2月の天気が1月に到来!?
林:今年に入って1ヶ月経ちましたが、2月の天気って1月と変わりますか?
増田:まだ暖冬傾向が続くでしょうね。少しずつ春っぽい天気のパターンが現れてきます。
西村:春っぽい天気のパターン……ですか?
増田:例えば、強い南風が吹く「春一番」は代表的ですね。あとは、ずっと冬型が続かずに低気圧や高気圧が交互に通過する周期変化型の天気もそうです。ただ、今年は1月の時点でその現象が現れていました。
林:先月の話でいうと、暖冬ということは低気圧が多いんですか?
増田:低気圧ばかり来てます。さらに言えば、1月の後半はやたら雨が多かったですが、あれは菜の花が咲く頃、3月下旬〜4月上旬に現れる「菜種梅雨」のパターンなんです。あくまで、一時的ではありますが、春先の天気が真冬の一番寒い時期に到来していたんですよ。もう、めちゃくちゃですね。
林:なるほど。シンプルな冬型であれば、日本海側には雪が降り、太平洋側は晴れることが多いって言ってましたもんね。
増田:そうなんです。普通ならば、1月はシンプルな冬型で、シベリアからの寒気(高気圧)に覆われ、低気圧はなかなか近づけないはずなんですよ。でも、まともな冬型が続いたのって、年越しから4日、5日ぐらいまでだったじゃないですか?
加藤:たしかに。増田さんの予報通り、三ヶ日あたりは寒かったですね。
増田:そして、本来の2月ならば、その寒気が弱まったタイミングにようやく低気圧が顔を出すことを許されるんです。しかし、今年の低気圧は遠慮なく次々に顔を出して、季節をわきまえてないですね。
西村:そしたら、2月はどうなっちゃうんですか?
増田:う〜ん、どうなっちゃうんでしょうね? 正直、気象関係者もどういう風になるのか興味津々です。
加藤:明らかに今年は異常気象だと思うんですよ。さすがに温暖化と言ってもおかしくないんじゃないですか?
増田:言いたくなりますよね。でも、来年の冬にものすごく寒い冬が来る可能性もあるので、この1年で判断するわけにはいかないんです。
林:この傾向が何年続いたら「温暖化」と判断できるんですか?
増田:やはり、30年、50年、100年くらいのスパンで確認していかないと。もちろん、過去数十年の平均を確認すれば気温は上がっているので、温暖化していることはしているわけですね。。
加藤:ここまで1月の天気が崩れるって、過去にあまりなかったように思うのですが?
増田:確かに天気が崩れたり、寒い日が少なかったりと珍しいですが、過去にあることはあります。2006年から2007年にかけての冬。この年の東京の初雪って、いつだったかご存知ですか?
加藤:わからないです。……3月とかですか?
増田:なんで当てちゃうんですか! 正確には、3月16日です。そう考えると、今年の東京はもう降ってますからね。ただ、北陸に全然雪がないのを見ると、記録的な暖冬の年の1つには違いないです。
加藤:2月の天気は気象関係者も迷っているんですね。先月はしっかりと天気を的中させていたのに、今月はなんで難しいんですか?
増田:私も格好良く言い切りたいですけどね。先月は12月末時点で1ヶ月先の予想資料を見ると、明らかな暖冬傾向でわかりやすかったんです。だから、強気に出られました。しかし、今月の予想資料は読みづらくて……。
西村:寒さが強まることはありますか?
増田:ここまで極端な暖冬傾向というのは、少しずつ収まるのではないかと思っています。ひとまず言えるのは、2月5日から7日までは冬っぽくなり、その後の寒気は続かないでしょう。
加藤:後半はどうですか?
増田:時々は寒気が降りてきて冬っぽい天気にはなると思います。注目したいのは、低気圧の位置。今と同じように寒気が弱い場合、低気圧は日本海を通るルートになるため、気温も上がるんです。逆に寒気がすごく強まった場合、低気圧は日本の南を通るルートになります。
西村:雪が降ることはないですか?
