11月後半は関東でも雪が降るかも

早いもので11月に入ります。最近は晴れが続いていますね。(取材時10月29日)

そうですね。晴れている理由は、10月の前半までいた秋雨前線がいなくなったからですね。あれが南に下がりながら、日本付近の湿気を持っていってくれました。だから、これだけカラッとした天気が続いているんです。

秋雨前線には、そんな役割があったんですね。

はい。イメージ的には天ぷらの油を固める「凝固剤」のような感じです。まとめてポイっと。

スッキリしますね。

そして、中国大陸から来ている、横長の高気圧も晴れの要因となっています。横長で晴れが長く続くんですね。

その高気圧は、カラッとしている?

カラッとしていますし、ヒヤッとしています。


なるほど。ヒヤッとするでいえば、シベリアからの寒気はまだ来ないですか?

シベリアからはまだ到着していませんが、来た場合は天気が荒れるでしょうね。というのも、11月は「小春日和」と呼ばれる穏やかな晴天の日が多い月でもありますが、急に天気が豹変する月でもあるんです。

どういうことでしょうか?

シベリアから日本に寒気が来るだけなら寒いだけなのですが、今の時季の日本はまだ暖かいじゃないですか? なので、冷たい空気と暖かい空気は日本上空で混ざりあおうとします。
この混ざりあおうとする空気の渦が低気圧。これが急に発達すると天気が豹変してしまうんです。
この混ざりあおうとする空気の渦が低気圧。これが急に発達すると天気が豹変してしまうんです。

豹変というと?

いきなり強い風が吹いたり、激しい雷雨になったり、雹が降ってきたり。場合によっては、竜巻が起こったりもします。特に日本海側は注意ですね。

風の強さはどう決まるのですか?

温度によります。あまりにも温度が違う場合は激しく混ざりあうため、風も強くなります。温度差がない場合はゆったりと混ざり、弱い穏やかな風になることが多いですね。空気の動き=風です。

冷たい空気と暖かい空気が、ちょうどぶつかるところに日本列島があるんですか?

そうですね。日本は偏西風帯に属していますから、西から東へ次々に天気が変わるエリアです。また、広く見ると、ちょうど大陸と海の境目にありますよね。
海は温まりにくく、冷めにくい。陸は熱しやすく、冷めやすい。ということは、大陸と海の境目にある地域には温度差が生まれやすいんです。世界的に見ても、日本周辺やアメリカの東海岸は低気圧が生まれやすい場所なんです。
海は温まりにくく、冷めにくい。陸は熱しやすく、冷めやすい。ということは、大陸と海の境目にある地域には温度差が生まれやすいんです。世界的に見ても、日本周辺やアメリカの東海岸は低気圧が生まれやすい場所なんです。
日本の気候とアメリカ東海岸の気候が似ている

じゃあアメリカの東海岸にも寒気が?

はい。アメリカの場合は、カナダの真ん中辺りや、さらに北から寒気が下りてきます。

アメリカの東海岸と日本は気候が似ているってことですか?

そうですね。比較的、似ていると思います。さらに、関東で大雪が降る時には「南岸低気圧」という低気圧が本州の南の岸を通っていきます。
ニューヨークとかアメリカの東海岸でも同様のパターンで大雪が降る時がありますね。北米大陸の東海上を北東方向へ、岸に沿って低気圧が通ります。
ニューヨークとかアメリカの東海岸でも同様のパターンで大雪が降る時がありますね。北米大陸の東海上を北東方向へ、岸に沿って低気圧が通ります。

ニューヨークも同じ理屈だったんですね。

そして、11月の終わりにもなると、日本の南岸低気圧はちょっとずつ現れるようになりますよ。

ということは寒い?

はい。低気圧が北からの冷たい空気を引きずり込むため、雨がすごく冷たくなります。場合によっては、雪を降らせます。4年前の11月24日は東京でも雪が積もりましたからね。覚えていますか?

おそらく興奮はしていたと思うんですけど、なぜ覚えてないんでしょう……。

まあ、みなさんの記憶がないからこそ、僕たちの商売が続けられている面もあるんですが(笑)。

積もりましたっけ?

都心の観測記録としては0cmですけど、積雪状態とは記録されました。僕も取材で八王子に行っていましたが、普通に積もっていましたよ。

何cmくらいですか?

駅前の手すりで3〜5cm。そこから車で5分ほど離れただけで、真っ白の銀世界でしたよ。11月24日なのに。
雪って局地性がものすごく関係するんですよ。僕の家は坂の上なのですが、10分ぐらい下っただけで雪の降り方は全然違います。車に雪が積もっていても、坂の下は全然積もっていないことがあるんです。
雪って局地性がものすごく関係するんですよ。僕の家は坂の上なのですが、10分ぐらい下っただけで雪の降り方は全然違います。車に雪が積もっていても、坂の下は全然積もっていないことがあるんです。

ちょっと位置がずれただけで、ぜんぜん違いますね。

要は気温が0度以上の層がどれほど分厚いか、ということ。例えば、地上の温度が3度でもその範囲が高さ5〜10mほどで、それより上が氷点下ならば、解ける間もなく雪として落ちてくるでしょう。雪が解けずにどこまで落ちてこられるかってことですね。

私の家は湾岸のほうなんですが、このあたりって雪が降る予報が出ていても、すぐに消えてしまいます。それは、海が近いからですか?

