冬のテレワーク焼けにご用心
今年も最後の月に突入しました。さっそくですが、今月の天気はいかがですか?(取材時12月1日)
やっと、冬になってきた感じですよね。僕も外で天気予報を伝えるのが厳しい季節になってきました。
(注:増田さんは TBSテレビの朝番組「あさチャン」6:00~8:00で外からの天気予報を担当しています)
特に朝晩は冷えますよね。
でも、これで平年並みなんですよ。
そうなんですか。でも、昼間は暖かいような?
日中は日差しがあり、そこそこ気温が上がるからです。
冬も日差しがあれば、そこまで気温は下がらないんですか?
はい。寒波が来たとしても、日差しさえあれば、朝の気温から10度ほど上がります。もちろん、曇りや雨の時はもっと寒いですが。
なるほど。
その時によく言われるのが「おみごと」です。
なんですか、それ。
晴れた日の朝と昼を比べると、10度くらいの気温差があります。曇りの日は5度くらい、雨の日は3度くらい、そして雪の日は気温差がほとんどありません。
よって0度、3度、5度、10度ということで「03510(お・み・ご・と)」と言うんです。
よって0度、3度、5度、10度ということで「03510(お・み・ご・と)」と言うんです。
「お・も・て・な・し」みたいですね。
天気予報で伝えると、拍手が起こるところですね(笑)。
でも、12月の東京ってほとんど晴れるじゃないですか? ということは、朝が寒くても、昼は10度上がるんですね?
そうですね。12月の段階で、ものすごく寒い日というのはなかなかないと思います。強いて言えば、寒い風が吹くくらいです。
余談ですが、陸別の「しばれフェスティバル」に行った時、ものすごい青空なのに朝は氷点下20度くらい、昼で氷点下10度くらいでした。
日差しさえあれば、ある程度は上がるってことですね。ただ、晴れると放射冷却が強まるため、朝晩の気温が下がりやすくなります。雲があれば、地上の熱が宇宙に逃げにくいのですが。
じゃあ、12月は通勤の時間だけが寒いと覚えておきます。
そうですね。ところで、11月の終わりに25度くらいまで上がりましたよね? やはり、だいぶ前からの予測では、わからないものはわからないなって痛感しましたよ(笑)。
4月のような陽気で明るい気持ちになれましたね。なんで暖かくなったんですか?
全然、寒気が来なかったからです。11月中に少しでも寒気が来てくれたら、さーっと地面や空気を冷やし、お化粧で下地をぬるとお化粧ノリが良くなるように、次にやってくる寒気もしみわたりやすくなって、もっと気温が下がったと思うんですけど。
それと、沖縄のすぐ近くに夏の高気圧がまだ残っていたからですね。
それと、沖縄のすぐ近くに夏の高気圧がまだ残っていたからですね。
先週、宮古島に行ったんですけど、めちゃめちゃ暑かったです。右腕だけ腕まくりしてバイクに乗っていたら、右腕だけ日焼けしちゃいましたよ(笑)。
お、これは気象予報士が口を挟まないといけない場面ですね。
なんですか?
暑いかどうかは日焼けとは関係ないんです。だって、極寒の雪山でも日焼けはしますよね?
たしかに。
もう一つ言えば、なぜ12月に入ったのに僕だけが日焼けをしているのか。
どうしてですか?
土日、子どもの野球のコーチで、1日中外にいるからです。先日は日焼け止めを塗るのを忘れていたため、今もちょっとヒリヒリしています(笑)。もちろん、夏に比べれば紫外線は弱まっていますが、冬の太陽の角度は夏よりも低いですよね。なので、顔にまともに日が当たるんですよ。
そういえば、日差しが傾いてきたせいでテレワーク中、すごい日が入ってくるようになりました。夏は、こんなに日が入ってきてなかったと思います。
冬でもちゃんと日差しはあるってことですね。ちゃんと日焼け対策をしないと。
テレワーク焼けは冬の方があるかもしれないですね。「冬のテレワーク焼けにご用心」。これはメモっておこう。
12月なかばに「暖冬じゃないの?」と世間がざわつく
話を戻します。冬らしい天気になるってことは、もうシベリアから寒気は出発しているんですか?
