食べたことない物を食べるという興奮
まだまだ世界は広く、現地にいかないと手に入らない食べ物が沢山ある。
これからも世界中、そして日本中の知らない食べ物を探っていきたいです。
漫画「美味しんぼ」 で、登場人物一行がベトナムへ行く話があった。 そこで山岡と栗田がうまいうまいと食べまくっていたのが、ホビロンという「孵りかけのアヒルの卵」である。
それを見た富井副部長は悲鳴をあげて逃げ出してしまうというストーリーだったと思う。
美味しんぼは沢山の物語があるが、なぜかこの話だけは忘れられなくて困る。孵りかけのアヒルを山岡と栗田があまりにも美味しそうに食べているのが印象的すぎたのだ。
今回ベトナムに行くことが決まってから、ホビロンの事ばかり考えていた。
※2009年7月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
夜着の便でホーチミンにやってきた。ちょうど帰宅ラッシュの時間にあたり、街はバイクで溢れかえっていた。
あからさまに混んでいる店を狙ったら、さすがにどれも安くておいしい料理ばかりでテンションがあがる。
そしてお客が高確率で注文している焼肉がとても気になった。
なんで屋根瓦なんだと思ったが、なかなか楽しい。脂がレンガにこびりついて焦げていくと、すごく美味しそうな絵になる。もちろん味も美味しい。どくだみと肉は黄金コンビだ。
前菜(?)の焼肉を食べ終わり、いよいよメインディッシュの時間です。
店員さんにきくと、ホビロンがあるという。さっそく注文をした。
「旅の指さし会話帳」によると、この葉っぱは「たで」の葉らしい。「たで食う虫も好きずき」のたでである。
なるほど、これがたでか。もっとまずそうなイメージがあったが思ったより野菜っぽい。
学校でこのことわざを習った時、一体どんな味がするのかと気になっていた。大人になり、孵りかけの卵と一緒に食べられるとは。意外と珍しい食べ物はまとまってやって来るのかもしれない。
そしてホビロンを食べる事に対してもぴたりとあてはまるようなことわざなのですごいと思った。
早速食べてみます!
スープに浸った状態なので、まずは卵の先端を少し割り、殻をとる。
口を付けてスープをすすってみる。ゆでたてなので熱い。
鶏ガラスープに卵の味がほんのりとする。見事にトリと卵のいいとこ取りの味……、感動。
これが全貌です。足とくちばしは形状化している。全体的に毛が生えているのがわかる。
なかなかグロテスクではあるが、殻を剥いた瞬間に大量の湯気と一緒にホワ~っと良い匂いがのぼる。するととたんに食欲が湧いてきた。
これで何も匂いがしなかったら食べる気がしないという人も多くなるかもしれないけれど、食べ物を認識するとき、人は視覚より嗅覚が優先されるみたいだ。すくなくとも自分はそうらしい。
毛ははえているが、ものすごく美味しそうな匂い(マウスオーバーで鮮明になります)
トリ肉と卵。この二つが好きな人には夢のような食べ物ですよ。ほんとうに良いとこドリですよ!思わずだじゃれがでる程に!
食感は歯ごたえもあり、ゆでたトリ肉とゆで卵の中間くらいの硬さ(例えが悪いが、消しゴムを噛んだかんじに近い)。
足の部分がサクっとしていて、トロっともしている。ここは肉の味だ。ちょっとだけ生レバーのような味がする。おいしいぞ!
後ろのテーブルでおじいちゃんと孫らしき家族がおなじくホビロンを食べていた。むさぼっている私たちと目が合うと、おじいちゃんが親指を立てて「うまいよねホビロン」みたいな目配せをしてきた。ええおいしいです!
