなかった。

15時も敗北

一応お伝えしておくと、最終的には四角いうんこの写真を納めることができたので安心して読み進めていただきたい。

ただ、15時の再訪問は惨敗だった。

四角いうんこをするらしいオスのウォレスが目を覚まし、のそのそと動き出していたのだけど、

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見せしめのように今日イチのゆるやかなうんこをする

我々の目の前で脱糞をするという大サービスをしてくれたが、いかんせんゆるい。

西垣:当てつけのように…

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ゆるいうんこはゆるいうんこで盛り上がる一同

北向:どうだろ、角度によっては四角いかな〜
西垣:いやいや、形にもなってないですって

うんこは大きく分けて2種類。ゆるゆるのアーモンド状のものと、あとは少し角のありそうなうんこたちがくっついた集合体。

後者の集合体のほうには少し可能性を感じるが、ただ、その迫力は画像をアップするのも憚られるほどの「THE・うんこ」である。
あえて言葉で表すなら「3時間くらい真夏の地面に置いて溶けかけたテトリス」という具合だろうか。

ウォンバットのうんこ情報3
待ったからといって四角くなるとは限らない

さらに1時間動物園をうろついて時間は16時過ぎ。閉園時間もあるためラストチャンスになるだろう。

……よし…四角いうんこ、探索するぞ!!

山を切り開け!うんこを探せ!

ウォンバットの飼育スペースは急勾配の斜面に作られ、野草に覆われている。草むらをかき分け探せば四角いうんこが見つかるかも知れない。

狙うは「溶けかけたテトリス」たち。いくつかのうんこがくっついてテトリスのようになっているのだ。それらをひっぺがせば中には四角いものもあるかも…いざ突入である。

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四角いうんこを見つけたい一心で突き進む。これは男たちのドラマだ

西垣:これはどうですか?

西垣さんは隠れたうんこを見つけるのがうまい。
うんこを見つけては筆者が枝でひっぺ返して四角いものを探していく。

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気分は化石の発掘である。あまり臭いがないので抵抗はない

林:その左端のやつ、四角くないですか!?
北向:これですか!?
林:その手前!

この二人の認識がずれている時点でおかしい。四角いわけがない。

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モモコも心配そうに見守っている

斜面で発見!四角いうんこ!

なにせウォンバットは1日に80〜100のうんこをすると言われているそうだ。それらをしらみつぶしに探していく。

そんな中、ついに「四角なのでは!?」といううんこを掘り当てた。
世界よご覧あれ、これが四角いウォンバットのうんこだ!

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どうだ!

林:あー四角い四角い!
西垣:すごい!

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髙田さんに成果報告

さすがにサイコロのような、きれいな立方体とまではいかない。2面くらいは四角い面があるぞ、という具合ではあるが、やや四角い、と言えるだろう。

…四角いですよね…?
うんこを見すぎた筆者にはもうわからんぞ。

ウォンバットのうんこ情報4
掘り返せば四角いものも見つかる

北向:あーこれも四角い
西垣:”面”がありますね

次第に”面”という共通言語が生まれる。うんこの新解釈だ。

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面があるうんこ。さっきのほうが四角いか

このあと一番四角かったうんこを移動させようとしてウォンバットの掘った穴に落とし丸くしてしまうなどのアクシデントもあったが、

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せっかく四角かったうんこを転がして丸くしてしまった、おれは何をしているんだ

なんやかんやありつつもケージ内のうんこはひと通り探し終えたためこの旅も終わりである。

ウォンバットのうんこは四角い、ものもあった

改めて今回の情報をまとめてみよう。

ウォンバットのうんこについて
・冬は四角くない(エサによる)
・四角さには個体差がある
・起き抜けのほうが四角い、それも日による
・探せば四角いものもあった

髙田:
なわばりを守るために四角くなった、という話ですけど、それならどの動物のうんこも四角くなってもおかしくないんですよね。ウォンバットだけが四角いのはまだ他の理由もあるんじゃないかと思っています。
ネットの写真を検索するとすごい四角いですけど、少なくともウチではあそこまで四角いのは見たことないですねぇ。

動物園のウォンバットのうんこは野生ほど四角くはならない。それはふんだんに水分を摂れる環境にあるということが大きいだろうし、彼らのテリトリーが完全に確保されている中で、”なわばりを守る必要がない”ことももしかしたらあるかもしれない。

”ウォンバットのうんこは四角い。”

インターネットを鵜呑みにして、彼らのうんこはすべて四角いのだ、と勝手にわかったようになっていたような気がする。さも自分の知識として取り入れてしまっていたような気がする。

しかし実際に足を運んで自分の目で見てみると、事実はそうとも限らないのだ、ということを彼らの気の抜けたうんこたちが教えてくれた。それは本当に貴重な体験だったのだ。

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髙田さんとモモコとウォレス、ご協力ありがとうございました!

<取材協力>
長野市 茶臼山動物園
http://www.chausuyama.com/


うんこと喜怒哀楽

‪長野に着いて四角いうんこを撮ったらわりとあっさり終わる取材になるかもな、それはそれでどうしようかなと考えていたが、大人3人で懸命にうんこを追っかけたり四角くなるのを待ったり真剣に向き合ったりとだいぶスペクタクルな1日になった。こんなにうんこに喜怒哀楽を持っていかれたのは初めての経験であった。

‪髙田さん曰く「うんこの四角さはその日の体調次第なので取材前は少しソワソワしたけど無事に終わって良かったです」とのこと、お世話になりました、心労をおかけしました…!‬

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かわいいー

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