大物ではないものの、出発はしています。そのため、12月はじめは少し冷え込みます。そして、12月なかばはちょっと寒気が一休みしそうですね。
そこまでわかるんですね。
おそらく「今年も暖冬じゃないの?」って世間がざわざわすると思います。
そこまでもわかるんですね。
去年は雪が降らず、記録的な暖冬だったのを覚えていますか? また、太平洋側では寒い日が少なく、東京で雪が初めて積もったのが3月の終わりでしたからね。
ただ、今年の場合は、12月なかばまでは暖冬の気配も少ししますが、12月後半は冬らしい天気になると思いますよ。
ただ、今年の場合は、12月なかばまでは暖冬の気配も少ししますが、12月後半は冬らしい天気になると思いますよ。
アップダウンのある12月なんですね。
今年はラニーニャ現象が起こっているため、寒気が来やすくて、いったん暖かくなっても油断できないんです。
もう起こっているんですか?
はい。前回は2017年の秋から2018年の春にかけて起こりました。この時も12月の上旬は寒く、中旬はポカポカでした。そして、1月の後半に寒波がやってきて日本海側に大雪を降らせました。たしか、東京でも1月22日に23cmの積雪を記録しましたよ。
覚えてないものですね。
12月と1月の天気の違い
12月と1月で天気予報って違うんですか?
基本的には同じです。出てくるキャラクターが小物からボスになっていくだけです。仮に12月中、関東に「南岸低気圧」が来ても、そこまで真冬ほどドカドカと雪を積もらせることはないでしょうね。
良かったです。では、太平洋側は晴れが続きますかね?
そこそこ晴れると思いますが、不安要素もあります。
なんですか?
11月、雨が全然降っていないんですよ。明治時代から続く観測で、東京は3番目に少ない降水量でした。
たしかに、あんまり降らなかったですね。
基本的に太平洋側って冬に向けて降水量が減っていくんですけど、このまま終わるのかは怪しい。どこかでバランスを取るために、バッと雨を降らせるタイミングがあるんじゃないかと……。
この連載で、なんだかんだ揺り戻しがあるのは学びましたからね。異常なまま終わるわけない。ちなみに揺り戻しとして、雨が降る予兆ってわかりますか?
昔から低気圧が日本海を通る時は強風に注意、太平洋側を通る時は大雨に注意が必要と言われます。
特に沖縄周辺から来る低気圧は、暖かい空気、つまり湿気たっぷりの空気を持ってくるので、季節外れの大雨になることがあるんですね。右肩上がりのコースで進む低気圧には要注意ですよ。
特に沖縄周辺から来る低気圧は、暖かい空気、つまり湿気たっぷりの空気を持ってくるので、季節外れの大雨になることがあるんですね。右肩上がりのコースで進む低気圧には要注意ですよ。
とうぜん、1月とかに北から強い寒気が来ている場合は、雨ではなく大雪のおそれもでてきます。
台風の数も最終的には帳尻を合わせてきましたもんね。結局、日本には来なかったですけど。
その分、フィリピンは大変でしたけどね。
(注:10月に発生した台風の大半は北上せず西に進み、フィリピンを直撃していました)
大雨の災害も例年に比べて少なかったような。
熊本の豪雨など7月はあちこちで起こりましたが、近年の傾向と比較すると、全体的には少なかったと思います。
だから今年は野菜がいっぱいとれて、豊作だったんですって。珍しい。
すごい安いですよね。秋の気温が高かったこともあり、一気に育ったんでしょうね。
野菜が高い時はニュースになるのに、安いとならないものですね。
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天気図の日本式と国際式
授業中に思ったんですけど、日本式の天気記号って使わなくないですか? 気象庁のホームページを見ても、日本式の天気記号は使われていないんですよ。
天気の記号に日本式以外があるんですか?
世界共通の国際式があります。
気象庁は日本式じゃないんですか?
国際式ですね。実際、僕たちも業務では日本式を使っていません。
新聞はどうですか?
あぁ〜新聞は国際式ではなく、日本式ですね。
とはいえ、気象庁が使っていないのに、授業で学ぶ意味って薄いと思うんですよ。また、風力の表記が違うのも困っています。
国際式の表記は?
ノットになります。
日本式の天気図では「風力12」って独自じゃないですか? 文科省は気象庁のデータを活用しようと推進しているのに、天気図だけは日本式って矛盾していませんか?
たしかに。
あと、日本式の「風力1」は短い羽で「風力2」から長い羽が生えるじゃないですか? あれも紛らわしい。
どういうこと?
国際式を知っていれば、意味がわかりますよ。
風力1は5ノット。風力2は15ノット。つまり、短いのは5で、長いのは10を表しているんです。
なるほど。
最初から日本式ではなく国際式を学ばせたいものです。
教師の不満ですね。
たしかに。いつか見直されるタイミングが来るかもしれないですね。
その言葉が聞けて、気持ちがスッとしました。
僕はメモる時は国際式で書きますが、ベテランの方になると日本式なんですよね。「全部もう国際式でいいんじゃないっすか」と声を大にすると「日本式を大事にしろ」って言われちゃいそう(笑)。
世代間ギャップがあるんですね。
他の国は国際式なんですかね?
