特集 2020年5月28日

「のりたま」とは一体なんなのか改めて知りたい

「のりたま」が今年で60周年と知った。

今も我が家の子供たちに愛されている「のりたま」。自分も子供のころから食べてるなぁと思ったら、今年還暦なのか。どおりで。

でも、我々は「のりたま」のことをきちんと知らないのではないか。こんなにそばにいるのに。

1975年宮城県生まれ。元SEでフリーライターというインドア経歴だが、人前でしゃべる場面で緊張しない生態を持つ。主な賞罰はケータイ大喜利レジェンド。路線図が好き。(動画インタビュー)

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1年間に2150トンの「のりたま」が胃に消える

「のりたま」を思い浮かべてほしい。一度目を閉じてほしい。

脳裏に浮かんだ「のりたま」には何が含まれていただろうか。海苔とたまご、それから……なんか茶色いのとか緑色のもの……。

そう、「のりたま」は海苔とたまごだけじゃない。ゴマと塩だから「ごましお」、みたいに話は簡単ではない。そして美味しい。

では、「のりたま」とは一体なんなのか。誰が考えて、どんな歴史があるのか。これはもう直接聞いてみよう。

取材に対応してくださったのは、丸美屋から広報宣伝室の青木さんと、マーケティング部ふりかけチームの伊藤さん。ふりかけチームでは100品ほどのふりかけを扱っており、「のりたま」はその中でもエースだという。

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丸美屋広報宣伝室から青木さん(右上)、マーケティング部から伊藤さん(左上)。伊藤さんのバーチャル背景はのりたまのキャラクター「コッコちゃん」と「ピヨちゃん」。今年デザインが変わり、ちょっと飛ぶようになったという。

まずは、「のりたま」の現在から。「のりたま」って、年間どれくらい売れているんですか?

伊藤さん:2019年に販売された「のりたま」は8.6億食で、過去最高を記録しました。「のりたま」1食は、だいたい2.5gですね。

単純計算で8.6億×2.5g = 2150トンもの「のりたま」が、1年間で日本人の胃袋に消えている。工場では1日10万袋が製造されているそうだ。

いったん全部かき集めて山にしたい。頂上にご飯を乗せて立場を逆にしたい。

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パッケージは28g(約11食)と58g(約23食)の2種類。写真は28gのほう。ちなみにパッケージは何度かリニューアルしており、現在は9代目。コッコちゃんとピヨちゃんが60周年お祝いしている。

そういえばパッケージには、のりたまご飯がアップで映っている。これが1食分ってことですか?

伊藤さん:いえ……これは1食以上あります(笑)

伊藤さんによれば「お弁当用のミニパック1袋分が、ちょうど1食のサイズ」とのこと。

とはいえ、2食以上かけたって、それは個人の自由である。頑張った日は多めにかけたっていいだろう。大人の階段を登るとはそういうことだと思う。

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ちなみに正規の「のりたま1食分」はこれくらい。ご飯の量は「人によります」とのことなので、みんな好きなだけお茶碗に盛ろう。

最初から最後まで「たまご」を感じられるように計算

では、「のりたま」の中身を見ていこう。

「のりたま」を構成するパーツには、「たまご」「のり」「さば削り節」「抹茶塩」「ごま」の5種類。

さらに「たまご」は3種類に分かれる。「たまごそぼろ」「たまご顆粒」、そして「ホロッとたまご顆粒」だ。

つまり、計7つの彩りで今の「のりたま」はできているのだ。虹と同じである。

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「のりたま」を構成するパーツは、「たまごそぼろ」「たまご顆粒」「のり」「さば削り節」「抹茶塩」「ごま」と……
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2020年から加わった「ホロッとたまご顆粒」の計7種類

「たまご」は卵と調味料を混ぜ合わせて粒状にし、それを乾燥させて顆粒にしている。とは言え、「たまご」だけで3種類もあるのは、ちょっと贅沢が過ぎないだろうか。どんな違いがあるんですか?

