特集 2023年7月7日

潰れたバイト先めぐり

徐々に敷地が増えている店

店長オープンは4年前ですね。最初は1階だけだったんですが、そのうち2階、3階と徐々に売り場面積を増やしていって今に至ります。

1階のお面は店長の趣向が反映された結果という

2階と3階には洋服やファッション雑貨が置かれている。

ピザ屋だったころ、我々の控室だったビルの2階は、おしゃれな洋服の並ぶ空間に生まれ変わっていた
しかし床を見て、ハッとした。この床、当時の床がそのまま生かされている……
バイトをしていた当時、やることがなくなると掃除していた階段も、変わってない。はたから見たらなんの変哲もない階段なんだけど、懐かしさがぶわっと込み上げる

ちなみにこのビルがある付近は、かなり正直にいってしまうと、現状栄えているとはいいがたいエリアだったりする。ゆえに、ここでお店を出すのは、結構チャレンジングな試みと思ってしまうのが、元地元民の老婆心なのだけど……

店長:お店を出した当初によく言われました(笑)。もともと僕は東京のほうにいたので、この街の事情を詳しくは知らなかったんです。

ただ、最近では白井屋ホテル(※)ができた影響で、徐々に街に人やお店が増えはじめているという。

※白井屋ホテル…地域活性化活動の一環として大改修・新棟建設が行われ、アートホテルとして生まれ変わったかっこいいホテル。宿泊料金は高めだが、スペシャルな体験がたくさんできるという。

え!それはとてもよいニュース。

帰省のたびに駅前のようすを眺めながら「大丈夫かしら」と憂いでばっかりだったのだが、建物の内側が変わるとともに、状況も変わっていくのだろうか。

街は長い時間をかけて呼吸をしているみたいだ。

取材協力:THE ENTRANCE

2軒目:群馬にもあった「るーぱん」の跡地は居酒屋に 

次に訪れたいのが「るーぱん伊勢崎店」の跡地である。

自らを「埼玉県民ののソウルフード」と称するるーぱんは、埼玉の埼玉による埼玉のためのローカルチェーンなのだけど、その昔、群馬県にもあったのだ。

「え、そうだったの?」って思った人や、そもそもるーぱんを知らないって人もいるかもしれない。でも、私は覚えている。

だってバイト先だったから。

ちなみにこういうロゴ。いま現在は埼玉県内に6店舗ある
小さいサイズのピザは「ハッピー」大きいサイズは「ドリーム」と呼ばれている
このお店のパスタは心なしか、汁に浸っている系パスタが多い
アンチョビドレッシングが有名。イカと納豆がのっているサラダがあるのも特徴的
久しぶりに食べてみて、ああそういえばこんな感じだったわ……ってなった

バイトしていた当時のことをつつみ隠さずに話すと、残念なことに、伊勢崎店が混み合っている日はとても少なかった。そもそも、その噂を聞きつけて、ならば業務で苦労することもなかろうと、働いてみることに決めたのだ。

結果、自分は手持ち無沙汰が得意じゃないという知見を得た。適正を見極めるのってたいせつだ。

そんな思い出のある場所は、今や居酒屋となり……
相当生まれ変わっていた!

外側にはかすかな名残があれども、内側はまったくの別物だ。リノベーション技術のすばらしさに息をのむ。

メニューの論調もぜんっぜん違う
ピザにのっている具もまったく違う。ニラとブルーチーズ、めっちゃ合うなという発見
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3軒目:やっと24時間営業になれた「セーブオン」

続いては「セーブオン」の跡地である。

2018年にすべての店舗がローソンに転換して姿を消した、今はなきローカルコンビニ、セーブオン。私が働いていた店舗は、ローソンに転換するより随分前に潰れてしまっている。

ところでコンビニの跡地は、台湾料理店やコインランドリーに生まれ変わることが多い気がする。元セーブオンも、王道を突っ走るかのように、コインランドリーとして活躍していた。

初見で元コンビニだと認識できる潔さ
一瞬「セブンイレブンだったのかな?」とも思うレンガ。でも、ここはかつて確かにセーブオンだった
……!!

ひとつ驚いた。

24時間営業であることに対してである。

なぜ驚いたかというと、働いていた当時、セーブオンは24時間営業ではなかったから。

早朝に開き、夜は閉まるタイプのコンビニだったのだ。

なのに今は深夜もこのドアが開いている。やっとなれたんだね。24時間営業のお店に
店内、元るーぱんとはうって変わって面影がある
……これは!
初期のロゴが残ってる!

隠されていたのに、結局顔を出しちゃってるところまで含めて、なんといじらしい。潰れたバイト先めぐり冥利につきる発見である。

4軒目:初めてのバイト先、ローソン

最後にもう1軒だけ、初めてのバイト先の跡地に行っておきたい。

ローソンである。当時、男子高生の間ではズボンを腰履きするのが流行っていて、このお店には、ダルダルのズボンを由々しき事態と考えている副店長がいた。

ある日バイトが終わったあと、副店長のズボンへの思いを約1時間聞きつづける機会があって、まもなく私はバイトを辞めた。

滞在期間は2週間。とても儚く短かい時間であった。

ああ!これは
壁「私、ローソンでしたよ」、私「お久しぶりです」

壁はたしかに語りかけてくれていた。

ありがとう壁。

しかし興奮のあまり、つい建物のまわりをうろうろしすぎて、周辺にいた人に「何やってんですか」と強めに不審がられてしまった。

そりゃそうだ。自分にとっては思い出とともにある特別な場所であっても、今はもう別の何かなのである。


地元を別の角度から楽しめた

なんとなくやってみたい。ただそれだけの理由で、勢いのまま、潰れたバイト先をめぐってみた。普段とはちょっと違う視点から地元を楽しめたような気がする。

元ローソンの近くにあったアジア系フードのお店に
異国の調味料に紛れてスッと置かれた、味塩こしょうの存在感に「え!あなたがなぜここに!」と思いつつも身惚れました

 

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