特集 2023年10月13日

本来は食べることがないトマトの「わき芽」をプロに天ぷらにしてもらう

トマトというものがある。基本的には赤く、夏が旬の野菜だ。栽培トマトの起源はペルーやメキシコなどの説がある。日本には17世紀後にポルトガル人が長崎に持ち込んだのが最初とされる。

そんな長い歴史のあるトマトだけれど、多くの場合、我々は赤い実だけを食べてきた。栽培の過程で「わき芽」を取り除く「芽かき」というものが行われるけれど、その「わき芽」は基本的に食べない。しかし、食べることができるようなのだ。

1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

前の記事:どじょうすくいは楽しかった(デジタルリマスター)

> 個人サイト Web独り者 彼女がいる風の地主恵亮

トマトのわき芽とは

独特の香りがあるトマト。明治時代にアメリカから入って来た品種は今のものと比べると、香りと酸味が強く日本人には受け入れられなかった。昔はトマトの香りを異臭と感じる人も多く「トマト臭」とも言われた。 

002.jpg
トマト畑に来ています!

最近のトマトは酸味を抑えたフルーツのようなものも多い。近年は基本的にどの野菜も青味を抑えた甘いものが好まれる傾向にある。そういうこともあってなのか、私はトマトが好きだ。子供の頃は苦手だったけれど、今は好きな野菜の一つになっている。

003.jpg
これがトマトです!

どのくらい私がトマトを好きかと言えば、自宅で育てたこともあるほど好きなのだ。今回は知り合いの畑にトマトの様子を見学に行った。訪れた時はまだ赤くなっておらず、食べるのはまだ先という感じだった。

004.jpg
まだ緑色ですね!

トマトを育てる時に「芽かき」という作業が発生する。茎と茎の間に新しい芽「わき芽」が出てきて、それを取り除くことを「芽かき」と言う。わき芽に養分を取られないようにするのが狙いだ。 

005.jpg
これがわき芽です!

わき芽を取るのは簡単だ。指でポキッと折ってしまえばいい。簡単だけれど、トマトをたくさん植えていると大変な作業でもある。このような作業の積み重ねで美味しいトマトは完成していく。

006.jpg
指で折って、
007.jpg
わき芽を取り除きます!

わき芽は食べられる?

取り除いたわき芽は、基本的には捨てることになる。トマトは実を食べるものだし、その実を美味しく育てるためにわき芽を取ったわけだしね。ただわき芽を匂ってみると十分にトマトの匂いがする。美味しそうな香りなのだ。 

008.jpg
これがわき芽です!

葉っぱを食べることはよくある。たとえば、トマトと一緒にバジルを植えている。これはコンパニオンプランツというもので、病害虫を抑えたり、成長を助けたりする役割がある。そのバジルは当たり前だけど葉っぱを食べる。

009.jpg
コンパニオンプランツとしてのバジル!

何が言いたいかと言えば、バジルとトマトは全然違うけれど、同じ植物だし「わき芽」も食べることができるのではないか、ということだ。実際に「現代農業」という雑誌を読んでいるとトマトのわき芽を食べる記事も掲載されていた。

010.jpg
わき芽を収穫します!

食べられるとわかれば「芽かき」ではなく「収穫」と言いたい。ただ問題もある。トマトのわき芽には「トマチン」という毒素を含んでいる。しかし、これは少し食べたからと言って直ちに健康を害するほど強い毒素ではない。

011.jpg
どんどん収穫します!

品種によってトマチンの量は異なるけれど、仮に500ppmも含まれていたとして、体重60kgの人が一度に60kgを食べると50%の確率で致死することになる。つまり、少量なら問題ないということだ。だってわき芽を60kgも食べるのは不可能だもん。1kgだって無理だ。もちろん大量に食べたり、毎日食べ続けたりは避けた方がいいと思う。

012.jpg
収穫しました!
いったん広告です

プロに料理してもらう

現代農業を読んでいると、いまトマト農家の間でわき芽の天ぷらがブームです、みたいな記事もあって、ぜひ天ぷらで食べてみたいと思ったわけだ。新鮮なわき芽が手に入ったので、あとは天ぷらにするだけだ。 

013.jpg
プロにお願いします!

