無意識に数えていたお店
道中「このお店、ここにもあるんだ」と感心することが多かった。例えば、スーパーに行って帰るまで、ダイソーは3店舗見た。
西松屋も3、眼鏡市場も3、ジョリーパスタは2店舗見た。
しかし本当は買い物なのだ。お尻も休まったのでまた出発する。
恐ろしくなってきた。知ってるお店を見て「へー」とか言っていた頃が懐かしい。一漕ぎごとに取り返しのつかないことをしているような気持ちになってくる。
さっきの休憩が臨界点で、あそこから先は本当の非日常になっちゃったのかもしれない。
どうしようと思うが、パンも牛乳も買わずに帰るわけにはいかないので心を無にして漕ぐ。この辺から足も辛くなり、上半身で勢いをつけて漕いでいた。
出発から2時間半ほど。地図アプリを見ると近くにヤオコーがあった。埼玉県を中心に展開しているスーパーで、お惣菜がおいしいと聞いたことがある。ここにしよう。
目的地を決めてから20分ほど。
ヤオコー浦和美園店。今回の「可能な限り遠くのスーパー」である。
無事に着いてよかった。偶然出会ったスーパーだけど3時間かけて来てみると「ここしかない」と心から納得できた。
おはぎをお腹に入れて冷静になったので買い物をした。広くてきれいな店内で、フラフラ歩いていて楽しかった。評判通り、お惣菜がたくさんあっておいしそう。今日の夜ご飯はヤオコーのお惣菜にしようと決めた。
他にも細々したものをカゴに入れたが、家の冷蔵庫を思い出すのに時間がかかった。距離が遠いからか、人ごとみたいに感じておもしろい。
なるべく見慣れない、ヤオコーのブランドの牛乳や納豆を買った。お土産を買うみたいで楽しい。
買い物が終わった。じっくり見たはずなのにあっという間だった。素敵なスーパーだった。おはぎもおいしかったし。座れてよかったよな。うん。
楽しい買い物の時間はあっという間に終わり、帰ることになった。自転車で3時間かかる。達成感でいっぱいの体にそんなことさせなきゃいけないのか。ちょっと信じられない。
ちょっと呆然とした後で静かに観念し、震える足でゆっくり自転車を漕いだ。「もう西日じゃん。ウケる」と声が漏れた。
しばらく走ってから「コーヒーも買っておけばよかったな」と思い出した。いつもなら1つ2つ買い忘れるなんて当たり前なのに、遠くのスーパーでそれが起こるとダメージが大きい。足にくる。
しかし良いこともあった。地図アプリで自宅までの経路を調べると、来た道よりも走りやすくて近い道がある。これならきっと3時間もかからないだろう。
「可能な限り遠くのスーパー」までの便利な経路を見つけたのだ。便利な経路を見つけてどうする。
バッテリーの残量を節約するために、たまに自転車を押して歩いた。お尻や足が痛かったので休憩もできてちょうどよかった。
2時間20分で帰ってこれた。押して歩いていることも考えるとかなり良いコースで帰ってこれた。
フラフラで帰宅した。なんて達成感。今度こそ「達成」を感じさせてもらう。
牛乳、納豆、マヨネーズとポケモンパン。野菜は埼玉の小松菜とレタス。お惣菜は豚カルビを買った。
豚カルビ、柔らかいし良い味がついてるし量が多くてとてもよかった。子どもも喜んで食べた。
遠くのスーパーでするいつもの買い物には、旅情があり、日常があり、ハードな運動もあった。こなしたタスクの割に合っていない時間の濃さだった。青春かもしれない。
道中「このお店、ここにもあるんだ」と感心することが多かった。例えば、スーパーに行って帰るまで、ダイソーは3店舗見た。
西松屋も3、眼鏡市場も3、ジョリーパスタは2店舗見た。
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