ベトナム人はこんな美味しいものを毎日食べられて幸せだろうな。
すっかりはまってしまい、次の日も同じお店にホビロンを食べに来た。店員さんが「今日は何個?」みたいな事を言ったので、私たちがホビロンを気に入った事はばれていたようだ。
富井副部長が逃げ出したホビロン(マウスオーバーで鮮明になります)
くちばしもサクサクしていておいしい(マウスオーバーで鮮明になります)
ホビロンは栄養豊富なので、妊婦さんもよく食べると聞いた。たしかにこれ以上の栄養食品ってなかなかないですよね。
もしベトナムを訪れたさいには(アヒルの形状が気にならなければ)、ぜひ食べてみて下さい。
さて、ベトナムのホビロンはここまでです。次は昆虫を食べたいと思います。急展開で申し訳ありませんが、あと1ページほどおつきあいください。
ホーチミンからバンコクまで飛行機で約一時間。驚きの近さだった。
さっそく今夜のメインディッシュを探しに行きましょう。
去年バンコクでサソリとタガメを食べたのだが、その時の屋台にはたくさんの種類の昆虫があったのが気になっていた。
(参照記事:サソリの素揚げを食べる )
サソリもタガメも美味しかった。今回は他の虫もいってみようという事で、虫を売っている露店をさがす。
しかし……、なかなか虫屋がみつからない。前回は向こうからやってきたし、ちょっと歩くとすぐに虫を売っている店があったのに。
もうタイの虫食文化は廃れてしまったのかしら。
やっとみつけた虫露店。サソリはなかったが、おなじみタガメと、食べてみたかったバッタや幼虫系……、一通り揃っている。やっぱりタイではみんな虫をもりもり食べていたんだと思うと嬉しくなった。
さっきから、OL風のお姉さんがひたすらタガメを選んでいる。真摯な表情で選り分け、どんどんとカゴに入れていく。かっこいい。
この店の常連らしく、かなりの量のタガメを買っていった。もしかしたらタガメは美容によいとかあるのかな。
6種類買ってみました。まずはラインナップをご覧ください。
虫の宴にようこそ。せひこの照り具合をみてください。(マウスオーバーで鮮明になります)
ちなみに私は台所に出没するあの虫が異常にダメで、遭遇すると頭が真っ白になって叫んでしてしまうような貧弱な人間なのですが、果てしなくビジュアルが近いですよね、コオロギ。
しかし、ここで食べて美味しければあいつらに対する拒否反応も和らぐのではないかと、変な希望を抱きながら挑む事にします。
■ カナブン
唯一の甲虫。そう考えるとひるんでしまうが、実際は柔らかい。ポップコーンの茶色い皮の部分にそっくりの食感。味はあまりなく、うっすらとうまみがある程度。軽く塩をふって食べたら美味しかった。
■ 何かの幼虫
もっちりしたものを想像していたが、思ったより中身が詰まっていなかった。これもポップコーンの薄皮のようで、パリパリしているけどあまり食べ応えがない。 でも目の前にあるとつい食べてしまうベビースターのような存在。
■ オケラ
皮がソフトでいい。虫というか魚介っぽい味。イナゴの佃煮に似てる。これはおかずっぽくてちゃんと美味しいですよ。
■ バッタ
かなり期待していたが、予想もしない空洞っぷり。中身抜けてるんじゃないかなと思うくらいだった。ポキポキと骨せんべいのような食感を楽しむものなのかな。でもうなぎの骨せんべいのほうが数倍おいしい。
■ コオロギ
口に入れるまでものすごく気が重かった。茶色い羽根とその筋が(以下自粛)。しかし食べてみると、ああ食べ物だと感じた。あっさりだ。お腹の部分にややうまみがあった。でも残念ながらこれといって美味しい物ではなかった。
仮にめちゃくちゃおいしかったとして、もっと食べたいという欲求が高まり今まで苦手だったあの虫へ対する気持ちが異常な方向へ行ってしまっても、とても恐ろしい事になっていただろう。だからおいしくなくてよかったと思う。
オードブル(虫)(マウスオーバーで鮮明になります)
■ タガメ
最後まで残しておいたタガメ。虫の王様としてのおいしさは健在なのだろうか。
裏が芸術的(マウスオーバーで鮮明になります)
黄色い身が詰まっている。エビ・カニ系の旨味と味の濃さ、そしてくせのなさは、初めて食べたあの味だった。おいしいなあ。安定しているなあ。
ふと、露店でタガメばっかり買っていた女性を思い出した。他の虫に一切興味を示さない理由がちょっとわかった気がする。やっぱりおいしいんだ。
結論。次回からはタガメだけでいいかも。
まだまだ世界は広く、現地にいかないと手に入らない食べ物が沢山ある。
これからも世界中、そして日本中の知らない食べ物を探っていきたいです。
▽デイリーポータルZトップへ | ||
▲デイリーポータルZトップへ | バックナンバーいちらんへ |