特集 2023年5月16日

浅間山が噴火してイギリスの少年が驚いた ~増田さんの詳しすぎる天気 2023年5月

地震のあとに雨が降る気がする(気のせいでした)

増田:
あ、地震だ。けっこう揺れてます、こっち。
西村:
林さん揺れてます?

林だけリモートです

林:
いや。うちちょっとカタッていったぐらいですね。これから来るのかな。
西村:
震度3ぐらいかな。
林:
能登で地震がありましたが、地震のあと雨があるので気を付けてくださいみたいな話をよく聞きますね。
増田:
そうですね。
林:
地震のあとに雨が降るような気がするんですが、偶然ですか。
増田:
地盤が緩んでいるので、天気予報では二次災害となりうる雨のことをまず言うんですよね。
林:
直後ではないのか。
増田:
直後に雨がありそうなら言いますし、直後がなければ3日後とか先の日で降りそうなら言いますね。そうすると必ず地震のあとの天気関係の情報は雨のこと言ってるな、ってなるわけですよ。
5日後に降る場合でも、今は晴れてますけど5日後に雨が降りますから、なるべく早く救助活動をって、そんな話に。
林:
別に地震がなくても1週間あれば1回ぐらいは降るから。地震きっかけで雨が降る、みたいに考えちゃいますけど。
増田:
どうしてもいろんなものに繋げたくなって。何かあるんじゃないかって。
林:
人は深読みしてストーリーを作っちゃいますよね。
増田:
地震雲もそうじゃないですか。今までの大きい地震は起こった瞬間の天気もバラバラですし、前日の天気もバラバラですし、絶対にこうだというのはないわけで。
その日晴れていても昨日こんな雲が出てた。3日前にこんな雲が出てた。振り返ればどっかになんかの雲が出てるから。探そうと思えば探せちゃうわけですよね。

群馬が雲の分類を作った(きっかけになった)

西村:
地震と天気は関係ないけど、火山が噴火すると天気に影響出ますか?
増田:
それはありますね。
有名なのが1991年に大噴火したフィリピンのピナツボ火山。噴煙が20000mを軽く超える大爆発だったので、火山灰など微粒子が成層圏まで行っちゃったんですね。上下している対流圏じゃなくて、空気の上下の対流があまりない成層圏まで上がってしまった。そうすると上下がないからずっと浮いた状態になっちゃうんですよね。
火山灰など微粒子は日照をカットする効果があるわけですけど、ずっと漂ってますから、2年後の1993年の大冷夏の一因になったと言われているんですよね。
西村:
気候に影響が出ちゃうわけですね。
林:
日本でお米ができなくてタイ米を輸入したときですよね。あれ、フィリピンが原因だったのか。江戸時代に日本ですごい寒い時期があって、それも火山の噴火が原因だったとか。
西村:
浅間山の。
増田:
天明の大飢饉ですよね。1782〜1788年。日照時間が減って気温が下がって、飢饉をひどくする一因となった。浅間山のときも大噴火で火山灰など微粒子が大量に舞い上げられたんですけど、上空って強い西風が流れているので、それが地球をグルっとまわる形でイギリスまで届いた。
小林:
ハワード少年がそれを見た。
増田:
いま雲って大きくざっくり10種類に分けられるんです。雲を種類に分けようって考えたのがハワードっていう学者さんなんですけど、この人が雲とか天気に興味を持ったきかっけというのが、子どもの時に見た空の色なんですよ。
すごい変わった色をしていて、それは天明の浅間山の噴火で上がった微粒子などが地球を回って空の色がそういうふうに変わっていたから。
西村:
浅間山って、群馬の山ですよね?
増田:
長野との県境。
西村:
あれがイギリスまで影響していたとは。ちょっとロマンを感じちゃいました。
林:
群馬の人に教えてあげたいですね。

群馬の火山が雲の分類を作るまで
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スカイツリーは天気予報に使える

