今回の調査で、人は交差点のそばのポールは滅茶苦茶撫でまわすし、道の途中のポールも結構撫でているらしい、というなんだかハッピーなことがわかった気がします。
みなさんも、ツルツルなポールを見かけたらその原因に思いをはせてみませんか?
気温も落ち着いて過ごしやすくなった週末の優雅な昼下がり、日課のあてのない散歩をふらふらとしていました。信号待ちの時間、ふと近くにあった車止めに目をやると妙な違和感が。
その車止め、あまりにもツルツルとしているのです。このインパクトは「ツルツルとした車止め」という落ち着いた言い方ではとてもイメージが追いつきません。ここではインパクト重視で「ツルツルポール」と呼ばさせていただきます。ルの音も繰り返してて楽しいですし。
ツルツルポールなだけのポールに私は一気に魅了されました。そんな突然の恋みたいなことありえるのだろうか? そう思われるかもしれません。ですが、自然発生的にものがツルツルになるにしてはあまりにも大げさなツルツル具合なのです。
いまや超ツルツルなポールが、なぜそんなにも超ツルツルか理由を追い求めたくて仕方がないのです!
ちょっとサヨコ・ソウイチ、興奮しすぎたかもしれません。私一人が興奮していても話が進みませんので、一旦状況を整理しましょう。
その日、私は板橋区から通って埼玉県まで面白いものはないかと散策する予定でした。
東京から埼玉県へ渡る、荒川にかかる笹目橋という長い橋がございまして、南側が東京都板橋区、北側は埼玉県戸田市となっております(県境、市境が入り組んでいるようで途中で何回か変わります。興味深い!ですが今日の本題ではないですね)。
こちらが笹目橋の所在です。橋から良く見える位置に野球グランドがあります。
そこを道なりに北にテクテク散歩していく途中、交差点の脇にその問題のツルツルポールがあったのです!
注目しました理由は、非常に簡単で、「ポールにしては今まで見たことがない色み」をしていたからなのです。はっきりとした緑色なのですよ!
ただテカリが良くてツルツルしているだけなら、ここまで着目していなかったでしょう。普段の生活でツルツルしてるなと思うような橋の擬宝珠や、ビリケンさんの足の裏、これらツルツルの代名詞の一軍メンバーと比べても、このツルツルポールのツルツル過ぎたと言ってもいいと、私思っております。
御託が長くなってしまいましたが、そのような経緯でわたくしツルツルポールとその衝撃に出会いました。
この物質を発見した際は私も目を疑いました。完全に色が変わりきっております。何十年と多くの財布を渡り歩いた十円玉を彷彿とさせます。手触りも、それはもうツルツルです。いったん塗装が剥げたうえのツルツル。
上からのアングルだけじゃ実感しにくい、他のアングルからも見たいという要望もあるでしょう。他アングル、もちろんございます。
いやちょっとまってください。いったん冷静になってみましょう。こういうものは比較が重要です。普通のポールを見てみましょう。近辺にあったごく普通のポールを。
普通のポール、こんな感じです。
少々興奮しすぎましたが、なぜ先ほどのようなツルツルなポールがあるのでしょうか。
みなさんも私のように多少は気になってきたはずです。そうじゃないと、ちょっとさみしい。
ツルツルなポールの理由に興味はうつっていきます。実はあのツルツルポールが合った通りには、大量に同じ型のポールが存在しているのです!(ネタバレになっちゃいますが58本も!多い!うれしい!)
おおよそ10mから20mほどの間隔で設置されています。市役所に電話で確認したところ、2008年ごろには少なくとも設置されたとのことなので、約10年以上ほど設置されていたようです。
なので、別日に時間をかけて、通りにある全ポールを撮影をし、それぞれのポールのツルツル具合や立地、ツルツルの法則性を比較することでツルツルの理由の究明することとします!
約1.7kmの道路の両側に同じ型のポールが設置されています。
全58本を撮影してきました
というわけで現地に赴いて、色んなアングルからポールを撮影します。
アングルの固定のために、ポールの頂上が、カメラの中心になるようにしています。記事を書く時の私への気遣いが感じられますね。
こういった、感じで順次歩きながらポールの撮影をしてきます。
撮影は楽しい、楽しいが、問題は、これがどこの何本目のポールか、惑わされていく点です。迷いのポールです。私はこの幻惑から逃げ出すことはできるのでしょうか。
いや、ちゃんと「1本目のポール」「2本目のポール」…というフォルダを作ってその都度、各ポールの写真を次々に収めているので間違いはないのです。ですが、ふと我に返ると私の目からすると「さっきのと全然変わらないよなあ」という写真ばかりになってくるのです。
自分の目を信じず、自分の番号付けだけを信じるのです。これやってみて下さい、皆さん、惑います。
グレー色の徳用パックです。どのポールがどこのポールか把握私はちゃんと出来ているのでしょうか。不安が溢れております。
次は!合計58本のポールをひとまず分類してみようと思います!