伊藤さん:味や食感、色味が全て違うんです。「たまごそぼろ」は一番大きくて明るい色合い、「たまご顆粒」はサクサクした食感で濃い黄色、「ホロッとたまご顆粒」は口の中でホロッと崩れます。口に入れたときから食べ終わるまで、「たまご」の味と香りを感じられるように計算しているんです。

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確かに一番明るい黄色(たまごそぼろ)が一番大きい。

伊藤さんは「噛むほどに違う『たまご』を感じられる」と言う。もう今度から口の中に意識を集中して「のりたま」を味わうことになりそう……。

伊藤さん:他の具材もこだわっていますよ。海苔は口溶けや風味を考えて、国内の様々な産地から厳選したものを使用していますし、削り節も「たまご」との相性を考えてサバを選んでいます。カツオの削り節だと、カツオが前に出過ぎちゃうんです。

古賀:たまにネットで、原材料に「こしあん」が入っていることが話題になるんですが、これは一体どこに……?

伊藤さん:すいません、それはなんとも……。企業秘密でお願いします(笑)

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残念ながら「こしあん」の謎は解き明かされませんでした。

「たまご」「のり」「さば削り節」「抹茶塩」「ごま」の5種類は、60年前の発売当初からずっと変わっていないそうだ。ということは、子供のころ食べた、あの「のりたま」そのまま……!

……と思うが、「時代と共に味は変わっています」と伊藤さんは言う。

伊藤さん:昔は塩味が強かったんですが、今は徐々に落としていますね。あと、製造技術が向上して、海苔やたまごなどの風味をより感じられるようになっています。「より美味しくなっている」と考えていただければ。

旅館の朝食の「海苔」と「たまご」がヒントに

さて、今年60周年ということは、「のりたま」が誕生したのは1960年(昭和35年)のこと。とはいえ、何もないところから生まれたわけではない。そのルーツは1927年(昭和2年)までさかのぼる。

伊藤さん:前身となる「丸美屋食料品研究所」から発売された「是はうまい」というふりかけが、丸美屋ふりかけの原点なんです。魚をベースにしたふりかけで、当時はデパートで売られるほどの高級品でした。

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1927年「是はうまい」
白身魚のイシモチと醤油、昆布、ごまがベース

どれくらい高級品かというと、米一升(1.5kg)が30銭の時代に、「是はうまい」は1瓶(45g)35銭もした。米より高いのだ。デパートで売ってもおかしくない。

ただ、創業者の阿部末吉は、ふりかけを「もっと大衆的な食品にしたい」と考えていた。

伊藤さん:社史を紐解くと、もっと多くの人に食べてもらいたい、という熱意がすごいんですよね。のりたまを思いついたのも、旅館の朝食で出された海苔と卵がヒントだったと聞いています。

旅館の朝食なんて、昨夜の宴会の二日酔いを引きずりながらボンヤリ食べるものだろう(※個人の感想です)。そこでふりかけを思いつくということは、常にふりかけのことを考えていたんじゃないだろうか。

しかし、それまでのふりかけは魚が中心。卵を原料にするなんて前代未聞だった。だって「玉子かけご飯をふりかけにしてください」と言われたら普通困っちゃいますよね。

伊藤:そうなんです。卵を顆粒にする製法自体が無くて。卵と具材をミキサーで練って、それを金網に乗せて手で裏ごしし、乾燥させ……と。試行錯誤の末に卵顆粒の製法を導き出して、1959年に「玉子ふりかけ」として発売しています。

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1959年発売「玉子ふりかけ」
「栄養」の文字が輝く

この「玉子ふりかけ」を改良し、海苔を加えて生まれたのが「のりたま」。発売は1960年1月2日、お正月真っただ中。1960年代の幕開けはのりたまと共にあったのだった。

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「のりたま」初代パッケージ。
ニワトリがゆで卵でできている。

小学生が考えた容器が大ヒット

さっき前身となる「是はうまい」はデパートで売るほどの高級品だった、という話があったけど、発売当初の「のりたま」もそこそこ高級品だった。

さすがに米よりは高くないが、山手線初乗りが10円だった時代に、「のりたま」は20g30円した。山手線に3回乗れる。

それにもかかわらず、発売当初から「のりたま」は飛ぶように売れたという。なぜか。

伊藤さん:当時は卵と海苔自体が高価なものだったんです。それを手軽に味わえるということでヒットにつながったみたいですね。あとはテレビCMなど積極的に宣伝活動をしていて、1963年にはアニメ「エイトマン」のシールをおまけにしたところ、売上が14倍に跳ね上がったそうです。

