特集 2024年4月19日

なぜ、所沢の高層ビルの先っちょはとんがっているのか

なぜとんがっているのか? 

さて、所沢の先っちょとんがりビル。いったいなぜ、とんがっているのか。

これはどうやら、所沢市の「所沢市中心市街地街並み整備計画」によるものらしい。

この中に“高層建築物では上部の形に注意し、最上階に行くほど細くする”という指針があり、それに沿った結果のようだ。 

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所沢市「所沢市中心市街地街並み整備計画」より

しかし「最上階に行くほど細くする」というのは、とんがった屋根が先っちょにちょこんと乗っただけで「OK」ということなんだろうか?

「最上階に行くほど細く」という言葉を、そのまま額面通りに受け取ると、例えば、中野サンプラザとか、レインボーブリッジの横にあるカネボウの本社があったビルみたいに、本体そのものがだんだん細くなっていかなければいけないような気もしないでもない。

その辺はどうなのか?

所沢市の所沢市街づくり計画部市街地整備課にメールで問い合わせてみたところ、ていねいな回答を貰った。

全部をそのまま引用すると、ちょっと長くなるので、回答の要点をまとめて紹介したい。

質問 所沢市に多い、屋上に尖塔が乗った高層建築物は、所沢市中心市街地街並み整備計画の「最上階に行くほど細くする」という指針の影響でしょうか? そしてなぜ、そのような指針が設けられたのでしょうか?
回答 所沢市で定めている景観誘導の指針によれば、(屋上の尖塔は)まず、高層建築物上層部のシルエットに工夫を加え、人工形態の冷たさを克服するため。という点がひとつ。それから、高層建築物の形態が、無機物とならないように、少しでもやわらげる工夫として、高層建築物の最上部に「クラウン(三角形の屋根)」を設ける。ということが指針として決められています。

ということらしい。

公開されているPDFの資料を見てみると、街全体として、四角い形のビルが並ぶようなシルエットにしない工夫という意味合いがあるようだ。

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「魅力と風格のある街並みづくりに向けて」より

現状として、立方体の建物の上に、尖塔がちょこんと乗っているような形になっているが、指針の「クラウン」の形を実際の建築に落とし込んだら、まあ、たしかにこういう形になるかもな……。と感じた。

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実際、この先っちょとんがりビルが並んでいる通りまで行って、近くからビルを観察してみる。

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先っちょがとんがっているビルの下は、けっこう余裕のある感じだった

つまり、近くまで寄って下からビルを見上げた時、ビル足元の低層の建物から、ビルの先っちょのとんがってるところまでがつながって、一体感が感じられるような工夫がされている……ということらしい。

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低層の斜めの屋根から、高層ビルの尖塔までがすっとつながっているような印象を受けませんか? 私は受けます

そして、見上げたときに、高層ビルと高層ビルの間に余裕があるので圧迫感がなく、低層の建物と高層の建物が「山型」に連続しているように見える。

景観が良いとか悪いとかいうのは、正直よくわからないけれど、少なくとも、所沢市は、この中心市街地の街並みを作るにあたって、高層ビルのスカイラインが無機質にならないような工夫を施している……ということは、よくわかった。

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高層ビルの足元には、こういった古い建築も保存されている(写真は国の登録有形文化財、秋田家住宅)

個性的なスカイラインが出来上がったのでは?

この、先っちょとんがりビル群。「とんがってるビルが多いな」という目をもって眺めると、いやいや、これはちょっとした奇観じゃないか。という気になって、だんだんおもしろくなってくる。

果たして、ビル群のスカイラインは、「山型のシルエット」が「美しい」ものかどうかは、人それぞれの感性だし、わからないけれど、それはさておき、所沢市がこういった指針で街作りをした結果、唯一無二(川口市もあるけれど)のユニークな景観が30年近い年月をかけてできあがったというのは興味深い。

所沢に行くことがあるひとは、先っちょがとんがってるビルのことを気に留めて街を眺めるといいと思う。

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