増田:いや、あると思います。寒気が降りてくるタイミングで南岸低気圧が通過すれば、関東など太平洋側でもドカ雪の可能性だって残っていますから。低気圧の位置によって、暖かくなったり、雪になったり、両極端になるわけですね。
西村:なるほど。まだまだ気を抜くわけにはいかないですね。
地域で違う大雪警報
林:そういえば、加藤さんは今日、学校が休みなんですか?
加藤:はい。雪予報が出ていたので、昨日の昼に休校の連絡がありました。
増田:早いなー。
加藤:びっくりしました。どうやら、常磐線が品川駅まで延びた影響で、都内の影響を受けるようになったようです。
西村:天気そのものではなく、交通機関への影響が理由なんですね。
増田:(加藤さんのお住まいは)牛久ですもんね。その辺は雪ではなく、雨じゃないですか?
加藤:いや〜それがめちゃくちゃ雨なんですよ。
西村:ちなみに大雪警報が出る基準ってなんなんですか? 例えば、東京だと5cmでも大雪警報は出るけど、青森では5cmなんて普通じゃないですか? 大雪警報って地域によって違うんですか?
増田:違いますね。地域によって細かく基準が分かれています。ちなみに東京23区の大雪警報は、12時間で10cmです。なお、以前は24時間で20cmでした。
林:より少ない雪で警報が出るようになったんですね。
増田:同じ東京都内でも奥多摩では12時間で20cmなんです。
西村:積雪で有名な新潟県津南町はどれくらいですか?
増田:えぇ〜とですね、12時間で60cmです。……そんなに降るの!?
西村:おぉ〜都心の6倍!!
増田:1時間5cmということは、24時間で1m以上か、すごいですね。
西村:青森はどうですか?
増田:調べてみますか。青森は平地と山沿でも分けられていますね。津軽の平地だと、12時間で35cm、山沿いは50cm。八戸だと平地で35cm。山沿いで40cmです。
林:刻んできましたね。意外と北海道は低いと思うんですよね。釧路はどうですか?
増田:釧路は12時間で40cmですね。降らない地域ですが札幌とあまり変わりはないです。
西村:逆に降りづらいエリアはどこですかね?
増田:宮崎ですかね。宮崎だと、24時間で10cm、山沿いは24時間で30cmですね。
西村:時間が長くなってますね。
西村:那覇はどうですか? なんかドキドキしますね。
増田:沖縄は基準自体が設定されていませんね。降っても積もることはないですしね。
林:雪ではないですが、大分県の佐伯市では雨が100mm降りましたね。土砂崩れも起きた。
増田:あれも暖冬の影響でしょう。たまたま一箇所で100mmの雨はあるかなって思っていましたが、九州や四国各地で冬にあんなに複数の箇所で降ったのは記憶にないですよ。それだけ暖かい空気が流れ込み、湿り気を含んでいたんですね。
西村:冬に大雨のニュースも珍しい。
増田:先日、TVでインドネシアの大雨による洪水の映像が流れていたんですけど、九州や四国の大雨のニュースも同じような映像で…。本来、1月の現象じゃないですよ。
ジェット気流が寒気を降ろさない
西村:先ほど、今年は北陸に全然雪がないと言っていましたが、雪不足の原因は?
増田:シンプルに突き詰めると、北極周辺の寒気が日本に向かって降りてこなかったからです。
西村:なんで降りてこなかったんですか?
増田:1つは「北極振動」が関係しています。北極振動とは、北極周辺の寒気を溜め込んでは、南へ放出することを繰り返す現象のことです。これには「正の北極振動」と「負の北極振動」の2パターンがあります。
正の北極振動…北極周辺の気圧が平年よりも低く、日本を含む中緯度の気圧が高い
負の北極振動…北極周辺の気圧が平年よりも高く、日本を含む中緯度の気圧が低い
林:どっちだと雪が降りますか?
増田:「負の北極振動」です。ざっくり説明すると、中緯度地域の気圧が低くなると、北極周辺の寒気が放出されやすくなるため、大雪や寒波をもたらします。逆に「正の北極振動」では、中緯度地域の気圧が高くなると、寒気は北極周辺に蓄積されるため、日本が暖かくなるんです。シーソーみたいな関係ですね。
西村:今年は「正の北極振動」ということですね?