天ぷら屋の「天悟」に天ぷらにしてもらう。撮影時は千葉の浦安でお店をやっていたのだけれど、直後に東京の中葛西に移転している。めちゃくちゃ美味しいお店なので、わき芽もさぞ美味しくなることだろう。

014.jpg
天悟の大将!

大将もトマトのわき芽を食べたことはないそうだ。ただテレビで食べているのを見たことがあると言っていた。わき芽自体は流通していないと思うので、食べようと思うと自分でトマトを育てるしかないはずだ。

015.jpg
早速、わき芽を、
016.jpg
天ぷらに!

今までは食べることはなく、捨ててきたトマトのわき芽が実に美味しそうに目の前に鎮座している。プロが料理してくれたわけだから、これでもし不味かったら、わき芽という素材の問題になるだろう。早速食べてみようと思う。

017.jpg
美味しい!

風味がトマトで口にいい香りが広がる。大将にも食べてもらったけれど、油との相性がよく、甘みがあり、さっと揚げるのがいいだろう、ということだった。そして、美味しい、と言っていた。そう、わき芽、美味しいのだ。

018.jpg
わき芽を、
019.jpg
刻んで、
020.jpg
かき揚げも作ってもらった!

かき揚げもやっぱり美味しい。葉っぱの密度が濃いからわき芽の風味もより濃くなる。香りが際立ち、食感もやわらかく実に美味しい。今までわき芽を食べてこなかったのを後悔する感じだ。これを食べられたら死んでもいい、というレベルではないが、捨てるには勿体なさすぎる味なのだ。

021.jpg
育ちすぎたわき芽も皮を剥いて、
022.jpg
天ぷらに!

育ちすぎているわき芽は固くて不味いかな、と思ったけれど、そんなことはなく、皮を剥いたので柔らかく美味しく、小さいものより香りも強い。美味しいのだ。小さなわき芽はかき揚げに、大きなわき芽はそのまま天ぷらがいいかもしれない。

023.jpg
マジで美味しかった!

少量を食べよう

トマトのわき芽は美味しかった。捨てるなら食べた方がいいからね。アク抜きとかをきちんとすれば、おひたしなどでも食べられるそうだ。もっとも毒素はあるので少量で。他の植物のわき芽も食べてみたくなった。美味しい気がするけど、トマトほど香りはないかもしれない。実験せねばである。

024.jpg
当たり前だけどバジルの天ぷらも美味しかった!

撮影協力
天悟(新しいお店になりました)
東京都江戸川区中葛西5-30-2
070-6566-5190(非通知不可、要予約)

巨大映像を作りました!

東京・世田谷にある「食と農の博物館」で2023年10月12日から2024年4月6日まで、醸造科学科展「JOZOO-醸造と発酵のせかい-」が開催されています。醸造・発酵の世界を造り手の視点、微生物の視点、原料の視点、歴史の視点、科学の視点から探ります。

025.jpg
無料です!

この企画展にプロジェクター3台を使った大きな映像展示があり、その映像のディレクション、撮影、編集を私(地主)が担当いたしました。迫力のある映像に仕上がったと思います。プロジェクターを3台も使っているので、誰が作っても迫力のある映像になるわけですが! 企画展自体も面白いですし、無料ですし、ぜひ行っていただければ幸いです。

026.jpg
よろしくお願いいたします!!!

醸造科学科展「JOZOO -醸造と発酵のせかい-」
https://www.nodai.ac.jp/campus/facilities/syokutonou/4935/article/jozoo/

参考文献
『たべもの起源事典』岡田哲 東京堂出版 2003
『たべもの起源事典 世界編』岡田哲 筑摩書房 2014
『まるごとわかるトマト:基礎知識、栽培技術、国内品種から野生種まで完全網羅』田淵俊人 誠文堂新光社 2017
『現代農業2006年6月号』農山漁村文化協会 2006
『現代農業2008年6月号』農山漁村文化協会 2008
『現代農業2016年5月号』農山漁村文化協会 2016

 

▽デイリーポータルZトップへ

banner.jpg

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