特集 2023年4月2日

東京23区内の中央線のガードにもいい感じの旧町名が多いぞ

大量にある「高原」の謎

西村:中野駅と環七の間にガードが4つあるんですけど、これなぜか全部「高原」なんですよ。 

102so:え、これ第1高原、第2高原とかじゃなく?

西村:じゃなくです。謎なんですよ。

102so:えー、ここなら、囲町とか桃園とかこのへんもっといいのいっぱいあるのに〜。

西村:ですよね、中野区いい旧町名いっぱいありますもんね。

102so:これ、もしかしたら高円寺の「高」ですかね、合成地名?

西村:あぁなるほど、たしかに「高原」自体がちょっとあんまり聞いたことがないというか……。

102so:高原なんて地名あったかな。

西村:高原の由来はさておき、こういうふうに高原が複数あるのは、ガードの考え方というか、ガードの名称はひとつのガード(橋桁)に付くもので、その橋桁の下を道路がいくつ通っていても、そこは全部「高原」と呼ぶみたいな、そういうルールがあるのかなと思料したんですけど……ストリートビューでみると鉄橋とかじゃなくて、コンクリートなんですよね。

西村:高原、ガード名となっているけれど、本当は高架の名称の可能性も無きにしもあらず。複数ある理由はよくわかりません。

102so:あ、なんかありますね、原っていう地名。原、一文字の地名かな……その南側に高円寺……高原。

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原と高円寺。「今昔マップ」より

西村:高円寺と原を合わせて高原。

102so:もともとの字の名称に、高円寺六丁目に北原、七丁目に西原ってありますね。

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東京市企画局都市計画課 編『東京市町名沿革史』下巻,東京市企画局都市計画課,昭13. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1231157

西村:原が、西と北にわかれたのかな? 「本町は高円寺字東、西、北原の地なり」って、東原と西原があったのかなかったのか分かりづらい書き方ですね……。いずれにせよ、高原は高円寺と原の合成地名説も濃厚ですね。

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空頭標ってなんすか 

西村:で、今回気になったのが「空頭標」です。

102so:くうとうひょう? 空の頭の標?

西村:「くうとうひょう」の読み方も正しいのかどうかもわかんないんですけど、これがあるガードがやたらあったんですね。で、よく見るとガード名が書いてあるっぽいんですよ。ただ、ストリートビューだと、黒く潰れてるのが多くてどれも読めないんです。

102so:ほんとだ。

西村:で、かろうじて読めるのがこれなんです。

西村:高円寺駅の西側にあるやつなんですけど「杉並町道14号」って、これ、杉並町の名前が残ってるのすごくないですか? だって杉並町って昭和の初めごろになくなった自治体でしょう? それが昭和時代のガード名に採用されてるわけですよ。

102so:自治体としての杉並町があったころの、県道とか市道みたいな感じの杉並町の町道があったってことですかね。

西村:たぶんそうですよね、それが、このガードを作った昭和36年ぐらいまで名称として使われてたってことですよね。

102so:杉並町が残ってた、え、町道ですかこれ? すごいっすね。えーすごい!(驚きの感情が時間差でじわじわ来た)

西村:で、空頭標の意味がわからず、グーグルで検索してみたんですよ。そしたら、102soさんのツィッターの書き込みが一番上に表示されるんですよ。

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「グーグル検索」より

102so:え! まじで!? おれ、今答えろっていわれても答えらんないですよ! なんすか空頭標って。

西村:ちょっと見てみますか。

102so:やめてください、そんな黒歴史を掘り起こすようなことを……。 

102so:あ、ホントだ、空頭標(笑)、これ、知ったかぶりすんじゃねーぞって話ですけどね。おれしらねーよ、空頭標。

西村:これ、間之坂ってどこですか?

102so:えーと、西日暮里ですね。

西村:あ、西日暮里駅の直下のガードだ、開成のとこの。いや、102soさん知ってるかなって思って。

102so:いや、知らないっすよ。

西村:これ、記事にして公開したら、はてなブックマークとかで親切に教えてくれるひとが出てきますよ。

102so:じゃあその方に解説おまかせします(笑)……(インターネットを検索する)あー、ほんとだ、おれのやつが一番最初に出てくる……。きもちわり! 意味も知らねーでつかってんじゃねーよ(笑)

西村:いやだって、空頭標って書いてあるからそう書いただけでしょうに(笑)

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読みづらい空頭標は馬橋? 

西村:でですね、空頭標のプレート、字が小さくて、ストリートビューだとどれもほんと読めないんですよ。これとか。  

102so:うーん、これ読め……ない? 読めそうじゃないですか?

西村:いや、正確には読めないですよ……やっぱり現地に見に行かないとだめかな。

102so:なんか見に行ったら負けな感じがするなあ。あくまでストリートビューで解読したい……これどこですか?

西村:住所ですか? 阿佐ヶ谷ですね。あ、阿佐ヶ谷南か。

102so:阿佐ヶ谷だったら旧町名だったんですけど

西村:あ「阿佐ヶ谷」って住所、今存在しないんですね。

102so:そうなんですよ。阿佐ヶ谷は阿佐谷北と阿佐谷南に分かれてしまって旧町名なんです、高円寺もそうですけど。

西村:……あ、馬橋じゃないですかこれ?

102so:馬橋か、馬橋は高円寺と阿佐ヶ谷の間ぐらいにあったんですよ、駅もなかったし、町名も残らなかったんですけど、ガードに残ってたか……。

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『今昔マップ』より

西村:ただ、馬橋はここじゃない場所に、馬橋ガードとしてすでにあるんですよ。 

西村:今回はネットで調べて書くコンセプトの記事なんですが、でも、まあ、調べに行っちゃうかな〜。

102so:行っちゃダメですよ。こたつ記事の精神に反しますよ。

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謎がつきない

西村:山手線、総武線、中央線調べたんで、こうなるとね、常磐線、東北線、東海道線と、欲が出てきちゃうんですよ。欲が……で、我慢ならなくなって、東海道線、3つだけ調べたんですよ。

102so:もう調べたんだ。

西村: 駅で言ったら、北品川のちょっと南。目黒川の川岸あたりなんですけど、北から目黒道、東海寺裏ときて、なんと碑文谷なんですよ。 

102so:え? 碑文谷ですか?

西村:碑文谷ガードなんです。碑文谷って目黒ですよね? その碑文谷と碑文谷ガードって直線距離で4キロ以上離れてるんですよ。

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碑文谷ガードがなぜこんなところに……『地理院地図』より

102so:えーっ!

西村:さっきの桐ヶ谷みたいに、偶然同じ地名があったのか。でも、碑文谷なんてオリジナリティありすぎる地名が2つもあるかしら? つまり謎です。


中央線のガード名もやばかった

というわけで、最後に大きな謎を残したまま終わるわけですが、これはもう、常磐線、東海道線、東北線も、調べたほうがよいのでしょうか?

もし、調べたらまた102soさんと一緒に旧町名ガードを鑑賞すると思います。そのさいは、よろしくお願いいたします。

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そもそもの旧町名とは、住居表示とは、といった基本的なところから、102soさんの旧町名へのこだわり、そして旧町名偏愛者として有名な能町みね子さんとの対談など、かなり読み応えある内容となっております。ぜひどうぞ。  

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