思わず息を飲んだ第三号水路橋
国道20号線、甲州街道沿いを少し歩くと、左手奥に水路があるのが見えた。それが第三号水路橋。
思わず見落としそうな場所にさりげなくあったにもかかわらず、極めて完成度が高い立派な水路橋で、これにはたいそう驚かされた。
あぁ、カッコ良い。なんてカッコ良い橋なんだろう。
複数の積み方を組み合わせて積まれた美しいレンガの質感。横一線に通るデンティル(歯のように並べられたレンガ装飾)。横にちょっとだけ張り出した橋脚の形。あぁ、興奮せずにはいられない。素敵すぎる。
この美しすぎる水路橋をしばらく堪能した後、傾きつつある太陽に急かされる形で私は次の水路へと向かった。興奮冷めやらぬ中、たどり着いたのは第四号水路橋および第三号開渠。
大野調整池、そして八ツ沢発電所に到着
地中に入った水路は、それからそのまま5km以上もある長い長い隧道を通り、そしてようやく大野調整池に出る。
この大野調整池は、水路の水をためておくための発電専用ダム。水路からそのまま発電所に流すのではなく、ここに一旦水をためてから発電所へと流すそうだ。
もちろん、そんなことをするには理由がある。夜間は電気の需要があまり無いため、発電せずにこの調整池にためておいて、電気が必要となる昼間にどかっと発電しようという寸法だ。
ちなみにこのダムが完成したのは大正3年。八ツ沢発電所導水施設の中では一番最後に作られたものである。もちろん、このダムも隧道などと同様に重要文化財。
ダムの種類としてはアースダムというもので、その堤体は土を固めて作られているのだそう。建設された当時では、国内最大の高さを誇ったダムでもあるらしい。
この大野調整池にためられた水は、圧力水管(中に空気が入らない管)を使って一気に5km先にある発電所の水槽へと送り込まれ(この水槽までが重要文化財)、そして水圧管路に落とされる。
さぁ、いよいよこの導水路の終点、八ツ沢発電所に到着だ。
そして水は次の水力発電所へ
こうして八ツ沢発電所の導水路探索は終わった。
八ツ沢発電所から排出された水は、再び水路を通って下流にある松留水力発電所で利用され(この松留水力発電所は有効落差が4.24mと物凄く小さな発電所)、それからようやく桂川へと放流される。
ちなみに、今回の八ツ沢発電所見学は、東京電力の葛野川PR館で実施されている見学会を利用した。実は大して期待もせず、気軽な気持ちで行った見学だったのだけど、これが想像以上にすばらしく、十二分に楽しめた。
ただ、この見学会では第一号水路橋から大野調整池堰堤までの間を すっ飛ばしてしまうので、その途中にある第三号水路橋などを見るには別途自力で回る必要がある。私は猿橋駅から飛沢駅までの約4km、がんばって歩きました。
参考:TEPCO 葛野川PR館