なお、陽気にビックリマークを付けていますが、ここで画像処理といった高等なテクニックでツルツル具合の数値化をしようとした結果失敗して、最終的に人力でやることになって落胆の涙が頬を…
具体的には「画像を白黒」にし、画面内のポールの緑色だった箇所の面積を計算し、その数値をツルツル具合のスコアにする予定でした。
ですが、
人間の眼では、3本目よりも4本目の方がツルツルに見えますが、この画像処理の手順ですと、なぜか3本目の方がツルツルと算出されてしまったのです。
流石にこのレベルで順番が逆転されると使い物にはならなさそうと判断し、断念しました。(※実際の工場等の現場ではこのような変色の状況をAIで検知する手法は既に実用段階にあるという話を耳にしておりますが、今日この瞬間の私には無理だったのです。日々精進ですね)
なので、人間の眼で「これは緑色の面積が広いなあ」「こっちは狭いなあ」と確認してきました。
本当に別々のポールを撮影しているのでしょうか。似すぎです。
人力で識別のぎりぎりのライン。人間の眼でポールの違いの判別の限界です。どっちが緑色の面積が大きいかをそれぞれ比較していくのは骨が折れます。
比較し、緑色の面積の大小で分類してみると、だいたい4段階に分けられそうです。
では、ここでランキングトップの3本の超ツルツルポールが、なぜここまでツルツルなのでしょうか?
3本ポールが設置された場所の写真は、こんな感じです。
3本の超ツルツルポールは共通して信号機付きの交差点である、早瀬交差点が最寄りなのです!
ここがツルツルポールの大量捕獲スポットだ!
設置時期も近そうなものが、それぞれ同じようにツルツルというのは偶然ではなく交差点待ちで手持ち無沙汰になった人がさわったのが理由と感じます。コロナ禍に入って以降は触る人も少なくなったとは思いますが、2008年に設置されたと思えば不思議ではありません。
めちゃくちゃ普通でしたね!灯台下暗し、当たり前の理由に逆にびっくりです!
ちなみに、調査した範囲で交差点すぐそばにポールがあるのはここだけでした。理由は普通とはいえ、想定外に希少な存在です。
では一方、「部分的にツルツルなポールはどうやって生まれたの?」という点に、みなさんの疑問もシフトしたでしょう。
交差点もなしにツルツルになるにはどうしたら良いのでしょうか。
実は「部分的にツルツルなポール」「所々ツルツル」には、それぞれ強烈な共通点が1点あるのです。
それは、「交差点のそばにある」よりも写真から読み取りづらいのですが…
写真にどちらが東京方面、どちらが埼玉方面かの情報を追加してみます。すると!
東京方面側だけやたらツルツルなのです! 不思議共通点!
妄想じみた仮説としましては「東京から埼玉にこの道を歩いてくる人たちはポールを触りながら歩いている」のです。その結果、手が触れる東京方面だけがツルツルになってしまったのでしょう。
ただ、帰りはポールを触らないの?という問題はありますが…
また、別の仮説としては、太陽のあたる南側(東京方面)だけに何らかの特殊な力が働いた?という要素も排除はしきれません。
妄想としては「東京から埼玉に行くときはルンルン気分でポールを撫でまわし、帰りは特に触らない」という説の突飛さは自分で書いていても好きです。
ただ「もとの塗装のまま一切ツルツルでない」のものが、「部分的ツルツル」のすぐ近くにあるなど原因が読めないケースも多くありました。今回の調査ではわからない、触りたさの違いがあったのかもしれません。
今回の調査で、人は交差点のそばのポールは滅茶苦茶撫でまわすし、道の途中のポールも結構撫でているらしい、というなんだかハッピーなことがわかった気がします。
みなさんも、ツルツルなポールを見かけたらその原因に思いをはせてみませんか?
▽デイリーポータルZトップへ | ||
▲デイリーポータルZトップへ | バックナンバーいちらんへ |