林:
別企画の投稿で「スカイツリーを天気予報代わりに使っています。雲に覆われると高確率で雨になります」というものがありました。こんなに雲が低いことがあるですね。

増田:
けっこうしょっちゅうですよ。毎朝天気予報をやってる竹芝からいつもスカイツリー見てます。
林:
普通のビルでも隠れちゃうぐらいの雲の低さですね。
増田:
ここまで低くて、それまで何も降ってなければ怪しいなと思ったほうが良いですよね。
林:
雲が低いイコール雨が降るものなんですか?
増田:
イコールじゃないところはあるんですけどね。ここまで雲が低いと降る確率が高い。この方も高確率って書かれてますけど、絶対ではないんですよね。
これだけ雲が低いということは、それだけ大量に水蒸気がある、湿気があるということなので、それは空から降ってくれば雨になるわけですから、雨には繋がりやすいわけですよね。ただ、こうやって低くなっていても、その上は晴れてるってことだってありますからね。
西村:
へえ!
増田:
スカイツリーの上のほうに付いているカメラで見ると、下のほうが雲海になっていることがある。
(注:こちらのブログの写真がパーフェクトに雲海でした。
https://shonai-tsukaeru.info/tokyo_skytree/
西村:
曇ってそんなに低いことがあるんですね。
増田:
雲が薄いときもあれば、分厚いときもあって、その場合は雨に繋がりやすいですよね。
林:
水蒸気が上昇して低いところで雲になっちゃう。
増田:
だからスカイツリーは天気には使いやすい。低い雲のときは絶対ではないけれども、雨につながることが多いですし、逆にすごいクリアに見えていたら、だいたい晴れが続きますよね。
昔の「朝富士に夕筑波」という天気のことわざがあって、朝富士山がクリアに見えていたらその日は晴れますよ、夕方に筑波山が見えていれば次の日は晴れますよという意味。遠くの山が見えるということはそれだけ湿気が少ない。なので、晴れが続くよという経験則ですね。
西村:
冬場よく見えるっていうやつですよね。遠くの山が。
増田:
他の季節でもそういう使い方ができるし、現代風に言うならば、朝富士に、昼スカイツリー、夕筑波。
林:
スカイツリーの上から観測するんじゃなくて、ただ立ってるのを見るだけで観測に使えるんですね。
増田:
さっきも言ったように、完璧ではないですからね。

林:
スカイツリーが天気予報代わりというのは納得ですね。
増田:
ただし、あくまでも確率が高いという話ですからね。大ハズシするということも絶対ありますからね。
昔の気象学者で藤原咲平という人が言った予報官の心がけっていう12か条があって、そのうちのひとつが「自分の発見した法則、前兆を買いかぶるな」というのがありますし。
ちなみに、ほかにもいろいろな心がけがあって、とにかく心身健康にしないと判断力に影響するよ、それと関連して睡眠不足のときはいい予報を出せないよとか、酒を飲んでいるときは頭が明瞭になった気がするけどそれは実は妄想であるとか。あとは、奇跡を信じてはならぬ、世の中の気持ちを汲み取るべきだが迎合してはならないとか。
林:
増田さんの今の仕事にぴったり。
増田:
1933年だから90年前ですよね。まさに今でもほんとに活きますよ。
西村:
すごいな。
林:
晴れの日の写真も送ってくれています。

増田:
前後の天気の流れを踏まえたほうがいいかもしれないですね。すっごい快晴が続いていて、この雲だとゆっくりと天気が下り坂という可能性はあります。逆にその前で雨が降っていてこの空だと明日晴れだねってなるかもしれないし。
西村:
雨の前か後ろってことなんですね。
林:
なるほど〜。語れますね。スカイツリーの写真1枚だけで。
増田:
小学生の夏休みの宿題にできますよ。スカイツリーが見える人だったら。
西村:
スカイツリーじゃなくても地方に住んでる子どもだったら、山でいけるってことですよね。
増田:
山と雲の関係を見ていると、なんとなく分かるようにはなってきますよ。僕田舎だったので、山を見て雲がこうなるときは雨止むよなーって思ったりしましたから。
西村:
観測することが有効。
増田:
スカイツリーも毎日見ていたらそういう法則ってわかるようになってくる。

⏩ 意外に多い野球をやっていた気象予報士

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