そうですね。海の近くは気温が下がりにくいですから、東京23区においても東の区は雨、真ん中の区はみぞれ、西の区は積もるということがありますね。

そんな狭い範囲でも違ってくるのは面白いですね。

だから大変なんです(笑)。ちょっと移動しただけで結果が全然変わってきますから。

では、11月後半が楽しみですね。

はい。寒気が下りてきた時、低気圧がどのように発達するのか。はたまた、南岸低気圧が通り、季節外れの雪を降らせることがあるのか。注目ですね。
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寒いおかげで台風を回避!!

そういえば、台風は完全に逸れましたね。あれは、寒いことと関係あるんですか?

結局、北上できなかったということは、それだけ北側の冷たい空気が勝っていたということです。

その正体は?

中国大陸からやってきている高気圧です。めちゃくちゃ冷えているわけでもないのですが、台風から見たらだいぶ冷えている空気ですね。

なるほど。またも記憶は曖昧ですが、10月ってこんなに寒かったでしたっけ?


今のところ、平気気温は17.5度。前年と比べても2度くらい低いですね。

寒いからこそ、台風を寄せ付けなかったと?

そういう面もあるでしょう。気温が下がるのが早かったですね。というより、暑さが粘らなかった。年によっては、10月でも30度を超えますからね。

今年は台風の心配はなさそうですか?

強烈な台風が日本を直撃する確率はもう低いでしょうね。とはいえ、今次々と発生はしています。

ただ、発生した台風は、すべて西方向に向かっています。最近の台風もフィリピンからベトナムに向かいましたよ。

これは何号ですか?

18号と19号ですね。間もなく「熱帯低気圧c」が台風20号になるはずです。

ラッシュですね。ということは、台風の発生数も例年通りになるのでは?

20号まで発生したので平年に近づいてきましたね。


10月にきて5つ。帳尻を合わせてきましたね。

20号を含めると7つ。こうなると、なかなか多いですね。

ベトナム、フィリピンの気象予報士は大変ですね。

亜熱帯は大変ですよ。

日本では報道されませんが、実は東南アジアは台風ラッシュってことは知っておきたいものですね。

東南アジアの方は、北にいけよ! って思っているでしょうね。

やはり、日本にある高気圧が強い?

季節の変化というのは「だるま落とし」のようなものなんです。北の冷たい空気が南に下りてくれば、台風のコースも必然的に南のほうを通るようになります。

季節のグラデーションがあって、それがスライドしているわけですね?

そうです。北の冷たい空気が下がってこなければ台風も北に上がったんですけど……。だから、台風は西に行くしかないわけですね。
現代には向かない「女心と秋の空」

変わりやすいものの例えで「女心と秋の空」ということわざがあります。でも、そこまで秋の天気って変わってないと思いますし、変わりやすさなんて人それぞれだと思うんです。「変わりやすい」の定義ってあるんですか?

定義はありませんが、この場合は「晴れが3日持ちません」くらいの感覚ですね。

ちなみに、その時季は今ですか?

もうちょっと前です。秋雨前線が終わった後ですね。本来ならば、秋雨前線が湿気を持って去り、日本には西から高気圧がきたり、低気圧がきたりというパターンなのですが、今年はあまりなかったですね。

なるほど。移り気を表現するならば「秋の空」より「ゲリラ豪雨」ですね。

そうですね(笑)。突発的な雨だと、数十分とか数時間で天気が変わりますからね。

でも、そんな短時間で気持ちが変わるのはヤバイですね。

そう考えると、昔の人は長いスパンで時間を捉えていたのかな? おおらかな人が多かったのかも。

現代は短時間で結果を出す世界ですもんね。時間感覚のスパンは短いかもしれませんね。

たしかに。江戸時代の伝達だって1日はかかっていますもんね。今はメールで瞬時に連絡できますけど。

だから現代人にはピンと来ないのかもしれませんね。
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前回の答え合わせ
前回の問題
東京の10月の最低気温は何度でしょう。小数点以下1桁までお答えください。

今のところ、10月20日の10.5度が最低気温ですか?(2020年10月29日収録時)

そうですね。でも、最終日は10.5度を下回る気がします。

毎年、ハロウィンって寒いですもんね。
※増田さんの言う通り、10月31日に9.2度を記録しました。
なんと、ピッタリの方が!ヨネヤマさんのお答えが9.2度。「8度台にしようか迷ったんですが」というコメントでしたが、みごと的中でした!すごい。
今回のクイズです

11月のクイズはどうしますか?

雪じゃないですか? 雪が都道府県単位でどこまで降るか。

良いですね。初雪を観測する一番南の都道府県を当ててもらいましょうか。
ヒント:候補エリアの平年の初雪日
札幌10月28日
青森11月6日
盛岡11月8日
秋田11月13日
山形11月18日
仙台11月24日
福島11月26日
長野11月21日
新潟11月24日
金沢11月29日
※気象台での観測

富山と福井が12月2日なので、この辺りは可能性ありですね。ちなみに関東で一番早いのは前橋で12月15日です。

関東までは来なそうです。

わからないですよ? 4年前は11月に東京で雪が積もっていますから。

いいクイズですね。面白い。

さらに平年を言うと、岐阜12月14日、彦根12月13日、京都12月15日。そして、意外と本命になるかもしれないのが鳥取と松江で12月5日。

11月後半はまだ想像できないな。

鳥取に降ったら面白いから鳥取にします。

関東にしたいけど、前橋は湿気がなさそうだしな。

新潟県との境の山で降った雪が強い風で飛ばされてくる可能性はありますね。

そしたら群馬の上の福島にします。

中旬は平年より気温が高そうですが、その後におそらく寒気は来ます。ただ、それが雪を降らせるほど冷たいかは、まだわかりません。
どうなるか今月も楽しみですね!
どうなるか今月も楽しみですね!