特集 2026年8月11日

東大の「つながるかたち展06」に行ってきた

折り紙が元になっているもの

つづいて、舘教授の専門である折り紙に関連した展示を見ていくことにする。

展示室は場所ごとにテーマが分かれていて、ここは「ふるまい」だ。

立体はその形によって、かっちりした構造になったり伸び縮みしたりとふるまいを変える。ふるまいを設計することで軽くて頑丈な建物や、折りたたんで持ち運んで展開できる製品が作れると説明が書いてあった。

ミウラ折り

まずは分かりやすいところでミウラ折りを見てみる。東大の三浦公亮名誉教授が考えた折り方だ。「折りたたもう」とあるのでやってみよう。

不器用で申し訳ない。本当はもっとスムーズに折りたたんだり展開したりできる。これを応用して、衛星の太陽電池パネルを折りたたんだ状態で打ち上げて軌道上で展開したりする話はよく知られていると思う。

展開はスムーズ

もっとすごい勢いで展開するようなたたみ方のやつもあった。

フラッシャー折り

これはジェレミー・シェイファーさんとクリス・パルマーさんが考えた折り方とのこと。畳まれた状態から展開されるまでが一瞬なのだ。

しゅばっ

実際にこのフラッシャー折りが、NASAのスターシェード計画で、系外惑星観察のためのシェードを展開するために採用されているそうだ。折り紙、むちゃくちゃ役に立つ。

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つぶれる筒と、つぶれない筒

紙を折った後、両端をつなげて筒の形にしたものもある。

クレスリングパターン

これは上から押すと、ねじれながら潰れるような動きをする。

くしゃっ

いっぽう、似ているけれど折り方の違いでぜんぜん潰れない筒もある。

吉村パターン

 実際に押してみる。

しっかり

これは吉村慶丸という東大の先生による研究から吉村パターンと呼ばれている。しっかりして潰れない。

そして実は、「氷結」というチューハイの缶はこれを応用して作られているのだそうだ。

真ん中のところに同じ三角形の繰り返しのパターンがあるでしょう。缶のコストを下げるためにアルミを薄く、しかし同時に丈夫にしたいというような動機なのだろう。

吉村さんは折り紙を研究していたのではなくて、航空機の胴体のような薄い円筒は、両方から押すと三角形の繰り返しのパターンで「座屈」するということを見抜いたのだという。

座屈のようす

途中までは耐えるんだけど、どこかで屈服してベコッとなることを座屈という。そのときに表面が三角の繰り返しで折れている。

そして、この座屈した形がとても安定して丈夫だということに、ミウラ折りの三浦先生が気づいて論文にして、それを知った缶メーカーの人が氷結に応用したということらしい。

ちなみに上で座屈の実演をしてくれていたのは舘教授で、一緒に行っていた当サイトの林さんとぼくに展示について色々と教えてくれたのでありました。ありがたや。

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ハサミムシが羽を折りたたむ

ここまでで展示会の雰囲気がなんとなく分かったんじゃないかと思う。しかしこれはなんというかほんの入口で、広い応用分野を反映してさまざまな作品があるのだ。それらを紹介していきたい。

まずは、ハサミムシの羽の収納と展開についての動く模型だ。むちゃくちゃすごいのでぜひクリックして再生してほしい。大きく広がった羽が見事に折りたたまれて収納される。

昆虫の羽は、飛ぶ際に大きく広がる。それはつまりふだんはコンパクトに折りたたまれているということだ。収納のコンパクトさは昆虫によって違いがあり、たとえばカブトムシやテントウムシは数倍に広がる程度だけれども、ハサミムシは15倍にも広がり昆虫界でも随一の効率なのだという。

九州大学の斉藤一哉先生

そんなハサミムシの折りたたみの展開図を九州大学の斉藤先生が明らかにして、それをもとに模型を作ったのだそうだ。こんな感じで、すごい仕組みを自然界に学ぶという流れもあるとのこと。

こんな模型をよくぞ精密に・・と思う。しかも一日中動いてるのに全然壊れる気配がない。ぼくだったらそもそも完成しないし、できてもすぐ壊れると思う。(機構設計は檜垣・山中研と杉原寛さんとのことです)

ぼく虫好きだよ、と言いながら虫かごを持ってきた少年と話す斉藤先生
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ウイルスに学ぶかたち

自然界に学ぶ作品としては、こういうのもあった。

『T=2ウイルスカプシドに着想を得た球面パズル』
割鞘奏太、 本間さくら、 西本清里、 天童智也、 鎌田斗南、 堀山貴史、 松永康佑、 舘知宏

これは、ジグゾーパズルのようにして単一のピースを組み合わせて球面を作ったものだ。それぞれ120個のピースからなっている。じつはこの120個というのが肝で、単一のピースという条件だと本当は60個が上限で、それ以上細かくすることはできないのだという。

ところが一部のウイルスにはなぜか120個のピースで球体の殻を作っているやつがいて、そいつを参考にして120ピースの球面を数学的に何通りか再構築してみた、という作品とのこと。

作者の割鞘奏太さん。さっきの「しぼまり」の作者でもある。

本当に同じ形で120個で作ることは実際にはできないので、よく見ると球面に小さな穴が空いているのだという。

手前にあるのが1つ分のピース

たしかに空いてる。120個でやってる限り、この穴は原理的に消せないとのこと。

なお割鞘さんがぼくにしてくれた説明はだいぶ手加減されていて、ウェブサイト上には実際には次のように書かれていてだいぶ面白い(分からないという意味で)ので、少し引用してみたい。

「正20面体対称のカプシドのタイリングを説明するCaspar-Klug理論では、整数h, kを用いて表されるT=h^2 + hk + k^2を用いて、60T個からなる構造が記述されます。実際のカプシドには、この式では表せない120個からなる構造(T=2)が存在し、多様なタイリングを観察することができます。」

最高である。

⏩ 容赦ない難しさの作品もある

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