峠を攻める路線バス
バスの関係で急ぎ足で秩父駅に戻ってきて、三峰神社に向かう路線バスの乗った。この日は日曜日ではあったけれど、雨が降っていたことで秩父駅からは僕以外にバスに乗り込む人はいなかった。最終的にも3人程度で、運転手さんは「晴れていればもっと人が乗ってるんだけどね~」と言っていた。
乗り込んだバスは最初こそ市街地を走っていたけれど、どんどんと山の中を走っていった。観光バスならともかく路線バスがこんな山の中を走るのは初めての体験でワクワクした。そして個人的に路線バスの特等席だと思う一番前に席に座れ僕のワクワクは近年稀に見るワクワクだった。
遠くに見える山には靄がかかっていたが、やがてバスはその靄の中を進んだ。そして雨は山頂に近づくにつれ、雪へと変わった。取材に行ったのは3月である。関東はもう春を感じる日も多い。それなのに降る雪は神秘的で、そのうち本当にニホンオオカミが出てくるのではないだろうかと言う緊張感と期待を与えてくれた。
三峰神社に到着
三峰神社の駐車場についた頃は吹雪いていた。空は例えようがないほど白い。こんな白い空を見たことはないかもしれないと思った。駐車場の看板には「天空に近い神域」と書かれていたがまさにその通りだ。
駐車場から15分程度歩くと最初の鳥居についた。そこには今まで見たオオカミの狛犬の中でもっとも立派な狛犬が待っていた。またここは三ツ鳥居でこれもなかなか珍しいものだ。
さすが本家と言う感じのオオカミの狛犬である。ボンレスハムのようなアバラだ。やはり来てよかったと心から思う。カッコいいのだ。威厳を感じ、オオカミを信仰する理由も分かる気がする。
オオカミだらけ三峰神社
三峰神社は伊弉諾尊(イザナギノミコト)・伊弉册尊(イザナミノミコト) を祭神としている。日本の氏神様の最高神は天照大神(アマテラスオオミカミ)なのだけれど、その天照大神は伊弉諾尊の子供である。ちなみに伊弉諾尊・伊弉册尊は夫婦で、オオカミ(犬神)はその使いとしてまつられている。
三峰神社にはいたるところにオオカミの狛犬がいる。僕はそれ目的でやって来ているので興奮しっぱなしだ。カッコいいのだ。アバラが浮いているのだ。雪が溶けるほど熱くなってしまった。
本殿についた頃には少し疲れていた。心地よい疲れである。しかし、本殿にもオオカミがいる。楽しくて狂ってしまいそうだった。狂犬病ってある意味こういうことなんではないだろうか!
もう本当にオオカミだらけである。狛犬もオオカミだし、お札にもオオカミが描かれている。また、自動販売機にもオオカミの絵が描いてあったし、そのオオカミが書かれたTシャツも売られていた。グッズも充実である。
さて、帰ろう
三峰神社には温泉(入浴料500円)もあったりするなど、もっとゆっくりしたかったのだけれど、如何せん時間がない。マイカーで来たのならいいのだけれど僕はバスで来ているのでバスの時間を気にしないといけないのだ。こちらに来るバスが少ないということは戻るバスも少ないのだ。
とは言ってもまだ少し時間があるようなのでオオカミについて考えた。
日本にまだオオカミがいた頃は、先述の通り山間部に住む人々はオオカミは恐怖でオオカミ信仰が起こった。ややこしいけれど、田畑を荒らすイノシシなどを追い払うことの感謝もその信仰には多分に含まれている。
今の日本にはオオカミはいない。絶滅してしまったからだ。動物園に行けば先に書いたシンリンオオカミのような外国のオオカミを見ることができる。しかし、ニホンのオオカミは見れないわけだ。
しかしである。僕は日本人で痩せ型なのでアバラが浮いている。「オオカミ=アバラ」なわけだ。つまり僕はニホンオオカミなのだ。男はある意味オオカミなのだ。ガオ~!
オオカミの狛犬は本当にカッコいい!!
唐突に下世話な話で終わってしまったけれど、オオカミの狛犬に興奮していたのは本当だ。都内で見たオオカミの狛犬も素晴らしいと思う。しかし、往復で9時間もかかった三峰神社は本当に神秘的で感動した。人が少なかったことで静かではあったけれど、雪が降ったおかげで残りのわずかな音も雪が吸収していた。そんな状況でオオカミを見れたことはとても幸せなことだった。狂ったようにオオカミの狛犬の写真を撮っていた。同じような写真を600枚も撮ったのだ。やっぱりある意味狂犬病だ。