特集 2024年1月29日

元旦の風習「若水汲み」をわかっておこう

若水を汲み道中記

翌日、元旦の日が昇る前に水を汲みに行く。高千穂では女性が担うことになっているそうだが、そこはスミマセン。僕がいかせてもらいます。

それにしても、5時に水を汲むから4時には起きなければならないのか…。

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今日は4時間睡眠かと思いながら見た天井(自由律俳句)
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がんばって起きた。グループワークで余った人くらい表情がない

家から車に乗って天真名井を目指す。普通の人は寝静まっている時間なので、ビクビクしながら車のエンジンをかけた。あと職質されたらどうしようか。道中で人と話してはいけないのだ

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人目を避けて狭い路地を通る

適当な場所に車を停めて、桶と柄杓を手にして狭い道をいく。未明の異様な雰囲気がある。オバケとか出たらどうしようか。でもオバケ怖がっても一銭にもならんしな。いや、なるか?YouTuberとかさ。

小学生のころ、家族が寝静まったあと真っ暗な居間で光るADSLモデムにビクビク怯えていたことをふと思い出した。今の子供は何に怯えているのだろうか。

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明かりが灯る家も多い(ナイトモードで撮っているので実際はもっと暗い)

民家に目をやってみると、すでに起きているのか明かりの灯っているところが多くあった。そういえば宮崎の人は全国でいちばん早く起きるとかってどこかで見たな。

だらだら要らないことばかり頭に浮かぶ。昔の人だって、まさか身口意の三業が整えられているわけもないだろうし、同じようにボケーっと考え事をしながら歩いたことだろう。

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あと20m。ここまで10分くらい歩いただろうか。
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目の前に天真名井があるはずだが、白い壁が視界を阻む。召喚獣ハバムート。

壁の脇を通り抜ける。

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壁を抜けると工事中だった

天真名井のまわりはバリバリ工事中で、バリバリ重機が置いてあった。

ていうか、そうだ。数ヶ月前に業者さんに依頼されてこの現場の安全祈願祭を執り行ったのは僕だった(神職なので)。ひとまず、滞りなく工事が進んでいるようで安心した。どんな余談やねん。

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翌日に明るくなってから撮った写真。工事中だ。

飲めない水を汲むんだぜ

絶賛工事中だが、天真名井の池までは無事に近づけた。

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老ケヤキの下から水が湧いている(これ以降、翌日に撮った写真と暗いときに撮った写真が混在します)
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水はきれいに見えるが
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飲めない

そう、天真名井の水は飲めないのだ。僕は飲める時代があったことを知らなかったくらい、飲めない。

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二礼二拍手一礼で拝礼

祖父から教わったとおりに拝礼をして、唱えごとをする。

「新玉の 年のはじめに 杓取りて よろずの宝 われぞ汲み取る」

新しい年のはじめに柄杓で水(=よろずの宝)を汲み取る、くらいの意味だろう。

それが済んだらいよいよ水汲みである。

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持ってきた柄杓では届かなかったので、備え付けの長いもので水を汲む
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きれいはきれいだな

飲めないだけでまさか毒ではないのだろうし、臆することなく水を手に取った。澄んでいてきれいな水だ。

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匂いも嗅いでおこう

川の水のflavorがした。飲むのはよしたほうがいい。

飲めない水を汲んでも仕方ないので、一緒に持ってきたペットボトルの天然水を桶に移し替えた。家に帰ったらこの水でお茶を淹れよう。(若水汲みをすることが大事だと思っているので臨機応変に進めます)

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形式は一応守って、柄杓を介して桶に水を入れていく
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鳶ノ米を供える。木を傷つけるのは嫌だったのでそのまま置いた

用事を済ませて、碑にお供えをして引き返すことにした。高千穂では、水の神さまに一度見せた供物は持ち帰ってはならないとされている。もし一升瓶を持っていたら全部飲ませてあげないといけないのだ。

この場を離れる直前、ぽこぽこと水が湧き出る音がして辺りに白い煙がたゆたった。なるほど、神様の歓迎のあかしと見ようじゃないか。お邪魔しました。

お茶を沸かそう

せっかくなので、持ち帰った水で緑茶を淹れてみよう。

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柄杓でティファールに水を移す。
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紆余曲折を経てお茶が入りました

これが若水で淹れた緑茶である。実際にやってみるとなかなかの感慨がある。

ズズズズ。

うまい。いつも飲むお茶と味がぜんぜん違う。なんて言うんだろうな、こう、澄みきった爽やかな味がする。ランクがひとつ上がっているような…ああ、そうか!

ペットボトルの天然水でつくったお茶だから美味いのだ。

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茶の美味さより眠気が勝った顔

 

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