特集 2023年12月18日

東京外国語大学の学園祭で、海外旅行のトロの部分を楽しむ

東京外国語大学の学園祭「外語祭」が楽しいらしい。

なんでも、世界じゅうの料理やお酒が楽しめて、集まっている人はいろんな言語で喋っているのだという。

わたしが好きなモンゴルや中央アジアにまつわる展示も多いようだ。それは絶対にチェックしておきたい!

ファンクバンド「踊る!ディスコ室町」のまこまこまこっちゃんです!ギターを弾いています!京都在住!

前の記事:モンゴルのコンビニではラクダの飲むヨーグルトが買える

> 個人サイト songdelay

府中で学生の会話にソワソワする

「外語祭」が開かれているのは府中のキャンパスである。わたしは京都に住んでいるので新幹線でかけつけたが、府中で世界の料理や文化を知ることができるなら手ごろなものだ。

武蔵境で中央線から西武多摩川線に乗り換えると、学生の姿も増えてきた。

「きのう春巻きを売りすぎたからもう在庫がないかも」「今日で終わっちゃうの寂しいね」みたいな会話が聞こえてきて、なんだかソワソワしてくる。こういうの久しぶりだ!

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久しぶりに大学という場所に来た! 当たり前だが若い人ばっかり歩いているのでちょっとドキドキする
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看板が読めない料理店

キャンパスに足を踏み入れると、円形の広場に屋台がならんでいる。学部1年生による「料理店」である。

マップ。並んでいる国や地域の字を見るだけで、すでにうれしい
寒い日だったがお客さんもたくさん来ていて、なんだかなつかしいガヤガヤ感だ

全部で30個もある料理店では、それぞれが専攻している言語・地域にちなんだ料理を出しているらしい。さすが世界じゅうの言語をカバーしている大学である。

お店はそれぞれでっかい垂れ幕を看板にしているのだけど、これがほぼ読めないのだ。

見慣れない文字だ
これも見慣れない文字。ラオス……?
ローマ字だけど、意味はわからない
これどこの国旗だっけ。とかいってたら
わかりやすいのもあった。ナマステー(一番わらった)。

読めない看板を次々に見ていて思い出すのは、海外旅行の初日に街を「これなんて読むんだろう」と思いながら歩いている時間だ。だんだん目が慣れてくる前の、あの部分だけを取り出して味わっているようである。

あの時間って海外旅行のトロだな。いきなりトロだけ食べてるみたいで贅沢だ。

そしてウワサどおり、いろんなものが売っている。食べ歩きも旅行のトロだなあ。

ロシア語でヒマワリと書いているらしい(ロシア・ウクライナの国花)。ここでは
11月下旬の冷え込みにうれしいボルシチが売っていた! 肉がごろごろで豪華
右から左に読む「あらび屋」は名物店。ここでは
ファラフェル(ひよこ豆のコロッケをトルティーヤで巻いているやつ)と
モロッコビールを調達。うまい! ちなみにアルコール類は3杯まで飲めます!
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モンゴル、人気!

ところで世界の料理がそろっているが、わたしの目当てはモンゴル関係の料理や展示であった。

ここ数年で何度もモンゴルに行くようになりその文化や食べものが好きになったのだが、日本ではモンゴル料理を食べるチャンスというのはなかなかないのだ。

モンゴル語科の料理店。看板のБи басはビー・バス、と読む。「わたしも!」という意味だ(モンゴル語はちょっと勉強しているので読めるぞ)。

料理店では定番料理・ホーショール(大きい揚げ餃子のようなもの)やビールが売られているようである。

せっかくなので、すこし勉強したモンゴル語で注文したりしてみたい。復習してきた言葉を売り子さんに言ってみる。
 

わたし:ネク・ホーショール・アウィー(ホーショールひとつください)!

売り子さん:あ~。バヤフクイ! です!

 

えっなんだっけその言葉、と思って考えると「ありません」なのだった。バヤフクイヨー(ないんですか)!

完売、完売、完売。そんな!

お店がオープンしてからまだ30分しか経っていないが、もう整理券の配布も終了してしまって買えないということだった。

なんでも人気ドラマのロケ地として話題になったり「あそこはウマイぞ」と口コミが広まったりで、連日大盛況だったらしい。なんかめっちゃ並んでいるなとは思っていたが、油断していた。

肩を落としていると、不憫に思った学生さんが「あっちで羊が食べられますよ」と教えてくれた。「シャシリク」という羊肉の串焼きである。

ホーショールがなければシャシリクを食べればいい。そっちを食べましょう。

塩とスパイスが効いている!
お店は中央アジア地域専攻の「シルクロード」。目当てが売り切れていたら、となりの地域を探せばいいのだな
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いきなりキルギスのユルタがたってる

羊を食べて満足しつつ、校内をうろついていて見つけたのは「ユルタ」である。中央アジアのテント式住居だ。

料理店のエリアから離れた小さな林の中にいきなりたっていた。雨よけのシートがかけられていて、見た目はちょっとあやしげだが、中も見学できるようだ。

ユルタ。モンゴル語ではゲルである
中に入ってみると、外からの見た目より広く感じる! キルギスのユルタは、モンゴルのゲルより屋根が高いのだなあ。天気が悪いので天窓が閉まっているのは残念だが、赤い骨組みがかっこいい
(ちなみに去年モンゴルで泊まったゲルはこんな感じで、屋根の棒がまっすぐだった。キルギスのユルタはこれより長くて、根本も少し立ち上がっている)
床のフェルトマットもかわいい。カザフの刺繍かな
「甘栗むいちゃいました」みたいなノリだ

