特集 2023年11月14日

11月は冷えるけど、どんどん寒くはならない~気象予報士増田さんの詳しすぎ天気解説11月

11月に夏日、そして急に冷えて世間がざわついています。
その原因はなんなのか、そして今後の見通しは?
今月も気象予報士・増田さんに突っ込んだ話を聞きます。

(インタビュー・構成:デイリーポータルZ編集部 林)

1977年滋賀生まれ。お天気キャスター。的中率、夢の9割をめざす気象予報士です。 好きな言葉は「予報当たりましたね」。株式会社ウェザーマップ所属。
ツイッターでも気象情報やってます。(動画インタビュー)

前の記事:すごくいい季節だねっていう時期がしばらく続く~気象予報士増田さんの詳しすぎ天気解説10月

> 個人サイト ウェザーマップ・増田雅昭 ツイッター @MasudaMasaaki

今月もこのメンバーでお送りします

チャックのはなし

(本論に入るまえの余談です) 

増田:
頻繁に確認しないと怖いのはチャックですね。おそらく指摘してもらえないから。
開いたまま天気予報やってたら全く説得力ないでしょ。
林:
テレビでそんなことあったんですか?
増田:
かつて、そういうことがあったと聞いたことはありますけどね。
僕は「おはようございます」って言うとき手を前で組むようにしています。そして薬指で確認する。10秒前って言われたときに薬指で。

林:
THE TIME,で確認しよう。
※ 増田さんは朝の情報番組THE TIME (TBS系列月~金5:20 - 8:00)に出演中です

10月は雨が少なく気温が下がりきらず

2023年10月 東京の気温・気象庁ホームページより

林:
20日くらいまでは最高気温が高くて、そこから気温が下がりましたね
増田:
秋らしかったですよね
林:
過去形だ
西村:
でも10度は切らなかったんですよね
増田:
切らなかったんです
西村:
下がり方がゆっくりだったのかな
増田:
なんで下がりきらなかったのというと、雨が少なかった。
今年は秋雨らしい秋雨がなかったですよね

2023年10月 東京の降水量・気象庁ホームページより

西村:
そうですね
増田:
天気予報で「秋雨前線が停滞してここ数日はぐずついた天気になっています」とか、そういうことは言わなかったですね
林:
確かに
増田:
例年だと9月から10月の上旬くらいまで曇りや雨の日が多い時期があって。秋雨シーズンですよ。天気予報では梅雨明けならぬ秋雨明け発表というネタをやったりするんですけど、発表するも何も今年は秋雨シーズンがなかった。
林:
後半も雨も降らずに
増田:
仮に秋雨が後半に来ていたら、もっと気温がググっと下がって11月の夏日はなかったんでしょうね

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11月の記録更新は100年ぶり

林:
そう、11月に夏日になりました。25度を超えて。
増田:
東京は27.5度が出て、11月の最高気温を更新したということで。100年ぶりですね。100年前もそんな気温が出ていたんだというのも驚きなんですけど。

2023年10月~11月 東京の気温・気象庁ホームページより

林:
昔はだいたい寒いのに。
西村:
ちょうど100年前
増田:
1923年の11月1日、そこで27.3度というのがあったんですが、その後はすごく寒くなっているんですよ。

増田:
100年前というとあれですよね。関東大震災があってからの2ヶ月後だから多分まだ建物とかも壊れたりしているような状況で。
林:
それ関係あるんですか
増田:
建物があるときよりも人工的な熱は少なくなる傾向だったでしょうから、その中で27.3℃が出ているというのはすごいですよね。

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11月の夏日は西高東低の逆だった

林:
11月の夏日の原因はいつもの偏西風の蛇行ですか
増田:
最終的にはね 笑
でもその前はやっぱり雨がもっと降っていれば、もっと空気が冷めているはずなので。
仮に南風が11月7日みたいに吹いたとしてももうちょっと低かったと思います。
西村:
あの日、日本海側と北日本で天気が荒れていたんですよね。それは関係がありますか。
増田:
ありますね。
日本海は低気圧が発達して風が強くて荒れるんですけれども、風って低気圧に向かって吹くので、北ですごい発達したらそこに向かって南風が勢いよく吹く。
それで関東で南風が強く吹いてグッと気温が押し上げられた。

林:
素人目に見ると、線が縦なので冬なのかなと思うんですけれども(等圧線が縦になるのは冬の典型的な天気図)冬型ではないんですね?
増田:
逆ですね。例えば北朝鮮・中国・ロシアの間あたりだったら西に高気圧があって東に低気圧があって西高東低。ここは北風が吹いて気温が下がっている 