増田:そうですね。さらに、北極振動はジェット気流も関係します。負の北極振動のときは、このように(上の写真)蛇行します。そうすると、窪んだところに向かって寒気が落ちてきやすくなるわけです。
西村:なるほど。ジェット気流が壁というか仕切りのような役割を……?
増田:ちょちょ! 決めワードがあるので待ってください(笑)!
西村:すみません。
増田:窪んだところに寒気が落ちてくると、日本海側では大雪となり、寒い冬になります。これが「負の北極振動」といわれるパターンです。
林:正の北極振動はどんなジェット気流なんですか?
増田:負の北極振動とは違い、ほぼ蛇行せずにまっすぐ吹いています。そのため、北極からの寒気をブロックし、なかなか日本付近に寒気を降ろさないんです。いわば、このジェット気流は「エアカーテン」のような役割を果たしており、寒気が降りてくるかは、ジェット気流次第です。
西村:おぉ〜エアカーテン!!
林:ジェット気流が寒気を防ぎ、寒気次第では低気圧の場所が変わると。3つがせめぎあってるわけですね。
西村:ジェット気流は常に動いているんですか?
増田:はい。細かく言えば、まっすぐではありません。蛇行が大きいか、小さいかですね。それも年によって、時期によって、変わっていきます。
西村:なるほど。だから、青森も雪不足だったんですね。降ってもすぐに溶けていましたから。
増田:雪が降れば、地面に保冷剤を敷き詰めている状態になるので、積もりやすくなります。もしくは、寒気がくれば、雪が降らなくとも地面が冷えるため、積もるための土壌ができるんです。つまり、今年はそれだけ寒気が日本にきていないということです。
西村:「今年はジェット気流がそんなに蛇行してないから寒気が降りてこれないんだ」って、青森の人に伝えておきます。
世界一の降雪記録は滋賀県
西村:「雪が積もるのは日本くらいだ」って聞いたことがあるんですけど、本当ですか?
増田:積雪の深さの世界記録は日本が持っています。ちなみにその場所は、我が故郷の滋賀県になります。
林:え、滋賀!? どれくらいですか?
増田:11.82mです。
西村:おぉ〜滋賀は意外でした。
増田:伊吹山で記録しました。というのも、冬型の気圧配置になると、日本海で発達した雪雲は日本海側から太平洋側に流れていきますよね? なかでも、日本地図を見れば分かる通り、若狭湾と伊勢湾に挟まれた地域は本州の中でも一番狭くなっており、ここは雪雲が通り抜けやすいルートになっているんです。
林:東海道新幹線でも関ヶ原辺りになると「雪のため遅れが発生しています」というアナウンスがあるのは、そういうことですか?
増田:まさに関ヶ原辺りは窪んでおり、雪雲の通り道になりやすいんですね。そのルートの途中にある伊吹山に雪雲が次々とぶつかり、大量の雪を降らせたんです。
加藤:北海道の方がドカドカと雪が降りそうなイメージですけどね。
増田:1つは地形にポイントがあります。冬型の気圧配置というのは、日本海で水蒸気を補給した雪雲が山にぶつかり、雪を降らせますよね? 北海道を見ると、補給するための海の幅が大陸から短いため、そこまで大きくは発達できないんですよ。もちろん、陸では水蒸気が補給できませんから。そう考えると、北陸は大陸からの海の幅が長いため、水蒸気を充分に補給できるんです。
林:なるほど。海の距離が長い分、時間をかけて水蒸気を補給できるんですね。
増田:くわえて、対馬海流は暖かいため、水蒸気を補給しやすいんです。海との温度差が大きいほど、雪雲はどんどんと大きくなります。よって、強い寒気が訪れると大量に雪が降るんです。
西村:この緯度で、この地形って奇跡的に雪が降りやすいですね。
増田:はい。だから、北陸など日本海側は、世界でも有数の豪雪地と言われているんですね。
キャンディーズが春一番のイメージを変えた
林:「春一番」とか「木枯らし1号」って、普通の風とは違うんですか?