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丸美屋はテレビアニメ「エイトマン」のスポンサーになり、CMや雑誌広告を積極的に展開。
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ちなみに、1963年発売には「すきやき」ふりかけも発売された。左が初代パッケージで、右が現在。こちらも57年続くベストセラー。

売上が14倍に跳ね上がり、首が折れそうなほどの右肩上がりでスタートした「のりたま」。

だがその2年後、東京オリンピック後の「昭和40年不況」により、ふりかけ市場が半分になるというピンチがやってくる。

ふりかけをためらうほどの不況とは肝が冷えるが、その後も丸美屋はアイデアで勝負を続ける。1968年には「3色パック」を発売。3種類のふりかけが1つに入ってるやつ、見たことあるでしょう。

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3色パック(右側は期間限定の「たまごパック」)。2018年に容器が変わり、1種類ごとにフタを独立させたそう。昔は上のフタをクルクル回してふりかけを切り替えてましたよね。

この3色パック、もともとは小学2年生の男子がテレビで披露したアイデア。これに丸美屋が「これは素晴らしい」とオファーして商品化したのだそう。

小学生男子の「オレが考えた最強のふりかけ」を叶えたら、そりゃぁ全国の小学生も黙っちゃいない。3色パックは爆発的ヒットになり、現在も形を変えて売れ続けている。

期間限定商品が前代未聞のレギュラー化

3色パック以外に、こんなかわいいパッケージもある。

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「手のりたま」。表情のラインナップは5種類ある。かわいい。

手のひらサイズの「手のりたま」。「持ち運びできるふりかけ」として、高校生がお弁当に持っていくなどヒット。お弁当といえば小分けのパックも定番だ。

ひとくちに「のりたま」といっても、さまざまなバリエーションがあるんですね。

伊藤さん: 60周年ともなると3世代に渡って親しんでいただいております。年齢や用途に合わせて使い分けられるように、容器や容量の異なる「のりたま」を取り揃えているんです。通常パッケージの容量を28gと58gの2種類にしているのもそうですね。

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確かにお弁当に「手のりたま」を持っていくの、おじさんは照れくさい。こちらは小袋が詰まった、のりたま&たまごの60周年スペシャルセット(期間限定)。全部たまご味。

定期的に期間限定商品も投入している丸美屋さんだが、今年の2月に大きな事件があった。期間限定だった「ペパたま」が、あまりの人気でレギュラー化したのだ。

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右が「ペパたま」ブラックペッパーが効いた、のりたまの仲間。

伊藤さん:SNSだけでなく、お客様相談室にまで「もっと食べたい」「通年で出してほしい」という問合せがたくさんあったんです。過去にここまで反響が大きかったのは……。

青木さん:記憶にないですね。

伊藤さん:2月に通年化が決まったときはTwitterで喜びの声もあがっていて、こちらとしてもとても嬉しかったですね。

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取材では「のりたま」を使ったレシピも教えていただいた。伊藤さんは「のりたまサラダ」をよく作るそう。「のりたまとオリーブオイルをかけると、お手軽でヘルシーな感じになりますよ」(丸美屋のレシピ集はこちら

長い歴史を経ながらも、パッケージや容器、食べ方など常に「新しさ」を模索する「のりたま」。

各世代に親しんでもらいたい、という言葉は、そのまま創業者・阿部末吉の「もっと大衆的な食品にしたい」という思いにも通じる。

伊藤さん:お客様からの愛情をとても感じますし、60年続くってやっぱりすごいことですよね。このまま20年後30年後も「のりたま」をお届けしたいので、もっと美味しくなるようにチャレンジを続けていければと思います。

100周年まであと40年ですから!

伊藤さん:それくらい行きたいですね(笑)


いつもお世話になっております

我が家は「のりたま」のみならず、「麻婆豆腐」も「混ぜ込みわかめ」も「麺用ソース」も愛用していて、丸美屋さんにお世話になりっぱなしである。いつもお世話になっておりますと伝えられてよかった。

来年は「麻婆豆腐」が50周年を迎えるそうなので、今度はぜひ本社にうかがわせてください。

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ご協力ありがとうございました!

取材協力:丸美屋

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