増田:
太平洋はどうかというと、東に高気圧、西に低気圧なので、西低東高となっているわけですよね。高気圧は時計回りに風が吹いているので南風が吹いている。 

増田:
西高東低だと北風、西低東高だと南風
が吹いているということですね。
林:
これはひっかけ問題ですね。
西から高気圧→低気圧の隙間は寒くなる。低気圧→高気圧の隙間だと暖かくなる。
日本は低気圧と高気圧の隙間にあったということですね。
西村:
この日、東京は27.5℃ですけど、福岡は最高気温19.6度、広島は21.9度、7、8度くらい違うということですね
増田:
違う空気どうしの最前線にあるのが前線です。

増田:
寒くて冷たい空気の最前線なので寒冷前線。昔は前線のことを不連続線とか言ったんですけどね。
東(右)は熱い空気、西(左)はカラッとして涼しい空気が来てる。ここで空気が不連続になってるから不連続線。
増田:
前日(11月6日)だと西も気温が上がってるはずですね。大阪も27.3度とか上がってるし。

西村:
前線の東側だ。これ分かりやすいですね
増田:
前線の西(左)はカラっとしてる秋らしい空気が北風でやってきて、東(右)側は南風で熱い。
林:
じゃあ上海のあたりは涼しいねって言ってたかもしんない
増田:
急に涼しくなってきたねって上海の人は言ってるでしょうね。
林:
日本が冬型になって涼しいねって言っていたときに、太平洋の島は熱いってことがこれまでもあったんですね。
増田:
ですね。小笠原とかも
林:
いまその気持ちがようやく分かった。

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前線は空気の境目

西村:
今日(11/10)のこの雨はなんなんですかね
増田:
これは低気圧かな。低気圧と前線が来ていてですね。北にも低気圧がありますけど南にもありますよね。
前線がないと北の低気圧に向かって南風が吹いて火曜日(27℃)と同じようになるんですけれども、南に低気圧ができることでストッパーになるわけですね。
なので今日はそんなに気温が上がっていない。

林:
前線の南側の種子島の辺りはまだ暑い
増田:
そうですね
林:
前線大事だな。前線のこと気にして生きた方がいいですね
増田:
本当です雨だけじゃなくて気温もね
西村:
そうですね
林:
低気圧・高気圧に惑わされがちだけど
西村:
温度が変わるんですもんね。こっち側が冷たい、こっち側が暖かいなっていうのがわかるように書いてありますよね
増田:
冷たい空気こっち行ってるよって、暖かい空気こっち行ってるよっていう風向きも

林:
その前線のピョコッと出てるのが矢印?!
増田:
冷たい空気こっち行ってるよって
林:
めちゃくちゃわかりやすい
増田:
前線、こんなわかりやすいのってないと思うんですよ。
西村:
下の前線はこうやって拮抗してるってことですね
増田:
停滞前線は青と赤のしましまなんですよね。青と赤それぞれ押し合っている。
林:
そうかそうか。
小林:
いま私たちは暖かいところにいるんですね
増田:
どの辺で雨が降るかもこれ見るとだんだんと分かるってことですね
西村:
わかりやすいですね
増田:
天気図ができて150年以上残ってますから。
林:
完成されている

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11月は冷えるけど、一気に寒くはならない

林:
もうこの暑さも終わりですか
増田:
この記事がアップされる頃には、朝とか夜はやっぱり11月って寒いんだねっていうふうになってます
西村:
夜は寒いですね。
増田:
この週末(11月11~12日)から寒気がやってきてようやく平年並になってくるわけですけれども、平年並になるということは、この暖かさに慣れた体には超寒いと感じるようになってしまうかな
林:
人間の体って1週間分くらいの記憶しかできないですね。
西村:
本当に近視眼的ですよね

林:
文字にしておかないと忘れちゃいますね
増田:
11月は朝晩冷えてきますが、そこからあまりさらに下がれないというか、またキープし始める感じです。
10月と同じですね。10月は気温が1回下がった後、気温をキープしたままじわじわと上がってて、なんだこの気温は(夏日)ってなったのが11月の初め。
11月の後半も基本的にはキープと考えると、もしかしたらじわじわと上がってって12月の初めになんだこの気温は!ってなってるかもしれない。
一気にどんどん寒くなるっていう感じではなさそうですね。

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