腕を組む側・組まれる側
佐伯:さっきのはわたしが腕を組まれる側だったじゃん。今度はわたしから組みたい。
加藤:どうぞ。
佐伯:…さっきやってもらったのにもうわからない。教えてください。
加藤:だから…、腕を組んだら右手で相手の左手を掴んで…。
佐伯:なるほど…。
さっきより主体性が求められている。この腕をひっぱって導かねばという緊張感と責任感。そんなことわたしに任せないでほしい。一生ひっぱられてたい。一生下っ端でいたい…。
佐伯:最初の方が気楽でよかったな…。
加藤:そうなんだ。わたしは佐伯の逆で、自分から組む方が好きなんだよね。
佐伯:なるほど、組まれる側と組む側で好みが分かれるのか。たしかに、両者で求められるものは違うかも。
加藤:引っ張りたい人、引っ張られたい人ね。
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感覚的に、腕を組んで歩くのは二人三脚に近い気がする。
そういえば、わたしは高校の時、体育の授業で加藤と二人三脚をしたことがあるのだ。
わたしは運動神経が悪く、もちろん走るのも遅い。やる前は、『足引っ張ちゃうな…』と暗い気持ちだったのだが、実際やってみるとただただ物理的に加藤に足を引っ張られるばかりで、結果的に二人三脚で走った時のタイムの方が全然早かった。
その頃から我々は何も変わっていないのかもしれない。
もっとチャレンジ
この際なので、もう一つやりたかったこと『ポケットの中に手を突っ込むやつ』に挑戦してみた。
加藤:ポケットの中に手を突っ込むとは?
佐伯:少女漫画とかであるような、つないだ手をポケットに入れるやつ。
加藤:あーあれね。
佐伯:やったことある?
加藤:うん。それで元彼のポケット破壊したことある。
佐伯:おもろ。
加藤:ミチミチッて入れたら破れた。
佐伯:あれってそんな危険性を孕んでたんだ。
加藤:大人二人が繋いだ手って結構デカいからね。
佐伯:でも、とりあえずやってみたい。今日このポケットがおじゃんになってもいいから。
佐伯:怖!!!!!待って!!!!!!タンマ!!!!!!!
加藤:はい。
佐伯:実はこのパーカー、前職の社長が買ってくれたやつで…。通勤途中に隣の人の吐瀉物が半身にかかって悲惨な状態になりながら出勤してきたわたしのことを見かねて…。
加藤:先に言いなよそういうこと。
佐伯:社長の顔が思い浮かんじゃって無理だ…。
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社長との思い出はともかく、ポケットのフチに手をかけただけで不可能なことが一瞬で理解できた。ここから更にGOできるほどの勇気はない。
加藤:わかったでしょ。あれを成立させるには、双方が超絶華奢であるか、もしくはポケットがバカでかい必要があるってこと。
佐伯:創作物を見るだけではわからなかったな、この怖さ…。これが体験型学習か…。
組んだらゴキゲン
ここまでやってきて何だが、やはりわたしはまだ腕組みに抵抗感がある。その根底にあるのは、『我々は密接な関係性でございます』と公言しながら歩くことへの恥じらい及び自意識だ。
この日も撮影をした公園には何人か人がいたのだが、それだけでもややモジモジしてしまった。
でも、実際腕を組んで歩いてみて、腕組みをしたい派の気持ちもなんとなくわかった。
単純に、腕を組んで歩くのはおもしろい。それだけでなんだかゴキゲンな雰囲気になる。
腕を組みたい者同士が運よくマッチングして、仲良く腕を組んで歩けたら、そんなハッピーなことはない。その瞬間に他人の目を気にするのは完全な野暮天である。やりたいことがあるならやった方がいい。
腕を組みたいから組む、その真っすぐな心は凛々しい。