増田:風は風です。風に色はありません。ただ、気象庁が基準を決めており、その基準をクリアしなければなりません。
林:基準はなんですか?
増田:春一番であれば、地域によって違いますが、立春から春分の日までの間に吹かなければなりません。
林:期間があるんですね。
増田:はい。その期間中、最初に吹く強い南風が春一番と呼ばれます。強さは、だいたい風速8m/s以上になります。
林:暖冬の影響で2月の天気が1月に来ているってことは、もうすぐ吹いちゃうかもしれないですよね?
増田:今年はまだですが、1月の終わりにフライングで吹くこともあります。
加藤:毎年、絶対に吹くんですか?
増田:はい。さすがに風速8m/sを超える南風が吹かないことはないと思います。ただ、その期間中に吹かなければ、春一番がないと記録される年もあります。
加藤:春一番ってどういう仕組みなんですか?
増田:日本海で低気圧が発達することによって生じる風になります。通常の冬であれば、日本は寒気に覆われているため、低気圧は入り込めず、遠慮がちに南を通るものです。しかし、今年のような暖冬の年ならば、日本海ですでに発達する可能性があります。
加藤:なるほど。つまりは寒さが弱まり、冬型の西高東低が崩れることによって、日本海で低気圧が発達し、春一番になると?
増田:さすが理科の先生。春一番は、そういう現象が起きる目安になっているんです
西村:春一番は、これから春ですよっていうサインなんですね。
増田:でも、春一番の由来というのは、春の一番目の嵐って意味だったんですよ。昔、春に吹いた強風により、長崎県で船の大規模な遭難事故がありました。そこから、警戒を呼び掛ける意味合いで使われるようになったわけです。それが、「キャンディーズ」のヒット曲により、ポジティブなイメージへ変わっていったんです。
林:キャンディーズが影響していたんですね。
増田:すると、マスコミも「今年の春一番はまだですか?」と気象庁に聞くようになったため、春一番を発表するようになったそうです。正直、どこまでキャンディーズが影響していたかはわかりませんが、もともとは防災情報的な意味合いだったんですよ。
林:じゃあ、誰かが「ゲリラ豪雨」を歌ったら、ポジティブなイメージになりそうですね。
今回もクイズです
増田:先月同様、今月もTEN-DOKUのようなクイズを出したいと思います。 今回は、2月の雪が降る日数を当ててもらいましょう。ちなみに、日付またぎで雪が降った場合は2日間のカウント。また、ミゾレも雪とカウントします。
西村:雪って予測できますか?
増田:だいぶ先だと勘ですね。でも、今は16日予報もあるので、ヒントにはなると思います。
<ヒント1>
今年は暖冬傾向のため、三寒四温の可能性もあり
<ヒント2>
2月の雪日数の平年は3.7日
<ヒント3>
2月の過去3年間の雪日数。2019年は4日、2018年は5日、2017年は4日
林:毎週、降ってるイメージですね。暖冬だから0もあるかもしれないですね。
増田:詳しい人だと、暖冬の年の2月を調べたりするでしょう。締め切りは、2月7日です。ぜひ、ご応募ください。
(締め切り:2020年2月7日)
前回の答え合わせ
Q. 「日本一寒い町」北海道陸別町の2020年1月27日の最低気温は?
A.—21.0度。
増田:ヒントで「陸別町における、1月27日の過去30年間(1981年〜2010年)の平均最低気温は、-21.0」とお伝えしていましたが、そのまんまの結果となってしまいました。
林:ひっかけ問題ですね。近かった方は……
—20.4度 akiさん 理由「なんとなく」。
—20.3度 よいどれかんちゃん 理由「ここ数年の平年なみの確率が高そうなので、マイナス20度前後かなと」。
西村:「平年なみの確率が高い」という予想は良かったですね。
増田:あれ? もっと近い方いますよ。1月1日に投稿されてる、林テストさん。—20.5度。理由「霊感」。
林:俺だ。すみません。フォーム作った時にテストで送ったやつですね。
増田:(笑)。こんなこともあるんですね。