業務は国際式でしょうけど、新聞は独自の天気図を使っている国はあるかもしれませんね。
台風の命名が難しい
あと、台風に名前を付ける意味ってあるんですか?
現在、たくさんの名前がありますよね。
でも、結局のところ番号じゃないですか?
たしかに。一応、説明しておくと、台風には発生順の番号による呼び名とアジア名の2種類があります。このアジア名は、アジア・太平洋の14の国と地域で構成される「台風委員会」によって2000年から導入されました。
台風委員会って組織があるんですね。
はい。日本を含む加盟14の国と地域から提案された合計140個の名前が、台風の発生順に付けられています。ちなみに、アジア名はカンボジア→中国→北朝鮮→香港→日本→ラオス→マカオ→マレーシア→ミクロネシア→フィリピン→韓国→タイ→アメリカ→ベトナムの順番です。そして、140番目の名前まで使用されると、また1番目の名前に戻るシステムです。
(リンク:台風委員会の名前リスト )
(リンク:台風委員会の名前リスト )
そうだったんですね。
ただ、ものすごく大きな被害が出た場合はリストから名前が消えて、入れ替えられます。
日本は「子犬」を提案していましたよね(笑)?
そうですね。過去には「ハト」もありましたよ。「明日、ハトが日本に上陸します」って緊張感がなく、言えないですよね……(笑)
日本が提案した10個は星座の名前なんですよね?
そうです。台風の影響を受ける船乗りたちが、星座を見て航海していたこともあり、星座の名前を提案することになりました。
「コップ」もありましたよね? 人の名前の方が覚えやすいけど、同じ名前の人がいるとまずいから難しいですね。
もっと緊張感のある星座の名前にすればいいのに。「ヘラクレス」とか「オリオン」とか。
会社や団体の名前になっているとダメなんですよ。そのため、バリエーションがありつつ、特定の人や団体と被らないものとなると「コップ」は無難かもしれません。
各方面に気を使い出すと、ふわっとした名前になるんですね。
もっと概念的な命名は?
情熱とか?
羞恥心とかね。
フィリピンはそうですよ。「強い」とか「鋭い」とか。
あとは、流行語に便乗して「鬼つよ台風」とか。
時期もわかりやすくて良いですね。「ぴえん台風」。
追い求めると、緊張感がなくなりますね。
例えば、台風19号と言われても「いつ?」ってなりませんか?
なります。だから、大きな被害が出た台風は、名前を付けて残しておくんです。昨年は気象庁が42年ぶりに台風に名前を付けました。台風15号は「令和元年房総半島台風」、台風19号は「令和元年東日本台風」。
気象庁も付けるんですか?
顕著な災害をもたらした自然現象について、後世に経験や教訓を伝承することを目的に名称を定めているんですね。
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前回の答え合わせ
Q.11月中に気象庁で初雪を観測する最南端の都道府県は?
11月は新潟と長野で雪を観測しました。
どっちが南ですか?
観測は長野市と新潟市なので、長野市の方が南です。
正解者が1名いますね、マツオさん。しかも、コメント欄に「増田さんと同期だった」と書いてありますよ?
え、マツオくん? 20年くらい会ってないな〜本物かな!?
そうじゃないと書けないと思いますよ(笑)。
マツオくん、久しぶり! おめでとう! ありがとうね〜!
今回のクイズです
12月のクイズはどうしますか?
冬ですし、どれくらい寒くなるかにしませんか?
北海道でしょうね。今日も陸別は-12度とかですよ。
今シーズンだと最低気温は?
11月11日に喜茂別町で記録した、-13.7度。(2020年12月1日現在)
なるほど。過去まで遡ると?
12月ですと、帯広の-34.2度。ただ、1907年の観測ですね。
明治時代!
近年の12月でいくと、2000年代は2002年に江丹別で記録した、-30.5度。2010年代は2012年に富良野で記録した、-28.3度。
けっこう寒いですね。でも、本当に寒いのは2月なんですよね?
はい。1月の下旬から2月の上旬が一番寒いですね。
じゃあ、12月の一番寒い温度を当ててもらいましょうか。
ちなみに、ラニーニャだった2017年は、12月21日に陸別では-24.5度まで下がっています。
-20度くらいはありえそうですね。
僕が陸別に行った時、-15度くらいだったんですけど、地元の方には「今日は暖かいよ〜」って言われたのを思い出しました。
すごい世界ですね。
あれはきっと、東京モンを脅かせようとしてたはず……(笑)。