ユルタの中にはいろんな地域の壁掛けが飾られていて、原色バチバチでデザインもさまざまなのに、しかしなぜだか統一感がある。

そして暖房が効いていてあたたかい。ストーブは電気式のちょっとしたものだと思うけど、やはり保温力が高いのだな。

奥では弦楽器が演奏されていて、中にいる人たちがみんなで聴き入っている。ノドカである。

弦楽器「ダタール」の演奏が披露されている
こちらはカザフの楽器「ドンブラ」

楽器を弾いてくれたりいろいろ説明してくれたりする学生さんは「中央ユーラシア同好会」のメンバー。普段はロシア語を専攻していて、カザフスタンへの留学経験があるらしい。

「今から演奏するのは『サルアルカ』という曲です。サルアルカというのはカザフスタンにある草原の名前。草原をイメージしてお聴きいただければと思います」。

2弦のギターのような楽器だ
入場料代わりに購入したジョージアワインを飲みながら聴かせてもらう。なんかめちゃゼイタクなことをしているような気になってくるなあ。

曲のタイトルや背景を説明しながら、現地で習ってきたというドンブラを独奏してくれる学生を見ていると、なんとも落ち着いた様子にびっくりする。ハタチそこそこの人たちがこんなに落ちついていていいのか。

そう、ここの学生はみんな落ち着いているのだ。実行委員から料理店の売り子さんまで、みんな堂々として落ち着いている気がする。

それぞれが語学や文化のエキスパートだし、そのエキスパートなことに関する出店をしているから、自信もやる気もあるのだろうなあ。なんかいいなあ。

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「入れそうだったから」モンゴル語をやるのだ

「モンゴルが好きだったら、室内展示をしているゼミがありますよ」と教えてもらって講義棟へ。写真部が留学先で撮ってきた写真なんかを見つつ歩いていると、いきなりゲルの天窓があらわれた。

教室の前にドアと天窓!​​​
いまもっとも入りたいゼミ(わたし調べ)

「サエンバイノー!」。

教室に入ると、民族衣装「デール」を着た学生がさわやかに挨拶をしてくれた。もちろんモンゴル語である。サエンバイノー(こんにちはー)。

青いデールがよく似合っておりますな

対応してくれたのは1年生の学生さん。気になるのは、なんでモンゴル語を勉強しようと思ったのか、である。

自分が大学生の頃は語学にニガテ意識があった。最近モンゴル語を勉強するようになって、語学っておもしろいのでは……? と今さら楽しくなっているのだが、わたしの大学1年生といえば、英語とドイツ語の単位を落としまくって焦っていたころだ。

その点、モンゴル語専攻の人たちは入学即モンゴル語だ。単位とれるのか。

話しながら、モンゴルの骨占いをしてもらった。「今後、試練が待ち受けている」らしい。

直球で「なぜモンゴル語を勉強しようと思ったのか」と聞いてみた。すると回答は、

「共通テストの点数を見て、入れそうなところを選びました!」

と、なんとも生々しいものだった。なんというか、人生ってそういうものであるなあ。

しかし、入学してからはモンゴル語科をすっかり気に入っているそうだ。モンゴルナイズドされた人が多いのか、学科は全体的にオオラカな雰囲気で過ごしやすいらしい。

とってもいいなあ。留学はこれからということだったが、現地でもオオラカに楽しめたらいいなあ。

落書きがチンギス・ハーン。

 

モンゴル語の学習には必携といわれている「小沢辞書」を見せてもらえたのでまじまじと見た。定価3万円、わたしはまだ持っていないアコガレの辞書である。勇気を出して買おうかな。

海外旅行の楽しいところが次々にやってくる

学生に自身の専攻を選んだ理由について聞いてみると「その地域の音楽が好きで」「まわりの人とはちがうスキルを身に着けたくて」「環境問題に興味があって」など様々だった。

記事の冒頭でも「海外旅行みたい」と書いたが、学生にその質問をしているときにも海外旅行を思い出した。現地で会った旅行者やツアーガイドと話しているときの感じである。あれも楽しいのだ。

取材当日は5日間にわたる学園祭の最終日と日曜日が重なったこともあってお客さんが多く、いろんな料理が売り切れてしまっていたし、料理店と並ぶ名物企画である語劇(各専攻語による演劇の上演)も満席で見逃してしまった。来年は比較的空いているという平日を狙って遊びに行きたい。

音楽サークル・ブラジル研究会による「SAMBA HOUSE」もすごかった。内部は撮影禁止だったが、暗闇の中で20人ほどの楽団がドコドコとタイコを打ち鳴らしていて、それにあわせて観客がユラユラ揺れていた。「外語祭で一番強いお酒」も出していて、重低音と酒がお腹に攻めてくる空間だ!

 

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